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恩赦(73条7号)とは

おんしゃ

憲法 内閣・裁判所

恩赦とは、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権をいい、内閣がこれを決定し、天皇が認証する制度です。裁判によって確定した刑罰の効果を、行政権の判断によって消滅させたり軽くしたりします。

裁判で刑が確定した人でも、その後の更生の様子や事情の変化によって、刑を軽くしたり、失った資格を戻したりするのが相当な場合があります。裁判所がやり直す再審とは別に、内閣の判断で刑罰の効果を動かす仕組みが恩赦です。明治憲法では天皇の権限でしたが、日本国憲法は73条7号で内閣の事務とし、天皇は7条6号で認証するだけにしました。国会が作った刑罰法規と裁判所の判断の効果を行政が動かす例外的な制度なので、その種類と手続は恩赦法という法律で枠づけられています。

官邸の閣議室の場面。先生が内閣総理大臣役(札「内閣(73条7号)」)で長い机の中央に座り、周りに国務大臣の男性たちが座っている。机の上に「恩赦 決定」と書かれた書面と、その横に開いた法律書に「恩赦法」の札。壁には「大赦」「特赦」「減刑」「刑

恩赦は内閣が決定し、天皇が認証します

明治憲法16条は恩赦を天皇の大権事項としていましたが、日本国憲法はこれを内閣の権能に改め、天皇の関与は内閣が決定した恩赦を認証するという形式的・儀礼的な国事行為にとどめました。「日本国憲法は,大日本帝国憲法が天皇大権としていた恩赦を内閣の権能とした」とし、「恩赦は立法権及び司法権の作用を行政権者の判断で変動させるものであるので,憲法が定める恩赦の各種類の内容と手続について法律で定めることが必要である」という肢は正しいです。恩赦は、国会が制定した刑罰法規の適用結果と裁判所が下した司法判断の効果を、行政権である内閣の判断で事後的に変動させる作用です。権力分立の観点からは例外的な制度で、恣意的・不平等な運用を許せば罪刑法定主義や法的安定性、裁判の権威を損なうので、その種類と内容、手続を法律で定めておく必要があり、これを受けて恩赦法が制定されています。決定は閣議によって行われ、内閣総理大臣の専権事項ではありません。恩赦法は恩赦の種類、要件、手続、効果を定めており、内閣はその枠の中で判断します。法律で枠をはめることが、行政権による司法作用への介入を統制する役割を果たします。

恩赦の認証と栄典の授与では、天皇が行う国事行為の中身が違います

天皇の国事行為には、天皇が自ら行う行為と、他の機関が行った行為を認証する行為があります。「天皇は栄典を授与するが,憲法は,恩赦の認証と異なり,栄典の授与自体が天皇の国事行為であるとしており,栄典の授与の認証を国事行為とはしていない」という肢は正しいです。栄典の授与は天皇が自ら行う国事行為(7条7号)であるのに対し、恩赦については内閣の決定を認証することが国事行為とされています(7条6号)。恩赦も栄典も伝統的には君主の特権とされてきましたが、恩赦は司法権に対する重大な干渉であり運用には政治的な批判が伴い得るので、国民主権のもとでは君主の恩恵として正当化することはできず、実質的な責任をすべて内閣に集中させるために内閣の権能とされました。7条の各号のうち、憲法改正・法律・政令・条約の公布、国会の召集、衆議院の解散、栄典の授与は天皇が自ら行う国事行為であり、国務大臣の任免や大使の信任状、全権委任状、恩赦は認証にとどまります。いずれにも内閣の助言と承認が必要であり、責任は内閣が負います。

皇居の宮殿の場面。先生が内閣総理大臣役(札「内閣」)で、「恩赦 決定書」と書かれた書面を天皇役の男性(札「天皇(国事行為)」)に差し出し、天皇役の男性はその書面に「認証」の印を押している。同じ机の別の場所に「勲章」の箱があり、その箱には「栄

恩赦の種類によって、効果が異なります

大赦は罪の種類を定めて一律に行われ、有罪の言渡しの効力を失わせるだけでなく、まだ有罪の言渡しを受けていない者については公訴権を消滅させます。特赦は特定の者について言渡しの効力を失わせます。減刑は刑を軽くし、または刑の執行を減軽します。刑の執行の免除は、有罪の言渡しの効力を残したまま執行だけを免れさせるものですから、前科としての効果は残ります。復権は、有罪の言渡しによって失われた資格を回復させるもので、刑の執行が終わった後に問題になります。大赦と特赦は言渡しの効力そのものに働き、減刑と執行の免除は刑の重さや執行に働き、復権は資格に働きます。政令で一律に行う一般恩赦と、特定の者について行う個別恩赦という分け方もあり、大赦と一般減刑、一般復権は政令によります。

