無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
1行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
この条文の過去問 37問
誤り。違うのは「成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ、自らその契約を取り消すことができない」の部分である。未成年者は単独で取り消すことができる。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消権者として、制限行為能力者本人を代理人・承継人・同意権者と並べて掲げ、本人が取り消すのに同意権者の同意を要するとはしていない。取消しは、すでにした法律行為を初めから無効とし(121条)、原状回復の関係を生じさせるだけで、未成年者に新たな負担を負わせるものではないから、単独でさせても保護に欠けることはない。かえって同意を要するとすれば、親権者が同意しない限り未成年者は不利な契約から離れられず、保護の趣旨に反する。これに対し追認は、取消権を放棄して契約を確定的に有効にする行為であるから、124条2項2号が成年前の追認に法定代理人の同意を求めている(肢エ)。本肢は、追認についての同意の要求を取消しにまで及ぼしている点が誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
| 取消し | 追認 | |
|---|---|---|
| 性質 | 行為を初めから無効にする(121条) | 取消権を放棄して行為を確定させる(122条) |
| 成年前に本人がするとき | 同意は要らない(120条1項) | 法定代理人の同意が要る(124条2項2号) |
| 成年後に本人がするとき | 単独でできる | 取消権を有することを知った後なら単独でできる(124条1項) |
誤り。違うのは「成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ、自らその契約を取り消すことができない」の部分である。未成年者は単独で取り消すことができる。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消権者として、制限行為能力者本人を代理人・承継人・同意権者と並べて掲げ、本人が取り消すのに同意権者の同意を要するとはしていない。取消しは、すでにした法律行為を初めから無効とし(121条)、原状回復の関係を生じさせるだけで、未成年者に新たな負担を負わせるものではないから、単独でさせても保護に欠けることはない。かえって同意を要するとすれば、親権者が同意しない限り未成年者は不利な契約から離れられず、保護の趣旨に反する。これに対し追認は、取消権を放棄して契約を確定的に有効にする行為であるから、124条2項2号が成年前の追認に法定代理人の同意を求めている(肢エ)。本肢は、追認についての同意の要求を取消しにまで及ぼしている点が誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
| 取消し | 追認 | |
|---|---|---|
| 性質 | 行為を初めから無効にする(121条) | 取消権を放棄して行為を確定させる(122条) |
| 成年前に本人がするとき | 同意は要らない(120条1項) | 法定代理人の同意が要る(124条2項2号) |
| 成年後に本人がするとき | 単独でできる | 取消権を有することを知った後なら単独でできる(124条1項) |
誤り。違うのは「その後見人は、その贈与を取り消すことができない」の部分である。成年被後見人の法律行為は日常生活に関する行為を除き取り消すことができ、土地の贈与を受けることもこれに含まれる(9条・120条1項)。
9条は、成年被後見人の法律行為は取り消すことができ、ただし日用品の購入その他日常生活に関する行為についてはこの限りでないと定める。贈与を受けることも契約という法律行為であり、9条本文の対象になる。未成年者については、単に権利を得る行為は法定代理人の同意が要らないとされているが(5条1項ただし書)、成年被後見人にはそのような例外が置かれていない。成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にある者であり(7条)、行為が有利か不利かを自分で判断できないので、有利に見える行為でも保護の対象から外さないのである。土地の贈与は、所有に伴う管理や税の負担も生じさせ、日常生活に関する行為とはいえない。したがって、成年後見人はその贈与を取り消すことができる(120条1項)。肢は取り消せないとしており、誤っている。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
正しい。取消権者は120条が限定しており、保証人はこれに含まれないから、主たる債務の発生原因である法律行為を保証人が取り消すことはできない。
120条は、行為能力の制限による取消しについては制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者に、錯誤・詐欺・強迫による取消しについては瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人に、取消権者を限っている。取消しは、意思表示に瑕疵があった者や保護されるべき者が、その法律行為の効力を維持するか否かを選ぶための権利であるから、法律行為の当事者でない保証人にその選択を委ねる理由はない。判例も、取り消すことができる行為に基づく債務の保証人は取消権を有しないとしている(大判昭20.5.21)。もっとも、保証人が無防備に置かれるわけではない。主たる債務者が取消権を有するときは、保証人は、その行使によって主たる債務者が債務を免れるべき限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(457条3項)。保証人に与えられているのは取消権ではなく、履行を拒む権利である。

主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
- 行為能力の制限による取消し(120条1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者(保佐人、同意権付与の審判を受けた補助人)
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(120条2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 承継人:相続人などの包括承継人と、契約上の地位を譲り受けた者が当たる。目的物を譲り受けただけの者は当たらない
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の占有者、目的物の譲受人
正しい。120条に規定する者が追認すれば、以後その行為は取り消すことができず(122条)、被保佐人の代理人もこれに当たる。
122条は、取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは以後取り消すことができないと定める。追認は取消権の放棄であり、追認できる者は取消権者と一致する。120条1項は、行為能力の制限による取消しの取消権者として制限行為能力者の代理人を掲げており、特定の法律行為について代理権を付与する審判(876条の4第1項)を受けた保佐人のように被保佐人の法定代理人となる者は、これに当たる。また、追認は取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じないのが原則であるが(124条1項)、法定代理人や保佐人が追認するときはこの制限を受けない(同条2項1号)。したがって、法定代理人が追認すれば行為は確定的に有効となり、取消権は被保佐人A本人についても消滅するから、Aは以後取り消すことができない。取消権者の一人がした追認は、他の取消権者の取消権も失わせるのである。

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
正しい。取消権者は120条が限定しており、保証人はこれに含まれないから、主たる債務の発生原因である法律行為を保証人が取り消すことはできない。
120条は、行為能力の制限による取消しについては制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者に、錯誤・詐欺・強迫による取消しについては瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人に、取消権者を限っている。取消しは、意思表示に瑕疵があった者や保護されるべき者が、その法律行為の効力を維持するか否かを選ぶための権利であるから、法律行為の当事者でない保証人にその選択を委ねる理由はない。判例も、取り消すことができる行為に基づく債務の保証人は取消権を有しないとしている(大判昭20.5.21)。もっとも、保証人が無防備に置かれるわけではない。主たる債務者が取消権を有するときは、保証人は、その行使によって主たる債務者が債務を免れるべき限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(457条3項)。保証人に与えられているのは取消権ではなく、履行を拒む権利である。

