1他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
この条文の過去問 31問
正しい。商人間の留置権(商法521条)は被担保債権と留置物の牽連性を要件としないので、乙社は修理のために預かった甲社所有の別の動産を留置できる。
商法521条本文は、商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者はその債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができると定める。会社である甲社と乙社は商人であり(会社法5条)、その事業としてする売買も修理の委託も双方のために商行為となるから、商人間の留置権の要件を検討する場面である。売買代金債権は双方的商行為から生じた債権であって弁済期にあり、修理のために預かった動産は債務者である甲社との商行為(修理の委託)によって乙社の占有に属した甲社所有の物であるから、要件をすべて満たす。民法295条の留置権と異なり、被担保債権がその物に関して生じたものであること(牽連性)は要件でなく、代金債権と無関係に預かった別の動産でも留置できる。同条ただし書により当事者の別段の意思表示があれば排除されるが、本肢はそれがない場合を前提にしている。本肢は正しい。

商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
- ["①双方が商人", "一方が商人でないと成立しない(信用金庫は商人でない: 最判昭63.10.18)"]
- ["②双方的商行為で生じた弁済期の債権", "民法295条と異なり、債権と物の牽連性は不要"]
- ["③債務者との商行為で占有を取得した", "占有取得後に債務者が所有権を失っても留置できる"]
- ["④債務者所有の物・有価証券", "代理商・問屋の留置権(31条・557条)は本人のために占有する物でよく、所有・商行為による占有は不要"]
- ["排除", "当事者の別段の意思表示で排除できる(ただし書)"]
誤り。違うのは「占有回収の訴えによって甲の返還を求めることができない」の部分である。他人のために占有をする者も占有の訴えを提起でき(197条後段)、留置権者Bは窃取したCに返還を求められる。
197条は、占有者は占有の訴えを提起することができ、他人のために占有をする者も同様とすると定める。留置権者は他人の物を債権の担保として所持する者であり(295条1項)、占有者として占有の訴えを起こせる。したがって、Bは甲を窃取したCに対し、占有回収の訴えで甲の返還を請求できる(200条1項)。確かに302条は、留置権は留置権者が留置物の占有を失うことによって消滅すると定めている。しかし203条ただし書は、占有者が占有回収の訴えを提起したときは占有権は消滅しないとしており、訴えに勝って物を取り戻せば、奪われていた間も占有が続いていたものとして扱われ、留置権も消えなかったことになる。占有回収の訴えは、留置権者にとって担保を取り戻す手段にもなるのである。したがって、留置権を行使している占有者であることは、占有回収の訴えを否定する理由にならない。

占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
- 原告になれる占有者には、詐取や窃取で占有を得た者、留置権者などの他主占有者(197条後段)、賃貸人のような間接占有者も含まれる
- 占有を「奪われた」ことが要るので、だまされて自ら引き渡した場合や遺失した場合は含まれない
- 侵奪者の特定承継人には、侵奪の事実を知っていたときに限り提起できる(200条2項)
- 占有の訴えと本権の訴えは互いに妨げない(202条1項)
誤り。違うのは「甲を留置することができる」の部分である。占有が不法行為によって始まった場合には、留置権は成立しない(295条2項)。
295条1項は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定めるが、同条2項は、占有が不法行為によって始まった場合には同条1項を適用しないとする。留置権は、物に関して生じた債権の債権者に物を手元にとどめさせ、弁済を間接的に促すことで当事者間の公平を図る制度であるから、自ら違法に他人の物を支配した者にまでその地位を与えるのは公平に反するのである。本肢のAは、甲建物を占有する権原がないことを知りながら占有を始めており、Bの所有権を故意に侵害しているから、その占有は不法行為によって始まったものである。したがって、その後にAが甲について費用の償還請求権など甲に関して生じた債権を取得しても、留置権は成立せず、Aは甲を留置することができない。判例は、当初は権原があった占有者が権原を失ったことを知りながら占有を続けて有益費を支出した場合にも、295条2項を類推して留置権を否定している(最判昭46.7.16)。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
誤り。違うのは「これを差し押さえることにより留置権を行使することができる」の部分である。留置権には優先弁済的効力がなく、物上代位性も認められない。
物上代位は、担保の目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物にも担保権を及ぼすもので、304条が先取特権について定め、350条で質権に、372条で抵当権に準用されている。これらの担保物権は目的物の交換価値を把握して他の債権者に先立って弁済を受ける権利であるから、目的物が形を変えた代わりの価値にも効力を及ぼす必要がある。これに対し留置権は、物を手元にとどめて引渡しを拒み、債務者に弁済を間接的に促す権利にすぎず(295条1項)、目的物を換価して優先的に弁済を受ける権利ではない。優先弁済的効力がない以上、目的物の価値の代わりを捕捉する理由もなく、304条を留置権に準用する規定も置かれていない。したがって、留置物が滅失して債務者が保険金請求権を取得しても、留置権者がこれを差し押さえて留置権を行使することはできない。留置物が滅失すれば、留置権は目的物を失って消滅する。

