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用語集 / 商法 / 商慣習

商慣習(商慣習と事実たる慣習)とは

しょうかんしゅう

商法 商行為

商慣習とは、商取引の社会で反復して行われ、法的確信にまで高まった慣習のことで、商事に関して商法に定めが無い事項については民法に優先して適用されます(商法1条2項)。事実たる慣習とは、法的確信にまで至らない慣習のことで、当事者がそれによる意思を持つときに任意規定に優先して契約の内容になります(民法92条)。

商売の世界には、法律に書いていなくても業界のみんなが当然のように従っている決まりがあります。商法は、商法に定めが無い事柄については、民法より先にこの商慣習に従うと決めています。取引は法律の改正より早く変わるので、取引社会に定着した決まりに法としての地位を与えたのです。法的な確信にまで高まった商慣習は法そのものなので、裁判所が自分で調べて適用し、当事者が証明しなければならないものではありません。

教室の板書の場面。先生(札「先生」)が黒板の前に立ち、黒板に上から下へ4段の階段の図「①商事特別法・商法」「②商慣習」「③民法」で、②の段だけ深紅の枠。横に「商法1条2項 商法に定めが無い事項 → 商慣習 → 民法 民法の強行規定にも優先し

商事に関しては、商法に定めが無い事項は商慣習に従い、商慣習が無いときに民法によります

商法1条2項は、商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは民法の定めるところによると定めます。適用の順位は、商事特別法と商法、次に商慣習、最後に民法です。法の適用に関する通則法3条は、慣習に法律と同一の効力を認めるのを法令の規定により認められたものか法令に規定の無い事項に関するものに限っていますが、商法1条2項はまさに法令の規定により商慣習を認め、さらに民法に優先させた特則です。「商事に関しては,商法に定めがない事項について商慣習があれば, それに従う」という肢は正しいです。民法に優先するという以上、民法の任意規定に対してだけでなく、民法の強行規定に対しても商慣習が優先して適用される場合があると解されています。「商慣習が民法上の強行規定に優先して適用されることはない」という肢は誤りです。

判例の趣旨に照らすと、商慣習が商法上の強行規定に優先して適用される場合もあります

1条2項の文言は商法に定めが無い事項について商慣習によるとするだけですが、判例は、商法に規定がある事項についても取引社会に定着した商慣習法の効力を認めてきました。記名株式の譲渡について旧商法が定めた方式によらず、白紙委任状付きの株券の交付による譲渡を商慣習法を根拠に有効と認めた判例(大判昭和19年2月29日)がその例で、制定法の強行規定を商慣習法が変更した例として理解されています。満期の記載の無い手形を一覧払とみなす手形法の規定があるのに、満期を白地のまま振り出す白地手形が商慣習法によって有効とされていることも同じ理解です。「判例の趣旨に照らせば,商慣習が商法上の強行規定に優先して適用される場合がある」という肢は正しいです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元に分厚い本(札「商慣習法 職権で調べて適用」)を開いている。原告席に男性(札「当事者」)が「証明は要りますか」と書いた紙を掲げる。法壇の前の板書「商慣習法(法的確信あり)=法 →

当事者が従う合意をした事実たる慣習は商法の任意規定に優先し、法的確信にまで高まった商慣習は当事者が証明責任を負うものではありません

慣習には、法的確信に支えられた商慣習法と、そこまで至らない事実たる慣習があります。事実たる慣習は法ではありませんが、民法92条により、当事者がその慣習による意思を持っていると認められるときは任意規定より優先して契約の内容になります。商法の任意規定も当事者の合意で排除できるので、当事者が商法の任意規定と異なる慣習に従う合意をしていれば、それが事実たる慣習にすぎなくても任意規定に優先します。「契約当事者が商法上の任意規定と異なる慣習に従う旨の合意をしている場合には,それが単なる「事実たる慣習」にすぎないときでも,その慣習が商法上の任意規定に優先する」という肢は正しいです。これに対し、法的確信にまで高まった商慣習は法規範なので、その存在と内容は裁判所が職権で調べて適用する事項であり、事実のように当事者が主張立証責任を負うものではありません。判例も、裁判所に知れた商慣習法は当事者の申立てや立証を待たずに職権で適用すべきであるとしています(大判明治38年3月13日)。「商慣習が法的確信にまで高まっている場合でも,その適用を求める当事者は,訴訟において,その存在及び内容について証明責任を負う」という肢は誤りです。

商慣習と事実たる慣習の整理

  • 適用順位(商法1条2項): 商事特別法・商法 → 商慣習 → 民法
  • 商慣習(法的確信あり): 民法に優先し、民法の強行規定にも優先し得る。判例は商法の強行規定を変更した例もある(白紙委任状付き株券の交付による株式譲渡: 大判昭19.2.29、白地手形)
  • 商慣習の存在・内容は職権調査事項。当事者は証明責任を負わない(大判明38.3.13)
  • 事実たる慣習(法的確信なし): 当事者がそれによる意思を持つときに任意規定に優先(民法92条)。商法の任意規定と異なる慣習に従う合意があれば優先する

商法1条2項

商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)の定めるところによる。

試験ではこう問われる

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