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用語集 / 民事訴訟法 / 釈明権と釈明義務

釈明権と釈明義務(149条)とは

しゃくめいけんとしゃくめいぎむ

民事訴訟法 審理の原則と手続

釈明権とは、裁判長が口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し当事者に問いを発し、又は立証を促すことができる権能のことです(149条1項)。釈明義務とは、一定の場合に裁判所が釈明権を行使しなければならず、これを怠ると判決が違法になるという義務のことです。

弁護士が付いていない当事者は、言いたいことがうまく整理できなかったり、勝てるはずの法律構成に気づかなかったりします。弁論主義のもとでは事実を出すのは当事者の責任ですが、それを貫くと、ちょっとした言い落としで本来勝つべき人が負けてしまいます。そこで裁判所には、当事者に問いを発し、立証を促して訴訟関係をはっきりさせる権能(釈明権)が与えられています。どこまで踏み込むかは公平との兼ね合いで決まり、行使しないことが違法になる場合もあります。

民事の法廷の場面。正面の裁判官席の中央に先生が裁判長役(札「裁判長」)として座り、左右に陪席裁判官が2人いる。原告席には弁護士の付いていない男性(札「原告本人」)が、書類を手に困った顔で立っている。先生が原告に向かって身を乗り出し、吹き出し

釈明権は裁判長が期日又は期日外に行使し、陪席裁判官は裁判長に告げれば行使でき、当事者は裁判長に発問を求めることができます

149条1項は、裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができると定めます。「釈明権の行使は、口頭弁論の期日又は期日外においてすることができる」という肢は正しいです。陪席裁判官は、裁判長に告げて同じ処置をすることができ(同条2項)、裁判長の許可は要りません。「陪席裁判官は、裁判長の許可がなくても、裁判長に告げれば釈明権を行使することができる」という肢は正しいです。「陪席裁判官は,裁判長の許可を得なければ,当事者に対して問いを発することができない」という肢は誤りです。釈明権は訴訟指揮の一つとして裁判所の側にある権能なので、当事者が相手方に直接行使することはできません。「当事者は、相手方に対し、直接釈明権を行使することができる」という肢は誤りです。当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができます(同条3項。求問権)。「当事者は,口頭弁論の期日外において,裁判長に対して発問を求めることができない」という肢は誤りです。

期日外に重要な変更を生じうる釈明をしたときは相手方に通知し、釈明に対する当事者の異議には裁判所が決定で裁判します

期日外の釈明は相手方のいないところで行われるので、裁判長又は陪席裁判官が口頭弁論の期日外に攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じうる事項について釈明の処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければなりません(149条4項)。「裁判長は,口頭弁論の期日外で一方当事者に対し攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について釈明権を行使しても,その内容を相手方に通知する必要はない」という肢は誤りです。当事者が裁判長の口頭弁論の指揮に関する命令や、裁判長・陪席裁判官の釈明の処置に異議を述べたときは、裁判所は決定でその異議について裁判をします(150条)。「裁判長の釈明権の行使に対して不服がある当事者は,受訴裁判所に対して異議を申し立てることができる」という肢は正しいです。「当事者は,裁判長の釈明権の行使に対して不服があっても,異議を申し立てることができない」という肢は誤りです。「裁判長が事実上の事項に関し当事者に立証を促したことに対し,相手方当事者が異議を述べた場合には,裁判所は,その異議について裁判をする必要はない」という肢も誤りです。

釈明は不明瞭な主張を正すだけでなく、別個の法律構成を示唆して訴えの変更を促すことも許されます

釈明には、不明瞭・矛盾した主張を正す消極的な釈明と、当事者が出していない申立てや主張を示唆する積極的な釈明があります。判例(最判昭和45年6月11日)は、原告の主張する請求原因では請求を認容できないが、訴訟の経過や訴訟資料・証拠資料からみて別個の法律構成に基づく事実関係が主張されれば請求を認容でき、原告がそれを主張しないのが明らかに誤解又は不注意によると認められるときは、釈明の内容が別個の請求原因にわたるとしても、裁判所は原告の主張の趣旨を釈明でき、場合によっては具体的な法律構成を示唆してその真意を確かめることも許されるとしました。したがって、「具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使は,許されない」という肢は誤りです。「原告が明らかに誤解又は不注意によりそのような主張をしていないと認められる場合に、裁判長が原告に対して釈明権の行使としてその別個の法律構成を示唆することは、釈明権行使の範囲を逸脱した違法なものではない」という肢は正しいです。

