証拠調べに協力しない者への効果の一覧(真実擬制・過料・勾引)とは
しょうこしらべにきょうりょくしないものへのこうかのいちらん
証拠調べに協力しない者への効果とは、証人・当事者本人・鑑定人・文書や検証物の所持者が出頭・宣誓・証言・提出などに応じないときに、民事訴訟法が定める不利益のことです。証人や第三者には過料・罰金・勾引などの制裁が、当事者には相手方の主張を真実と認める真実擬制が用意されています。
裁判所に呼ばれた証人が来ないとき、事件と無関係な第三者には勝ち負けで圧力をかけられないので、過料や勾引で出頭を強制します。これに対し当事者本人が尋問に来なかったり、自分の持つ文書を出さなかったりするときは、相手方の言い分を本当と認める不利益を負わせれば十分です。誰が協力しないのかによって、効果の種類が分けて作られているのはこのためです。
証人が正当な理由なく出頭しないときは、費用負担と過料、罰金・拘留、勾引の三段構えの手段があります
証人は、日本の裁判権に服する者として、出頭・宣誓・証言の義務を負います。証人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は決定で、不出頭によって生じた訴訟費用の負担を命じ、かつ10万円以下の過料に処し(192条1項。即時抗告ができます)、これとは別に10万円以下の罰金又は拘留という刑罰も定められ(193条)、さらに裁判所は勾引を命ずることができます(194条1項)。証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に正当な理由なく証言を拒む場合も、192条と193条が準用されます(200条)。「証人による証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に、その証人が正当な理由なく証言を拒む場合でも、裁判所は、その証人を過料に処することはできない」という肢は誤りです。宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後の宣誓拒絶も同じです(201条5項)。勾引は出頭の強制なので、証言拒絶・宣誓拒絶には準用されていません。
当事者本人が出頭・宣誓・陳述を拒んでも勾引や過料はなく、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができるだけです
当事者本人を尋問する場合に、その当事者が正当な理由なく出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができます(208条)。当事者は勝敗に直接の利害を持つので、不利な事実を認められるという効果で十分に協力を促せるからです。当事者本人の尋問には証人の勾引(194条)は準用されていません(210条)。「当事者本人を尋問する場合において、その当事者が正当な理由なく尋問の期日に出頭しなかったときでも、裁判所は、その当事者の勾引を命ずることはできない」という肢は正しく、「当事者本人を尋問する場合において,その当事者が正当な理由なく出頭しないときは,裁判所は,尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる」という肢も正しいです。「裁判所は,勾引を命ずることができる」という肢は誤りで、陳述を拒んだ当事者が「罰金又は過料の制裁を受ける」という肢も誤りです。他方、宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、真実擬制ではなく、決定で10万円以下の過料に処されます(209条1項)。「制裁として尋問事項に関する相手方当事者の主張を真実と認めることができる」という肢は誤りです。
文書提出命令に従わない当事者には真実擬制が、第三者には過料が働き、送付嘱託や当事者照会には制裁がありません
当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができます(224条1項)。相手方の使用を妨げる目的で提出義務のある文書を滅失させるなどして使えなくしたときも同じです(同条2項)。さらに、相手方が文書の記載について具体的な主張をすることも、その文書で証明すべき事実を他の証拠で証明することも著しく困難なときは、証明すべき事実そのものについての相手方の主張を真実と認めることができます(同条3項)。「当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させた場合でも、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることはできない」という肢は誤りです。当事者が提出命令に従わないときの効果は真実擬制であり、「裁判所の決定により,過料に処されることがある」という肢は誤りです。これに対し、第三者が提出命令に従わないときは、決定で20万円以下の過料に処されます(225条1項)。第三者の不服従を理由に当事者を有利・不利に扱うことはできないので、真実擬制はありません。「第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、過料に処する」という肢は正しく、第三者の不服従で申立人の主張を真実と認めることができるとする肢は誤りです。文書送付の嘱託(226条)は所持者の任意の協力を求めるものなので、「第三者が正当な理由なくその所持する文書についての送付嘱託の決定に従わない場合でも、裁判所は、その第三者を過料に処することはできない」という肢は正しいです。当事者照会(163条)にも回答を強制する手段や制裁はなく、回答拒絶を理由に照会事項に関する主張を真実と認めることができるとする肢は誤りです。
