確定判決の不当取得(騙取判決)と救済とは
かくていはんけつのふとうしゅとく
確定判決の不当取得(騙取判決)とは、当事者が相手方の権利を害する意図で、相手方の訴訟手続への関与を妨げたり、虚偽の事実を主張して裁判所を欺いたりして、本来ありえない内容の確定判決を得ることです。被害を受けた当事者は、控訴の追完や再審のほか、特別の事情がある場合に限り、判決の既判力と矛盾する損害賠償を請求できます。
相手の住所を知っているのに「行方不明」と偽って裁判所の掲示板で呼び出したり、裁判の外で訴えを取り下げると約束しておきながら取り下げずに勝訴判決を得たりして、相手が知らないうちに判決を確定させることがあります。このような判決も確定すれば既判力があり、当然には無効になりません。そこで、だまされた側は控訴の追完や再審で判決を覆します。それでも救えない悪質な場合には、判決をそのままにして不法行為の損害賠償を請求する道も、厳しい条件付きで認められています。
不正な手段で得た確定判決でも当然には無効にならず、上訴の追完や再審で取り消すのが原則です
実在しない者を当事者とした判決のように、判決の内容上の効力を認めることができない判決は無効とされますが、それでも手続上はその審級を終わらせ、上訴の対象になります。相手方の手続関与を妨げて得た判決や裁判所を欺いて得た判決は、成立過程に重大な不正があっても、確定すれば既判力が生じ、一般には再審によってのみ取り消せると考えられています。既判力による法的安定を、個々の判決の当否の争いで簡単に崩さないためです。その代わり、判決の確定前なら控訴の追完、確定後なら再審という救済が用意されています。手続保障が欠けていた点を重く見て、判決の無効を広く認め、再審を経ずに争えるとする見解もあります。
住所を知りながら不明と偽って公示送達をさせられた被告は、控訴の追完ができます
公示送達は、当事者の住所・居所その他送達をすべき場所が知れない場合などに、裁判所書記官が申立てによりします(110条1項)。当事者が責めに帰することができない事由により不変期間を守れなかったときは、その事由が消滅した後1週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為を追完できます(97条1項)。判例は、原告が被告の居所を知りながら公示送達を申し立て、被告が知らないうちに敗訴した事案で、控訴の追完を認めました(最判昭和42年2月24日)。原告が公示送達の制度を悪用した以上、被告が控訴期間を守れなかったのは被告の責めに帰することができない事由によるからです。「当該被告は,控訴を追完することができる」という肢は正しいです。公示送達の要件と効力は公示送達の語で、送達の瑕疵の全体は送達の瑕疵の語で扱います。
手続に関与する機会を奪われたまま判決が確定したときは、代理権の欠缺に準じて再審を求められます
判例は、訴状が有効に送達されず、被告とされた者が訴訟に関与する機会を与えられないまま判決がされた場合は、代理権の欠缺(338条1項3号)と別異に扱う理由はないとしました(最判平成4年9月10日)。補充送達が有効でも、利害の対立する同居者が書類を渡さず、被告が訴訟を知らないまま判決が確定したときも同じです。「当該判決に対して再審の訴えを提起することができる」という肢は正しいです。下級審には、公示送達の要件を満たしていないのに訴状等が公示送達され、被告が訴訟に関与する機会を与えられないまま判決がされた場合に、同じ理由で3号の再審事由を認めて再審開始決定をしたものがあります(札幌地決令和元年5月14日)。代理権の欠缺を理由とする再審には、30日と5年の期間制限がかかりません(342条3項)。再審事由と補充性の詳細は、再審事由と補充性の語で扱います。
確定判決と矛盾する損害賠償の請求は、権利を害する意図の不正行為で判決を取得し執行したなど、著しく正義に反する特別の事情がある場合に限って許されます
判例は、前訴の係属中に裁判外で訴えを取り下げる和解をしながら、原告が取り下げずに欠席判決を得て確定させ、強制執行した事案で、判決の成立過程において当事者が相手方の権利を害する意図のもとに、作為又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行い、その結果本来ありうべからざる内容の確定判決を取得しこれを執行したときは、確定判決の既判力にかかわらず不法行為が成立するとしました(最判昭和44年7月8日)。その後判例は、確定判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求は、法的安定を著しく害するので原則として許されず、上の不正な行為で判決を取得しこれを執行したなど、その行為が著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限って許されると定式化しました(最判平成10年9月10日)。再審を経ないまま判決の結論を事実上覆すことになるので、相手方の権利を害する意図と、著しく正義に反する特別の事情という厳しい要件を求めているのです。
民事訴訟法97条1項
当事者が裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。(略)
最判昭和44年7月8日
判決の成立過程において、訴訟当事者が、相手方の権利を害する意図のもとに、作為または不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為を行ない、その結果本来ありうべからざる内容の確定判決を取得(略)
論文ではこう使う
論文では、騙取判決の救済手段を順に検討します。判決の確定前なら控訴の追完(97条1項)、確定後なら338条1項3号の類推による再審を示し、補充性と再審期間(342条3項)を当てはめます。そのうえで、再審を経ずに損害賠償を請求できるかについて、既判力による法的安定との緊張関係を指摘し、最判平成10年9月10日の要件(相手方の権利を害する意図、不正な行為による判決の取得と執行、著しく正義に反する特別の事情)を事案の事実に当てはめます。判決の当然無効を前提に請求を認める見解にも触れます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。