第1022条遺言の撤回過去問 5
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
この条文の過去問 5問
公正証書による遺言をした者は、その遺言を自筆証書による遺言によって撤回することができる。
解説
本肢は正しい。1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定める。遺言は遺言者の最終意思を実現する制度であるから、遺言者が生存中に翻意した場合にはこれを自由に覆せることが必要であり、撤回の自由は徹底されている。それゆえ遺言者は撤回権を放棄することができず(1026条)、撤回に理由を要しない。
ここで「遺言の方式に従って」とは、撤回もまた遺言によってしなければならないという趣旨であり、撤回に用いる方式が、撤回の対象となる先の遺言と同一の方式であることまでは要求されない。自筆証書遺言(968条)、公正証書遺言(969条)、秘密証書遺言(970条)といった普通方式の各遺言の間に効力上の優劣はなく、公正証書という厳格な方式で作成された遺言であっても、後にされた自筆証書遺言によって撤回することができる。したがって、公正証書遺言をした者が自筆証書遺言によりこれを撤回することは可能である。
なお、撤回の意思が明示されていなくても、前の遺言と後の遺言とが抵触するときは、抵触する部分について後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる(1023条1項)。また、遺言者が故意に遺言書を破棄したときや遺贈の目的物を破棄したときも撤回とみなされる(1024条)。もっとも、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、遺言者の手元にある正本・謄本を破棄しても1024条の撤回とはならず、この点でも別の方式による撤回遺言を作成する実益がある。よって本肢は正しい。
遺言者は、任意の方式で遺言を撤回することができる。
解説
本肢は誤り。1022条は、遺言者はいつでも遺言の方式に従ってその遺言の全部又は一部を撤回することができると定める。撤回の自由は保障されており、撤回権を放棄することもできない(1026条)が、その撤回は「遺言の方式に従って」行わなければならず、任意の方式で足りるわけではない。遺言が要式行為とされている(960条)以上、その効力を失わせる行為についても、遺言者の真意を確保し後日の紛争を防ぐために方式の履践が要求されるからである。もっとも、ここでいう「遺言の方式」は撤回される遺言と同一の方式である必要はなく、例えば公正証書遺言を自筆証書遺言によって撤回することも許される。また、明示の撤回のほかに法定撤回が認められており、前の遺言と後の遺言が抵触するときはその抵触部分につき後の遺言で撤回したものとみなされ(1023条1項)、遺言後の生前処分その他の法律行為が遺言と抵触する場合も同様である(同条2項)。さらに、遺言者が故意に遺言書又は遺贈の目的物を破棄したときも撤回とみなされる(1024条)。これらはいずれも法が定める特別の場合であって、撤回一般を無方式で認める趣旨ではない。以上より、任意の方式で撤回できるとする本肢は誤りである。
遺言者生存中に遺言の無効確認を求める訴えは、たとえ遺言者が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、当該遺言の撤回又は変更の可能性が事実上ない状態であっても、確認の利益を欠く。
解説
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書面によって死因贈与がされたとしても,贈与者は,生前,いつでもその贈与を撤回することができる。
解説
本肢は正しい。554条は、死因贈与について「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と定める。死因贈与は契約である点で単独行為である遺贈と異なるものの、贈与者の死亡によって効力を生ずる無償の死後処分である点で遺贈と実質を同じくし、贈与者の最終意思を尊重すべき要請が妥当する。そこで判例は、「死因贈与については、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用される」とし、贈与者は生前いつでも死因贈与の全部又は一部を撤回することができるとする(最判昭和47年5月25日)。すなわち、遺言の方式(1022条が要求する「遺言の方式に従って」の部分)は契約である死因贈与になじまないため準用されないが、撤回の自由という実質部分は準用されるという趣旨である。したがって、書面によって死因贈与がされた場合であっても、書面による贈与の解除を制限する550条は適用されず、贈与者は生前いつでも撤回できる。よって本肢は正しい。なお、負担付死因贈与において受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をしたときは、特段の事情がない限り撤回は許されない(最判昭和57年4月30日)。
公正証書遺言を撤回する遺言は,自筆証書遺言でもすることができる。
解説
本肢は正しい。1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定める。ここで要求されているのは、撤回の意思表示が「遺言の方式」(普通方式であれば968条・969条・970条のいずれか、要件を満たせば特別方式でもよい)によることのみであって、撤回の対象となる遺言と同一の方式によることまでは要求されていない。
遺言の方式が法定されている趣旨は、遺言者の最終意思が真意に基づくものであることを確保し、その内容をめぐる紛争を防止する点にある。撤回もまた遺言者の最終意思の表明であるから、いずれかの法定の方式を履践している以上、その真意性は等しく担保される。方式の同一性を要求すべき実質的理由はなく、むしろ遺言撤回の自由(1026条が撤回権の放棄を認めないのもその表れである)を制約することになって相当でない。
したがって、公証人が関与して作成された公正証書遺言であっても、後にされた自筆証書遺言によってこれを撤回することができる。なお、撤回の意思が明示されていない場合であっても、前の遺言と後の遺言とが抵触するときは、抵触部分について後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる(1023条1項)から、自筆証書遺言による事実上の撤回も可能である。よって本肢は正しい。