主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
- 行為能力の制限による取消し(120条1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者(保佐人、同意権付与の審判を受けた補助人)
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(120条2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 承継人:相続人などの包括承継人と、契約上の地位を譲り受けた者が当たる。目的物を譲り受けただけの者は当たらない
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の占有者、目的物の譲受人
正しい。120条に規定する者が追認すれば、以後その行為は取り消すことができず(122条)、被保佐人の代理人もこれに当たる。
122条は、取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは以後取り消すことができないと定める。追認は取消権の放棄であり、追認できる者は取消権者と一致する。120条1項は、行為能力の制限による取消しの取消権者として制限行為能力者の代理人を掲げており、特定の法律行為について代理権を付与する審判(876条の4第1項)を受けた保佐人のように被保佐人の法定代理人となる者は、これに当たる。また、追認は取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じないのが原則であるが(124条1項)、法定代理人や保佐人が追認するときはこの制限を受けない(同条2項1号)。したがって、法定代理人が追認すれば行為は確定的に有効となり、取消権は被保佐人A本人についても消滅するから、Aは以後取り消すことができない。取消権者の一人がした追認は、他の取消権者の取消権も失わせるのである。

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
誤り。違うのは「Bも,Aの錯誤を理由としてAの意思表示を取り消すことができる」の部分である。錯誤による取消しができるのは、表意者とその代理人・承継人に限られる(120条2項)。
120条2項は、錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができると定める。錯誤による取消しは、思い違いによって不利益を受ける表意者を守るための制度であり、相手方の利益のための制度ではないからである。本肢で錯誤に陥ったのはAであるから、取り消すことができるのはAとその代理人・承継人であり、意思表示の相手方にすぎないBが、Aの錯誤を理由にAの意思表示を取り消すことはできない。Bによる取消しを認めると、Aが契約をそのまま続けたいと考えている場合でも、Bの都合で契約を覆せることになり、表意者を守るという制度の趣旨に反する。改正前は錯誤の効果は無効とされていたが、判例も、表意者自身に無効を主張する意思がないときは、原則として第三者が無効を主張することはできないとしていた。現行法が効果を取消しに改めたことで、主張できる者は条文上も表意者の側に限られることになった。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 取消権者(120条2項):表意者とその代理人・承継人。相手方は取り消せない
- 表意者の重大な過失(95条3項):原則として取り消せない。相手方が悪意・重過失のとき(1号)、相手方も同一の錯誤に陥っていたとき(2号)は取り消せる
- 第三者(95条4項):取消し前に利害関係に入った善意無過失の第三者に対抗できない
- 返還の範囲(121条の2):原則は原状回復。無償行為の善意の受領者は現存利益
誤り。違うのは「Bも,Aの錯誤を理由としてAの意思表示を取り消すことができる」の部分である。錯誤による取消しができるのは、表意者とその代理人・承継人に限られる(120条2項)。
120条2項は、錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができると定める。錯誤による取消しは、思い違いによって不利益を受ける表意者を守るための制度であり、相手方の利益のための制度ではないからである。本肢で錯誤に陥ったのはAであるから、取り消すことができるのはAとその代理人・承継人であり、意思表示の相手方にすぎないBが、Aの錯誤を理由にAの意思表示を取り消すことはできない。Bによる取消しを認めると、Aが契約をそのまま続けたいと考えている場合でも、Bの都合で契約を覆せることになり、表意者を守るという制度の趣旨に反する。改正前は錯誤の効果は無効とされていたが、判例も、表意者自身に無効を主張する意思がないときは、原則として第三者が無効を主張することはできないとしていた。現行法が効果を取消しに改めたことで、主張できる者は条文上も表意者の側に限られることになった。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 取消権者(120条2項):表意者とその代理人・承継人。相手方は取り消せない
- 表意者の重大な過失(95条3項):原則として取り消せない。相手方が悪意・重過失のとき(1号)、相手方も同一の錯誤に陥っていたとき(2号)は取り消せる
- 第三者(95条4項):取消し前に利害関係に入った善意無過失の第三者に対抗できない
- 返還の範囲(121条の2):原則は原状回復。無償行為の善意の受領者は現存利益
正しい。錯誤による取消しは、瑕疵ある意思表示をした者のほか、その承継人もすることができ、契約上の地位の承継人も含まれる(120条2項)。
120条2項は、錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができると定める。承継人には、相続人のような包括承継人のほか、特定承継人も含まれる。もっとも、取消権は契約を初めからなかったことにする権利なので、契約から切り離して取消権だけを譲ることはできず、特定承継人が取消権を持つのは、取消しの対象となる契約上の地位そのものを引き継いだ場合である。契約上の地位の移転(539条の2)を受けた者は、その契約から生じる権利義務をまとめて引き継ぎ、契約の効力を争う立場も受け継ぐので、前の表意者が持っていた取消権を自ら行使できる。目的物を譲り受けただけの者はこれに当たらない。したがって、錯誤による意思表示をした者の契約上の地位の承継人も取り消すことができ、肢は正しい。改正前は錯誤の効果は無効であったが、現行法は取消しに改め、120条2項に錯誤を加えた。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 承継人:相続人などの包括承継人と、契約上の地位を譲り受けた者が当たる。目的物を譲り受けただけの者は当たらない
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の譲受人
誤り。違うのは「Aに要素の錯誤があることをもって,再抗弁とすることができる」の部分である。錯誤を主張できるのは表意者側に限られ、第三者のBがAの錯誤を理由に第2売買契約の効力を否定することはできない。
出題当時は錯誤の効果は無効とされていたが、判例(最判昭40.9.10)は、95条の趣旨は瑕疵ある意思表示をした当事者を保護することにあるから、表意者自身が錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないのに、第三者が錯誤による無効を主張することは原則として許されないとしていた。現行法では、錯誤による意思表示は取り消すことができるものとされ(95条1項)、錯誤によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができる(120条2項)。Bは本件第2売買契約の当事者でもAの承継人でもないから、Aの錯誤を理由に第2売買契約の効力を否定することはできない。したがって、BはAの錯誤をCの所有権喪失の抗弁に対する再抗弁とすることはできず、本肢は誤りである。肢の要素の錯誤は、現行法では法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤にあたり、結論は出題当時と変わらない。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
| 段階 | 主張する者 | 要件事実 |
|---|---|---|
| 請求原因 | B | Aのもと所有、本件第1売買契約の成立、C名義の登記の存在 |
| 対抗要件の抗弁 | C | 本件第2売買契約の成立、Bが登記を備えるまで所有権取得を認めないとの権利主張 |
| 対抗要件具備による所有権喪失の抗弁 | C | 本件第2売買契約の成立、Cの登記がこれに基づくこと |
| 背信的悪意者の再抗弁 | B | Cの悪意と、背信性を基礎づける評価根拠事実 |
正しい。未成年を理由とする取消しには第三者を保護する規定がなく、取り消された売買は初めから無効とみなされるから(121条)、善意無過失のCも所有権の取得を主張できない。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は取り消すことができ(5条2項)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。AがBに対する売買を取り消せば、Bは初めから無権利者であったことになり、Bから買ったCも原則として所有権を取得できない。錯誤による取消しには95条4項、詐欺による取消しには96条3項が、善意でかつ過失がない第三者を保護する規定を置いているが、制限行為能力を理由とする取消しにはそのような規定がない。判断能力が十分でない者を、本人の落ち度を問わずに一律に保護し、取引の安全よりも優先させる趣旨である。また、取消し前に現れた第三者との関係は、二重に物権変動が生じる場面ではないから、177条の対抗問題にならない。したがって、CがAの未成年を過失なく知らず登記を備えていても保護されず、CはAに対して甲土地の所有権の取得を主張できない。これに対し、取消し後に現れた第三者との関係は177条の対抗問題として登記の先後で決まる。

