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用語集 / 民法 / 主物と従物

主物と従物(87条・従たる権利)とは

しゅぶつとじゅうぶつ

民法 民法の基礎と権利の主体

従物とは、物の所有者がその物(主物)の常用に供するために附属させた、自己の所有に属する他の物のことで、従物は主物の処分に従います(87条)。

家を売ったら、庭の石灯籠や備え付けの物置はどうなるのでしょう。いちいち契約書に書かなくても、家と一緒に使われてきた物は家と一緒に移るのが当事者の通常の意思にかないます。民法は、物の所有者がその物の常用のために附属させた自分の物を従物と呼び、従物は主物の処分に従うとしています。ただし従物はあくまで独立した物で、主物と同じ所有者のものでなければなりません。借地上の建物を売れば、敷地の賃借権という権利も従たる権利として一緒に移ります。

ガソリンスタンドの場面。店舗用の建物の前に計量機が並び、地面の下に地下タンクが透けて描かれている。競売で建物を買った男性(札「買受人」)が鍵を手にし、横に先生が裁判官役(札「裁判所」)で立ち、吹き出し「地下タンクは店舗の常用に供される従物だ

従物は、独立した物であること、主物の常用に供されること、主物と同じ所有者に属することの三つを満たす物です

87条1項は、物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とすると定めています。要件は、①独立した物であること、②継続して主物の経済的効用を助けていること、③主物と同じ所有者に属することです。主物の所有者が自分の物を附属させた場合に限るので、建物の賃借人が自分で持ち込んで使っている賃借人所有の畳は建物の従物にならず、建物の抵当権の効力は及びません。「Bが甲建物において使用しているB所有の畳に対しても及ぶ」という肢は誤りです。また、建物の増築部分が既存建物の構造の一部で取引上の独立性を持たないときは、独立した物ではないので従物ではなく、既存建物に付合します(242条。最判昭和44年7月25日)。「建物の増築部分は,既存建物の従物である」という肢は誤りです。

  • 独立した物であること取引上の独立性のない増築部分は付合であって従物ではありません
  • 主物の常用に供されること継続して主物の経済的効用を助けていること
  • 主物と同じ所有者に属すること賃借人が持ち込んだ賃借人所有の畳は建物の従物になりません

従物は主物の処分に従うので、地下タンクや石灯籠のように抵当権設定時からあった従物には主物の抵当権の効力が及びます

87条2項は、従物は主物の処分に従うと定めています。判例は、借地上でガソリンスタンドを営む店舗用建物に抵当権が設定された事案で、抵当権設定当時に存在した地下タンクはその建物の従物であり、競落人に帰属するとしました(最判平成2年4月19日)。「競売手続によりその所有権を取得した者は,抵当権設定当時に存した地下タンクの所有権をも取得する」という肢は正しいです。宅地に備え付けられた石灯籠や取り外せる庭石についても、判例は、根抵当権設定当時に宅地の常用のために附属させられた従物であるから宅地の根抵当権の効力が及び、宅地の根抵当権設定登記で従物にも対抗力が生じるとしています(最判昭和44年3月28日)。「その石灯籠には及ばない」という肢は誤りです。抵当権設定後に附属させた従物に効力が及ぶか、370条の付加一体物と87条2項のどちらで説明するかは、抵当権の効力の及ぶ範囲の語で扱います。

借地の上の建物の前の場面。左に土地の所有者の男性(札「賃貸人」)、中央に建物を競売で買った男性(札「買受人」)、右に先生が裁判官役(札「裁判所」)。建物から土地へ点線の矢印「敷地の賃借権(従たる権利)」。先生の吹き出し「敷地の賃借権にも抵当

借地上の建物を売買や抵当権の目的にすると、敷地の賃借権も従たる権利として伴いますが、賃貸人の承諾がなければ賃貸人には対抗できません

87条2項は物と物の関係の規定ですが、判例は権利についても同じ考え方をとり、建物を所有するために必要な敷地の賃借権は建物の所有権に付随して一体となって財産的価値を形成しているので、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権にも効力が及ぶとしています(最判昭和40年5月4日)。「借地上の建物が抵当権の目的となっている場合,建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ」という肢は正しいです。もっとも、賃借権の譲渡は賃貸人の承諾がなければ賃貸人に対抗できない(612条1項)ので、競売で建物を買い受けた者も、賃貸人の承諾又はこれに代わる裁判所の許可がなければ、敷地の賃借権を賃貸人に主張できません。「Dは,Bの承諾がなくても,Bに対し,当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することができる」という肢は誤りです。売買でも同じで、判例は、賃借地上の建物を売った売主は、特別の事情のない限り、敷地の賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得て買主に移転する義務を負うとしています(最判昭和47年3月9日)。この肢は正しいです。

民法87条

物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。2 従物は、主物の処分に従う。

論文ではこう使う

論文で従物が問題になるのは、抵当権の効力の及ぶ範囲を論じる場面です。まず87条1項の要件(独立性・常用に供すること・同一所有者)に当てはめて従物かを認定し、抵当権設定時に存在した従物には87条2項又は370条により効力が及ぶことを示します。設定後に附属させた従物については370条の「付加して一体となっている物」に含まれるかを論じます。借地上の建物では、敷地の賃借権が従たる権利として抵当権の効力に服すること、買受人は賃貸人の承諾又は裁判所の許可がなければ賃貸人に対抗できないことまで書きます。

試験ではこう問われる

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