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用語集 / 憲法 / 公共の福祉の意義

公共の福祉の意義とは

こうきょうのふくしのいぎ

憲法 人権総論

公共の福祉の意義とは、憲法が12条・13条と22条1項・29条2項に置いた「公共の福祉」の文言を、人権制約の根拠としてどう理解するかという問題です。通説の一元的内在制約説は、公共の福祉を人権相互の矛盾衝突を調整するための実質的公平の原理と解し、全ての人権に論理必然的に内在するものと位置付けます。

夜中に大音量で音楽を流す自由は、隣に住む人が静かに眠る利益とぶつかります。憲法は人権を保障しますが、12条は人権を常に公共の福祉のために利用する責任を負うと定め、13条も公共の福祉に反しない限りで尊重すると定めています。人権が他人の人権と衝突したときに調整として制約を受けるからです。ただし、公共の福祉をみんなの利益と読むと、法律さえ作れば何でも制約できてしまいます。そこで、この言葉の意味を三つの立場が争ってきました。

住宅街の道路の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立つ。左に拡声器を持った男性(札「演説する人」)が「表現の自由だ」と書いたプラカードを持ち、右に病院の建物と「静かに休みたい」と書いた紙を窓から出す患者の男性(札「入院患者」)。先生

一元的外在制約説は、公共の福祉が明治憲法の法律の留保のような機能を果たすおそれがあると批判されます

「13条の公共の福祉は、人権の外にあって、すべての人権を制約する一般的な原理であり、22条、29条が特に公共の福祉を掲げたのは特別な意味を有しない」という見解が一元的外在制約説です。この見解は、公共の福祉を公益や公共の安寧秩序のような抽象的な最高概念と捉えるため、法律による人権制限が容易に肯定されるおそれがあります。明治憲法は人権を法律の範囲内で保障するにとどめていましたが、公共の福祉という一語で正当化が済んでしまえば、日本国憲法の下でも同じことになりかねません。この見解を紹介したうえで「このような見解では、公共の福祉が極めて抽象的な概念であるだけに、人権制限が容易に肯定されるおそれが生じ、ひいては公共の福祉が明治憲法の法律の留保のような機能を実質的に果たすおそれがある」と続ける肢は正しいです。見解どうしの当否を問う形でも同じで、「公共の福祉を公益や公共の安寧秩序と言い換えたところで、極めて抽象的な概念であることは変わらないので、結果として、公共の福祉が明治憲法下の法律の留保のような機能を実質的に果たすおそれがある」という指摘は、一元的外在制約説の批判となっています。

国会議事堂の前の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立ち、左に国会議員の男性(札「国会議員」)が「公共の福祉のため人権を制限する法律」と書いた法案の紙を高く掲げている。右奥に古びた石碑があり「明治憲法 法律ノ範囲内ニ於テ」と刻まれて

内在外在二元的制約説は、13条の法規範性を否定して新しい人権を導けなくなると批判されます

「公共の福祉によって制約される人権は経済的自由権と社会権に限られ、その他の権利・自由には内在的制約が存在するにとどまり、13条は公共の福祉に反しない限り個人に権利・自由を尊重しなければならないという、言わば国家の心構えを表明したものである」という見解が内在外在二元的制約説です。政策的な制約の根拠を22条1項と29条2項に限り、12条・13条の公共の福祉は倫理的・訓示的な規定と解します。この見解に対しては、13条の法規範性を否定するとプライバシー権などの新しい人権を憲法上の人権として基礎付ける根拠を失わせる、という批判が向けられます。人権制約を限定しようとした結果、包括的基本権としての13条の働きまで失われてしまうからです。この見解を紹介したうえで「このように同条の法規範性を否定する見解は、プライバシー権などの新しい人権を憲法上の人権として基礎付ける根拠を失わせる」と続ける肢は正しいです。ただし、この批判が当たるかどうかは、その見解が12条・13条をどう扱うかで決まります。「22条・29条の公共の福祉は経済的・社会的な政策的人権制約の根拠となるが、12条・13条の公共の福祉はそのような制約の根拠とはならず、人権の内在的制約のみを意味する」という見解は、12条・13条に内在的制約を画する規定としての法的な意味を認めています。この見解に対して「12条・13条を倫理的・訓示的規定として解釈すると、新しい人権を基礎付ける包括的な人権条項として13条を活用することができなくなる」と述べても、前提が当てはまらないため批判にはなりません。この組合せを批判が成り立つものとして扱う肢は誤りです。

一元的内在制約説が通説で、公共の福祉は人権相互の矛盾衝突を調整する実質的公平の原理です

公共の福祉とは人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理であり、この意味での公共の福祉は憲法規定にかかわらず全ての人権に論理必然的に内在している、という見解が一元的内在制約説です。この立場では、自由権を各人に公平に保障するための必要最小限度の規制のみを認める自由国家的公共の福祉と、社会権を実質的に保障するために自由権の規制を認める社会国家的公共の福祉とを区別し、後者は22条1項と29条2項に公共の福祉の文言が置かれた経済的自由についてのみ働くと説明します。人権を制約できるのは他の人権だけだと考えるので、法律による安易な人権制限を封じる長所があります。もっとも、この見解にも批判があります。人権に対する制約を全て人権の内在的制約として説明すると、殺人の自由や強盗の自由をも一旦憲法の保障する人権に含めた上で、その制約の可否を議論することになり、人権に関する一般的な理解や説明と整合しません。「人権に対する制約を全て人権の内在的制約として説明する考え方は、論理的に殺人の自由や強盗の自由をも一旦憲法の保障する人権に含めた上で、その制約の可否を議論することになるので、人権に関する一般的な理解や説明と整合しない」という指摘は、一元的内在制約説の批判となっています。