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
| 場面 | 取消し・解除の前に現れた第三者 | 後に現れた第三者 |
|---|---|---|
| 制限行為能力による取消し | 保護規定がなく、登記があっても保護されない(121条) | 177条の対抗問題(登記の先後) |
| 錯誤・詐欺による取消し | 善意でかつ過失がない第三者は保護される(95条4項・96条3項) | 177条の対抗問題 |
| 強迫による取消し | 保護規定がなく保護されない | 177条の対抗問題 |
| 解除 | 第三者の権利を害せない(545条1項ただし書)。善意悪意を問わず、登記を要する | 177条の対抗問題 |
正しい。営業を許された未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する(6条1項)。
6条1項は「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と定めており、本肢はその文言どおりである。法定代理人から特定の営業の許可を受けた未成年者は、その営業の範囲内の行為を同意なしに単独ででき、未成年を理由に取り消すこともできない。営業は継続的・反復的に多数の取引を伴うので、取引ごとに同意の有無を問うと営業が成り立たず、相手方の地位も不安定になるから、包括的に行為能力を認めたのである。もっとも、条文が「一種又は数種」と限っているので、種類を特定しない一切の営業の許可は5条の潜脱となり許されない。未成年者が営業に堪えない事由があれば、法定代理人は許可を取り消し、又は制限することができる(6条2項)。許可された営業に関しない行為には、なお5条が適用される。

一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
- 単に権利を得、又は義務を免れる行為(5条1項ただし書)
- 目的を定めて処分を許した財産:その目的の範囲内で処分できる(5条3項前段)
- 目的を定めないで処分を許した財産:自由に処分できる(5条3項後段)
- 許された営業に関する行為:成年者と同一の行為能力を有する(6条1項)
- 日常生活に関する行為:未成年者には例外規定がなく、同意がなければ取り消せる
正しい。制限行為能力者本人も取消権者であり(120条1項)、取消しに法定代理人の同意は要らない。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は取り消すことができ(5条1項本文・2項)、120条1項は取消権者として制限行為能力者本人を第一に掲げている。本人が取消しの意思表示をするのに法定代理人の同意を要するとする規定はない。取消しは行為を初めから無効であったものとみなすだけで(121条)、未成年者に新たな義務や不利益を負わせるものではないからである。取消しに同意を要求すると、保護されるべき未成年者から救済の手段を奪うことになり、5条の趣旨に反する。取消し後の原状回復も、行為の時に制限行為能力者であった者は現に利益を受けている限度で返還すれば足りるので(121条の2第3項後段)、単独で取り消させても未成年者に不利益は生じない。これに対し、追認は取り消すことができる行為を確定させるので、未成年者が単独ですることはできない(124条1項)。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
誤り。違うのは「Aは当該売買契約を取り消すことができない」の部分である。代理人がだまされた場合、詐欺の有無は代理人について決し、取消権は契約の当事者である本人Aに帰属する(101条1項・120条2項)。
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が詐欺によって影響を受けるべき場合、その事実の有無は代理人について決する(101条1項)。本肢では代理人B自身が相手方Cにだまされているから、96条1項の詐欺に当たる。もっとも、代理人がした意思表示は本人に対して直接効力を生じ(99条1項)、契約の当事者は本人Aであるから、契約に付着する瑕疵を理由とする取消権もAに帰属する。120条2項の「瑕疵ある意思表示をした者」は、代理行為の場合は本人を指す。他方、Bが取り消せるのは、法定代理人である場合か、本人から取消しの代理権を与えられている場合に限られ、売買契約を結ぶ代理権に取消しの代理権が当然に含まれるわけではない。肢はAの取消しを否定し、Bの取消しを無条件に認めており、結論が逆である。Cは契約の相手方であるから、第三者による詐欺の96条2項は問題にならない。

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
- 相手方が代理人をだました:101条1項で代理人について決するので詐欺に当たり、本人が96条1項により取り消せる
- 代理人が相手方をだました:本人は96条2項の第三者に当たらないので、相手方は本人の善意悪意を問わず取り消せる
- 代理人が本人をだまして契約させた:96条2項が働き、相手方が悪意又は有過失のときに限り本人は取り消せる
- 本人が相手方をだました:当事者による詐欺なので、相手方は代理人の善意悪意を問わず取り消せる
誤り。違うのは「Aは当該売買契約を取り消すことができない」の部分である。代理人がだまされた場合、詐欺の有無は代理人について決し、取消権は契約の当事者である本人Aに帰属する(101条1項・120条2項)。
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が詐欺によって影響を受けるべき場合、その事実の有無は代理人について決する(101条1項)。本肢では代理人B自身が相手方Cにだまされているから、96条1項の詐欺に当たる。もっとも、代理人がした意思表示は本人に対して直接効力を生じ(99条1項)、契約の当事者は本人Aであるから、契約に付着する瑕疵を理由とする取消権もAに帰属する。120条2項の「瑕疵ある意思表示をした者」は、代理行為の場合は本人を指す。他方、Bが取り消せるのは、法定代理人である場合か、本人から取消しの代理権を与えられている場合に限られ、売買契約を結ぶ代理権に取消しの代理権が当然に含まれるわけではない。肢はAの取消しを否定し、Bの取消しを無条件に認めており、結論が逆である。Cは契約の相手方であるから、第三者による詐欺の96条2項は問題にならない。

