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用語集 / 憲法 / 人身保護請求と残虐な刑罰の禁止

人身保護請求と残虐な刑罰の禁止とは

じんしんほごせいきゅうとざんぎゃくなけいばつのきんし

憲法 人身の自由・国務請求権

人身保護請求とは、法律上正当な手続によらずに身体の自由を拘束されている者が、人身保護法により裁判所に速やかな解放を求める救済です。残虐な刑罰の禁止とは、36条が公務員による拷問とともに絶対にこれを禁ずると定めた、例外を認めない保障です。

閉じ込められて外に出られない人に、数か月かかる普通の裁判を待つ余裕はありません。そこで、法律上正当な手続によらない拘束が明らかなときは、裁判所が拘束している者を呼び出してすぐに解放を命じる仕組みが人身保護法に置かれています。もう一つ、戦前に自白を引き出すための拷問が横行した反省から、憲法36条は公務員による拷問と残虐な刑罰を絶対に禁じました。どれほど重い事件でも公共の福祉を理由に許さない条文です。

裁判所の一室の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央の机に着いている。左に、格子のはまった小部屋に閉じ込められた男性(札「被拘束者」)と、その戸口に立って鍵を握る男性(札「拘束者」)。先生の前に立つ男性(札「請求者」)の吹き出し「法律上

人身保護請求は、違法が顕著な場合に限って認められます

人身保護請求は、身体の自由が不当に奪われたとき、裁判所が速やかに解放を命ずる仕組みです。憲法に明文はありませんが、31条以下の趣旨を受けて人身保護法が定められています。人身保護法は、法律上正当な手続によらずに身体の自由を拘束されている者について、裁判所への救済の請求を認めています。手続は迅速で、請求があれば裁判所は原則として審問期日を定め、拘束者に被拘束者を出頭させます。もっとも、人身保護規則4条は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分が権限なくされ、又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限ると定めています。あわせて同条は、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によっては相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ請求できないとも定めており、通常の不服申立ての手段があるときは、まずそちらによるのが原則です。刑事手続に乗っている拘束については、勾留に対する準抗告など刑事訴訟法上の手段が用意されており、人身保護請求はその補充として位置づけられます。実務では、刑事手続よりも、親権をめぐる子の引渡しの場面で用いられることが多くなっています。最大決昭和29年4月26日(人身保護請求)は、人身保護法を、現に不当に奪われている人身の自由を迅速かつ容易に回復させることを目的とする特別な救済方法と位置づけ、その請求は違法が顕著である場合に限られるとしました。そのうえで、刑務所長が平和条約と法律の定めに従い刑の執行として拘束している以上、権限なしにされたとも方式や手続に著しく違反することが顕著であるともいえないとして、救済を認めませんでした。この制度は自由を回復するための簡易迅速な手続であって、拘束の根拠となった処分そのものの当否を本格的に争う場ではありません。請求の相手方は、現に被拘束者を拘束している者であり、拘束の態様は必ずしも物理的な監禁に限られず、意思決定の自由を奪う程度の事実上の支配があれば足ります。判決は拘束者に被拘束者の釈放を命ずる形でされ、判決前でも仮釈放を命ずることができます。救済の速さを優先する制度設計になっている点が特徴です。拘束の違法が顕著であることを要求するのは、この簡易な手続が通常の争訟手続を飛び越えて用いられることを防ぐためです。

  • 人身保護法2条法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている者は、救済を請求できる
  • 人身保護規則4条拘束や処分が権限なくされ、又は法令の方式・手続に著しく違反していることが顕著である場合に限る
  • 36条前段公務員による拷問の絶対的禁止
  • 36条後段残虐な刑罰の絶対的禁止

36条の禁止は絶対であり、公共の福祉による制約に服しません

36条は、公務員による拷問及び残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずるという文言を用いており、他の人権規定のように公共の福祉による制約を予定していません。憲法の人権規定のなかでも例外を認めない絶対的な禁止として置かれており、どれほど重大な事件の捜査であっても、拷問が許される余地はなく、拷問によって得られた自白は38条2項によって証拠能力を否定されます。残虐な刑罰についても同様で、刑罰としての必要性や犯罪の重大性を理由に正当化することはできません。人権規定のなかで、絶対的な保障が条文上明示されている数少ない例であり、思想及び良心の自由の内心にとどまる部分と並んで押さえておくべき箇所です。なお、拷問の禁止は公務員による行為を対象としており、私人による暴行は刑法の問題として処理されます。条文が名宛人を公務員と明示している点も、確認しておいてください。

