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債務不履行の要件(帰責事由・履行補助者・主張立証責任)とは

さいむふりこうのようけん

民法 債権の目的と効力

債務不履行とは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないこと又は債務の履行が不能であることで、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できますが、その不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではありません(415条1項)。

約束を守らなかった相手に損害賠償を求めるとき、相手が「自分のせいではない」と言えば責任を免れることがあります。ただし、民法は、約束をした以上は守るのが原則なので、自分のせいではないことは約束を破った側が証明しなければならないとしています。また、配達をアルバイトに任せた、部屋を又貸しした、という場合に、その人の失敗を「自分のせいではない」と言えるかも問題になります。改正で、責任の有無は契約の内容と取引の常識で判断することが明文になりました。

酒屋の店先の場面。店の前で配達用の自転車が倒れ、ビールのケースが道に転がっている。若い男性(札「アルバイト(履行補助者)」)が頭をかいている。先生が酒屋の店主役(札「売主(債務者)」)で、電話の受話器を持って客に謝っている。電話の向こうの吹

債務不履行の損害賠償では、不履行が債務者の責めに帰することができない事由によることを債務者が主張立証します

415条1項本文は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できると定め、ただし書で、その不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないとしています。ただし書の形で書かれているので、免責事由は債務者が主張立証します。「債務者は,損害賠償義務を免れるために,履行不能が自己の責めに帰することができない事由によるものであることを主張立証しなければならない」という肢は正しいです。また、債務の履行は可能であるのが通常なので、履行遅滞による損害賠償を請求する債権者は、履行期に履行が可能であったことを主張する必要はなく、履行不能であったことは債務者が主張立証します(その旨の肢は正しいです)。ただし、金銭債務の不履行の損害賠償では、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができないので(419条3項)、「貸金債権の履行遅滞に基づく損害賠償請求において,Yは,履行遅滞が自己の責めに帰すべき事由に基づかないことを主張立証したときは,その責任を免れる」という肢は誤りです。

債務者が履行のために使った人の行為による不履行も、それだけで債務者の責めに帰することができない事由にはならず、承諾を得た転借人の失火でも転貸人は責任を負います

債務者が自分の債務の履行のために第三者を使った場合、その第三者を履行補助者といいます。酒屋が配達をアルバイトに任せたところ、わき見運転の事故で配達が遅れたとき、遅れたのがアルバイトのせいだというだけでは、酒屋の責めに帰することができない事由にはなりません。現在は、履行補助者の行為が免責事由に当たるかも、契約の趣旨と取引上の社会通念に照らして判断します。判例は、賃貸人の承諾を得た転貸借で転借人の過失により建物が焼失した場合でも、転借人は賃借人(転貸人)の債務の履行補助者と同様の地位にあるとして、転貸人の賃貸人に対する責任を認めています(大判昭和4年6月19日)。賃貸人が転貸を承諾しても、目的物を保管して返還する賃借人の債務が軽くなるわけではないからです。「転貸借について賃貸人の承諾があれば,転貸人は,賃貸人に対する損害賠償義務を負わない」という肢は誤りです。

失火責任法は不法行為の責任を重大な過失がある場合に限る法律で、賃借人が失火で賃借物を返せなくなったときの債務不履行責任には適用されません

失火ノ責任ニ関スル法律は、失火の場合には民法709条を適用せず、失火者に重大な過失があるときに限って不法行為責任を負わせています。木造家屋が密集する中で、軽い過失の失火者に延焼した近隣の家まで賠償させるのは酷だからです。しかし、判例は、この法律は債務不履行による損害賠償には適用がないとしています(最判昭和30年3月25日)。賃借人は契約に基づいて賃借物を保管し返還する義務を負っているので、失火で建物を焼失させて返還できなくなれば、重大な過失がなくても債務不履行として責任を負います。「賃借人は,故意がなく,かつ,重大な過失がなければ,賃貸人に対し損害賠償責任を負わない」という肢と、「賃貸人は、賃借人に重大な過失がない限り、債務不履行による損害賠償の請求をすることができない」という肢は誤りです。不法行為と債務不履行の比較は、両者を並べた語でまとめています。

焼けたアパートの一室の前の場面。焦げた扉の前で、男性(札「賃借人」)が書面(「失火責任法 重大な過失がなければ責任なし」)を差し出している。先生が賃貸人役(札「賃貸人」)で、賃貸借契約書を手に首を横に振っている。先生の吹き出し「その法律は不

履行遅滞の要件事実は見解によって組み立てが変わり、不履行の事実を債権者が主張しなくてよいとする見解からは債務者の弁済は抗弁になり、同時履行の抗弁権の存在だけで遅滞の違法性が阻却されるとする見解からは債権者が自己の債務の提供を請求原因で主張します

履行期に債務者が履行しなかったことを債権者が主張立証する必要はないとする見解に立つと、債権者の請求原因は債権の発生原因と履行期の経過で足り、債務者が履行期に履行したという主張は、請求原因と両立しつつ請求権の発生を妨げる事実なので抗弁になります。この見解からは、その主張が「Xの主張に対する否認となる」とする肢は誤りとされます。売買代金のような双務契約上の債務では、請求原因を述べるだけで同時履行の抗弁権の存在が明らかになります。同時履行の抗弁権が存在すること自体が遅滞の違法性を阻却するとする見解(存在効果説)に立つと、債権者は、そのままでは遅滞が成立しないので、請求原因の段階で自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければなりません。この見解からの帰結として、原告が「請求原因事実として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない」とする肢は正しいとされます。同時履行の抗弁権の効果は、その語で詳しく扱います。

一切責任を負わないという免責条項があっても、債務者が故意に履行しなかった場合にまで免責は認められません

415条は任意規定なので、当事者は特約で損害賠償責任を軽くしたり免除したりできます。しかし、故意に債務を履行しなかった場合まで免責されるとすると、債務者は守るかどうかを自由に決められることになり、債務を負わせた意味がなくなります。判例は、ホテルの宿泊約款で賠償額を一定額に限る条項があった事案で、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合にはその条項は適用されないとしました(最判平成15年2月28日)。「債務者は,一切損害賠償責任を負わない旨の免責条項がある場合でも,債務者が故意に債務を履行しなかったときには,当該免責条項による免責が認められない」という肢は正しいです。

民法415条1項

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

論文ではこう使う

論文で債務不履行による損害賠償を論じるときは、①債務の発生原因(契約の成立)、②債務の本旨に従った履行がないこと又は履行不能、③損害の発生と額、④不履行と損害の因果関係を検討し、⑤免責事由(415条1項ただし書)は債務者側の反論として位置づけます。免責事由の判断では、契約の内容や取引上の社会通念から債務者がどこまでのリスクを引き受けていたかを示し、履行補助者や転借人の行為が介在するときも、それが債務者の引き受けた範囲内かどうかで判断します。損害の範囲は416条で別に論じます。

試験ではこう問われる

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