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
- 相手方が代理人をだました:101条1項で代理人について決するので詐欺に当たり、本人が96条1項により取り消せる
- 代理人が相手方をだました:本人は96条2項の第三者に当たらないので、相手方は本人の善意悪意を問わず取り消せる
- 代理人が本人をだまして契約させた:96条2項が働き、相手方が悪意又は有過失のときに限り本人は取り消せる
- 本人が相手方をだました:当事者による詐欺なので、相手方は代理人の善意悪意を問わず取り消せる
正しい。錯誤による意思表示を取り消せるのは表意者とその代理人・承継人に限られ、表意者Aにその意思がないのに相手方Bが錯誤を主張することはできない(120条2項)。
現行95条1項は、要件を満たす錯誤に基づく意思表示を取り消すことができるとし、120条2項は、錯誤・詐欺・強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができると定める。錯誤の規定は表意者を守るためのものであるから、取り消すかどうかは表意者の判断に委ねられ、相手方には取消権が与えられていない。したがって、表意者Aに錯誤を主張する意思がないときに、相手方Bが錯誤を理由にAの意思表示の効力を否定することはできず、肢は正しい。出題当時は、錯誤は意思表示を無効にするとされていた(旧95条)が、この無効も表意者を守るためのものであり、表意者自身に無効を主張する意思がないときは、原則として相手方や第三者が無効を主張することはできないと解されていた。平成29年改正で錯誤は取消原因とされ、取消権者を限る120条2項によってこの結論が条文上明らかになった。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
正しい。錯誤による意思表示を取り消せるのは表意者とその代理人・承継人に限られ、表意者Aにその意思がないのに相手方Bが錯誤を主張することはできない(120条2項)。
現行95条1項は、要件を満たす錯誤に基づく意思表示を取り消すことができるとし、120条2項は、錯誤・詐欺・強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができると定める。錯誤の規定は表意者を守るためのものであるから、取り消すかどうかは表意者の判断に委ねられ、相手方には取消権が与えられていない。したがって、表意者Aに錯誤を主張する意思がないときに、相手方Bが錯誤を理由にAの意思表示の効力を否定することはできず、肢は正しい。出題当時は、錯誤は意思表示を無効にするとされていた(旧95条)が、この無効も表意者を守るためのものであり、表意者自身に無効を主張する意思がないときは、原則として相手方や第三者が無効を主張することはできないと解されていた。平成29年改正で錯誤は取消原因とされ、取消権者を限る120条2項によってこの結論が条文上明らかになった。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
誤り。違うのは「成年後見人が取り消すことができる」の部分である。行為能力の制限の規定は遺言には適用されない(962条)。
成年被後見人の法律行為は、日用品の購入など日常生活に関する行為を除き、取り消すことができるのが原則である(9条・120条1項)。しかし962条は、5条・9条・13条・17条の規定は遺言については適用しないと定めている。遺言は遺言者の最終の意思を尊重するための行為であって代理になじまず、また遺言が効力を生じる時には遺言者はすでに死亡しているので、行為能力の制度が予定する本人自身の財産的な保護を図る必要がないからである。したがって、成年後見人が9条を根拠に成年被後見人の遺言を取り消すことはできない。もっとも、遺言をする時には遺言能力が必要であり(963条)、成年被後見人が遺言をするには、事理を弁識する能力を一時回復した時に、医師2人以上の立会いのもとでしなければならない(973条)。この方式を欠く遺言は、取消しの問題ではなく無効となる。

第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
誤り。違うのは「その契約の無効を主張することができない」の部分である。保佐人の同意で失われるのは行為能力の制限による取消権だけであり、重要な錯誤があり重大な過失がなければ、被保佐人は錯誤を主張できる(95条)。
保佐人の同意を得てした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができなくなる(13条4項の反対解釈)。しかし、それで失われるのは行為能力の制度による取消権だけであり、意思表示そのものの瑕疵による主張まで失われるわけではない。行為能力の制度は判断能力の不十分な者を一律に守るため行為を取り消せるものとする制度であるのに対し、錯誤(95条)は個々の意思表示ができあがる過程に問題があった場合に表意者を救う制度であり、趣旨も要件も別である。保佐人の同意という行為能力の制度の要件が満たされても、錯誤が成立するかどうかには関係しない。本肢の被保佐人は売買契約の要素について錯誤に陥り、重大な過失もないから、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要であれば、錯誤を理由に意思表示の効力を否定できる。したがって肢は誤っている。出題当時の錯誤の効果は無効であったが、平成29年改正で取消しに改められた(95条1項)。保佐人の同意が錯誤の主張を妨げないという結論は変わらない。

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
誤り。違うのは「その契約の無効を主張することができない」の部分である。保佐人の同意で失われるのは行為能力の制限による取消権だけであり、重要な錯誤があり重大な過失がなければ、被保佐人は錯誤を主張できる(95条)。
保佐人の同意を得てした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができなくなる(13条4項の反対解釈)。しかし、それで失われるのは行為能力の制度による取消権だけであり、意思表示そのものの瑕疵による主張まで失われるわけではない。行為能力の制度は判断能力の不十分な者を一律に守るため行為を取り消せるものとする制度であるのに対し、錯誤(95条)は個々の意思表示ができあがる過程に問題があった場合に表意者を救う制度であり、趣旨も要件も別である。保佐人の同意という行為能力の制度の要件が満たされても、錯誤が成立するかどうかには関係しない。本肢の被保佐人は売買契約の要素について錯誤に陥り、重大な過失もないから、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要であれば、錯誤を理由に意思表示の効力を否定できる。したがって肢は誤っている。出題当時の錯誤の効果は無効であったが、平成29年改正で取消しに改められた(95条1項)。保佐人の同意が錯誤の主張を妨げないという結論は変わらない。

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
誤り。違うのは「その追認があったことを表意者本人が知らなかったときは,表意者本人は,その法律行為を取り消すことができる」の部分である。取消権者の一人が追認すれば、以後は誰も取り消すことができない(122条)。
詐欺によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができ(120条2項)、122条は、取り消すことができる行為は120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができないと定める。表意者の法定代理人は同条にいう代理人に当たるから、その追認は取消権者による追認であり、行為は有効なものとして確定する。追認は取消権を放棄する意思表示であり、取消権者のうち一人がこれをすれば、不安定な状態を終わらせて相手方を保護するという追認の目的が達せられ、ほかの取消権者がなお取り消せるとすると確定の意味がなくなるからである。法定代理人の追認の効力は、表意者本人がそれを知っていたかどうかに左右されない。本肢は本人の不知を理由に取消しを認めている点が誤りである。

