1免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
この条文の過去問 7問
誤り。違うのは「吸収分割の方法による場合のみである」の部分である。吸収分割は包括承継であり債権者の個別の同意なしに免責的に承継でき(会社法759条1項)、個別の同意が要るのは事業譲渡の方法による場合である。
吸収分割は包括承継であって、吸収分割契約の定めに従い、効力発生日に分割会社の権利義務が当然に承継会社へ移る(会社法759条1項)。債務についても、債権者の個別の同意を得ることなく免責的に承継会社へ移すことができる。それでは債権者が債務者の変動という不利益を受けるおそれがあるため、吸収分割後に分割会社に対して債務の履行を請求できなくなる債権者などは債権者異議手続の対象とされ、吸収分割について異議を述べることができる(789条1項2号)。期間内に異議を述べなかった債権者は承認をしたものとみなされる(同条4項)が、これは法律上の擬制であって個別の同意とは異なる。異議を述べた債権者には弁済、相当の担保の提供などが要る(同条5項本文)。これに対し、事業譲渡は特定承継であるから、債務の移転は個々の債務引受契約によることになり、譲渡会社を債務から離脱させる免責的債務引受には債権者の承諾が要る(民法472条2項・3項)。したがって、債権者の個別の同意を要するのはむしろ事業譲渡の方法による場合であり、吸収分割の場合のみとする本肢は結論が逆である。

吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。
誤り。違うのは「債権者への通知又は債権者の承諾により」の部分である。債務者と引受人となる者の契約による免責的債務引受は、債権者が引受人となる者に承諾をすることで成立し、通知では足りない(472条3項)。
472条は、免責的債務引受の成立の方法として、債権者と引受人となる者との契約によるもの(この場合は債権者が債務者にその契約をした旨を通知した時に効力を生ずる、2項)と、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによるもの(3項)を定める。免責的債務引受では債務者が債務を免れ、債権者は資力の異なる引受人だけを相手にすることになるので、債権者の意思に基づかずに効力を生じさせることはできない。そのため、債務者と引受人となる者の間で契約をした場合は、債権者の承諾が必要であり、債権者に通知しただけでは効力は生じない。通知で効力を生じるのは、債権者自身が契約の当事者になる2項の場合に、債権者が債務者にする通知である。肢は債権者への通知で足りるとしており、誤っている。

免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
| 併存的債務引受 | 免責的債務引受 | |
|---|---|---|
| 債権者と引受人の契約 | 契約で効力を生じる。債務者の意思に反してもよい(470条2項) | 債権者が債務者に通知した時に効力を生じる(472条2項) |
| 債務者と引受人の契約 | 債権者が引受人に承諾した時に効力を生じる(470条3項) | 債権者が引受人に承諾をすることでできる(472条3項) |
| 債務者の債務 | 残り、引受人と連帯債務になる(470条1項) | 免れる(472条1項) |
| 取消権・解除権 | 債務者が免れる限度で履行を拒める(471条2項) | 同じ(472条の2第2項) |
| 求償 | 負担部分に応じて求償できる(442条1項) | 求償権を取得しない(472条の3) |
正しい。免責的債務引受は債権者と引受人となる者との契約によってすることができ、債権者が債務者に通知した時に効力を生ずるから(472条2項)、債務者の意思に反しない本肢の場合はもちろんできる。
免責的債務引受とは、引受人が債務者の債務と同じ内容の債務を負担し、債務者は自分の債務を免れるものである(472条1項)。債務者が入れ替わると、誰の財産が引当てになるかが変わるから、債権者の関与は欠かせないが、債権者が自ら引受けを認めるのであれば、債務者にとっては債務を免れるだけで不利益はない。そこで472条2項は、免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができ、この場合において、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生ずると定め、債務者の同意を要件としていない。債務者の意思に反するかどうかも要件ではないから、債務者Bの意思に反しない本肢の場合には、債権者Aと引受人Cの二者の契約で免責的債務引受の効力を生じさせることができる。したがって、本肢は正しい。債務者と引受人となる者が契約し、債権者が引受人となる者に承諾をする方法もある(同条3項)。