  • 大赦政令で罪の種類を定めて行う。有罪の言渡しを受けた者については言渡しの効力が失われ、まだ言渡しを受けていない者については公訴権が消滅する
  • 特赦有罪の言渡しを受けた特定の者に対して行い、言渡しの効力を失わせる
  • 減刑刑を軽くし、または刑の執行を減軽する。政令による一般減刑と、特定の者に対する個別減刑がある
  • 刑の執行の免除刑の執行だけを免除する。有罪の言渡しの効力は残る
  • 復権有罪の言渡しによって資格を失いまたは停止された者について、その資格を回復させる
刑務所の門の前の場面。先生が中央更生保護審査会の委員役(札「中央更生保護審査会」)で書類を持って立ち、門から出てくる男性(札「受刑者」)に「刑の執行の免除」と書かれた紙を渡している。門の脇の掲示板に上から「大赦・特赦:有罪の言渡しの効力が消

大赦と特赦は、対象の定め方が違います

大赦は政令で罪の種類を定めて行うものですから、その罪を犯した者に一律に及びます。個々の者を特定する必要がなく、有罪の言渡しを受けていない者にも効果が及ぶ点が特徴です。これに対し特赦は、有罪の言渡しを受けた特定の者について、中央更生保護審査会の申出に基づいて行われます。大赦が公訴権を消滅させるのに対し、特赦は有罪の言渡しを受けた者が対象ですから、まだ裁判が確定していない者には及びません。この違いは、効果の広さの違いとして現れます。減刑と復権にも、政令による一般的なものと、特定の者に対する個別のものがあります。一般恩赦は政令で、個別恩赦は審査会の申出を経て、それぞれ内閣が決定するという流れです。誰を対象とするか、どの機関の関与を要するかという二つの観点で種類ごとに違いがあります。

司法権との緊張を、法律による枠づけで和らげています

恩赦は、裁判所が確定させた判断を行政権が覆す制度ですから、司法権の独立や三権分立との関係が問題になり得ます。もっとも、恩赦は判決が誤っていたと宣言するものではなく、判決の効力を将来に向けて変動させるにとどまります。再審が判決の当否を争う制度であるのに対し、恩赦は刑事政策的な配慮に基づく制度である、という違いがあります。更生の状況や事情の変化を踏まえて刑の効果を調整する役割、法改正によって処罰の必要がなくなった場合に対応する役割が挙げられます。濫用を防ぐため、種類と手続が恩赦法で定められ、個別恩赦については中央更生保護審査会の申出を経る仕組みがとられています。内閣の判断に委ねられているとはいえ、無制約ではありません。皇室の慶弔に際して大規模な恩赦が行われてきた経緯には、刑事政策的な理由が乏しいという批判もあります。被害者の立場からみれば、確定した刑が行政の判断で軽くなることへの納得が得られにくいという問題もあります。制度の存在意義を、個別の事情に応じた調整という点に求める見方が有力になっており、個別恩赦の比重が高まっています。

恩赦の決定は、73条が列挙する内閣の事務の一つです

73条は、法律の誠実な執行と国務の総理(1号)、外交関係の処理(2号)、条約の締結(3号)、官吏に関する事務の掌理(4号)、予算の作成と国会への提出(5号)、政令の制定(6号)、恩赦の決定(7号)を挙げます。いずれも閣議による決定を要する内閣の権能であり、内閣総理大臣が単独で行える国務大臣の任免とは性質が違います。権限の主体が内閣なのか内閣総理大臣なのか、天皇が自ら行うのか認証するだけなのかを、条文に沿って区別しておく必要があります。73条は「他の一般行政事務の外」と書いており、列挙は例示にすぎません。内閣が行政事務を行う一般的な権限は65条に基づきます。

憲法 第73条 第7号

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

論文ではこう使う

論文で正面から問われることはまずありませんが、三権分立や天皇の国事行為を論じる場面で例として使えます。恩赦に触れるときは、決定の主体が内閣であること、天皇の関与が認証にとどまることを正確に書きます。司法権との関係を論じる場合は、恩赦が判決の当否を否定するものではなく、刑事政策的な判断に基づいて効力を変動させる制度であることを示し、法律による枠づけと審査会の関与を挙げて濫用の歯止めを説明します。裁判所が確定させた判断に行政が手を加える制度である以上、歯止めの説明を省くと、三権分立との整合について説得力を欠きます。

試験ではこう問われる

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