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性があり、物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権がある
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
誤り。違うのは「甲を留置することができる」の部分である。占有が不法行為によって始まった場合には、留置権は成立しない(295条2項)。
295条1項は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定めるが、同条2項は、占有が不法行為によって始まった場合には同条1項を適用しないとする。留置権は、物に関して生じた債権の債権者に物を手元にとどめさせ、弁済を間接的に促すことで当事者間の公平を図る制度であるから、自ら違法に他人の物を支配した者にまでその地位を与えるのは公平に反するのである。本肢のAは、甲建物を占有する権原がないことを知りながら占有を始めており、Bの所有権を故意に侵害しているから、その占有は不法行為によって始まったものである。したがって、その後にAが甲について費用の償還請求権など甲に関して生じた債権を取得しても、留置権は成立せず、Aは甲を留置することができない。判例は、当初は権原があった占有者が権原を失ったことを知りながら占有を続けて有益費を支出した場合にも、295条2項を類推して留置権を否定している(最判昭46.7.16)。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
誤り。違うのは「これを差し押さえることにより留置権を行使することができる」の部分である。留置権には優先弁済的効力がなく、物上代位性も認められない。
物上代位は、担保の目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物にも担保権を及ぼすもので、304条が先取特権について定め、350条で質権に、372条で抵当権に準用されている。これらの担保物権は目的物の交換価値を把握して他の債権者に先立って弁済を受ける権利であるから、目的物が形を変えた代わりの価値にも効力を及ぼす必要がある。これに対し留置権は、物を手元にとどめて引渡しを拒み、債務者に弁済を間接的に促す権利にすぎず(295条1項)、目的物を換価して優先的に弁済を受ける権利ではない。優先弁済的効力がない以上、目的物の価値の代わりを捕捉する理由もなく、304条を留置権に準用する規定も置かれていない。したがって、留置物が滅失して債務者が保険金請求権を取得しても、留置権者がこれを差し押さえて留置権を行使することはできない。留置物が滅失すれば、留置権は目的物を失って消滅する。

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性があり、物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権がある
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
誤り。違うのは「建物について留置権を行使することができる」の部分である。造作買取代金債権は造作に関して生じた債権で、建物に関して生じた債権ではないので、建物は留置できない(最判昭29.1.14)。
建物の賃借人は、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作を、賃貸借の終了時に時価で買い取るよう請求でき(借地借家法33条1項)、この請求によって造作の代金債権が生じる。留置権が成立するには、その物に関して生じた債権であることを要する(295条1項)。判例は、造作買取代金債権は造作に関して生じた債権であって建物に関して生じた債権ではないとして、建物についての留置権を否定した(最判昭29.1.14)。造作は建物とは別の物であり、造作の代金のために建物全体の明渡しを拒めるとすると、債権額に比べて大きすぎる財産を拘束することになり公平に反するからである。同じ理由で、造作代金の支払と建物の明渡しの同時履行も否定されている(最判昭29.7.22)。肢は誤っている。これに対し、建物に投じた必要費・有益費の償還請求権は建物に関して生じた債権なので、建物を留置できる。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
- 二重譲渡の第一買主の損害賠償請求権:第二買主の明渡請求に対して留置できない(最判昭43.11.21)
- 他人物売買の買主の損害賠償請求権:所有者の返還請求に対して留置できない(最判昭51.6.17)
- 敷金返還請求権:建物を留置できない(最判昭49.9.2)
- 造作買取代金債権:建物を留置できない(最判昭29.1.14)
- 建物買取代金債権:建物と敷地を留置できる(大判昭18.2.18)
- 賃借人の必要費・有益費の償還請求権:建物を留置できる
正しい。裁判所が有益費の償還に期限を許与すると、被担保債権が弁済期にないことになり、留置権は消滅する(608条2項ただし書・295条1項ただし書)。
賃借人が有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択で支出額か増価額を償還しなければならない(608条2項本文・196条2項)。この償還請求権は建物に関して生じた債権なので、賃借人は建物を留置できる。もっとも、留置権は被担保債権が弁済期にないときは成立しない(295条1項ただし書)。608条2項ただし書は、裁判所が賃貸人の請求によりその償還について相当の期限を許与できると定めており、期限が許与されると償還請求権は弁済期にない債権となるので、留置権はその基礎を失って消滅する。高額の有益費を直ちに払えない賃貸人が、そのために長く建物を返してもらえない事態を防ぐ趣旨である。肢は正しい。留置権者が留置物に有益費を支出した場合も、裁判所は所有者の請求により期限を許与できる(299条2項ただし書)。

賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
- 消滅請求(298条3項):善管注意義務違反、債務者の承諾のない使用・賃貸・担保提供。賃貸が終了していても請求できる
- 代わりの担保(301条):債務者が相当の担保を供して消滅を請求できる
- 占有の喪失(302条):消滅する。承諾を得た賃貸・質入れは除く。占有回収の訴えで回復すれば消滅しない
- 期限の許与(299条2項ただし書・608条2項ただし書):有益費の償還に期限が許与されると消滅する
- 被担保債権の消滅:付従性により消滅する。留置中も消滅時効は進行する(300条)
誤り。違うのは「弁済期にないときであっても,その物を留置することができる」の部分である。債権が弁済期にないときは留置権は成立しない(295条1項ただし書)。
295条1項本文は、他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を有するときはその弁済を受けるまでその物を留置できると定めるが、ただし書で、その債権が弁済期にないときはこの限りでないとする。弁済期前の債務者は期限の利益を持っており、まだ履行を請求できない段階で目的物の引渡しを拒んで事実上弁済を強制することは、その期限の利益を奪うのと同じになるからである。この要件が問題になる場面として、占有者や賃借人の有益費償還請求について、裁判所が相当の期限を許与したとき(196条2項ただし書・608条2項ただし書)がある。この場合は償還請求権が弁済期にない債権となるので、留置権は成立しない。肢は弁済期にないときでも留置できるとしており、295条1項ただし書に反する。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「競売を申し立てることはできない」の部分である。留置権者は、民事執行法195条により、担保権の実行としての競売の例による競売を申し立てることができる。
留置権は目的物を留め置いて弁済を間接に促す権利であり(295条1項)、抵当権や質権のように目的物の交換価値から優先弁済を受ける権利ではない。しかし、換価が一切できないとすると、留置権者は弁済があるまで善管注意義務(298条1項)を負って目的物を保管し続けなければならず、その負担は重い。そこで民事執行法195条は、留置権による競売は担保権の実行としての競売の例によると定め、留置権者に競売の申立てを認めている。この競売は留置の負担から留置権者を解放するための換価の手続であり、優先弁済を受けるためのものではない。そのため、他の債権者が配当を求めれば、留置権者は債権額に応じた平等の割合で弁済を受けるにとどまると解されている。肢は競売を申し立てることはできないとしており、誤っている。

留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。
誤り。違うのは「弁済期にないときであっても,その物を留置することができる」の部分である。債権が弁済期にないときは留置権は成立しない(295条1項ただし書)。
295条1項本文は、他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を有するときはその弁済を受けるまでその物を留置できると定めるが、ただし書で、その債権が弁済期にないときはこの限りでないとする。弁済期前の債務者は期限の利益を持っており、まだ履行を請求できない段階で目的物の引渡しを拒んで事実上弁済を強制することは、その期限の利益を奪うのと同じになるからである。この要件が問題になる場面として、占有者や賃借人の有益費償還請求について、裁判所が相当の期限を許与したとき(196条2項ただし書・608条2項ただし書)がある。この場合は償還請求権が弁済期にない債権となるので、留置権は成立しない。肢は弁済期にないときでも留置できるとしており、295条1項ただし書に反する。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「競売を申し立てることはできない」の部分である。留置権者は、民事執行法195条により、担保権の実行としての競売の例による競売を申し立てることができる。
留置権は目的物を留め置いて弁済を間接に促す権利であり(295条1項)、抵当権や質権のように目的物の交換価値から優先弁済を受ける権利ではない。しかし、換価が一切できないとすると、留置権者は弁済があるまで善管注意義務(298条1項)を負って目的物を保管し続けなければならず、その負担は重い。そこで民事執行法195条は、留置権による競売は担保権の実行としての競売の例によると定め、留置権者に競売の申立てを認めている。この競売は留置の負担から留置権者を解放するための換価の手続であり、優先弁済を受けるためのものではない。そのため、他の債権者が配当を求めれば、留置権者は債権額に応じた平等の割合で弁済を受けるにとどまると解されている。肢は競売を申し立てることはできないとしており、誤っている。