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
正しい。錯誤による意思表示を取り消せるのは表意者とその代理人・承継人に限られ(120条2項)、表意者Bにその意思がない以上、第三者Cは売買契約の効力を否定して明渡しを拒むことはできない。
錯誤の規定は、意思表示に対応する意思を欠くなどした表意者を守るための制度である。現行95条1項は錯誤の効果を取消しとし、錯誤によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができる(120条2項)。本肢のCは売買契約の当事者でもBの承継人でもない土地の占有者であり、取消権者に当たらないから、売買契約の効力を否定してBの所有権に基づく明渡請求を拒むことはできない。出題当時の旧95条は錯誤の効果を無効としていたが、判例(最判昭40.9.10)は、錯誤無効は表意者を守る制度であるから、表意者に無効を主張する意思がないときは第三者が無効を主張することは原則として許されないとしていた。本肢はBに無効を主張する意思がない場合であるから、出題当時の判例によっても現行法によっても結論は同じである。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
誤り。違うのは「契約の相手方も取消権を有する」の部分である。行為能力の制限による取消権者は制限行為能力者やその代理人などに限られ、相手方は含まれない(120条1項)。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定める。取消権は、判断能力が十分でない制限行為能力者を、その者にとって不利な契約から守るために与えられたものであるから、保護される側とその保護者にだけ認めれば足りる。契約の相手方は、制限行為能力者と知りつつ又は知らずに取引をした者であり、その者に取消権を与える理由はない。相手方は、取り消されるかどうか分からない不安定な立場に置かれるが、その解消のために、法律は催告権を与えている。すなわち、相手方は、行為能力者となった本人や法定代理人などに対し、1か月以上の期間を定めて追認するかどうかを確答するよう催告でき、確答がなければ追認又は取消しとみなされる(20条)。また、詐術を用いた制限行為能力者は取り消すことができない(21条)。本肢は相手方にも取消権を認めている点が誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の占有者、目的物の譲受人
正しい。法定代理人の同意を得ない未成年者の契約は取り消すことができ、取り消せることを知って締結したことは取消しを妨げない(5条2項)。
未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければならず、同意を得ないでした法律行為は取り消すことができる(5条1項本文・2項)。この取消権は、判断能力が十分でない未成年者を不利な取引から守るためのものである。未成年者が、後で取り消せることを知りながら契約を結んだとしても、そのことで取消権が失われるとする規定はない。取り消せると知っていることと、取引の利害を正しく判断できることとは別であり、知っていたことを理由に保護を外すと、未成年者を保護する制度の趣旨が失われるからである。これに対し、未成年者が自分を行為能力者だと信じさせるために詐術を用いたときは、もはや保護する必要がないから取り消すことができない(21条)。単に取り消せることを知っていただけでは、詐術には当たらない。本肢は取消しを認めているから正しい。

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。/前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
正しい。債権保全の必要があり表意者が錯誤を認めているときは、債権者は錯誤を主張し、その結果生ずる表意者の債権を代位行使できる(最判昭45.3.26。現行法では取消権の代位行使)。
判例(最判昭45.3.26)は、要素の錯誤については、表意者自身が意思表示の瑕疵を認めず、錯誤を理由に無効を主張する意思がないときは、原則として第三者が無効を主張することは許されないが、第三者が表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者自身に無効を主張する意思がなくても、債権者は錯誤による無効を主張することが許されるとした。錯誤は表意者を守る制度であるが、表意者が瑕疵を認めている以上、債権者が錯誤を主張しても表意者の意思に反せず、責任財産を守る必要もあるからである。現行法では錯誤の効果は取消しとされ、取消権者は表意者やその代理人・承継人に限られるが(120条2項)、債権者は債権保全の必要があれば、表意者の取消権とその行使によって生ずる返還請求権を代位行使できると解される(423条1項)。本肢の結論は現行法でも変わらない。

当該第三者において表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者みずからは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することが許される
正しい。行為能力の制限による取消しができるのは制限行為能力者やその代理人などに限られ(120条1項)、保証人は取消権者に当たらないから、主たる債務者の貸金契約を保証人の資格で取り消すことはできない。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定める。取消権は制限行為能力者を保護するための権利であり、取り消すかどうかの判断は本人の側に委ねられるからである。保証人はこのいずれにも当たらないから、保証人の資格で未成年者の貸金契約を取り消すことはできない。判例も、制限行為能力者の債務を保証した者は保証人の資格においてはその債務の原因である行為を取り消すことができないとしている。この結論は、保証人が保証契約の時に未成年者であることを知らなかった場合でも変わらない。知っていたかどうかは取消権者に当たるかどうかとは関係がないからである。なお、未成年者側が契約を取り消したときは、主たる債務が消滅して付従性により保証債務も消滅するが、取消しの原因を知って保証した者は、同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定される(449条)。したがって、肢は正しい。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
正しい。行為能力の制限による取消しができるのは制限行為能力者やその代理人などに限られ(120条1項)、保証人は取消権者に当たらないから、主たる債務者の貸金契約を保証人の資格で取り消すことはできない。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定める。取消権は制限行為能力者を保護するための権利であり、取り消すかどうかの判断は本人の側に委ねられるからである。保証人はこのいずれにも当たらないから、保証人の資格で未成年者の貸金契約を取り消すことはできない。判例も、制限行為能力者の債務を保証した者は保証人の資格においてはその債務の原因である行為を取り消すことができないとしている。この結論は、保証人が保証契約の時に未成年者であることを知らなかった場合でも変わらない。知っていたかどうかは取消権者に当たるかどうかとは関係がないからである。なお、未成年者側が契約を取り消したときは、主たる債務が消滅して付従性により保証債務も消滅するが、取消しの原因を知って保証した者は、同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定される(449条)。したがって、肢は正しい。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
誤り。違うのは「Bは、当該法律行為を取り消すことができない」の部分である。Aの法定代理人は親権者Bであり、親権者でないCは追認をすることができないので、Cが追認してもBは取り消すことができる(120条1項・122条)。
5条1項・2項により、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができる。122条は、取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは以後取り消すことができないと定め、120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為を取り消せる者を、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限っている。未成年者の法定代理人は親権者であり(818条1項・824条)、父母が婚姻していない場合に父が認知した子の親権は、協議などで父を親権者と定めない限り母が行う(819条4項)。本肢では親権者はBであり、Cは父ではあっても法定代理人ではないから、120条の代理人に当たらず、その追認には122条の効果は生じない。そのため、親権者Bはなおその法律行為を取り消すことができる。したがって、本肢は誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。/取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
誤り。違うのは「その行為を取り消すことはできない」の部分である。保佐人の同意を要する行為を同意なしにしたときは取り消すことができ(13条4項)、保佐人は同意をすることができる者として取消権を有する(120条1項)。
13条4項は、保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消すことができると定め、120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができるとする。保佐人は、被保佐人が13条1項の行為をするについて同意をする権限を持つ者であるから、同意をすることができる者として取消権者に含まれる。同意権を持つ者が、自らの同意なしにされた行為を是正できなければ、被保佐人の保護が実効性を欠くからである。また、保佐人は122条により追認をすることもできる。保佐人は当然には代理権を持たないが、取消権と追認権は同意権に伴って認められる。したがって、追認はできるが取消しはできないとする本肢は誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者(保佐人、同意権付与の審判を受けた補助人)
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の譲受人
誤り。違うのは「相手方は無効を主張することができる」の部分である。錯誤による取消しができるのは表意者とその代理人・承継人に限られ(120条2項)、相手方は主張できない。出題当時も、判例は表意者が無効を主張できない場合には相手方も主張できないとしていた。
95条3項は、錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、相手方が表意者の錯誤を知り又は重大な過失によって知らなかったとき、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときを除き、表意者は取消しをすることができないと定める。そして120条2項は、錯誤によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができるとする。錯誤の規定は表意者を保護するためのものであり、表意者が取消しを望まないのに相手方が効力を否定することは、その趣旨に合わないからである。したがって、相手方は錯誤を主張できず、また表意者も重大な過失があれば例外の場合を除いて取り消せない。本肢は、相手方は主張できるとする点で誤りである。出題当時の95条は錯誤を無効としていたが、判例は、表意者に重大な過失があり表意者が無効を主張できないときは、相手方も無効を主張できないとしていた。

錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。/錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
誤り。違うのは「行為の時にさかのぼってその効力を生ずる」の部分である。無効な行為は、無効と知って追認しても、追認の時に新たな行為をしたものとみなされるだけで、さかのぼって効力を生じない(119条)。現行法では錯誤は取消しの原因であり、追認は以後取り消せなくなる効果を持つにとどまる(122条)。
119条は、無効な行為は追認によってもその効力を生じないと定め、ただし書で、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなすとする。無効な行為は初めから効力がないので、追認によって過去にさかのぼって有効にすることはできず、当事者が改めて同じ内容の行為をしたものとして、追認の時から効力を生じさせるにとどめたのである。出題当時の95条は錯誤による意思表示を無効としていたので、本肢の追認にはこの規定が適用され、さかのぼって効力を生ずるとする点で誤りとされた。平成29年改正後は、錯誤による意思表示は取り消すことができるものとなり(95条1項)、取り消すまでは有効である。その追認は、取消権を放棄して以後取り消せなくするものであり(122条)、追認によって初めて効力がさかのぼって生じるわけではない。いずれにしても、本肢は誤りである。

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
- 無効な行為(119条本文):追認しても効力を生じない
- 無効と知って追認(119条ただし書):追認の時に新たな行為をしたものとみなす(遡らない)
- 取り消すことができる行為(122条):追認すれば以後取り消せない
- 無効な婚姻の追認:実質的生活関係があり届出を知って追認すれば、届出の当初に遡って有効(最判昭47.7.25)
誤り。違うのは「相続人は、これを取り消すことができない」の部分である。詐欺によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者の承継人も取り消すことができ(120条2項)、相続人はこの承継人に当たる。
120条2項は、錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができると定める。896条は、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めており、被相続人が持っていた詐欺による取消権も、財産上の権利として相続人に承継される。取消権は、だまされて不利な契約をした表意者を保護するためのものであるが、表意者が取り消さないまま死亡した場合に取消しができなくなるとすると、詐欺をした相手方が不当に利益を得ることになり、相続人は不利な契約の効果だけを引き継ぐことになって不合理である。そのため、相続人は120条2項の承継人として売買契約を取り消すことができる。もっとも、取消権は追認をすることができる時から5年、行為の時から20年で時効によって消滅する(126条)。したがって、本肢は誤りである。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 使用借権:借主の死亡で使用貸借が終了し、相続されない(597条3項)
- 定期贈与:贈与者又は受贈者の死亡で効力を失う(552条)
- 占有権:事実的支配がなくても当然に相続人に移る(最判昭44.10.30)
- 祭祀財産:慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、相続財産とは別に扱う(897条)
- 取消権などの財産上の権利:相続人が承継する(896条・120条)
誤り。違うのは「A見解とC見解のいずれによったとしても,甲が乙に対して手形金支払債務を負うかどうかの結論は,異ならない」の部分である。A見解では乙の受領の意思表示が契約の成立要件になるので乙の行為能力が結論に影響し、C見解では甲の単独行為だけで債務が発生するので影響しない。
A見解は、振出人が証券を受取人に交付することによって振出人と受取人の間に手形債務負担に関する契約が成立するとする。契約である以上、受取人である乙の承諾の意思表示が必要であり、乙が未成年者であれば、法定代理人の同意を得ずにした承諾は取り消すことができる余地がある(民法5条1項・2項・120条1項)。取り消されれば契約は成立せず、甲は乙に対して手形金支払債務を負わないことになる。これに対してC見解は、振出人が証券を他人に交付するために手放すという振出人の単独行為によって債務が発生するとする。乙の承諾の意思表示は要件に含まれないので、乙が未成年者であっても甲の手形行為の効力には関係が無く、甲は乙に対して手形金支払債務を負う。このように、受取人の意思表示を要件とするかどうかの違いが、受取人の行為能力に制限がある場合の結論の違いとして現れる。したがって両見解で結論が異ならないとする肢は誤っている。