免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
| 事項 | 併存的債務引受 | 免責的債務引受 |
|---|---|---|
| 債務者の債務 | 残り、引受人と連帯債務になる(470条1項) | 消滅する(472条1項) |
| 債権者と引受人の契約 | 債務者の意思に反してもでき、契約の時に効力を生ずる(470条2項) | 債権者が債務者に通知した時に効力を生ずる(472条2項) |
| 債務者と引受人の契約 | 債権者が引受人に承諾した時に効力を生ずる(470条3項) | 債権者が引受人に承諾すればできる(472条3項) |
| 引受人の抗弁 | 債務者の抗弁を対抗でき、取消権・解除権の限度で履行を拒める(471条) | 同じ(472条の2)。解除権そのものは移らない |
| 担保 | そのまま | 引受人以外の設定者の承諾がなければ移らず消滅する(472条の4) |
正しい。吸収合併では存続会社が効力発生日に消滅会社の権利義務を包括承継する(会社法750条1項)のに対し、事業譲渡で譲受人が債務を免責的に引き受けるには債権者の同意が要る(民法472条)。
吸収合併の効力発生日に、存続会社は消滅会社の権利義務を承継する(会社法750条1項)。これは包括承継であり、個々の権利義務ごとの移転行為を要しないので、消滅会社の債務も個々の債権者の同意なしに当然に存続会社へ移り、消滅会社は法人格を失う。債権者の利益は事前の債権者異議手続(789条・799条)で守る仕組みである。これに対し事業譲渡は取引法上の契約にすぎず包括承継の効果が無いので、権利義務の移転には債権譲渡や債務引受などの個別の行為が要る。債務について譲受人が引き受けても、譲渡会社が当然に債務を免れるわけではない。免責的債務引受は、債権者と引受人の契約により債権者が債務者に通知する方法か、債務者と引受人の契約に債権者が承諾する方法で行う(民法472条2項・3項)。いずれにせよ債権者の関与が不可欠であり、債権者の意思を無視して債務者を交替させることはできない。本肢は正しい。免責的債務引受の規律は平成29年民法改正で472条に明文化されたが、債権者の承諾を要する結論は出題当時から同じである。

吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
| 項目 | 吸収合併 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 相手方 | 会社に限る(2条27号) | 会社でなくてよい。個人商人でもよい(24条参照) |
| 承継の仕方 | 効力発生日に権利義務の全部を包括承継(750条1項) | 取引法上の契約。登記・通知・承諾など個別の移転行為が要る |
| 債務 | 債権者の個別の同意なしに移る。債権者異議手続で保護(789条・799条) | 免責的に引き受けるには債権者の同意が要る(民法472条) |
| 対価 | 株式・社債・金銭など何でもよい(749条1項2号) | 制限なし。金銭に限られない |
| 消滅会社・譲渡会社 | 消滅会社は当然に解散し、清算なしに消滅(471条4号・475条1号括弧書) | 全部を譲渡しても当然には解散しない |
| 無効の主張 | 効力発生日から6か月以内に訴えのみ(828条1項7号) | 訴えによらず誰でもいつでも主張できる(最大判昭61.9.11) |
正しい。吸収合併では存続会社が効力発生日に消滅会社の権利義務を包括承継する(会社法750条1項)のに対し、事業譲渡で譲受人が債務を免責的に引き受けるには債権者の同意が要る(民法472条)。
吸収合併の効力発生日に、存続会社は消滅会社の権利義務を承継する(会社法750条1項)。これは包括承継であり、個々の権利義務ごとの移転行為を要しないので、消滅会社の債務も個々の債権者の同意なしに当然に存続会社へ移り、消滅会社は法人格を失う。債権者の利益は事前の債権者異議手続(789条・799条)で守る仕組みである。これに対し事業譲渡は取引法上の契約にすぎず包括承継の効果が無いので、権利義務の移転には債権譲渡や債務引受などの個別の行為が要る。債務について譲受人が引き受けても、譲渡会社が当然に債務を免れるわけではない。免責的債務引受は、債権者と引受人の契約により債権者が債務者に通知する方法か、債務者と引受人の契約に債権者が承諾する方法で行う(民法472条2項・3項)。いずれにせよ債権者の関与が不可欠であり、債権者の意思を無視して債務者を交替させることはできない。本肢は正しい。免責的債務引受の規律は平成29年民法改正で472条に明文化されたが、債権者の承諾を要する結論は出題当時から同じである。

吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
| 項目 | 吸収合併 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 相手方 | 会社に限る(2条27号) | 会社でなくてよい。個人商人でもよい(24条参照) |
| 承継の仕方 | 効力発生日に権利義務の全部を包括承継(750条1項) | 取引法上の契約。登記・通知・承諾など個別の移転行為が要る |
| 債務 | 債権者の個別の同意なしに移る。債権者異議手続で保護(789条・799条) | 免責的に引き受けるには債権者の同意が要る(民法472条) |
| 対価 | 株式・社債・金銭など何でもよい(749条1項2号) | 制限なし。金銭に限られない |
| 消滅会社・譲渡会社 | 消滅会社は当然に解散し、清算なしに消滅(471条4号・475条1号括弧書) | 全部を譲渡しても当然には解散しない |
| 無効の主張 | 効力発生日から6か月以内に訴えのみ(828条1項7号) | 訴えによらず誰でもいつでも主張できる(最大判昭61.9.11) |
誤り。違うのは「債権者、債務者及び引受人の三者の合意によらなければ、効力を生じない」の部分である。免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができ(472条2項)、債務者と引受人となる者との契約に債権者が承諾することによってもすることができる(同条3項)。
472条2項は、免責的債務引受は債権者と引受人となる者との契約によってすることができ、この場合には、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生ずると定める。債務者は債務を免れるだけで不利益を受けないから、その同意は要らないが、自分の債務が消えたことを知らないまま弁済してしまうことのないよう、債権者からの通知の時に効力を生じさせたのである。また、同条3項は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができるとする。債権者にとっては債務者が誰であるかが責任財産を左右するので、債権者の関与は欠かせないが、三者がそろって合意する必要はない。したがって、本肢は誤りである。出題当時は明文がなかったが、判例も債権者と引受人の契約による免責的債務引受を認めており、三者の合意を必須とはしていなかった。

免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
| 項目 | 併存的債務引受 | 免責的債務引受 |
|---|---|---|
| 債権者と引受人の契約 | できる。債務者の意思に反してもよい(470条2項) | できる。債権者から債務者への通知で効力(472条2項) |
| 債務者と引受人の契約 | 債権者が引受人に承諾した時に効力(470条3項) | 債権者が引受人に承諾してできる(472条3項) |
| 債務者の債務 | 存続し、引受人と連帯債務(470条1項) | 消滅する(472条1項) |
| 引受人の抗弁 | 効力発生時に債務者が主張できた抗弁を対抗できる(471条1項) | 同じ(472条の2第1項) |
| 担保・保証 | そのまま存続する | 設定者・保証人の承諾がなければ移らない(472条の4) |
誤り。違うのは「従前の賃借人が賃貸人に対して負っていた目的物の保管義務違反による損害賠償債務も当然に譲受人に移転する」の部分である。賃貸人の承諾ある賃借権の譲渡で賃貸借関係は譲受人に移転するが、既に生じた損害賠償債務は、引き受ける合意がない限り移転しない。
612条1項は、賃借人は賃貸人の承諾を得なければその賃借権を譲り渡すことができないと定め、賃貸人の承諾があれば、使用収益権を中心とする賃貸借上の地位が同一の内容で譲受人に移転する(539条の2参照)。しかし、譲渡前に従前の賃借人が保管義務に違反して生じさせた損害賠償債務は、その時点で具体的に発生した独立の金銭債務であり、賃借人の地位の移転に伴って当然に移るものではない。これを譲受人に負わせるには、債務引受の合意が別に必要である(470条・472条)。譲受人は、自らが関与していない過去の義務違反の責任を、合意もなく負わされるいわれはないからである。同じく、従前の賃借人が差し入れた敷金も、賃借権の適法な譲渡によって譲受人に承継されず、従前の賃借人に残額が返還される(622条の2第1項2号)。したがって、本肢は誤りである。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。