留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。
正しい。留置権の目的物は占有者以外の者の物であればよく、債務者の所有物である必要はない(295条1項)。
295条1項本文は、他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。ここでいう他人の物とは占有者自身の物でないという意味であり、その所有者が被担保債権の債務者であることまでは求められていない。留置権は物と債権の牽連関係に着目して法律上当然に認められる担保物権であり、物の返還を拒むことで弁済を促せる関係があれば足りるからである。判例も、留置権が成立した後に債務者から目的物を譲り受けた者に対しても、留置権者は留置権を主張できるとしている(最判昭47.11.16)。この場合、目的物の所有者は債務者でない譲受人であり、債務者以外の者の物の上に留置権が存在していることになる。肢はこの帰結を述べており、正しい。

留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債権者がその留置権を主張しうることは、留置権が物権であることに照らして明らか
| 担保物権 | 債務者以外の者の財産 | 根拠 |
|---|---|---|
| 留置権 | 成立する | 295条1項(他人の物) |
| 一般の先取特権 | 成立しない | 306条(債務者の総財産) |
| 質権 | 設定できる(物上保証) | 342条(債務者又は第三者) |
| 抵当権 | 設定できる(物上保証) | 369条1項(債務者又は第三者) |
正しい。賃貸借が解除された後、占有権原がないと知りながら占有を続けて支出した有益費の償還請求権については、295条2項の類推適用により留置権を主張できない(最判昭46.7.16)。
295条2項は、占有が不法行為によって始まった場合には留置権は成立しないと定める。自分で違法に占有を始めた者に、物を留め置いて優先的に弁済を受けさせるのは公平に反するからである。本肢のAの占有は賃貸借に基づいて適法に始まっているので、文言どおりなら同項は当たらない。しかし最判昭46.7.16は、建物の賃貸借契約が解除された後、建物を占有する権原のないことを知りながら不法に占有していた者が、その間に支出した有益費の償還請求権については、295条2項の類推適用により留置権を主張することができないとした。権原を失った後に費用をかけて留置権を作り出すことを認めれば、初めから不法に占有した場合と実質が変わらないからである。したがって、Aは留置権を行使して明渡しを拒むことはできない。肢は正しい。

Aが右のような状況のもとに本件建物につき支出した有益費の償還請求権については、民法二九五条二項の類推適用により、上告人らは本件建物につき、右請求権に基づく留置権を主張することができない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 敷金返還請求権で建物の明渡しを拒む | 最判昭49.9.2 | 留置できない |
| 建物買取代金債権で敷地の明渡しを拒む | 大判昭18.2.18 | 建物とともに敷地も留置できる |
| 売主の代金債権で転売の買主からの引渡請求を拒む | 最判昭47.11.16 | 留置できる |
| 解除後に権原がないと知りながら支出した有益費 | 最判昭46.7.16 | 295条2項の類推で留置できない |
正しい。賃貸借が解除された後、占有権原がないと知りながら占有を続けて支出した有益費の償還請求権については、295条2項の類推適用により留置権を主張できない(最判昭46.7.16)。
295条2項は、占有が不法行為によって始まった場合には留置権は成立しないと定める。自分で違法に占有を始めた者に、物を留め置いて優先的に弁済を受けさせるのは公平に反するからである。本肢のAの占有は賃貸借に基づいて適法に始まっているので、文言どおりなら同項は当たらない。しかし最判昭46.7.16は、建物の賃貸借契約が解除された後、建物を占有する権原のないことを知りながら不法に占有していた者が、その間に支出した有益費の償還請求権については、295条2項の類推適用により留置権を主張することができないとした。権原を失った後に費用をかけて留置権を作り出すことを認めれば、初めから不法に占有した場合と実質が変わらないからである。したがって、Aは留置権を行使して明渡しを拒むことはできない。肢は正しい。