  • 一元的外在制約説公共の福祉を人権の外にある一般的な制約原理と解し、22条・29条の文言に特別な意味を認めない
  • 内在外在二元的制約説12条・13条は訓示規定と解し、政策的制約は22条・29条の経済的自由と社会権に限る
  • 一元的内在制約説公共の福祉を人権相互の矛盾衝突を調整する実質的公平の原理と解し、全ての人権に内在すると考える
裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に被告人席の男性(札「被告人」)が「人を殴る自由も人権のはずだ」と書いた紙を掲げている。右に殴られて包帯を巻いた男性(札「被害者」)が立つ。先生の吹き出し「公共の福祉は人権相互の矛

22条1項の公共の福祉は、職業活動の社会的相互関連性が大きく規制の要請が強いことを強調しています

「22条1項が公共の福祉に反しない限りという留保を伴っているのは、職業活動は社会的相互関連性が大きく、精神的自由と比較して公権力による規制の要請が強いことを強調するためである」という肢は正しいです。最大判昭和50年4月30日(薬事法距離制限事件)は、職業が本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は精神的自由に比較して公権力による規制の要請が強く、22条1項が公共の福祉に反しない限りという留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと述べています。公共の福祉による制約は12条・13条で人権一般に認められているので、22条1項があえて重ねて定めたことに、この固有の意味があります。同じ判決は、規制措置が公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならないとしました。そして、その検討と考量は第一次的には立法府の権限と責務であるから、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り、その判断を尊重すべきであるとも述べています。この判示をそのまま述べる肢は正しいです。

県庁の薬務課の窓口の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で窓口の横に立つ。カウンターの外に薬局を開きたい男性(札「薬局開設の申請者」)が「薬局 開設許可申請」と書いた申請書を差し出し、カウンターの内側の職員の男性(札「県の職員」)が「既存の

文言の置かれた場所よりも、制約される権利の性質が決め手になります

一元的内在制約説を徹底すると、公共の福祉という文言がどこに置かれているかは決定的ではなくなります。12条・13条が人権一般について公共の福祉による調整に言及している以上、22条1項の文言はこれを確認したものにすぎず、その文言から直ちに広範な政策的制約が正当化されるわけではないと解することができるからです。「22条1項の公共の福祉との文言によって直ちに広範な政策的制約が許されるものではないと考えれば、海外渡航の自由について、憲法上の根拠を同項に求めるか他の条項に求めるかによって、許される制約の程度に決定的な差異は生じない」という肢は正しいです。制約が許される程度は、条文上の位置ではなく、制約される自由の性質に従って具体的に決まります。海外渡航の自由の根拠について、判例は22条2項の外国に移住する自由に含まれると解しています。最大判昭和33年9月10日(帆足計事件)は、この自由も絶対無制限ではなく公共の福祉のために合理的な制限に服するとした上で、著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者について外務大臣が旅券の発給を拒否できるとする旅券法の規定を、外国旅行の自由に対し公共の福祉のために合理的な制限を定めたものとみることができ、漠然たる基準を示す無効のものということはできないとして合憲としました。この判例を、旅券法の規定を公共の福祉のための合理的な制限として合憲と解したものと説明する肢は正しいです。

旅券センターの窓口の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立つ。左に旅行かばんを持った男性(札「海外渡航を希望する人」)が「旅券発給拒否通知」と書いた紙を手に困った顔で立ち、右のカウンターに「外務大臣」の札の机がある。先生の吹き出し「

表現の自由も、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を受けます

表現の自由も絶対無制限に保障されるものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限は是認されます。最判昭和59年12月18日(吉祥寺駅構内ビラ配布事件)は、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害するごときものは許されないとしました。「私鉄の駅構内において、同駅管理者の許諾を受けずにビラ配布や拡声器による演説を行い、駅構内からの退去要求を受けながらそれを無視して約20分間同駅構内に滞留した行為を不退去罪等により処罰することは許される」という肢は正しいです。駅構内は多数の乗降客が利用する場所ですが、鉄道会社の所有・管理に属する施設であり、その管理権を不当に害する表現活動まで保護されるわけではないからです。もっとも、公共の福祉という言葉だけで結論を出すのではなく、実際の審査は制約の目的と手段の審査に置き換えられます。制約が表現の内容に向けられているかどうかで審査の厳格さを変える二重の基準の考え方が、ここから展開されます。

日本国憲法 第12条 後段

国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

最大判昭和50年4月30日(薬事法距離制限事件)

職業は、前述のように、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であつて、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要請がつよく、憲法二二条一項が「公共の福祉に反しない限り」という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。

論文ではこう使う

論文で公共の福祉という言葉を結論の根拠に使うと、審査をしていないのと同じになります。書き方は、まず制約される権利の性質を述べ、精神的自由なら厳格に、経済的自由なら立法裁量を尊重して、という形で審査密度を決めます。そのうえで目的と手段を具体的に当てはめます。公共の福祉という語は、権利が絶対無制限ではないことを一行確認する場面でだけ使い、正当化の実質は審査基準の定立と当てはめで示します。未成年者に対する制約を論じるときは、本人の保護を理由とするパターナリスティックな制約という別の枠を立てます。自己加害の防止は他人の人権との調整ではありませんから、公共の福祉では説明できず、判断能力が未熟であることと、制約が成長に伴って解除される限時的なものであることを理由に、限定的に許容されると書きます。

試験ではこう問われる

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