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
正しい。重過失のある表意者が自ら錯誤を主張できない以上、相手方又は第三者も主張できない(最判昭40.6.4)。現行法でも、錯誤による取消しができるのは表意者又はその代理人若しくは承継人に限られる(120条2項)。
判例(最判昭40.6.4)は、表意者に重大な過失がある場合には、もはや表意者を保護する必要がないから、表意者自ら錯誤を理由とする無効を主張できないときは、表意者でない相手方又は第三者も無効を主張することは許されないとした。錯誤の規定は表意者を保護するためのものであり、保護を受けられない表意者に代わって他の者がその効果を主張することを認める理由はないからである。平成29年改正(令和2年4月施行)で錯誤の効果は取消しとなり、取消権者は瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限られた(120条2項)ので、現在は表意者に重大な過失があるかどうかにかかわらず、相手方や第三者は錯誤による取消しをすることができない。重過失のある表意者も、相手方が錯誤を知り又は重大な過失で知らなかったときや、同一の錯誤に陥っていたときは取り消せる(95条3項)。本肢は正しい。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
正しい。行為能力の制限によって取り消すことができる行為は制限行為能力者本人も取り消すことができ(120条1項)、保佐開始の原因が消滅していなくても被保佐人の取消しは有効であり、行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定め、制限行為能力者本人を取消権者に含めている。取消しは、行為をなかったことにして制限行為能力者を元の状態に戻すものであり、本人にとって不利益になることはないから、能力の制限が続いている間でも本人が単独で取り消すことを認めたのである。取消原因となった状況が消滅していることを要件とするのは追認であり(124条1項)、追認は取り消すことのできる行為を確定的に有効にして取消権を失わせるので、判断能力の回復を待つ必要がある。本肢では、被保佐人がした取り消すことのできる行為を被保佐人自身が取り消しているので、取消しは有効であり、その行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。本肢は正しい。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者。本人は能力の制限が続いていても単独で取り消せる
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の譲受人など
- 効果:初めから無効であったものとみなす(121条)
誤り。違うのは「被告は,…原告の錯誤によって無効であることを主張立証すれば,請求棄却判決を得ることができる」の部分である。錯誤による意思表示は取り消すことができるにとどまり、取消権者は表意者とその代理人・承継人に限られるので(95条1項・120条2項)、被告が原告の錯誤を主張しても請求棄却にはならない。
95条1項は、重要な錯誤に基づく意思表示は取り消すことができると定め、120条2項は、錯誤によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができるとする。錯誤の規定は、勘違いをした表意者を保護するためのものであるから、取り消すかどうかは表意者の判断に委ね、表意者が契約を維持したいと考えている場合にまで、無関係な第三者が錯誤を持ち出して契約の効力を否定することは認めないのである。本肢の被告は、原告の所有権取得行為の当事者ではなく、表意者である原告やその代理人・承継人にも当たらないから、原告の錯誤を理由にその効力を否定することはできない。出題当時は錯誤の効果は無効とされていたが、表意者の保護のための無効であって、表意者以外の者は原則として主張できないと解されており、結論は同じである。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者。本人は能力の制限が続いていても単独で取り消せる
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の譲受人など
- 効果:初めから無効であったものとみなす(121条)
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
この条文の過去問 22問
正しい。強迫による贈与は相手方が善意でも取り消せるが、無償行為で取消しの可能性を知らずに給付を受けたCは現存利益の限度で返還すれば足り(121条の2第2項)、遊興で費消した利益は現存しない。
強迫による意思表示は取り消すことができる(96条1項)。詐欺には、第三者が詐欺をした場合に相手方が悪意又は有過失のときに限って取り消せるとする制限(同条2項)があるが、強迫にはこれに当たる規定がないので、第三者Aによる強迫でも、相手方Cが善意でも、Bは贈与を取り消せる。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、給付を受けた者は原状回復の義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。しかし同条2項は、無効な無償行為に基づいて給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りるとする。対価を出していない善意の受領者に全額を返させると、思わぬ損失を負わせるからである。受け取った金銭を生活費に充てれば出費を免れた分の利益が残るが、遊興に使った場合は利益が残っていない。したがって、CはBに何も返さなくてよい。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
誤り。違うのは「借入金全額を貸主に返還する義務を負う」の部分である。行為の時に制限行為能力者であった者は現に利益を受けている限度で返還すれば足り、賭博に浪費した分は利益が現存しない。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。しかし、行為の時に制限行為能力者であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還すれば足りる(同条3項後段)。判断能力が不十分なために受けた利益を浪費するおそれのある者に全額の返還を求めると、行為能力の制限によって保護した意味が失われるからである。現存利益は受け取った金銭の使い道で決まり、生活費や債務の弁済に充てた分は本来の出費を免れているので利益が残っているが、判例は、賭博に浪費された利益は現存しないとしている(最判昭50.6.27)。被保佐人Aは借入金を賭博で使い切っているから、返還すべき現存利益はなく、全額の返還義務を負うとする本肢は誤りである。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
誤り。違うのは「借入金全額を貸主に返還する義務を負う」の部分である。行為の時に制限行為能力者であった者は現に利益を受けている限度で返還すれば足り、賭博に浪費した分は利益が現存しない。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。しかし、行為の時に制限行為能力者であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還すれば足りる(同条3項後段)。判断能力が不十分なために受けた利益を浪費するおそれのある者に全額の返還を求めると、行為能力の制限によって保護した意味が失われるからである。現存利益は受け取った金銭の使い道で決まり、生活費や債務の弁済に充てた分は本来の出費を免れているので利益が残っているが、判例は、賭博に浪費された利益は現存しないとしている(最判昭50.6.27)。被保佐人Aは借入金を賭博で使い切っているから、返還すべき現存利益はなく、全額の返還義務を負うとする本肢は誤りである。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
誤り。違うのは「甲土地の所有権が自己にあることを主張することができない」の部分である。制限行為能力を理由とする取消しには第三者保護規定がなく、Aは善意無過失のCにも所有権を主張できる。
成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、取り消すことができ(9条)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。AB間の売買が取り消されると、甲土地の所有権は初めからBに移転しなかったことになり、Bから買ったCも所有権を取得できない。詐欺による取消し(96条3項)や錯誤による取消し(95条4項)には善意無過失の第三者を保護する規定があるが、制限行為能力を理由とする取消しには置かれていない。判断能力が不十分な者を画一的に保護するという制度の目的を、取引の安全より優先させたからである。したがって、Cが取消し前に登記を備え、Aが成年被後見人であることを過失なく知らなかったとしても、AはCに対し甲土地の所有権が自己にあることを主張でき、肢は誤っている。取消し後にCが現れた場合は、177条により登記の先後で決まる。

