明認方法と立木(立木法の登記がない立木)とは
めいにんほうほうとりゅうぼく
明認方法とは、立木などについて、木の皮を削って所有者名を書く、立札を立てるなどの方法で、現在の所有者が誰かを第三者に示す慣習上の公示方法をいいます。立木は原則として土地の一部ですが、立木法の登記がない立木も、明認方法を施せば土地と別に所有権の移転や留保を第三者に対抗できます。
山林の木だけを売り買いすることは昔から行われてきました。木は本来土地の一部ですが、木材として価値があるので、土地と別に取引する必要があります。しかし木だけの売買は土地の登記には現れないので、民法は定めていないものの、木の皮を削って持ち主の名前を書いたり、立札を立てたりする方法で持ち主を示すことが慣習として認められてきました。これが明認方法で、登記の代わりに第三者への対抗要件として働きます。ただし、土地と一緒に買った場合は、土地の登記で足ります。
明認方法は現在の所有者を示せば足り、前所有者や取得原因まで表示する必要はありません
立木は原則として土地の定着物として土地の一部です(86条1項)が、意思表示により土地と分離して別個に所有権の目的とすることができ、その対抗要件として立木法による登記のほか、慣習上の明認方法が認められています。明認方法は法律に規定のない公示方法なので、「物権法定主義の要請により,法律に規定された登記や引渡し以外には,物権変動の対抗要件は認められない」という肢は誤りです。判例は、明認方法は誰が現にその立木の所有者であるかを明らかにすれば足り、前所有者の氏名や権利取得の原因まで明示する必要はないとしています(大判大正9年2月19日)。明認方法は登記のように権利変動の過程を示す制度ではないからです。「前所有者がAであることを明らかにしなければならない」という肢と、「現所有者名のほか,所有権の取得原因,前所有者名を表示することが必要である」という肢は誤りです。
明認方法は、第三者が利害関係を取得した時点で存続していなければ対抗力がありません
判例は、明認方法は登記に代わるものとして第三者が容易に所有権を認識できる手段で、しかも第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもって存在するものでなければならず、権利変動の際にいったん施されても、問題の生じた当時に消失して公示の働きをしなくなっていれば、その第三者に対抗できないとしました(最判昭和36年5月4日)。登記と違い、明認方法は現地の外形にすぎず公簿に残らないからです。「その明認方法が消失した後にAから乙立木を買い受けた第三者Eに対しても,乙立木の所有権の取得を対抗することができる」という肢は誤りです。
土地と立木をまとめて買った者は土地の登記で立木も対抗でき、立木だけの譲受人との優劣は登記と明認方法の先後で決まります
立木と地盤が同じ所有者に属する間は、立木の所有権は土地所有権に含まれるので、土地と立木を同時に譲り受けた者は、土地の所有権移転登記をすれば立木についても所有権の移転を第三者に対抗できます(最判昭和30年9月23日)。立木だけの譲受人と、立木を含めて土地を取得した者との優劣は、明認方法と土地の登記の先後で決まります。先に土地の登記を備えた者は、後に立木だけを買って明認方法を施した者に優先し、「Fは,乙立木の所有権の取得を第三者Gに対抗することができる」という肢は正しく、「Cは立木の所有権をBに主張することができる」という肢は誤りです。土地を買った者が自ら植栽して明認方法を施した立木は、その後に土地を譲り受けて登記をした者に対抗でき、「明認方法が存続していたとしても,BはCに対して,立木の所有権を対抗することができない」という肢は誤りです。土地の譲受人に対しては、立木を分離して自分に帰属させるにも対抗要件が要るとされます(最判昭和35年3月1日)。
立木の所有権を留保して土地を売った場合や、立木の売買を解除した場合も、明認方法がなければ第三者に対抗できません
判例は、土地の所有権を移転するに当たり当事者間の合意で立木の所有権を留保した場合、立木は土地と独立した所有権の目的となるが、留保もまた物権変動の一場合と解すべきであるから、立木法による登記又は留保を公示するに足る明認方法を講じない限り、立木所有権の留保をもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗できないとしています(最判昭和34年8月7日)。外形上は立木ごと土地が買主に移ったように見えるからです。「立木についての所有権を当該売主に留保することができるが,それを第三者に対抗するためには,当該売主が立木の所有者である旨を公示する対抗要件を具備しなければならない」という肢と、「Aは,乙立木について明認方法を施さなければ,乙立木の所有権の留保を第三者Iに対抗することができない」という肢は正しく、「登記や明認方法を備えなくても,立木の所有権をCに主張することができる」という肢は誤りです。立木だけの売買を解除した売主も、復帰した所有権を明認方法で公示でき、「乙立木について明認方法を施すことにより,乙立木の所有権の復帰を公示することができる」という肢は正しいです。なお、立木を土地と別に抵当権の目的とするには立木法による登記が要り、明認方法では足りません。
民法86条1項
土地及びその定着物は、不動産とする。
最判昭和34年8月7日
立木の所有権を留保した場合は、立木は土地と独立して所有権の目的となるものであるが、留保もまた物権変動の一場合と解すべきであるから、この場合には立木につき立木法による登記をするかまたは該留保を公示するに足る明認方法を講じない以上、第三者は全然立木についての所有権留保の事実を知るに由ないものであるから、右登記または明認方法を施さない限り、立木所有権の留保をもつてその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗し得ない
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