書証の申出と取調べ(提出・送付嘱託・原本・電磁的記録)とは
しょしょうのもうしでととりしらべ
書証の申出とは、文書に記載された意味内容を証拠とするために、文書を提出し、所持者への提出命令を申し立て、又は送付の嘱託を申し立てることです。書証の取調べとは、提出又は送付された文書を裁判官が閲読して、その意味内容を証拠資料とすることです。
契約書や領収証は、裁判で最もよく使われる証拠です。自分の手元にある文書なら法廷に出せば済みますが、相手方や役所が持っている文書は自分では出せません。そこで民事訴訟法は、自分で出す方法のほか、裁判所に提出を命じてもらう方法と、裁判所から所持者に送付を頼んでもらう方法を用意しています。出された文書は裁判官が読んで内容を確かめるので、法廷で読み上げる必要はありません。
書証の申出は、文書を提出する方法、所持者に提出を命じるよう申し立てる方法、送付の嘱託を申し立てる方法のいずれかでします
書証とは、文書に記載された作成者の意思や認識を証拠資料とする証拠調べです。書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければなりません(219条)。「書証の申出は、文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててすることはできない」という肢は誤りです。提出命令の申立ては、所持者が相手方でも第三者でもでき(223条2項参照)、「第三者が所持する文書については,文書提出命令の申立てをすることはできないが,文書送付の嘱託を申し立てることはできる」という肢は誤りです。さらに、書証の申出は、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることもできます(226条本文)。送付の嘱託は所持者の任意の協力を求めるもので、提出義務とは別の制度なので、所持者が提出義務を負う文書についても使えます。「文書の所持者が、その文書につき文書提出義務を負うときであっても、当該所持者に対して当該文書の送付の嘱託をすることができる」という肢は正しいです。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、送付の嘱託はできません(同条ただし書)。登記事項証明書は誰でも登記官に交付を請求できるので(不動産登記法119条1項)、自分で取り寄せて提出すべきだからです。「文書送付の嘱託の申立ては,登記事項証明書など当事者が法令により正本又は謄本の交付を求めることができる文書については,することができない」という肢は正しく、登記官への送付の嘱託を申し立てられるとする肢は誤りです。
- 文書を提出する(219条)挙証者が自分で持っている文書を出します
- 提出命令を申し立てる(219条・221条)所持者(相手方・第三者)が提出義務を負うときに使います。従わなければ真実擬制や過料があります
- 送付の嘱託を申し立てる(226条)所持者の任意の協力を求めます。提出義務がなくても使えますが、従わなくても制裁はありません。法令で謄本等を取れる文書には使えません
送付の嘱託に従わなくても制裁はなく、送付された文書も相手方が成立を争えば成立の真正を証明しなければなりません
文書提出命令は提出義務を負う所持者に命令するものなので、第三者が従わなければ過料の制裁があります(225条1項)。これに対し送付の嘱託はあくまで依頼なので、所持者が応じなくても制裁の規定はありません。「第三者が正当な理由なくその所持する文書についての送付嘱託の決定に従わない場合でも、裁判所は、その第三者を過料に処することはできない」という肢は正しいです。また、送付の嘱託も書証の申出の一つなので、送付された文書も文書の成立の規律(228条1項)に服します。裁判所を通じて届いた文書だからといって真正に成立したことにはならないので、「裁判所が当事者からの申立てを採用して行った文書送付嘱託に基づき,文書所持者から裁判所に送付された文書についても,相手方がその成立を争った場合には,その成立が真正であることを証明しなければならない」という肢は正しいです。成立の真正の証明の方法は、文書の証拠力と成立の真正の語で扱います。
文書は原本・正本・認証のある謄本で提出し、裁判官が閲読する方法で取り調べ、必要があれば取調べの後も留め置けます
当事者は、書証の申出をするときは、あらかじめ文書の写しを提出しておきますが(民事訴訟規則137条1項)、期日に提出又は送付する文書は、原本、正本又は認証のある謄本でなければなりません(同規則143条1項)。写しでは改ざんの有無や成立の真正を確かめられないからです。「あらかじめ裁判所に当該文書の写しを提出しているときでも、口頭弁論の期日において、裁判所に当該文書の原本、正本又は認証のある謄本を提出しなければならない」という肢は正しいです。文書の証拠調べは、裁判官が文書を閲読してその意味内容を読み取る方法で行います。朗読や要旨の告知は要らないので、「文書の証拠調べは,書証の申出をした者が当該文書を朗読し,又はその要旨を告げる方法により行われる」という肢は誤りです。裁判所は、必要があると認めるときは、提出又は送付に係る文書を留め置くことができます(227条1項)。「裁判所は、必要があると認めるときは、提出された文書の原本を書証として取り調べた後も、これを留め置くことができる」という肢は正しいです。なお、書証の申出があっても、裁判所は必要でないと認める証拠は取り調べなくてよいので(181条1項)、「裁判所は、当事者が書証の申出をした場合には、当該申出に係る文書の証拠調べをしなければならない」という肢は誤りです。
文書の証拠調べは弁論準備手続の期日でもでき、受命裁判官も送付の嘱託などの裁判をすることができます
文書は裁判官が読めば取り調べられるので、公開の法廷でなくても証拠調べができます。裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判のほか、文書の証拠調べと電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べをすることができます(170条2項)。「弁論準備手続の期日においても、文書の証拠調べをすることができる」という肢は正しく、文書提出命令の申立てや補助参加の申出についての裁判もできるとする肢も正しいです。弁論準備手続を行う受命裁判官も、調査の嘱託、鑑定の嘱託、文書を提出してする書証の申出、文書の送付の嘱託についての裁判をすることができます(171条3項)。「弁論準備手続を行う受命裁判官は,調査の嘱託,鑑定の嘱託,文書を提出してする書証の申出及び文書の送付の嘱託についての裁判をすることができる」という肢は正しいです。図面・写真・録音テープなど文書でない情報の物件にも書証の規定が準用され(231条)、令和4年改正で、電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べは、電磁的記録を提出し、又は利用する権限を有する者に提出を命ずることを申し立ててする手続が置かれました(231条の2・231条の3)。
民事訴訟では文書の証拠能力に原則として制限がなく、訴え提起後に作成した文書や別件の尋問調書の写しも書証として出せます
刑事訴訟の伝聞法則のような規律は民事訴訟にはなく、証拠能力には原則として制限がありません。判例は、訴え提起後に当事者自身が係争事実について作成した文書であっても、当然に証拠能力がないわけではないとしました(最判昭和24年2月1日)。「判例によれば,訴え提起後に挙証者自身が作成した文書は,実質的に相手方の反対尋問の機会を奪うことになるので,証拠能力が認められない」という肢は誤りです。同じ理由で、別の訴訟で行われた証人尋問の調書の写しも書証として提出でき、その信用性は裁判官の自由心証で評価されます。「別件訴訟において行われた証人尋問の調書の写しは,これを証拠とすることを認めると,相手方の反対尋問の機会を奪うだけでなく,直接主義の原則に反することになるので,その証人の尋問を行うことが困難な場合であっても,書証として提出することはできない」という肢は誤りです。証拠能力と証拠力の区別は、自由心証主義の語で扱います。
民事訴訟法219条
書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
民事訴訟法226条
書証の申出は、第二百十九条の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない。
民事訴訟法227条1項
裁判所は、必要があると認めるときは、提出又は送付に係る文書を留め置くことができる。
民事訴訟法231条の2第1項
電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出は、当該電磁的記録を提出し、又は当該電磁的記録を利用する権限を有する者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。