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用語集 / 民法 / 無効と無効行為の追認・転換

無効と無効行為の追認・転換(119条・他人の権利の処分の追認)とは

むこうとむこうこういのついにんてんかん

民法 無効・取消し、条件・期限・期間、時効

無効とは、法律行為が形式的には成立していても、初めから効力を生じないことです。無効な行為は追認によっても効力を生じませんが、当事者が無効であることを知って追認したときは新たな行為をしたものとみなされ(119条)、ある行為としては無効でも別の行為の要件を満たしていればその行為として効力を認めることがあり、これを無効行為の転換といいます。

契約に必要な意思が初めから欠けていたり、内容が法律に反していたりすると、その契約は初めから効力を生じません。これが無効です。あとで当事者が「それでよい」と認めても、欠けていたものが過去にさかのぼって埋まるわけではないので、無効な行為は追認しても有効にはなりません。ただ、無効と知ったうえで認めたのなら、その時に改めて同じ合意をしたと扱えば足ります。他人の物を勝手に売った場合や届出の意思を欠いた婚姻のように、遡らせても誰も困らない場面では、判例が追認に遡る効力を認めています。

楽器店の店先の場面。カウンターの上にギター(札「Aのギター」)が置かれている。左に男性(札「C(無権利者)」)が小さく立ち、カウンターの向こうに男性(札「買主D」)がギターを抱えている。先生が所有者役(札「所有者A」)で手紙(「追認します」

無効な行為は追認しても効力を生じず、無効と知ってした追認は新たな行為をしたものとみなされるだけです

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じません(119条本文)。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなされます(同条ただし書)。新たな行為とみなされるのは追認の時なので、効力が元の行為の時にさかのぼることはありません。公序良俗に反して無効な行為は、無効と知って追認しても、追認の時点でもやはり公序良俗に反するので有効にはならないと解されています。無効は原則として誰でも誰に対しても主張でき、取消しと違って期間の制限もありません。出題当時は錯誤の効果が無効だったので、「錯誤により無効な契約であっても,表意者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは,行為の時にさかのぼってその効力を生ずる」という肢は、119条ただし書により追認の時に新たな行為をしたとみなされるだけだから誤りとされました。現在は錯誤は取消しの原因で(95条1項)、取り消すことができる行為は取り消されるまで有効なので、その追認は以後取り消すことができなくなるという効果をもつにとどまり(122条)、行為の時にさかのぼって効力を生じさせるものではありません。どちらの法律で読んでも、この肢は誤りです。

縁組の意思を欠く縁組は無効ですが、二重譲渡で一方の買主が登記を得ても、他方の売買契約が無効になるわけではありません

無効になるのは、法律が無効と定める場合と、意思無能力(3条の2)や公序良俗違反(90条)のように法律行為の効力を生じさせる前提が欠ける場合です。身分行為では、人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないときは縁組は無効とされ(802条1号)、婚姻も同じです(742条1号)。「人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がなく養子縁組がされたときは,その縁組は無効である」という肢は正しいです。これに対し、同じ不動産を二重に売った場合は、二つの売買契約はどちらも有効に成立していて、どちらの買主が所有権を確定的に取得するかを登記の先後で決めるだけです(177条)。「AからCへの所有権移転登記がされたときは,AB間の売買契約は無効となる」という肢は誤りです。登記を得られなかった買主Bは、売主に対して履行不能を理由とする損害賠償を請求したり契約を解除したりすることができます。

表意者を守るための制度の効果は表意者の側からしか主張できず、錯誤の取消しも目的物の占有者が持ち出すことはできません

無効は誰からでも主張できるのが原則ですが、意思無能力による無効のように一方の当事者を守るための無効は、守られる側からしか主張できないと解されています。出題当時の錯誤は無効とされていましたが、判例は、錯誤は表意者を保護する制度だから、表意者に無効を主張する意思がないときは第三者が無効を主張することはできないとしていました。現在は錯誤の効果は取消しで(95条1項)、錯誤によって取り消すことができる行為を取り消せるのは瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限られます(120条2項)。したがって、Bが錯誤により買った土地の占有者Cは、取消権者に当たらず、売買の効力を否定して明渡しを拒むことはできません。「Bにおいて錯誤による意思表示の無効を主張する意思がないときは,Cは,当該土地の売買契約が無効であることを主張して,その明渡しを拒むことはできない」という肢は、出題当時も現在も正しいです。