板書の図解。黒板に横長の物差しが描かれ、左端に「釈明しなくてよい」、中央に「釈明してよい(権能)」、右端に「釈明しなければ違法(釈明義務)」と目盛りがある。中央の目盛りの下に「明らかな誤解・不注意→別個の法律構成を示唆(最判昭和45年6月1

当事者が予測できない法律構成で判断するときは主張を促す措置が必要で、これを怠れば釈明義務違反として上告受理申立ての理由になり得ます

釈明は裁判所の権能ですが、一定の場合には行使しないことが違法になります(釈明義務)。判例(最判平成22年10月14日)は、当事者双方が主張しておらず従前の訴訟の経過からは予測が困難な信義則上の義務違反という法律構成で請求を認容するなら、その義務違反を基礎づける事実が主張されていても、原告に信義則違反を主張するかを明らかにするよう促し、被告に反論・反証の機会を与えるべきであったとして、釈明権の行使を怠った違法を認めました。「当該信義則上の義務違反を基礎付ける事実が主張されていれば、原告に信義則上の義務違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促す措置がとられていなくても、釈明権の行使を怠った違法があるとはいえない」という肢は誤りです。立証についても、判例(最判昭和39年6月26日)は、当事者が裁判所の心証を予期できず立証の必要に気づかない場合には、証拠方法のないことが明らかなときを除き、証拠の提出を促すべきであるとしています。釈明義務違反は判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反として、上告受理申立ての理由になり得ます(最判平成17年7月14日)。「裁判所の釈明義務違反は,上告受理申立ての理由にはならない」という肢は誤りです。なお、留置権のような権利抗弁について、行使をうかがわせる事実があっても行使を促す釈明義務はないとされています(最判昭和27年11月27日)。

趣旨が不明瞭な攻撃防御方法について釈明に応じず、又は釈明すべき期日に欠席すれば、訴訟の遅延がなくても却下されます

157条2項は、攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて、当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、時機に後れた攻撃防御方法と同様に却下の決定ができると定めます。「攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて,当事者が必要な釈明をしない場合,裁判所は,その攻撃又は防御の方法を却下することができる」という肢は正しいです。「攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が釈明をすべき期日に出頭しない場合,裁判所は,その攻撃又は防御の方法を却下することができる」という肢も正しいです。157条1項の却下は訴訟の完結を遅延させることを要件としますが、同条2項はこれを要件としていません。「裁判所は、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときでなければ、当該攻撃又は防御の方法について却下の決定をすることができない」という肢は誤りです。

  • 主体と時裁判長が期日又は期日外に行使します(149条1項)。陪席裁判官は裁判長に告げて行使します(同条2項)
  • 当事者裁判長に発問を求めることができます(同条3項)。相手方に直接釈明権を行使することはできません
  • 期日外の釈明重要な変更を生じうる事項なら相手方に通知します(同条4項)
  • 異議裁判所が決定で裁判します(150条)
  • 釈明に応じない・欠席趣旨不明の攻撃防御方法を却下できます。遅延の要件はありません(157条2項)
  • 釈明処分裁判所が本人の出頭・文書の提出・検証・鑑定・調査の嘱託などを命じます(151条。釈明処分の語で扱います)

民事訴訟法149条1項

裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。

民事訴訟法150条

当事者が、口頭弁論の指揮に関する裁判長の命令又は前条第一項若しくは第二項の規定による裁判長若しくは陪席裁判官の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。

民事訴訟法157条2項

攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。

論文ではこう使う

論文では、裁判所が当事者の主張しない法律構成や事実で判断した事例で、①弁論主義違反か(主要事実が弁論に出ているか)、②出ているとしても釈明義務違反がないか、を分けて論じます。釈明義務の有無は、判決の勝敗が逆転する蓋然性、当事者の申立て・主張の法律構成の不備の程度、釈明を求めることが当事者の公平を害しないか、当事者の能力(弁護士の有無)などを考慮して判断し、予測困難な法律構成による不意打ち(最判平成22年10月14日)を典型例として当てはめます。積極的釈明の限界は最判昭和45年6月11日の規範で書きます。

試験ではこう問われる

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