対世効と形成力とは
たいせいこうとけいせいりょく
対世効とは、確定判決の効力が当事者だけでなく第三者一般にも及ぶことで、人事訴訟の確定判決(人事訴訟法24条1項)や会社の組織に関する訴えの認容判決(会社法838条)に認められます。形成力とは、形成判決の確定によって法律関係そのものが変動する効力で、その変動は誰もが認めなければなりません。
ある人が夫婦かどうか、親子かどうかが、相手によって違う答えになったら社会は混乱します。会社の設立が無効かどうかも、株主ごとに結論が分かれては困ります。こうした身分関係や団体の法律関係は、誰との関係でも同じに決まっていなければなりません。そこで、人事訴訟や会社の組織に関する訴えの判決は、当事者以外の第三者にも効力が及ぶとされています。形成判決が法律関係を変える力も、その変動が誰にとっても同じであることを前提にしています。
人事訴訟の確定判決は、請求を認容したか棄却したかを問わず、第三者に対しても効力を持ちます
人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法115条1項の規定にかかわらず、第三者に対してもその効力を有します(人事訴訟法24条1項)。身分関係は誰との関係でも画一的に確定されなければならないからです。この規定は認容判決に限っていないので、請求を棄却する判決にも対世効があります。離婚の訴えで請求を棄却する判決が確定すれば、その効力は第三者にも及ぶので、「この判決の効力は,第三者にも及ぶ」という肢は正しいです。認知をした父が子を被告として認知無効の訴えを起こし、請求棄却の判決が確定した場合も、認知が有効であることがその父の推定相続人にも及びます。「この判決の効力は、Xの推定相続人であるZにも及ぶ」という肢は正しいです。対世効は判決に関与しなかった第三者を拘束するので、人事訴訟では職権探知主義がとられ、利害関係人への訴訟係属の通知などで第三者の手続保障が図られています(「人事訴訟の特則」で扱います)。なお、認知の無効の訴えは、現行の民法786条1項で、子・認知をした者・子の母が、それぞれ定められた時から7年以内に限って提起できます。
会社の組織に関する訴えの認容判決は第三者にも効力を持ち、訴訟に参加しなかった株主もその結果を争えません
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有します(会社法838条)。会社の設立や新株発行、株主総会決議の効力が株主ごとに違っては、会社をめぐる法律関係が成り立たないからです。株主Xが会社の設立無効の訴えで勝訴した判決が確定すれば、訴訟に参加していなかった他の株主Zにも効力が及びます。「XY間の訴訟に参加していなかった他の株主Zには確定判決の効力は及ばない」という肢は誤りです。人事訴訟と違い、会社法838条が対世効を認めるのは請求を認容する判決だけで、棄却判決は当事者間でしか効力を持ちません。また、無効や取消しの判決が確定すると、無効とされ又は取り消された行為は将来に向かって効力を失います(会社法839条)。
法人を被告として理事者の地位の確認を求める訴えの認容判決は、条文がなくても事柄の性質上対世的効力を持ちます
判例は、法人の理事者が法人を相手方としてその地位の確認を求め、請求を認容する判決が確定した場合には、その者が法人との間で執行機関としての組織法上の地位にあることが確定されるので、事柄の性質上何人もこれを認めるべきであり、その判決は対世的効力を有するとしました(最判昭和44年7月10日)。同じ判例は、法人を当事者としないで理事者の地位の確認を求める訴えは、勝っても効力が法人に及ばず紛争を根本的に解決できないので、確認の利益を欠くとしています。宗教法人Yを被告として代表役員の地位の確認を求めた請求の認容判決について、「この判決は,対世的効力を有しない」という肢は誤りです。
形成判決の形成力は確定によって法律関係を変動させ、その変動は第三者を含む誰もが認めなければなりません
形成判決は、確定によって法律関係を変動させる形成力を持ちます。離婚判決が確定すれば婚姻は解消し、会社の設立無効の判決が確定すれば設立は将来に向かって効力を失います。法律関係そのものが変わる以上、その変動は当事者だけでなく第三者も認めなければなりません。もっとも、形成力が誰にでも及ぶことと、既判力が第三者に及ぶこと(形成要件があったという判断を第三者が争えないこと)は区別され、後者は人事訴訟法24条1項や会社法838条のような規定で定められています。形成判決の種類と形成の訴えの利益は「訴えの3類型」「形成の訴えの利益」で、判決効の全体像は「判決の効力の全体像」で扱います。
- 人事訴訟の確定判決認容でも棄却でも第三者に効力が及びます(人事訴訟法24条1項)
- 会社の組織に関する訴え認容判決だけが第三者に効力を持ちます(会社法838条)
- 法人を被告とする理事者の地位確認認容判決は事柄の性質上対世的効力を持ちます(最判昭和44年7月10日)
- 形成力形成判決の確定で法律関係が変動し、誰もがその変動を認めなければなりません
会社法838条
会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
論文ではこう使う
論文では、判決効は当事者間に限られるのが原則(115条1項)で、対世効は法律関係の画一的確定の必要から特に認められた例外であることを示します。対世効がある訴訟では、判決に拘束される第三者の手続保障(職権探知、訴訟係属の通知、共同訴訟参加・共同訴訟的補助参加の機会、再審)をどう確保するかが問題になるので、当事者適格や参加の論点と結びつけて書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。