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用語集 / 民事訴訟法 / 主張共通の原則と相手方の援用しない不利益陳述

主張共通の原則と相手方の援用しない不利益陳述(先行自白)とは

しゅちょうきょうつうのげんそくとあいてかたのえんようしないふりえきちんじゅつ

民事訴訟法 審理の原則と手続

主張共通の原則とは、主要事実はどちらの当事者が主張したものでも判決の基礎にでき、主張責任を負う当事者から主張されている必要はないという原則のことです。相手方の援用しない自己に不利益な陳述も判決の基礎になりますが、相手方が援用するまでは裁判上の自白は成立せず、援用されると先行自白として自白が成立します。

建物の明渡しを求める原告が、話の流れで「被告にはただで住まわせていた」と口にしてしまうことがあります。これは被告の占有の権原(使用貸借)を基礎づける、原告に不利な事実です。弁論主義は、裁判所と当事者全体の役割分担を決める原則なので、事実がどちらの当事者の口から出たかは問いません。弁論に出た以上、裁判所はその事実を判決の基礎にできます。ただし、相手方がその陳述を自分の主張として取り込むまでは、自白としての拘束力は生じません。

民事の法廷の場面。原告席の男性(札「原告」)が「被告には、その建物を無償で使わせていました」と陳述している。被告席の男性(札「被告」)は腕を組み「この建物はもともと私のものです」と言っている。正面の裁判官席で先生が裁判官役(札「裁判所」)と

主要事実はどちらの当事者が主張してもよく、主張責任を負う側が主張していなくても判決の基礎にできます

弁論主義の第1テーゼがいう「当事者が主張しない事実」とは、原告・被告のどちらも主張していない事実のことです。ある主要事実がどちらか一方の当事者から弁論に出ていれば、主張責任を負う当事者からの主張でなくても、裁判所はそれを判決の基礎にできます。これを主張共通の原則といいます。判例(最判昭和41年9月8日)は、土地の明渡請求で、被告の占有権原となる「使用を許した」事実を被告ではなく原告が主張していた事案で、被告がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、裁判所は請求の当否の判断にあたりこの事実をしん酌すべきであるとしました。したがって、「『原告は,被告に対してその建物を無償で使用させていた。』との事実を原告が陳述した場合には,被告がその援用をしないときであっても,裁判所は,原告と被告との間でその建物の使用貸借契約が成立したことを判決の基礎とすることができる」という肢は正しいです。被告が自分の所有を主張して原告の陳述を援用しなかった事案でも結論は同じなので、「裁判所は,証拠調べの結果,当該使用貸借契約締結の事実が認められるとの心証を得ても,この事実を判決の基礎とすることができない」という肢は誤りです。

相手方が援用しない自己に不利益な陳述は判決の基礎にはなりますが、裁判上の自白は成立しません

裁判上の自白は、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述です。原告が被告の抗弁事実(占有権原となる賃貸借契約の締結)を自ら先に陳述しても、被告がそれを援用しない限り、両当事者の陳述は一致せず、自白は成立しません。相手方の援用しない自己に不利益な陳述は、判決の基礎にできる訴訟資料にはなりますが、裁判所を拘束せず、裁判所は証拠調べの結果によって異なる認定をすることもできます。「被告は,その期日において,当該建物は被告が所有するものであるとして,これを援用しなかった。この原告の陳述について,裁判上の自白が成立する」という肢は誤りです。なお、援用しない被告にとっては思いがけない事実で判決されることになるので、裁判所は釈明によって当事者の意向を確かめるのが望ましいとされています。

板書の図解。黒板に時間の流れの矢印が左から右に描かれている。左端に「原告が自ら不利益な陳述(賃貸借の締結)」、中央に分かれ道があり、上の道に「被告が援用しない→判決の基礎にはなる・自白は不成立・撤回できる」、下の道に「被告が援用→先行自白が

相手方が援用すると先行自白として裁判上の自白が成立し、援用されるまでは陳述した当事者が自由に撤回できます

相手方の主張より先に自己に不利益な事実を陳述し、後から相手方がそれを援用した場合も、両当事者の陳述が一致するので裁判上の自白が成立します(先行自白)。「原告が自ら進んで被告との間で当該建物の賃貸借契約を締結した旨の陳述をしたときは,これを被告が援用すれば,賃貸借契約締結の事実につき裁判上の自白が成立する」という肢は正しいです。援用される前は自白が成立していないので、陳述した当事者は相手方の同意や反真実・錯誤の証明がなくても自由に撤回できます。相手方はまだその陳述を前提に立証を省くという信頼を持っていないからです。「自己に不利益な陳述をした当事者は,相手方がその陳述を援用する前においても,当該陳述を撤回することができない」という肢は誤りです。被告が認否を追って行うとの答弁書を出しただけで期日に欠席し続けている場合も、まだ援用はありません。原告が使用貸借契約の締結を述べた事案で、「原告は,その期日において,使用貸借契約を締結した旨の陳述を撤回することができる」という肢は正しいです。援用された後の撤回は、自白の撤回の要件(相手方の同意、刑事上罰すべき他人の行為、反真実かつ錯誤)を満たす場合に限られ、自白の効力と撤回の要件の語で扱います。

  • 相手方の援用がない判決の基礎にはできますが、自白は成立せず、裁判所は異なる認定ができ、陳述した当事者は自由に撤回できます
  • 相手方が援用した先行自白として裁判上の自白が成立し、裁判所を拘束し、撤回は自白の撤回の要件を満たす場合に限られます

民事訴訟法179条

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

論文ではこう使う

論文では、当事者が自己に不利な事実を述べてしまった事例で、①弁論主義は裁判所と当事者との役割分担の原則なので、主要事実がいずれかの当事者から出ていれば判決の基礎にできる(主張共通の原則、最判昭和41年9月8日)、②ただし相手方の援用がなければ自白は成立せず撤回も自由である、③相手方が援用すれば先行自白として拘束力が生じる、の順に書きます。原告の陳述を基礎に請求を棄却する場合には、不意打ちにならないよう釈明義務の問題にも触れます。

試験ではこう問われる

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