弁論の制限・分離・併合(152条)とは
べんろんのせいげんぶんりへいごう
弁論の制限とは、弁論が多岐にわたるときに特定の事項だけについて弁論をさせる措置のことで、弁論の分離とは併合されている請求を別々の手続に分けること、弁論の併合とは別々に係属している訴訟を一つの手続にまとめることです。いずれも裁判所が訴訟指揮として命じ、又は取り消すことができます(152条1項)。
一つの訴訟でいくつもの請求や論点がからむと、審理が散らばって時間がかかります。逆に、別々に起こされた訴訟が同じ事故や同じ取引をめぐるものなら、まとめて審理したほうが証拠調べも一度で済み、判断の食い違いも防げます。そこで裁判所は、論点を絞って弁論をさせ(制限)、請求を切り離し(分離)、別々の訴訟をまとめる(併合)ことができます。これは手続をどう進めるかという裁判所の訴訟指揮の一つで、原則として裁判所の裁量に任されています。
弁論の制限・分離・併合は裁判所の訴訟指揮であり、当事者には申立権も不服申立ての途もありません
152条1項は、裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができると定めます。弁論の制限とは、弁論が多岐にわたるときに、ある事項(数個の独立した攻撃防御方法の一つ、中間の争い、請求の原因など)だけについて弁論をさせる措置です。「裁判所は,数個の独立した攻撃又は防御の方法が提出されている場合において,特定の攻撃又は防御の方法に審理を集中したいときは,弁論の制限をすることができる」という肢は正しいです。これらは裁判所の裁量による訴訟指揮の裁判(決定)なので、当事者に申立権はなく、当事者の意見を聴く必要もなく、独立して不服を申し立てることもできません。「裁判所が口頭弁論の併合決定をした場合,その決定に不服がある当事者は,即時抗告をすることができる」という肢は誤りです。当事者が併合を求めても、それは裁判所の職権発動を促すものにとどまり、訴訟手続は停止しません。
弁論の分離は請求ごとにするもので、一つの請求の攻撃防御方法を切り分けたいときは弁論の制限によります
弁論の分離は、併合されている複数の請求を別々の手続に分けて審理・判決できるようにする措置です。一つの請求について数個の攻撃防御方法が出ていても、それらは同じ請求の判断のための材料なので、別の手続に分けることはできません。特定の攻撃防御方法に審理を集中したければ、弁論の制限を使います。「裁判所は,一つの請求について数個の独立した攻撃防御方法が提出されている場合には,それぞれの攻撃防御方法ごとに口頭弁論の分離を命ずることができる」という肢は誤りです。
通常共同訴訟は分離して判決できますが、同時審判の申出がある共同訴訟や予備的併合・選択的併合では分離できません
判例(最判昭和27年12月25日)は、主たる債務者と連帯保証人を共同被告とする訴訟は、合一にのみ確定すべきものではないので必要的共同訴訟に当たらず、一人について弁論を分離して判決しても違法ではないとしました。「主債務者と連帯保証人を共同被告として訴えが提起された場合に,裁判所は,不出頭の連帯保証人につき口頭弁論を分離して判決をすることができない」という肢は誤りです。これに対し、共同被告に対する権利が法律上併存し得ない関係にある場合に原告が申し出たときは、弁論及び裁判は分離しないでしなければなりません(41条1項。同時審判申出共同訴訟)。「原告の申出があったときは,裁判所は,弁論及び裁判は分離しないでしなければならない」という肢は正しいです。予備的併合や選択的併合は、複数の請求の統一的な審判を前提にしているので、弁論の分離は許されません。「請求の予備的併合及び選択的併合においては,弁論を分離することは許されない」という肢は正しいです。必要的共同訴訟も合一確定のため分離できません。
会社の組織に関する訴えや、移送を受けた人事訴訟と損害賠償請求のように、法律が併合を義務づける場合があります
同一の請求を目的とする会社の組織に関する訴えに係る訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論及び裁判は併合してしなければなりません(会社法837条)。設立無効の訴えも会社の組織に関する訴えの一つ(会社法834条1号)です。「同一の株式会社につき,その設立の無効の訴えに係る訴訟が数個同時に係属するときは,その弁論及び裁判は,併合してしなければならない」という肢は正しいです。家庭裁判所に人事訴訟が係属している場合に、その請求の原因である事実によって生じた損害の賠償請求の訴訟が家庭裁判所に移送されたときは、移送を受けた家庭裁判所は口頭弁論の併合を命じなければなりません(人事訴訟法8条2項)。「移送を受けた家庭裁判所は,これらの訴訟に係る事件について口頭弁論の併合を命じなければならない」という肢は正しいです。同時審判申出共同訴訟で各共同被告の控訴事件が同じ控訴裁判所に別々に係属したときも、弁論及び裁判を併合しなければなりません(41条3項)。
当事者を異にする事件を併合すると併合前の証拠調べの結果はそのまま証拠資料となり、尋問の機会がなかった当事者が申し出れば証人を尋問し直します
判例(最判昭和41年4月12日)は、数個の事件の弁論が併合されたときは、併合前にそれぞれの事件でされた証拠調べの結果は、併合された事件のすべての関係で、当初の証拠調べと同じ性質のまま証拠資料になるとしました。併合後に証人を再尋問しても、併合前の証言は証拠資料であり続けます。「併合前に尋問をした証人について,併合後に再尋問をしたときであっても,併合前の当該証人の証言は,証拠資料となる」という肢は正しいです。もっとも、併合前の尋問に立ち会えなかった当事者の反対尋問の機会を守るため、152条2項は、当事者を異にする事件について併合を命じた場合に、その前に尋問をした証人について尋問の機会がなかった当事者が申出をしたときは、その尋問をしなければならないと定めます。申出がなければ尋問し直す必要はないので、「併合前に尋問をした証人について,尋問の機会がなかった当事者から尋問の申出がないときは,その尋問をする必要はない」という肢は正しいです。
- 弁論の制限・分離・併合(152条1項)裁判所の裁量。当事者の申立権・意見聴取・不服申立てはありません
- 分離できない同時審判申出共同訴訟(41条1項)、予備的併合・選択的併合、必要的共同訴訟
- 併合しなければならない会社の組織に関する訴え(会社法837条)、移送を受けた人事訴訟と関連損害賠償(人事訴訟法8条2項)、同時審判申出の控訴事件(41条3項)
- 当事者を異にする事件の併合併合前の証拠調べの結果は証拠資料。尋問の機会がなかった当事者の申出があれば証人を再尋問(152条2項)
民事訴訟法152条1項
裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
民事訴訟法152条2項
裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
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