先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
この条文の過去問 9問
誤り。違うのは「先取特権に基づき、Bに対して甲の引渡しを請求することができる」の部分である。先取特権は他の債権者に先立って弁済を受ける権利であり、目的物を占有する権能を含まないので、引渡しを請求する根拠にならない(303条)。
303条は、先取特権者はその債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると定める。動産の売主Aは動産売買の先取特権を持つが(311条5号・321条)、この権利の中身は目的物の交換価値から優先して弁済を受けることにある。先取特権は、留置権や質権と違って目的物の占有を成立や存続の要件としない担保物権であり、目的物を占有して使う権能を含まない。したがって、Bが弁済期を過ぎても代金を払わないときでも、Aは先取特権を根拠に甲の引渡しを求めることはできず、甲を差し押さえて競売し、その代金から優先して弁済を受けることになる。肢は引渡しを請求できるとしており、誤っている。

先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
誤り。違うのは「その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することはできない」の部分である。旅館の宿泊の先取特権には即時取得の規定が準用され、宿泊客の物と過失なく信じた旅館主は先取特権を取得する(319条・192条)。
旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館にあるその宿泊客の手荷物について存在する(317条)。先取特権は債務者の財産の上に成り立つのが原則なので、手荷物が宿泊客以外の者の物であれば、本来は先取特権の目的にならない。しかし319条は、不動産の賃貸・旅館の宿泊・運輸の先取特権について、即時取得に関する192条から195条までを準用している。旅館主は宿泊客が持ち込む荷物の持ち主を一つ一つ調べることはできないので、占有という外形を信頼した旅館主を守るためである。したがって、旅館主がその手荷物を宿泊客の物であると過失なく信じたときは、他人の物であっても旅館の宿泊の先取特権を取得し、行使することができる。肢は誤っている。

第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
- 不動産の賃貸(312条〜316条):賃借人が備え付けた動産など。譲受人・転借人の動産にも及ぶ(314条)。敷金で弁済を受けない部分に限る(316条)
- 旅館の宿泊(317条):宿泊料・飲食料について旅館にある手荷物。即時取得を準用する(319条)
- 運輸(318条):運送賃・付随の費用について運送人の占有する荷物
- 動産の保存(320条)・動産の売買(321条):その動産
正しい。先取特権は被担保債権を担保するために存在するから、代金債権が譲渡されれば動産売買の先取特権も随伴して譲受人に移転する。
動産の売主は、その動産の代価及びその利息に関し、その動産の上に先取特権を有する(311条5号・321条)。先取特権は法律の定める債権の担保として当然に生じる法定担保物権であるが、特定の債権を担保するために存在するという点では約定担保物権と変わらず、付従性・随伴性・不可分性・物上代位性を備えている。随伴性とは、被担保債権が譲渡などで他人に移転すると、担保権もこれに従って移転する性質をいう。先取特権について随伴性を否定する規定はなく、債権と切り離して先取特権だけを元の債権者のもとに残しても意味がない。したがって、動産売買の先取特権者が代金債権を第三者に譲渡すれば、先取特権も譲受人に移転し、譲受人は目的動産について権利を実行し、転売代金債権に物上代位することもできる。肢は正しい。もっとも、目的動産が第三取得者に引き渡されると先取特権は行使できなくなる(333条)。

動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性あり。物上代位性・優先弁済的効力なし
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力あり。留置的効力なし
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力あり
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力あり。留置的効力なし
誤り。違うのは「先取特権を行使することができない」の部分である。旅館の宿泊の先取特権には即時取得の規定が準用され(319条)、宿泊客の物と過失なく信じた旅館の主人は先取特権を取得する。
旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館にあるその宿泊客の手荷物について存在する(317条)。先取特権は債務者の財産の上に成立するので(303条)、手荷物が宿泊客以外の者の所有であれば、本来は先取特権は成立しない。しかし319条は、不動産賃貸・旅館宿泊・運輸の先取特権について、即時取得の規定(192条から195条)を準用すると定める。旅館の主人は、宿泊客が持ち込んだ荷物が誰のものかをいちいち調べることができず、宿泊客の物であると信じて宿泊させるのが通常なので、その信頼を保護したのである。したがって、手荷物が宿泊客の所有物でなくても、旅館の主人がそれを宿泊客の所有物であると過失なく信じたときは、先取特権を取得し、これを行使できる。本肢は、過失なく信じた場合でも行使できないとしている点で誤りである。

