登記請求権と中間省略登記・真正な登記名義の回復とは
とうきせいきゅうけんとちゅうかんしょうりゃくとうきしんせいなとうきめいぎのかいふく
登記請求権とは、実体の権利関係と登記が一致しないときに、登記の当事者の一方が他方に登記手続への協力を求める権利です。所有権などの物権に基づくもの、売買などの契約に基づくもの、物権変動の過程を登記に反映させるために物権変動の事実から生じるものがあり、物権変動の過程を省いた中間省略登記の請求は登記名義人と中間者の同意がなければ認められません。
土地を買ったのに売主が登記に協力してくれなければ、買主は登記を移すよう求めることができます。逆に、買主が登記を引き取らないため売主に固定資産税がかかり続ける場合は、売主も買主に登記を引き取るよう求められます。登記は今の持ち主だけでなく、誰から誰へ移ったかという過程も示すものなので、A→B→Cと売られたときに、Bを飛ばしてAから直接Cに移すことは、Bの利益を害するおそれがあります。そこで判例は、登記請求権の根拠と、中間省略登記が許される範囲を整理しています。
所有権に基づく登記請求権は時効で消滅せず、契約に基づく登記請求権は他人物の売主にも行使できます
買主は、取得した所有権に基づく物権的登記請求権と、売買契約に基づく債権的登記請求権を持ちます。物権的登記請求権は所有権の作用なので、所有権と同じく時効で消滅しません(大判大正5年6月23日参照)。売買契約から10年や20年が経過しても「所有権に基づき所有権移転登記手続を請求することができない」という肢と、売主が「その登記請求権の消滅時効を援用することができる」という肢は誤りです。売主は買主に対抗要件を備えさせる義務を負い(560条)、他人の物の売主はその権利を取得して移転する義務を負う(561条)ので、登記名義が真の所有者のままでも、買主は売主に契約に基づいて移転登記を請求でき、「Bに対し,売買契約に基づき,その土地についてBからAへの所有権移転登記手続を請求することができる」という肢は正しく、「Aは,Bに対し,甲土地の所有権移転登記手続を請求することができない」という肢は誤りです。売買が解除されれば、売主は原状回復又は復帰した所有権に基づいて抹消登記を請求でき、「Bは,Aに対し,甲土地の所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる」という肢は正しいです。賃借人は、登記をする特約がない限り賃貸人に賃借権の設定登記を請求できず(大判大正10年7月11日)、「当然に賃借権の設定登記を請求することができる」という肢は誤りです。
物権変動の当事者は、所有権を失った後も前主に登記を請求でき、登記義務者も登記権利者に登記の引取りを請求できます
登記は現在の権利関係だけでなく物権変動の過程も示すものなので、物権変動の当事者になった者は、その事実から登記請求権を持ちます。A→B→Cと順次譲渡された場合、中間者Bは所有権を失っていても、Aに対してA→Bの移転登記を請求できます(最判昭和46年11月30日)。「Bは,甲土地の所有権を喪失していても,Aに対し,AからBへの所有権移転登記手続を請求することができる」という肢は正しく、「Bは,Aに対し,AからBへの所有権移転登記手続を請求することができない」という肢は誤りです。A→B、B→Cの各売買がいずれも無効なときも、Bは登記の是正に利害関係がある限りCに抹消を請求でき(最判昭和36年4月28日)、「Bは,Cに対し,BからCへの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる」という肢は正しく、Bは請求「することはできない」とする肢は誤りです。判例は、真実の権利関係に合致しない登記があるときは、登記の当事者の一方は他方に登記を真実に合致させることを求める登記請求権を持ち、他方はこれに協力する義務を負うとしています(最判昭和36年11月24日)。買主が登記に協力しないときは、売主は買主に移転登記手続を請求でき(登記引取請求権)、「Aは,Bに対し,その所有権移転登記手続を請求することができる」という肢は正しく、「Aは,Bに対し,AからBへの所有権移転登記手続を請求することができない」という肢は誤りです。
中間省略登記の請求は登記名義人と中間者の同意がなければ認められず、真正な登記名義の回復を原因として中間者を飛ばすこともできません
判例は、実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は当然には発生しないから、甲乙丙と順次所有権が移転したのに登記名義が甲にある場合に、丙が甲に直接自己への移転登記を請求することは許されないが、登記名義人と中間者の同意がある場合は別であるとしました(最判昭和40年9月21日)。中間者には代金を確保する利益があるからです。「中間者であるBが同意していれば,Aが同意していなくても,Cは,Aに対し,AからCへの直接の所有権移転登記手続を請求することができる」という肢は誤りです。判例は、同じ場面で真正な登記名義の回復を原因としてAから直接Cへの移転登記を請求することも、物権変動の過程を忠実に登記に反映させる不動産登記法の原則に照らして許されないとしています(最判平成22年12月16日)。「真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することはできない」という肢は正しく、「請求することができる」という肢は誤りです。これに対し、A→B、B→Cの各登記に対応する権利変動がない場合は、真の所有者Aは登記名義人Cに直接自己への移転登記を請求できます(最判昭和30年7月5日)。保護すべき中間者がいないからで、「Aは,Cに対し,直接自己への所有権移転登記手続を請求することはできない」という肢は誤りです。中間省略登記ができないときも、Cは、BがAに対する登記請求権を行使しなければ、Bに代位してAにA→Bの登記を請求できます(423条の7)。「Cは,Bに代位して,Aに対し,AからBへの所有権移転登記手続を請求することはできない」という肢は誤りで、「Cは,その登記請求権を代位行使することができる」という肢は正しいです。
既にされた中間省略登記は現在の権利関係に合致すれば有効で、中間者は抹消を求める正当な利益がある場合に限り抹消を請求できます
判例は、中間省略登記が中間者の同意なしにされたものでも、その登記が現在の実体的権利関係に合致する場合には、中間者は抹消を求める正当な利益を有するときに限り抹消を請求できるとしました(最判昭和44年5月2日)。代金を受け取っていない中間者には正当な利益があります。「現在の権利関係と登記の内容が一致する限り,Bはその所有権移転登記の抹消登記手続を請求することはできない」という肢は誤りで、BがCから「売買代金を受領していないときは,Bは,Cに対し,所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる」という肢は正しいです。二重譲渡で先に登記を備えた者は、その登記が中間省略登記であっても誰にでも対抗できる所有者になり(最判昭和35年4月21日)、他方の買主は中間省略登記の無効を主張できません。「Dは,Cに対し,所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができない」という肢は正しいです。
後順位抵当権者は、被担保債権の消滅で消えた先順位抵当権の登記の抹消を請求できます
先順位抵当権の被担保債権が弁済で消滅すれば、付従性で抵当権も消滅しますが、登記が残っていると、後順位抵当権者は順位の上昇を登記上主張できず、競売や配当で事実上の障害を受けます。判例は、後順位抵当権者は消滅した先順位抵当権の登記の抹消を請求できるとしています(大判大正8年10月8日)。「Cは,Bに対し,自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる」という肢と、「Cは,Bに対し,抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる」という肢は正しいです。第二順位の抵当権者は「その登記の抹消を請求することができない」という肢、「抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない」という肢、抵当権は当然に消滅するから「その登記の抹消を内容とする物権的請求権は生じない」という肢は誤りです。
民法560条
売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
民法423条の7
登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する。
最判昭和40年9月21日
実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は、当然には発生しないと解すべきであるから、甲乙丙と順次に所有権が移転したのに登記名義は依然として甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、甲に対し直接自己に移転登記すべき旨を請求することは許されない
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。