死刑そのものは、残虐な刑罰に当たりません

最大判昭和23年3月12日(死刑と残虐な刑罰)は、憲法13条が公共の福祉に反しない限り生命に対する国民の権利を尊重すると定め、31条が法律の定める手続によれば生命を奪う刑罰を科し得ることを前提としていることから、死刑そのものは36条の残虐な刑罰に当たらないとしました。もっとも、判決は、火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでのような残虐な執行方法を定める法律が制定されたとすれば、その刑罰は36条に違反するとも述べています。死刑という刑罰の存在と、その執行方法とを分けて考えるのが判例の立場です。現行の絞首という執行方法についても、最大判昭和30年4月6日は残虐な刑罰に当たらないとしています。あわせて判決は、死刑制度が将来において国民感情の変化により残虐な刑罰として廃止されることがあり得るとも述べており、36条の判断が時代の感覚と無関係ではないことを示唆しています。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、前に立つ被告人の男性(札「被告人」)の吹き出し「死刑は残虐な刑罰だから36条に違反する」。先生の吹き出し「13条は公共の福祉に反しない限り生命に対する権利を尊重すると定め、31条は法律

残虐な刑罰に当たるかは、刑罰の性質と程度から判断されます

残虐な刑罰とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰をいうと理解されています(最大判昭和23年6月30日)。不必要という限定が付いていることから、刑罰である以上ある程度の苦痛を伴うことは当然の前提とされ、苦痛の存在だけでは残虐とはいえません。刑の種類そのものが残虐であるかという問題のほか、犯罪に比して著しく重い刑を科すことが残虐といえるかも議論されます。判例は、刑の量が著しく不当であることは、原則として36条の問題ではなく量刑の問題として扱ってきました。無期懲役や長期の有期刑についても、それ自体が残虐な刑罰に当たるとはされていません。もっとも、罪刑の均衡を著しく欠く法定刑は、31条の実体の適正の問題として違憲となり得ます。条文の使い分けを意識しておいてください。刑罰の執行の場面に目を向けると、拘禁の方法や処遇が非人道的である場合に36条の問題となり得るかも議論されます。受刑者の処遇については、施設内の規律と秩序の維持という目的から一定の制約が認められてきましたが、制約が人としての尊厳を損なう程度に達すれば、36条や13条の問題として争われます。刑罰そのものの残虐性と、刑の執行における処遇の問題は、条文の適用場面としては別に整理しておくとよいでしょう。

18条の奴隷的拘束の禁止とは、保障の場面が異なります

18条は、何人も、いかなる奴隷的拘束も受けず、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられないと定めます。奴隷的拘束の禁止は、私人による拘束にも及ぶ点で、公務員の行為を対象とする36条と異なります。また、意に反する苦役の禁止には、犯罪による処罰という明文の例外が置かれており、36条のような絶対的な禁止ではありません。人身の自由に関する規定は、それぞれ名宛人と例外の有無が違うので、条文ごとに整理しておくと、規定を入れ替えた肢に惑わされません。奴隷的拘束とは、人格の尊厳を無視するような身体の自由の拘束状態をいい、意に反する苦役よりも強い拘束を指します。裁判員の職務が苦役に当たるかという論点も、18条後段の解釈問題として扱われます。最大判平成23年11月16日は、裁判員の職務は司法権の行使に対する国民の参加という参政権と同様の権限を国民に付与するものであり、辞退の制度や日当の支給といった負担の軽減措置も講じられているから、意に反する苦役に当たらないとしました。

先生(札「先生」)が中央に立ち、左右の二つの場面を指している。左は工場の場面で、雇い主の男性(札「私人」)が労働者の男性の足に鎖をつけており、その上に札「18条 奴隷的拘束の禁止:私人にも及ぶ」。右は取調室の場面で、机の向こうの公務員の男性

憲法 第36条

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

論文ではこう使う

論文では、身体の拘束が問題になったとき、まず拘束の根拠となる手続が法律に定められ、それに従っているかを確認します。手続に著しい違反が顕著であれば、人身保護法による救済の可能性に触れます。刑罰の内容が争われる場合には、36条が絶対的禁止であることを述べたうえで、残虐な刑罰の意義を、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰と定義し、刑の種類と執行方法を分けて当てはめます。刑の重さが問題であれば、36条ではなく31条の実体の適正や、罪刑の均衡の問題として構成します。

試験ではこう問われる

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読んだあとに、憲法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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