物の意義と不動産(85条・86条・一筆の土地の一部・建物の独立性)とは
もののいぎとふどうさん
不動産とは、土地及びその定着物のことで(86条1項)、不動産以外の物はすべて動産です(同条2項)。民法上の物は有体物をいいます(85条)。
売買や担保の対象になる「物」がどこからどこまでかは、取引の出発点です。民法は、物を手で触れられる有体物とし、土地とその上に定着した物を不動産、それ以外をすべて動産としています。日本では建物は土地とは別の不動産として扱われ、別々に登記され、別々に売買されます。そこで、建築途中の建物がいつ独立の不動産になるか、増築した部分は誰のものかが問題になります。
物は有体物をいい、土地とその定着物は不動産、それ以外の物はすべて動産です
85条は、この法律において物とは有体物をいうと定めています。86条1項は土地及びその定着物を不動産とし、同条2項は不動産以外の物をすべて動産としています。定着物とは、建物や樹木のように土地に固定されて使われる物です。建物は土地の定着物ですが、土地とは別個の不動産として登記の対象になります。立木も、明認方法などを備えれば土地とは別に取引できます(明認方法の語で扱います)。無記名債権を動産とみなしていた旧86条3項は平成29年改正で削除され、現在は無記名証券として記名式所持人払証券の規定が準用されます(520条の20)。
建築中の建物は、屋根と周壁を備えて土地に定着した一個の建造物になれば、床や天井がなくても独立の不動産になります
建築中の建物がいつ動産の集まりから一個の不動産に変わるかが問題になります。判例は、屋根瓦を葺き荒壁を塗った段階の建前が担保として譲渡された事案で、登記ができる状態に至れば動産の領域を脱して不動産になり、そのためには工事中でも屋根及び周壁を有し土地に定着した一個の建造物として存在すれば足り、床や天井を欠いても差し支えないとしました(大判昭和10年10月1日)。「建物は,屋根瓦を葺き荒壁を塗り床及び天井を張る等して初めて独立した不動産となる」という肢は誤りです。まだ独立の建物といえない建前の段階では、建前の所有権は材料の提供者などをめぐって付合と加工の問題になります(不動産の付合の語で扱います)。
建物の増築部分は、構造上・取引上の独立性がなければ既存建物に付合し、既存建物の従物にはなりません
従物は、独立した物でありながら主物の経済的効用を継続して助けるものです(87条)。建物の増築部分が既存建物の構造の一部となり、それだけでは取引上の独立性を持たないときは、独立した物ではないので従物ではなく、既存建物に付合します(242条)。判例は、賃借人が屋上に増築した部屋で、出入りが既存建物内の梯子段によるほかない部分について、構造の一部を成し取引上の独立性がないので、賃貸人の承諾を得ていても242条ただし書の適用はなく、既存建物の所有者に帰属するとしました(最判昭和44年7月25日)。「建物の増築部分は,既存建物の従物である」という肢は誤りです。
一筆の土地の一部にも所有権が成立しえ、権利も物権の目的になることがあります
一筆とは登記簿上の土地の単位にすぎません。判例は、所有者は一筆の土地に線を引き標識を設けるなどして区分し、その一部を譲渡の目的とすることができ、当事者間では分筆前でも権利移転の効力が生じるとしました(大連判大正13年10月7日)。「物権は,一筆の土地の一部について成立することはない」という肢は誤りで、物権も債権も一筆の土地の一部について成立しうるという肢は正しいです。第三者に対抗するには分筆と登記が要ります。また物権の客体は有体物が原則ですが、民法は財産権を目的とする権利質(362条1項)や、地上権・永小作権を目的とする抵当権(369条2項)を認めているので、「物権は,権利を目的として成立することがある」という肢は正しいです。一物一権主義と金銭の所有権は、物権の意義と客体の語で扱います。
- 物(85条)有体物
- 不動産(86条1項)土地及びその定着物。建物は土地と別個の不動産
- 動産(86条2項)不動産以外の物すべて。旧86条3項(無記名債権)は削除
- 建築中の建物屋根と周壁を備え土地に定着すれば独立の不動産(大判昭和10年10月1日)
- 増築部分取引上の独立性がなければ既存建物に付合し、従物ではない(最判昭和44年7月25日)
- 一筆の土地の一部区分して譲渡でき、当事者間では分筆前に権利が移る(大連判大正13年10月7日)
民法85条
この法律において「物」とは、有体物をいう。
民法86条
土地及びその定着物は、不動産とする。2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
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