Aが右のような状況のもとに本件建物につき支出した有益費の償還請求権については、民法二九五条二項の類推適用により、上告人らは本件建物につき、右請求権に基づく留置権を主張することができない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 敷金返還請求権で建物の明渡しを拒む | 最判昭49.9.2 | 留置できない |
| 建物買取代金債権で敷地の明渡しを拒む | 大判昭18.2.18 | 建物とともに敷地も留置できる |
| 売主の代金債権で転売の買主からの引渡請求を拒む | 最判昭47.11.16 | 留置できる |
| 解除後に権原がないと知りながら支出した有益費 | 最判昭46.7.16 | 295条2項の類推で留置できない |
誤り。違うのは「留置権」にも物上代位性が認められるとする部分である。物上代位性は先取特権・質権・抵当権にあり(304条・350条・372条)、優先弁済的効力のない留置権にはない。
物上代位とは、担保の目的物が売却・賃貸・滅失・損傷によって金銭その他の物に変わったときに、その代わりの物にも担保権を行使できることをいう。304条1項は先取特権についてこれを定め、350条が質権に、372条が抵当権に準用している。物上代位は、担保物権が目的物の交換価値を支配し、そこから優先して弁済を受ける権利であることに根拠がある。これに対し、留置権は物を留め置いて債務者に弁済を間接的に強制する権利であり(295条1項)、目的物を換価してその代金から優先弁済を受ける効力を持たない。目的物が滅失して保険金請求権に変わっても、留め置く物がなくなる以上、留置権がその上に及ぶ理由はない。そのため留置権について304条を準用する規定はない。したがって、4つの担保物権のいずれにも物上代位性が認められるとする肢は誤っている。

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性あり。物上代位性・優先弁済的効力なし。留置的効力と競売申立権あり
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力あり。留置的効力なし
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力あり
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力あり。留置的効力なし
- 同一不動産上の順位:原則は登記の前後。登記した不動産保存・工事の先取特権は抵当権に優先(339条)
誤り。違うのは「留置権」にも物上代位性が認められるとする部分である。物上代位性は先取特権・質権・抵当権にあり(304条・350条・372条)、優先弁済的効力のない留置権にはない。
物上代位とは、担保の目的物が売却・賃貸・滅失・損傷によって金銭その他の物に変わったときに、その代わりの物にも担保権を行使できることをいう。304条1項は先取特権についてこれを定め、350条が質権に、372条が抵当権に準用している。物上代位は、担保物権が目的物の交換価値を支配し、そこから優先して弁済を受ける権利であることに根拠がある。これに対し、留置権は物を留め置いて債務者に弁済を間接的に強制する権利であり(295条1項)、目的物を換価してその代金から優先弁済を受ける効力を持たない。目的物が滅失して保険金請求権に変わっても、留め置く物がなくなる以上、留置権がその上に及ぶ理由はない。そのため留置権について304条を準用する規定はない。したがって、4つの担保物権のいずれにも物上代位性が認められるとする肢は誤っている。

