委任の受任者の義務(644条〜647条)とは
いにんのじゅにんしゃのぎむ
委任の受任者の義務とは、委任事務を処理する受任者が委任者に対して負う義務です。受任者は、無償でも善良な管理者の注意をもって事務を処理し(644条)、許諾かやむを得ない事由がなければ復受任者を選任できず(644条の2)、報告義務(645条)と受取物の引渡し・権利の移転義務(646条)を負います。
弁護士や不動産業者に用事を頼むのが委任です。頼まれた人は、お金をもらわない場合でも、その道の人として普通に求められる注意を払って仕事をしなければなりません。頼んだ人はその人を信頼して任せているからです。同じ理由で、勝手に別の人に丸投げはできず、頼んだ人が求めればいつでも途中経過を知らせ、預かったお金や物は頼んだ人に渡します。
委任は口頭の合意だけで成立し、法律行為でない事務の委託にも同じ規定が準用されます
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる諾成契約です(643条)。書面は成立の要件でも、第三者に主張する要件でもありません。委任状は代理権を対外的に示す手段にすぎません。「委任契約は,書面でしなければ,その効力を生じない」という肢と「委任契約の成立を第三者に主張するためには,書面によらなければならない」という肢は誤りです。法律行為でない事務の委託(準委任)には、委任の節の規定が準用されます(656条)。診療や管理の依頼がその例です。「法律行為でない事務の委託については,法律行為の委任に関する民法の規定は準用されない」という肢は誤りです。
受任者は無償でも善良な管理者の注意を負い、許諾かやむを得ない事由がなければ復受任者を選任できません
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(644条)。644条は報酬の有無で区別していないので、無償の委任でも同じです。無償寄託の受寄者が自己の財産に対するのと同一の注意で足りる(659条)のと違うのは、委任が受任者の能力への信頼を基礎にするからです。「無償委任の受任者は,自己のためにするのと同一の注意をもって,委任事務を処理しなければならない」という肢は誤りで、「無償の委任契約であっても、受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理しなければならない」という肢は正しいです。注意義務の程度を契約ごとに並べた一覧は特定物債権の保存義務の語にあります。受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任できません(644条の2第1項)。任意代理人の復代理人の選任(104条)と同じ要件です。「受任者は,いつでも,第三者に委任事務の処理を委託することができる」という肢と「やむを得ない事由がなくても、委任者の許諾を得ることなく復受任者を選任することができる」という肢は誤りです。
受任者は求めがあればいつでも報告し、受け取った物や果実を引き渡し、自己の名で取得した権利を移転します
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません(645条)。「委任者の請求があるときは,いつでも委任事務の処理の状況を報告しなければならない」という肢と「委任契約が終了した後は、遅滞なく委任事務の処理の経過及び結果を報告しなければならない」という肢は正しいです。受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならず、収取した果実も同じです(646条1項)。果実には賃料などの法定果実も含まれます。「収取した法定果実を委任者に引き渡す義務はない」という肢は誤りです。引渡しの時期は条文に定めがなく、特約や委任の本旨で決まります。「直ちにこれを委任者に引き渡さなければならない」という肢は誤りです。受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければなりません(646条2項)。「受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない」という肢は正しいです。引き渡すべき金銭を自己のために消費したときは、消費した日以後の利息を支払い、なお損害があれば賠償します(647条)。
- 注意義務(644条)善良な管理者の注意。無償でも同じです
- 復受任者(644条の2)委任者の許諾かやむを得ない事由が要ります
- 報告(645条)請求があればいつでも状況を、終了後は遅滞なく経過と結果を
- 受取物・果実(646条1項)委任者に引き渡します。法定果実も含みます
- 自己の名で取得した権利(646条2項)委任者に移転します
- 金銭の消費(647条)消費した日以後の利息と損害の賠償
民法643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法644条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
民法644条の2第1項
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
民法646条1項
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
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