検証物の提示命令、筆跡の対照のための筆記命令、文書の成立を不当に争うことには、それぞれ別の効果が定められています
検証の目的物の提示については文書提出命令の規定が準用され(232条1項)、当事者が提示命令に従わないときは、検証物の性状などに関する相手方の主張を真実と認めることができます。「当事者が検証物提示命令に従わないからといって、当該検証物の性状に関する相手方の主張を真実と認めることはできない」という肢は誤りです。第三者が提示命令に従わないときは、決定で20万円以下の過料に処されます(232条2項)。「第三者が正当な理由なく検証の目的物の提示命令に従わない場合でも、裁判所は、その第三者を過料に処することはできない」という肢は誤りで、第三者を過料に処するとする肢は正しいです。文書の成立の真否を筆跡で対照するために相手方に文字の筆記を命じたのに、相手方が正当な理由なく従わないときは、文書の成立の真否に関する挙証者の主張を真実と認めることができます(229条4項)。これに対し、当事者又はその代理人が故意又は重大な過失により真実に反して文書の成立の真正を争ったときの効果は、決定による10万円以下の過料です(230条1項)。「当該文書の記載の内容が真実であると認めることができる」という肢は誤りです。ここでいう代理人には訴訟代理人も含まれるので、「訴訟代理人が過料に処せられることはない」という肢も誤りです。
鑑定人には過料と罰金はありますが勾引はなく、調査の嘱託に応じない団体にも制裁はありません
鑑定人が正当な理由なく出頭しないとき、宣誓を拒むとき、鑑定拒絶を理由がないとする裁判の確定後に鑑定を拒むときは、証人の過料(192条)と罰金・拘留(193条)の規定が準用されます(216条)。しかし勾引(194条)は準用されていません。鑑定人は学識経験のある者の中から選ばれ、代わりの人を選べるので、身柄を拘束してまで出頭させる必要がないからです。「裁判所は,鑑定人が正当な理由なく期日に出頭しないときは,鑑定人の勾引を命ずることができる」という肢は誤りです。官庁や団体への調査の嘱託(186条)も任意の協力を求めるもので、嘱託先が応じなくても制裁はありません。なお、明文のない場面で相手方の立証を妨げた場合(証明妨害)について、東京高判平成3年1月30日は、故意又はこれと同視しうる重大な過失による妨害があれば証明妨害に当たるとし、その効果は要証事実の内容、妨害された証拠の重要性、他の証拠を確保する難易などを総合考慮して、事実上の推定、真実擬制、証明度の軽減、証明責任の転換のいずれによるかを事案に応じて決めるとしました(その事案では妨害を否定しました)。
- 証人の不出頭訴訟費用の負担と10万円以下の過料(192条)、10万円以下の罰金又は拘留(193条)、勾引(194条)
- 証人の証言拒絶・宣誓拒絶(理由がないとする裁判の確定後)過料と罰金・拘留(200条・201条5項)。勾引はありません
- 当事者本人の不出頭・宣誓拒絶・陳述拒絶尋問事項に関する相手方の主張の真実擬制(208条)。勾引・過料はありません
- 宣誓した当事者の虚偽陳述10万円以下の過料(209条)。真実擬制ではありません
- 鑑定人の不出頭・宣誓拒絶・鑑定拒絶過料と罰金・拘留(216条)。勾引はありません
- 当事者の文書提出命令違反・使用妨害文書の記載に関する相手方の主張の真実擬制、さらに証明すべき事実の真実擬制(224条)
- 第三者の文書提出命令違反20万円以下の過料(225条)。真実擬制はありません
- 検証物提示命令違反当事者は真実擬制(232条1項)、第三者は20万円以下の過料(232条2項)
- 筆跡対照の筆記命令違反文書の成立の真否に関する挙証者の主張の真実擬制(229条4項)
- 故意・重過失で文書の成立の真正を争う当事者又は代理人に10万円以下の過料(230条)
- 送付嘱託・調査の嘱託・当事者照会に応じない制裁はありません
民事訴訟法208条
当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
民事訴訟法224条1項
当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
民事訴訟法225条1項
第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
論文ではこう使う
当事者が自分の支配する証拠の利用を妨げた事例では、まず224条(文書)・232条(検証物)・208条(当事者尋問)の真実擬制が使えるかを検討し、224条3項により証明すべき事実そのものの真実擬制まで認められるかを、相手方が具体的な主張をすることと他の証拠による証明の困難さから論じます。明文が及ばない妨害行為については、証明妨害として、妨害の態様や帰責性に応じて妨害された側の主張を真実と認めることなどを検討する考え方を示します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。