第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
- 不動産の賃貸(312条〜316条):賃借人が備え付けた動産など。敷金で弁済を受けない部分に限る
- 旅館の宿泊(317条):宿泊料・飲食料について旅館にある手荷物
- 運輸(318条):運送賃・付随の費用について運送人の占有する荷物
- 即時取得の準用(319条):上の三つは、債務者の物と過失なく信じれば他人の物にも成立する
- 動産の保存(320条)・動産の売買(321条):その動産について
誤り。違うのは「債務者との合意により留置権の設定を受けることはできる」の部分である。留置権も先取特権と同じく法定担保物権であり、合意で設定することはできない。
先取特権も留置権も、法律の定める要件を満たしたときに当然に成立する法定担保物権であり、当事者の合意によって設定することはできない。本肢の前段は正しい。留置権について、295条1項本文は、他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を持つときは、その弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。他人の物を占有していること、その物に関して生じた債権を持つこと、債権が弁済期にあること、占有が不法行為によって始まったものでないことという法定の要件を満たせば当然に成立するのであり、合意によって作り出すことはできない。合意によって設定できる担保物権は、質権と抵当権という約定担保物権に限られる。当事者が債務の履行まで物を引き渡さないと約束することはできるが、それは当事者の間の債権的な合意にすぎず、第三者にも主張できる物権としての留置権が生じるわけではない。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
- 留置権(法定):物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権(民事執行法195条)がある
- 先取特権(法定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
誤り。違うのは「換価金から優先的に弁済を受けることができる」の部分である。留置権者は競売を申し立てることはできるが(民事執行法195条)、留置権に優先弁済権はない。
民事執行法195条は、留置権による競売は担保権の実行としての競売の例によると定めており、留置権者は留置物の競売を申し立てることができる。留置権者は物を保管し続けなければならず(298条1項)、その負担から解放される必要があるからである。本肢の前段は正しい。しかし、留置権は物を留め置いて債務者に心理的な圧力を加え、事実上弁済を促す効力を持つにとどまり、法律上の優先弁済権を伴わない。優先弁済権を明文で認めているのは先取特権(303条)、質権(342条)、抵当権(369条1項)であり、留置権にはこれに当たる規定がない。そのため、留置権による競売は換価のための手続にすぎず、換価金から他の債権者に先立って弁済を受けることはできない。なお、留置物から生じた果実を他の債権者に先立って弁済に充てられる(297条1項)のは、果実についての特別の規定である。

留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。
- 留置権(法定):物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権(民事執行法195条)がある
- 先取特権(法定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
正しい。留置権には目的物から優先弁済を受ける効力はないが、留置権者は留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充当することができる(297条1項)。
留置権は、物を留め置くことで弁済を間接的に促す権利であり、先取特権や質権のように目的物の交換価値を把握して他の債権者に優先して弁済を受ける効力(303条・342条参照)は認められていない。留置権者は目的物の競売を申し立てることはできるが(民事執行法195条)、その売却代金から優先して弁済を受けることはできない。もっとも、297条1項は、留置権者は留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立ってこれを自己の債権の弁済に充当することができると定める。果実は通常その額が大きくなく、留置権者が収取した果実をいちいち所有者に返還させるのは手間がかかるので、簡便な処理として、果実については優先的に弁済に充てることを認めたのである。果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当する(同条2項)。したがって、本肢は正しい。

留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性があり、物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権がある。果実からは優先弁済を受けられる(297条1項)
- 先取特権(法定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
正しい。一般先取特権は債務者の総財産から優先弁済を受ける権利であり、物を占有する権利を含まないので、それに基づいて返還請求権を行使することはできない。
本権とは、所有権や賃借権のように、物の占有を正当化する法律上の権利をいい、本権の訴えとは、本権に基づいて物の返還などを求める訴えである。306条は、一般の先取特権は債務者の総財産について成立すると定め、303条は、先取特権者は債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると定める。一般先取特権は、債務者の財産の交換価値から優先弁済を受けることを内容とする権利であり、目的物を占有したり留め置いたりする効力を持たない。占有する権利を含まない以上、それを根拠に占有者に対して物の引渡しを求めることはできず、返還請求権を内容とする本権の訴えは成り立たない。一般先取特権者は、債務者の財産に対する強制執行や配当の場面で優先権を主張することになる。本肢は正しい。

先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 所有権:返還請求できる(物権的請求権)
- 地上権:土地の所有者に対しても返還請求できる
- 対抗要件を備えた不動産賃借権:占有する第三者に返還請求できる(605条の4)
- 留置権:占有を失えば消滅するので返還請求できない(302条)。占有回収の訴えによる
- 一般先取特権:占有する権利を含まないので返還請求できない
- 占有の訴えと本権の訴え:互いに妨げない(202条1項)
誤り。違うのは「法定の用益物権は存在しない」の部分である。民法は法定の用益物権として法定地上権を定めている(388条)。
民法は、当事者の合意によらず法律上当然に成立する担保物権として留置権(295条)と先取特権(303条)を定めており、法定の担保物権は存在する。用益物権も、地上権が設定契約によって取得されることが多いとはいえ、法律上当然に成立するものがある。388条は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物に抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなすと定める。同一所有者のもとでは自己の土地に利用権を設定できないので、競売で土地と建物の所有者が分かれると建物が土地利用権を持たないまま取り壊しを迫られることになり、それを防ぐために法律が地上権を成立させたのである。したがって法定の用益物権も存在し、本肢は誤りである。

土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。