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性あり。物上代位性・優先弁済的効力なし。留置的効力と競売申立権あり
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力あり。留置的効力なし
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力あり
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力あり。留置的効力なし
- 同一不動産上の順位:原則は登記の前後。登記した不動産保存・工事の先取特権は抵当権に優先(339条)
正しい。留置権の成立には物と債権の牽連性と占有が必要であるが、債権の成立時から占有している必要はない。
295条1項本文は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。成立要件は、他人の物の占有、その物に関して生じた債権の存在、債権が弁済期にあること(同項ただし書)、占有が不法行為によって始まったものでないこと(同条2項)であり、前段は条文の要件そのものである。条文は占有の取得と債権の成立の先後について何も定めていない。留置権は、物に関して生じた債権を持つ者にその物の留置を認めるのが公平だという趣旨の法定担保物権であるから、物と債権の牽連性がある以上、債権が成立した後に占有を取得しても、その時点で留置権が成立すると解して差し支えない。もっとも、占有が不法行為によって始まった場合には留置権は成立せず、占有権原がないことを知りながら占有を続けて費用を支出した者にも、判例は同項を類推適用している。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
誤り。違うのは「債務者との合意により留置権の設定を受けることはできる」の部分である。留置権も先取特権と同じく法定担保物権であり、合意で設定することはできない。
先取特権も留置権も、法律の定める要件を満たしたときに当然に成立する法定担保物権であり、当事者の合意によって設定することはできない。本肢の前段は正しい。留置権について、295条1項本文は、他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を持つときは、その弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。他人の物を占有していること、その物に関して生じた債権を持つこと、債権が弁済期にあること、占有が不法行為によって始まったものでないことという法定の要件を満たせば当然に成立するのであり、合意によって作り出すことはできない。合意によって設定できる担保物権は、質権と抵当権という約定担保物権に限られる。当事者が債務の履行まで物を引き渡さないと約束することはできるが、それは当事者の間の債権的な合意にすぎず、第三者にも主張できる物権としての留置権が生じるわけではない。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
- 留置権(法定):物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権(民事執行法195条)がある
- 先取特権(法定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
正しい。治療費は本人のために有益な費用であり、その償還請求権は犬に関して生じた債権であるから、Aは留置権によって引渡しを拒める(702条1項・295条1項)。
事務管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人にその償還を請求することができる(702条1項)。怪我をした犬に獣医の治療を受けさせた費用は、犬の飼い主のために有益な費用であるから、Aは飼い主に治療費の償還を請求できる。そして295条1項は、他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を持つときは、その弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。Aは他人の犬を占有しており、治療費の償還請求権は犬そのものに費やした費用から生じた債権であるから、物と債権の牽連性がある。事務管理によって適法に占有を始めているので、占有が不法行為によって始まったものでもない。したがって、Aは治療費の償還を受けるまで、飼い主への犬の引渡しを拒むことができる。事務管理には同時履行の規定はないが、留置権によって同じ目的を果たせるのである。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「当該債権がその物に関して生じたものでなくても,その商人は,当該債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」の部分である。商人間の留置権は双方が商人でなければ成立せず、商人でない顧客との間では民法の留置権しか使えない(商法521条、民法295条1項)。
商法521条本文は、商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者はその弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができると定める。民法295条1項の留置権が、留置する物に関して生じた債権であることを要するのと異なり、商人間の留置権は債権と物との個別の牽連性を要求せず、継続的な商取引の全体から生ずる債権を債務者の物で包括的に担保させる。その代わり、債権者と債務者の双方が商人であり、債権が双方にとって商行為となる行為から生じ、物の占有も債務者との商行為によって取得したことが要件になる。本肢の顧客は商人でなく、撮影代金債権は顧客にとって商行為によるものではないので、商人間の留置権は成立しない。残るのは民法295条1項の留置権だが、債権がその物に関して生じたものでない以上、これも成立しない。したがって写真業者は顧客の物を留置できず、肢は誤っている。

商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
| 民法の留置権(民法295条) | 商人間の留置権(商法521条) | |
|---|---|---|
| 当事者 | 限定なし | 双方が商人 |
| 債権 | その物に関して生じた債権(牽連性が要る) | 双方のために商行為となる行為によって生じた債権。牽連性不要 |
| 物 | 他人の物を占有 | 債務者との商行為によって占有した債務者所有の物・有価証券 |
| 排除 | – | 当事者の別段の意思表示で排除できる |
正しい。抵当権には物上代位の規定が準用されるが(372条・304条)、優先弁済的効力のない留置権には物上代位性がない。
304条1項は、先取特権は目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できると定め、払渡し又は引渡しの前に差押えを要求する。372条はこれを抵当権に準用するから、抵当不動産が第三者の不法行為によって滅失したときは、抵当権者は所有者が加害者に対して取得する損害賠償請求権に物上代位し、差押えをしたうえで優先弁済を受けられる。物上代位は、目的物の交換価値から優先弁済を受ける担保物権について、その価値が姿を変えた物にも効力を及ぼす制度である。これに対し、留置権は債権の弁済を受けるまで物を留置できる権利にすぎず(295条1項)、目的物の価値から優先弁済を受ける効力を持たないから、価値の代わりの物に効力を及ぼす基礎がなく、304条も準用されていない。したがって、両者を対比した肢は正しい。

