契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
この条文の過去問 3問
誤り。違うのは「Aの承諾の有無にかかわらず」の部分である。契約上の地位は、譲渡の合意に加えて契約の相手方の承諾があって初めて移転する(539条の2)。
539条の2は、契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位はその第三者に移転すると定める。契約上の地位の移転は、債権だけでなく、債務や取消権・解除権なども含めてまとめて移すものである。債権の譲渡と異なり債務も移るので、誰が自分に対して債務を負うかに大きな関心を持つ契約の相手方の承諾なしに認めることはできない。免責的債務引受に債権者の関与が求められる(472条2項・3項)のと同じ理由である。本肢では、代金を支払う債務を負う買主Bがその地位をEに譲ろうとしているので、売主Aの承諾がなければ買主たる地位はEに移転しない。肢はAの承諾の有無にかかわらず移転するとしており、誤っている。なお、賃貸不動産の譲渡では、賃借人の承諾なしに賃貸人たる地位が移転する例外がある(605条の2・605条の3)。

契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
- 第三者の権利(537条1項・3項):第三者が債務者に受益の意思を表示した時に発生する
- 第三者の存在(537条2項):契約成立時に現に存しない・特定していなくても有効
- 権利発生後(538条1項):当事者は変更・消滅させられない
- 債務者の不履行(538条2項):相手方は第三者の承諾を得なければ解除できない
- 債務者の抗弁(539条):契約に基づく抗弁を第三者に対抗できる
- 契約上の地位の移転(539条の2):譲渡の合意+契約の相手方の承諾で移転する
誤り。違うのは「賃借人に対して承継の通知をしなければならない」の部分である。対抗要件を備えた賃借権の目的不動産が譲渡されれば、賃貸人の地位は当然に譲受人に移転し、承継の通知は要らない(605条の2第1項・最判昭33.9.18)。
605条の2第1項は、賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位はその譲受人に移転すると定める。契約上の地位の移転には相手方の承諾が要るのが原則であるが(539条の2)、賃貸人の義務は所有者であれば誰でも果たせる性質のものであり、賃貸人が替わっても賃借人に不利益は無いので、賃借人の承諾も通知も要らない。出題当時は明文が無かったが、判例も、対抗力のある賃借権の目的である建物が譲渡された場合、譲受人は建物の所有権取得と同時に当然に賃貸借を承継し、その承継の通知を要しないとしていた(最判昭33.9.18)。肢は通知が必要としており、誤っている。もっとも、譲受人が賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗して賃料を請求するには、所有権移転登記が要る(605条の2第3項)。

前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
- 対抗要件あり・譲渡:賃貸人の地位は合意なしに当然に移転する(605条の2第1項)。留保の合意があれば移転しない(同条2項)
- 対抗要件なし・譲渡:譲渡人と譲受人の合意で、賃借人の承諾なく移転できる(605条の3)
- 賃借人への対抗:所有権移転登記が要る(605条の2第3項)
- 承継される債務:費用償還債務と敷金返還債務(605条の2第4項)
誤り。違うのは「従前の賃借人が賃貸人に対して負っていた目的物の保管義務違反による損害賠償債務も当然に譲受人に移転する」の部分である。賃貸人の承諾ある賃借権の譲渡で賃貸借関係は譲受人に移転するが、既に生じた損害賠償債務は、引き受ける合意がない限り移転しない。
612条1項は、賃借人は賃貸人の承諾を得なければその賃借権を譲り渡すことができないと定め、賃貸人の承諾があれば、使用収益権を中心とする賃貸借上の地位が同一の内容で譲受人に移転する(539条の2参照)。しかし、譲渡前に従前の賃借人が保管義務に違反して生じさせた損害賠償債務は、その時点で具体的に発生した独立の金銭債務であり、賃借人の地位の移転に伴って当然に移るものではない。これを譲受人に負わせるには、債務引受の合意が別に必要である(470条・472条)。譲受人は、自らが関与していない過去の義務違反の責任を、合意もなく負わされるいわれはないからである。同じく、従前の賃借人が差し入れた敷金も、賃借権の適法な譲渡によって譲受人に承継されず、従前の賃借人に残額が返還される(622条の2第1項2号)。したがって、本肢は誤りである。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。