登記の有効要件と推定力(流用・不法抹消・無効登記の追認・権利推定)とは
とうきのゆうこうようけんとすいていりょく
推定力とは、登記があればその登記どおりの権利関係があると事実上推定される登記の効力をいいます。登記は実体の権利関係に符合して初めて有効で、公信力はないので、登記を信じて無権利者から買っても権利は取得できず、他方で権利者の関与なく不法に抹消された登記は対抗力を失いません。
登記簿に名前が載っている人がその土地の持ち主だと考えるのは自然です。しかし、勝手に自分の名義に書き換えた人がいた場合、その登記を信じて買った人が持ち主になれるとすると、本当の持ち主は知らないうちに土地を失います。そこで日本の不動産登記には、登記を信じた人を守る公信力がありません。一方で、裁判では登記名義人が持ち主だろうと推定されます。登記は実際の権利関係と合っていて初めて有効で、持ち主の知らない間に勝手に消された登記は効力を失いません。
不動産の登記には公信力がないので、無権利者名義の登記を信じて買った者も、権利者が外観の作出に関与していなければ権利を取得できません
所有者に無断で自分名義の所有権登記をした者は無権利者で、その者から買い受けた者は、登記を善意無過失で信じても所有権を取得できません。登記に公信力がないからです。「Bと善意無過失のCとの間で甲土地の売買がされ,BからCへの所有権移転登記がされたときは,Cは,甲土地の所有権を取得する」という肢は誤りです。もっとも、真の権利者が不実の登記を作出したり、知りながら長期間放置して承認したりしたときは、94条2項の類推適用によって善意の第三者が保護されることがあります(最判昭和45年9月22日)。所有者が知らない間に無断で登記された場合は、所有者に帰責性がないので類推適用もされません。
登記があれば登記名義人に権利があると事実上推定されますが、直接の前主との間で権利移転そのものが争われている場合は推定されません
所有権の登記名義人は所有権を有するものと推定されますが、これは裁判官の心証による事実上の推定で、証明責任を転換するものではありません。判例は、登記簿上の直接の前所有名義人が現所有名義人に対して所有権の移転を争う場合には推定は働かず、現所有名義人が前所有名義人から所有権を取得したことを立証すべきであるとしています(最判昭和38年10月15日)。登記は権利の移転や設定の事実に基づいてされるものなので、その事実そのものが争われている当事者間では登記から事実を推定できないからです。所有者が占有者に明渡しを求め、占有者が地上権設定登記を受けたと主張しても、「適法に地上権の設定があったことは推定されず,請求棄却の判決を得ることができない」という肢は正しいです。
登記は実体の権利関係に符合して初めて有効で、滅失建物の登記の流用は無効ですが、無権代理による登記は本人の追認で有効になります
建物が滅失すればその登記は閉鎖されるべきもので、跡地に新築された建物は別の不動産です。判例は、旧建物の登記を新建物の保存登記に流用することは許されず、流用された登記を基礎とする仮登記や本登記も新建物の登記としては無効であるとしています(最判昭和40年5月4日)。「その本登記は無効である」という肢は正しいです。これに対し、無権代理人が本人名義の文書で抵当権設定登記をした場合でも、本人が抵当権設定行為を追認すれば、登記の記載は実体上の権利関係と符合するようになるので、本人は登記の無効を主張できません(最判昭和42年10月27日)。追認には別段の意思表示がない限り契約の時に遡る効力があります(116条)。「Bは,Cに対し,その抵当権設定の登記の無効を主張することはできない」という肢は正しいです。
登記が権利者の関与なく不法に抹消されても対抗力は失われませんが、権利者自身やその代理人の申請による抹消では対抗力を失います
登記は対抗要件で、いったん有効にされた登記が権利者の知らない間に不法に抹消されても、権利は消えず対抗力も失われません。判例は、抵当権設定登記が抵当権者の知らない間に不法に抹消された場合、抵当権者は対抗力を失わず、登記上利害関係のある第三者に回復登記への承諾を求めることができ、回復登記の有無にかかわらず第三者は対抗力を否認できないとしました(最判昭和36年6月16日)。「Bは,再度登記がされない限り,抵当権の設定を第三者に対抗することができない」という肢は誤りです。一方、判例は、抵当権者が抹消手続を委任した司法書士の錯誤で別の不動産の抵当権設定登記が抹消された事案で、権利者が自ら委任した代理人の申請による抹消は、登記官の過誤や無関係の者の勝手な申請による抹消とは違い、取引の安全のため第三者対抗力を失うとしています(最判昭和42年9月1日)。抵当権者自身が取り違えて抹消を申請した場合も同じで、「Bの抵当権が優先することを主張することができる」という肢は誤りです。
最判昭和38年10月15日
一般の場合には、登記簿上の不動産所有名義人は反証のない限りその不動産を所有するものと推定すべきであるけれども、登記簿上の不動産の直接の前所有名義人が現所有名義人に対し当該所有権の移転を争う場合においては右の推定をなすべき限りでなく
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