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性があり、物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権がある
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
正しい。抵当権には物上代位の規定が準用されるが(372条・304条)、優先弁済的効力のない留置権には物上代位性がない。
304条1項は、先取特権は目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できると定め、払渡し又は引渡しの前に差押えを要求する。372条はこれを抵当権に準用するから、抵当不動産が第三者の不法行為によって滅失したときは、抵当権者は所有者が加害者に対して取得する損害賠償請求権に物上代位し、差押えをしたうえで優先弁済を受けられる。物上代位は、目的物の交換価値から優先弁済を受ける担保物権について、その価値が姿を変えた物にも効力を及ぼす制度である。これに対し、留置権は債権の弁済を受けるまで物を留置できる権利にすぎず(295条1項)、目的物の価値から優先弁済を受ける効力を持たないから、価値の代わりの物に効力を及ぼす基礎がなく、304条も準用されていない。したがって、両者を対比した肢は正しい。

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性があり、物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権がある
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
正しい。留置権は物を留置する権利であるから拒めるのは物の引渡しに限られる(295条1項)が、同時履行の抗弁権は自己の債務の履行一般を拒める(533条)。
295条1項本文は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。留置権の効力は留置している物の引渡しを拒むという形でしか現れないから、留置権によって拒める給付は物の引渡しに限られる。これに対し、533条本文は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定める。拒める対象は自己が負う債務そのものであるから、代金の支払、労務の提供、登記手続への協力など、物の引渡し以外の給付も含まれる。留置権は物を押さえることで弁済を促す担保物権であり、同時履行の抗弁権は双務契約の両債務の結び付きから公平のために認められる抗弁である、という性質の違いが表れているのである。したがって、肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。/双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 留置権 | 同時履行の抗弁権 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 物権(295条) | 双務契約の効力(533条) |
| 拒める給付 | 物の引渡しだけ | 自己の債務一般 |
| 主張できる相手 | 第三者にも | 契約の相手方(債権譲受人・代位債権者を含む) |
| 占有の喪失 | 消滅する(302条) | 影響を受けない |
| 代担保による消滅請求 | できる(301条) | できない |
| 訴訟での扱い | 引換給付判決 | 引換給付判決 |
正しい。留置権は物を留置する権利であるから拒めるのは物の引渡しに限られる(295条1項)が、同時履行の抗弁権は自己の債務の履行一般を拒める(533条)。
295条1項本文は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。留置権の効力は留置している物の引渡しを拒むという形でしか現れないから、留置権によって拒める給付は物の引渡しに限られる。これに対し、533条本文は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定める。拒める対象は自己が負う債務そのものであるから、代金の支払、労務の提供、登記手続への協力など、物の引渡し以外の給付も含まれる。留置権は物を押さえることで弁済を促す担保物権であり、同時履行の抗弁権は双務契約の両債務の結び付きから公平のために認められる抗弁である、という性質の違いが表れているのである。したがって、肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。/双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 留置権 | 同時履行の抗弁権 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 物権(295条) | 双務契約の効力(533条) |
| 拒める給付 | 物の引渡しだけ | 自己の債務一般 |
| 主張できる相手 | 第三者にも | 契約の相手方(債権譲受人・代位債権者を含む) |
| 占有の喪失 | 消滅する(302条) | 影響を受けない |
| 代担保による消滅請求 | できる(301条) | できない |
| 訴訟での扱い | 引換給付判決 | 引換給付判決 |
正しい。留置権は他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに成立し(295条1項本文)、占有が不法行為によって始まった場合には成立しない(同条2項)。
295条1項本文は、他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができると定め、同条2項は、この規定は占有が不法行為によって始まった場合には適用しないとする。留置権は、物を手元に留め置いて返還を拒むことで債務者に弁済を間接的に促す権利であるから、債権者が目的物を占有していることが成立の前提であり、占有を失えば留置権も消滅する(302条)。また、他人の物を盗んだり、権原のないことを知りながら占有したりした者が、その物について費用を支出したことを理由に返還を拒めるとすると、違法に物を奪った者を保護することになり、公平に反する。そこで、占有が不法行為によって始まった場合には留置権を認めないこととしたのである。したがって、本肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
正しい。留置権は、その物に関して生じた債権が弁済期にないときは成立しない(295条1項ただし書)。
295条1項ただし書は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有する場合でも、その債権が弁済期にないときは、物を留置することができないと定める。留置権は、債権の弁済を受けるまで物の返還を拒むことで弁済を促す権利であるから、まだ債務者が弁済する必要のない段階で物の返還を拒むことを認めると、債務者に期限前の弁済を事実上強いることになり、債権に付された期限の利益を奪う結果となる。そこで、被担保債権の弁済期が到来していることを留置権の成立要件としたのである。この点に関連して、建物の賃借人が有益費の償還を請求する場合に、裁判所が賃貸人の請求により償還について相当の期限を許与すると(608条2項ただし書・196条2項ただし書)、弁済期が到来していないことになり、留置権は成立しない(299条2項ただし書参照)。したがって、本肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「それに基づく本権の訴えとして返還請求権を行使することができる」の部分である。留置権は留置物の占有を失うことによって消滅するので(302条)、留置権に基づく返還請求はできない。
295条1項は、他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。留置権は物を占有して留め置く権利を内容とする物権であるが、302条本文は、留置権は留置権者が留置物の占有を失うことによって消滅すると定める。留置権は占有を成立と存続の要件とする権利であるから、第三者に目的物を奪われて占有を失えば、留置権そのものが消滅し、留置権に基づいて物の返還を求める余地はない。占有が成立要件であるのに、占有を失った後にその権利に基づいて占有の回復を求めるのは論理的に成り立たないからである。そのため、占有を奪われた留置権者は、占有回収の訴え(200条1項)によって占有を回復するしかなく、回復すれば留置権は消滅しなかったものとされる。本肢は誤りである。

