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根抵当権の設定と変更(398条の2〜398条の18・被担保債権の範囲・債務者・譲渡・相続)とは

ねていとうけんのせっていとへんこう

民法 担保物権

根抵当権とは、設定行為で定めるところにより、債務者との一定の種類の取引などから生ずる一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度において担保する抵当権のことです(398条の2)。元本の確定前は、個々の債権との付従性・随伴性がなく、被担保債権の範囲・債務者・確定期日を後順位抵当権者の承諾なしに変更でき、設定者の承諾を得て譲渡できます。

銀行と取引を続ける会社は、借りては返すことを何度も繰り返します。そのたびに抵当権を設定し直し、返すたびに消していたのでは手間がかかりすぎます。そこで、この会社との手形取引や銀行取引から生じる債権を、1億円という枠の中でまとめて担保する抵当権が認められています。これが根抵当権です。枠が決まっていれば後順位の人も損得を計算できるので、中身の債権が入れ替わっても構わない、という考え方で作られています。

銀行の融資窓口。窓口の上に大きな枠の札「極度額 1億円」が掲げられ、枠の中に小さな札「手形取引の債権」「銀行取引の債権」が出たり入ったりしている。先生が銀行員役(札「根抵当権者」)で枠を指し、男性(札「債務者の会社」)が書類を持って立ってい

根抵当権は、債務者との一定の種類の取引などに限定した範囲の不特定の債権を極度額まで担保するもので、確定期日を定めなくても有効です

398条の2第1項は、抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができると定めています。2項は、担保すべき債権の範囲を、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して定めなければならないとし、あらゆる債権を担保する包括根抵当を認めていません。範囲を限定するのは、設定者だけでなく、後順位担保権者や一般債権者が担保の中身を予測できるようにするためでもあります。被担保債権の範囲の限定は「もっぱら抵当権設定者の保護を目的としている」という肢は誤りです。3項により、特定の原因に基づいて継続して生ずる債権や手形上・小切手上の請求権も被担保債権にできるので、第三者が振り出し債務者が裏書した手形上の請求権を被担保債権にできないとする肢は誤りです。特定の継続的取引契約から生ずる債権に加えて、設定時に現に発生している特定の債権を含めることもでき、その肢は正しいです。元本の確定期日は定めても定めなくてもよい(398条の6第1項)ので、「元本確定期日を定めなかった場合でも、根抵当権の設定は有効である」という肢は正しく、無効とする肢は誤りです。

元本の確定前は、被担保債権の範囲・債務者・確定期日を後順位抵当権者の承諾なしに変更できますが、極度額の変更には利害関係人の承諾が要ります

398条の4は、元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができ、債務者の変更も同様とし、その変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しないと定めています。後順位抵当権者は極度額という枠を前提にしているので、枠の中身が変わっても害されないからです。被担保債権の範囲の変更や債務者の変更に後順位抵当権者の承諾が必要とする肢は誤りです。ただし、変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされる(398条の4第3項)ので、その肢は正しいです。確定期日の定めや変更にも後順位抵当権者の承諾は要りません(398条の6第2項)。確定期日は定め又は変更した日から5年以内でなければなりません(398条の6第3項)。後順位抵当権者がいるとき確定期日の変更にその承諾が必要とする肢は誤りです。これに対し、398条の5は、極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないと定めています。極度額は後順位の者の取り分を直接左右するからです。「極度額の減額をするには,利害関係を有する者の承諾を得ることを要しない」という肢は誤りです。

板書の図解。黒板に「元本の確定前の変更」と題した表があり、左の列「被担保債権の範囲」「債務者」「確定期日」に「後順位抵当権者の承諾 不要」、右の列「極度額」に「利害関係人の承諾 必要」と書かれている。先生が教師役(札「先生」)で右の列を指し

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者や代位弁済をした者は、その債権について根抵当権を行使できません

398条の7第1項は、元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができず、元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も同様とすると定めています。確定前の根抵当権は枠を支配する権利で、個々の債権に随伴しないからです。確定前に被担保債権を取得した者は根抵当権を行使できないという肢は正しく、債権の譲渡に伴って根抵当権も移転するという肢は誤りです。現に発生している被担保債権を全部弁済して求償権を得た第三者が、弁済による代位で根抵当権を行使できるとする肢も誤りです。元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、相続人と設定者の合意で定めた相続人が取得する債権も担保されますが、その合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、相続開始の時に元本が確定したものとみなされます(398条の8第1項・4項)。合意をしなかった場合に相続開始の時に確定するという肢は正しいです。

元本の確定前は、設定者の承諾を得て根抵当権を譲渡できますが、376条の譲渡・放棄・順位の譲渡・順位の放棄はできず、転根抵当だけはできます

398条の12第1項・398条の13は、元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡し又は一部譲渡をすることができると定めています。譲受人の債権を担保することになり、設定者の負担が変わるからです。設定者の承諾を得て譲渡できるという肢は正しく、承諾を得る必要はないという肢は誤りです。他方、398条の11第1項は、元本の確定前においては、根抵当権者は376条1項の規定による根抵当権の処分をすることができず、ただし根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げないと定めています。被担保債権が特定していない段階で順位の譲渡などを許すと配当の関係が定まらないからです。元本の確定前に他の債権者に順位を譲渡できるという肢は誤りです。転根抵当では、元本の確定前にした弁済に377条2項は適用されない(398条の11第2項)ので、転根抵当権の設定の通知を受けた債務者は、元本の確定前なら転根抵当権者の承諾なしに根抵当権者に弁済でき、その肢は正しいです。反対に、根抵当権者が先順位の普通抵当権者から順位の譲渡や放棄を受けることは禁じられていません(398条の15はこれを前提にしています)。元本の確定前でも先順位の抵当権者から順位の放棄を受けられるという肢は正しいです。

  • 被担保債権の範囲・債務者の変更(398条の4)確定前に限りできます。後順位抵当権者の承諾は要りませんが、確定前に登記しないと変更しなかったものとみなされます
  • 確定期日の定め・変更(398条の6)後順位抵当権者の承諾は要りません。定め又は変更した日から5年以内です
  • 極度額の変更(398条の5)利害関係を有する者の承諾が必要です
  • 確定前の債権譲渡・代位弁済(398条の7)譲受人・代位弁済者は根抵当権を行使できません
  • 確定前の全部譲渡・一部譲渡(398条の12・398条の13)根抵当権設定者の承諾が必要です
  • 確定前の376条1項の処分(398条の11)できません。転根抵当だけはできます
  • 数個の不動産の根抵当権(398条の16・398条の18)設定と同時に共同担保の登記をした共同根抵当を除き、各不動産の極度額まで優先権を行使できます

数個の不動産に根抵当権を設定しても、設定と同時に共同担保の登記をしない限り、各不動産の極度額まで優先権を行使できます

398条の18は、数個の不動産につき根抵当権を有する者は、398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができると定めています(累積根抵当)。398条の16は、392条・393条は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り適用するとしています(共同根抵当)。共同担保の登記を設定と同時にした場合を除き、各不動産の代価についてそれぞれの極度額まで優先権を行使できるという肢は正しいです。

民法398条の2

1 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。2 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。3 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。次条第二項において同じ。)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

民法398条の4

1 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。3 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

民法398条の7第1項

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。

民法398条の11

1 元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。2 第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。

民法398条の12第1項

元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。

試験ではこう問われる

「根抵当権の設定と変更」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型12件と関係する過去問の肢30本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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