他人の物を自分の物として処分した場合に所有者が追認すると、無権代理の追認の規定の類推により処分の時にさかのぼって効力を生じます

無権利者が他人の物を自分の物として売ったり担保に入れたりしても、所有者でない者の処分なので、所有権の移転や担保権の設定の効果は生じません。しかし所有者がその処分を追認したときは、判例は、無権代理行為の追認に関する116条の類推適用により、処分の時にさかのぼって効力を生ずるとしています(最判昭和37年8月10日)。この事案では、子が父に無断で父の不動産を自分の名義にしたうえで根抵当権を設定し、父が後にその設定を追認しました。追認によって所有者が処分の効果を自分に受け入れる点が無権代理の追認と同じだからです。「AがB所有の動産をBに断りなく自分の物としてCに売却した場合には,Bがこれを追認すると,その追認の時に新たにAC間の売買契約が締結されたものとみなされる」という肢は誤りです。売買契約はもともとAC間で有効に成立していて(561条)、追認は処分の時に遡って所有権を移転させるものだからです。もっとも、追認しても所有者が売買契約の当事者になるわけではありません。所有者Aのギターを盗んだCが自分の物としてDに売った事例で、「Aは,CD間の売買契約を追認すれば,Dに代金を請求することができる」という肢は誤りで、代金債権はあくまで売主Cのものです。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板の上段に横向きの時間軸が引かれ、左の点「届出」と右の点「追認」がある。上段の左側に「無効な婚姻・代諾縁組の追認」と書かれ、追認の点から届出の点へ戻る矢印に「届出の当初にさかのぼって

届出の意思を欠く婚姻や、代諾の権限がない者の代諾による縁組も、追認すれば届出の当初にさかのぼって有効となります

無効な行為の追認は遡らないのが原則ですが、身分行為では判例が遡る効力を認めています。事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成して提出した場合でも、当時両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に他方が届出の事実を知ってこれを追認したときは、その婚姻は追認により届出の当初にさかのぼって有効となります(最判昭和47年7月25日)。追認によって届出の意思の欠缺が補われ、遡らせることが当事者の意思と生活の実態に合い、第三者も生活関係と戸籍の記載から婚姻を有効と考えて行動するのが通常で害されるおそれが乏しいからです。「AがBに無断で婚姻届を作成して提出した場合,その当時両名に夫婦としての実質的生活関係が存在し,かつ,後にBが届出の事実を知ってこれを追認したときは,その婚姻は,追認により届出の当初にさかのぼって有効となる」という肢と、「Bが後に届出の事実を知ってこれを追認したときは,届出の当初に遡ってその婚姻が有効となる」という肢は正しく、「その婚姻は追認時から将来に向かって効力を生ずる」という肢は誤りです。法定代理人でない者の代諾による縁組についても、判例は一種の無権代理とみて、養子は満15歳に達した後はこれを有効に追認することができるとしています(最判昭和27年10月3日。15歳以上の者は自分で縁組の承諾ができるからです)。「養子本人は,縁組の承諾をすることができる満15歳に達すれば,追認することができる」という肢は正しいです。同じ考え方で、親権者が利益相反行為に当たる代理行為をしたときは無権代理行為となるので、子は成年に達した後にこれを追認することができます(大判昭和11年8月7日)。「親権者の代理行為が利益相反行為に当たる場合,本人は,成年に達すれば,追認することができる」という肢も正しいです。利益相反行為そのものの要件は親権の語で扱います。

ある行為としては無効でも別の行為の要件を満たしていれば、その別の行為として効力を認めることがあり、これを無効行為の転換といいます

秘密証書遺言としては方式を欠いて無効でも、自筆証書遺言の方式を備えていれば、自筆証書遺言として有効とされます(971条)。父が嫡出でない子を嫡出子として出生届をした場合や、嫡出でない子として出生届をした場合も、出生届としては事実に反しますが、戸籍事務管掌者に受理されれば認知届としての効力を有するとされています(最判昭和53年2月24日)。父が自分の子であると承認して申告する意思は出生届にも含まれているからです。これに対し、他人の子を自分たち夫婦の嫡出子として届け出た場合は、縁組は家庭裁判所の許可や届出の方式が要る要式行為で、届け出る事項も方式も異なるので、嫡出子出生届を養子縁組届とみなすことは許されません(最判昭和50年4月8日)。転換が認められるかどうかは、元の行為に別の行為の意思と方式が含まれているかで決まります。

  • 119条本文無効な行為は追認しても効力を生じません
  • 119条ただし書無効と知って追認したときは、追認の時に新たな行為をしたものとみなされます(遡りません)
  • 他人の権利の処分の追認116条の類推で処分の時に遡って効力を生じます。所有者は契約の当事者にはなりません(最判昭和37年8月10日)
  • 無効な婚姻の追認実質的生活関係があり届出を知って追認すれば、届出の当初に遡って有効です(最判昭和47年7月25日)
  • 代諾権のない者の代諾による縁組養子が15歳に達した後に追認すれば有効です(最判昭和27年10月3日)
  • 利益相反行為無権代理行為として、子が成年に達した後に追認できます(大判昭和11年8月7日)

民法119条

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

民法116条

追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

最判昭和37年8月10日

或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡って効力を生ずるものと解するのを相当とする

論文ではこう使う

論文では、無権利者が他人の物を処分した事例で所有者が追認したときの効果が問われます。119条本文は無効な行為の追認を認めていないので、まず無権利者の処分は所有者に対して効力を生じないことを確認します。そのうえで、所有者が処分の効果を自分に受け入れる点で無権代理の追認と利益状況が同じであることを理由に、116条を類推して処分の時に遡って効力を生ずるとする判例の立場を示します。116条ただし書の類推で追認前に権利を取得した第三者は害されないこと、所有者は契約当事者にならず代金債権は無権利者に帰属するので、所有者は無権利者に対して不当利得の返還を求めることになることまで書くと、無権代理の追認との違いがはっきりします。

試験ではこう問われる

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