条件の成就の妨害と不正な成就(130条)とは
じょうけんのじょうじゅのぼうがいとふせいなじょうじゅ
条件の成就の妨害とは、条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意に条件の成就を妨げることで、相手方はその条件が成就したものとみなすことができます(130条1項)。条件の成就によって利益を受ける当事者が不正に条件を成就させたときは、相手方はその条件が成就しなかったものとみなすことができます(同条2項)。
「あなたの仲介で売買がまとまったら報酬を払う」と約束した依頼者が、話がまとまりかけたところで仲介業者を外し、買主と直接契約したとします。条件が成就していないからといって報酬を払わなくてよいとすると、ずるをした者が得をします。そこで民法は、条件の成就で不利益を受ける者がわざと成就を妨げたときは、相手方が条件は成就したものとみなせるとしました。反対に、条件の成就で得をする者が不正な手段で成就させたときは、相手方は成就しなかったものとみなせます。
条件の成就によって不利益を受ける当事者が故意に成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができます
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができます(130条1項)。条件の成否を自分に都合よく操作することを許さないという信義則の考え方を具体化した規定です。要件は、妨げた者が条件の成就で不利益を受ける当事者であることと、故意に妨げたことで、過失で妨げただけでは足りません。当事者にも自分の利益のために行動する自由があるので、妨害が信義則に反するものであることが必要と解されています。効果は当然に生じるのではなく、相手方が成就したものとみなすかどうかを選べます。「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは,相手方は,その条件が成就したものとみなすことができる」という肢は正しいです。停止条件付きの動産の贈与で贈与者が信義則に反し故意に条件の成就を妨げたときは、受贈者は条件が成就したものとみなして贈与の効力を主張できるので、「受贈者は、動産の引渡しを請求することができる」という肢も正しいです。
仲介業者の活動でまもなく契約がまとまると知りながら、仲介業者を排除して直接契約した依頼者は、条件の成就を故意に妨げたことになります
仲介による売買契約の成立を停止条件として報酬を支払う約束をした依頼者について、判例は、依頼者と買主が、仲介業者の仲介によってまもなく契約の成立に至ることを熟知しながら、その仲介による契約の成立を避けるために仲介業者を排除して直接契約を成立させた場合には、条件の成就を故意に妨げたものであるから、仲介業者は条件が成就したものとみなして報酬を請求することができるとしています(最判昭和45年10月22日)。この事案では、直接の売買は仲介活動と時期が接し、価格も仲介で詰めていた額とわずかな差しかありませんでした。「Bは,Aに対し,仲介報酬を請求することができない」という肢は誤りです。仲介業者が見つけた相手と直接契約したという事実だけで当然に報酬を請求できるわけではなく、仲介の成果を横取りする意図で排除したといえる事情が要ります。
条件の成就によって利益を受ける当事者が不正に条件を成就させたときは、相手方は条件が成就しなかったものとみなすことができます
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができます(130条2項)。改正前はこの場面の規定がなく、判例が130条を類推適用していたのを明文にしたものです。判例の事案では、ある商品を製造販売しないこと、違反したら違約金を支払うことを和解で約束した者に対し、相手方が一般客を装って強く注文し、やむなく製造販売させたうえで違約金を請求しました。判例は、条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたものとして、130条の類推適用により条件が成就していないものとみなすことができるとしました(最判平成6年5月31日)。「条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる」という肢、「条件が成就することによって利益を受ける当事者が,不正な手段を用いて条件を成就させたとしても,条件は成就しなかったものとみなされる」という肢は正しいです。「判例によれば,条件の成就によって利益を受ける者が故意に条件を成就させた場合には,相手方は,条件が成就していないものとみなすことができる」という肢も、判例の言い回しとして正しいとされています。もっとも、現在の130条2項は「故意に」ではなく「不正に」と定めています。合格したら車をもらえる約束で懸命に勉強して合格するのも故意の成就ですが、それは正当なので、成就しなかったとはみなせないからです。
1項は故意の妨害で成就を擬制し、2項は不正な成就で不成就を擬制するので、要件の言葉が違います
130条の1項と2項は向きが逆の規定です。1項は不利益を受ける当事者による妨害を問題にし、要件は「故意に」妨げたことで、効果は相手方が成就したものとみなせることです。2項は利益を受ける当事者による成就を問題にし、要件は「不正に」成就させたことで、効果は相手方が成就しなかったものとみなせることです。2項が「故意に」としなかったのは、条件を実現しようと努力すること自体は正当な場合が多いからです。いずれも相手方が擬制を主張できるという形で、条件が自動的に成就・不成就となるのではありません。130条の考え方は、条件そのものではない法律上の要件に類推されることもあり、論文では類推の可否が問われます。
- 130条1項(成就の妨害)不利益を受ける当事者が故意に成就を妨げた → 相手方は成就したものとみなせます
- 130条2項(不正な成就)利益を受ける当事者が不正に成就させた → 相手方は成就しなかったものとみなせます
- 効果の出方どちらも相手方が擬制を主張できるだけで、当然に擬制されるのではありません
民法130条1項
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
民法130条2項
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
論文ではこう使う
論文では、契約の定めを停止条件と性質決定したうえで、当事者の行為が条件の成就を故意に妨げたものといえるかを130条1項に当てはめます。仲介業者の排除の事例では、仲介活動と直接取引の時期の近さ、価格の近さ、依頼者が仲介によってまもなく契約が成立することを知っていたかを拾い、信義則に反する妨害といえるかを論じます。条件ではない法律上の要件や、成就の時期が問題になる場面では、130条の趣旨(信義則による条件操作の禁止)から類推適用の可否を論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。