留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
- 所有権:返還請求できる(物権的請求権)
- 地上権:土地の所有者に対しても返還請求できる
- 対抗要件を備えた不動産賃借権:占有する第三者に返還請求できる(605条の4)
- 留置権:占有を失えば消滅するので返還請求できない(302条)。占有回収の訴えによる
- 一般先取特権:占有する権利を含まないので返還請求できない
- 占有の訴えと本権の訴え:互いに妨げない(202条1項)
誤り。違うのは「留置権」も被担保債権の譲渡によって債権譲受人に移転するとする部分である。留置権は目的物の占有を成立と存続の要件とするので、目的物の占有が移転しなければ譲受人に移転しない。
担保物権は被担保債権を担保するためのものであるから、被担保債権が譲渡されると担保物権もこれに伴って譲受人に移転する(随伴性)。先取特権や質権は、被担保債権の譲渡に伴って譲受人に移転する。これに対し、295条1項は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに留置権が成立すると定め、302条は、留置権は留置物の占有を失うことによって消滅すると定める。留置権は目的物の占有を成立と存続の要件とする権利であるから、被担保債権が譲渡されても、目的物の占有が譲受人に移転しなければ、譲受人は留置権を取得できない。占有の移転を伴えば留置権も移転するという意味で随伴性はあるが、債権の譲渡だけで当然に移転するわけではない。本肢は誤りである。

留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
- 留置権(法定):付従性・随伴性・不可分性があり、物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権がある
- 先取特権(法定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
誤り。違うのは「法定の用益物権は存在しない」の部分である。民法は法定の用益物権として法定地上権を定めている(388条)。
民法は、当事者の合意によらず法律上当然に成立する担保物権として留置権(295条)と先取特権(303条)を定めており、法定の担保物権は存在する。用益物権も、地上権が設定契約によって取得されることが多いとはいえ、法律上当然に成立するものがある。388条は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物に抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなすと定める。同一所有者のもとでは自己の土地に利用権を設定できないので、競売で土地と建物の所有者が分かれると建物が土地利用権を持たないまま取り壊しを迫られることになり、それを防ぐために法律が地上権を成立させたのである。したがって法定の用益物権も存在し、本肢は誤りである。

土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
正しい。Aは売買代金債権という甲動産に関して生じた債権について留置権を取得しており、留置権は物権であるから、甲動産を譲り受けたCにも対抗できる(295条1項)。
295条1項は、他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。AがBに甲動産を売れば、特約がない限り所有権は契約によってBに移転するから、引渡し前の甲動産を占有するAは他人の物の占有者に当たり、売買代金債権はその物の売買から生じた債権として物との牽連性がある。したがって、Aは代金の弁済を受けるまで甲動産を留置できる。留置権は物権であり、いったん成立すれば債務者以外の第三者に対しても主張できるので、BからCが甲動産を譲り受けても、Cは留置権の付いた物を取得したにすぎない。そのため、Cからの引渡請求に対しても、Aは留置権を行使して引渡しを拒むことができ、本肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。










