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
| 取消しの原因 | 取消し前の第三者 | 取消し後の第三者 |
|---|---|---|
| 詐欺・錯誤 | 善意無過失なら保護される(96条3項・95条4項) | 登記の先後で決まる(177条) |
| 強迫・制限行為能力 | 保護されない | 登記の先後で決まる(177条) |
正しい。無効な無償行為に基づいて給付を受けた者は、給付を受けた当時取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる(121条の2第2項)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。もっとも同条2項は、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること、後に取り消されて初めから無効であったものとみなされた行為については給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りると定める。無償で物を受け取った者は対価を払っておらず、受け取った物を使ってしまっても不当な利益を持ち続けているとはいえないから、知らずに受け取った者に全部の返還を求めるのは酷だからである。本肢の贈与は負担のない贈与であるから無償行為に当たり、受贈者Bは給付を受けた時にその贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったから、Bは現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
正しい。無効な無償行為に基づいて給付を受けた者は、給付を受けた当時取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる(121条の2第2項)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。もっとも同条2項は、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること、後に取り消されて初めから無効であったものとみなされた行為については給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りると定める。無償で物を受け取った者は対価を払っておらず、受け取った物を使ってしまっても不当な利益を持ち続けているとはいえないから、知らずに受け取った者に全部の返還を求めるのは酷だからである。本肢の贈与は負担のない贈与であるから無償行為に当たり、受贈者Bは給付を受けた時にその贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったから、Bは現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
誤り。違うのは「Cは,即時取得により宝石の所有権を取得することはない」の部分である。強迫による取消しで初めから無権利者となったBから買ったCは、192条の要件を満たせば即時取得できる。
強迫による意思表示の取消し(96条1項)には、詐欺の96条3項のような善意無過失の第三者を守る規定がない。そのため、CがBから承継したことを理由に、取消しの前の第三者として保護されることはない。しかし、そのことと即時取得ができるかどうかは別の問題である。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされるから(121条)、AがAB間の売買を取り消すと、Bはさかのぼって宝石について無権利者であったことになり、Cは無権利者から動産を譲り受けた者として192条の適用を受ける。Cは売買という取引行為によって現実の引渡しを受けているから、平穏かつ公然と占有を始め、宝石がBの物であると過失なく信じていたのであれば、宝石の所有権を取得する。96条3項が詐欺に限って第三者を守るのは、強迫を受けた表意者には責められる点がないことを考えたものであり、動産の占有を信頼した者を守る192条の適用まで否定する趣旨ではない。したがって、Cが即時取得する余地を一律に否定する本肢は誤りである。

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
正しい。即時取得は有効な取引行為によって無権利者から占有を取得した者を守る制度であり、権利者との売買自体が取り消された相手方には適用されない。
192条は、取引行為によって動産の占有を始めた者を保護する制度であり、その取引行為は有効なものでなければならない。即時取得は、無権利者の占有を権利者の外観と信じて取引した者を守るための制度であって、取引行為そのものに無効や取消しの原因がある場合の不都合までは補わないのである。本肢では、未成年者Aが法定代理人の同意を得ずにした売買を、行為能力の制限を理由に取り消しており(5条2項)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。Bが宝石の占有を取得する基礎となった取引行為は効力を失うから、192条の要件を満たさない。また、Aはもともと宝石の所有者であり、Bは無権利者から譲り受けた者でもない。ここで即時取得を認めると、取消権を与えて未成年者を守ろうとした民法の仕組みが意味を失うことになる。したがって、Bが即時取得によって宝石の所有権を取得することはなく、本肢は正しい。

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
| 成立しない | 成立しうる | |
|---|---|---|
| 取引行為 | 相続での承継、置き忘れた物の持ち帰り、他人の立木の伐採 | 売買、贈与、質権設定、強制競売の競落 |
| 取引の有効性 | 未成年者との売買が取り消された相手方(前主が権利者) | 前主の取得原因が取り消されて前主が無権利者となった後の譲受人 |
| 占有の取得方法 | 占有改定(最判昭和35年2月11日) | 現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転(最判昭和57年9月7日) |
| 対象 | 登録済みの自動車 | 登録を抹消された自動車 |
誤り。違うのは「Cは,即時取得により宝石の所有権を取得することはない」の部分である。強迫による取消しで初めから無権利者となったBから買ったCは、192条の要件を満たせば即時取得できる。
強迫による意思表示の取消し(96条1項)には、詐欺の96条3項のような善意無過失の第三者を守る規定がない。そのため、CがBから承継したことを理由に、取消しの前の第三者として保護されることはない。しかし、そのことと即時取得ができるかどうかは別の問題である。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされるから(121条)、AがAB間の売買を取り消すと、Bはさかのぼって宝石について無権利者であったことになり、Cは無権利者から動産を譲り受けた者として192条の適用を受ける。Cは売買という取引行為によって現実の引渡しを受けているから、平穏かつ公然と占有を始め、宝石がBの物であると過失なく信じていたのであれば、宝石の所有権を取得する。96条3項が詐欺に限って第三者を守るのは、強迫を受けた表意者には責められる点がないことを考えたものであり、動産の占有を信頼した者を守る192条の適用まで否定する趣旨ではない。したがって、Cが即時取得する余地を一律に否定する本肢は誤りである。

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
正しい。即時取得は有効な取引行為によって無権利者から占有を取得した者を守る制度であり、権利者との売買自体が取り消された相手方には適用されない。
192条は、取引行為によって動産の占有を始めた者を保護する制度であり、その取引行為は有効なものでなければならない。即時取得は、無権利者の占有を権利者の外観と信じて取引した者を守るための制度であって、取引行為そのものに無効や取消しの原因がある場合の不都合までは補わないのである。本肢では、未成年者Aが法定代理人の同意を得ずにした売買を、行為能力の制限を理由に取り消しており(5条2項)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。Bが宝石の占有を取得する基礎となった取引行為は効力を失うから、192条の要件を満たさない。また、Aはもともと宝石の所有者であり、Bは無権利者から譲り受けた者でもない。ここで即時取得を認めると、取消権を与えて未成年者を守ろうとした民法の仕組みが意味を失うことになる。したがって、Bが即時取得によって宝石の所有権を取得することはなく、本肢は正しい。

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
| 成立しない | 成立しうる | |
|---|---|---|
| 取引行為 | 相続での承継、置き忘れた物の持ち帰り、他人の立木の伐採 | 売買、贈与、質権設定、強制競売の競落 |
| 取引の有効性 | 未成年者との売買が取り消された相手方(前主が権利者) | 前主の取得原因が取り消されて前主が無権利者となった後の譲受人 |
| 占有の取得方法 | 占有改定(最判昭和35年2月11日) | 現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転(最判昭和57年9月7日) |
| 対象 | 登録済みの自動車 | 登録を抹消された自動車 |
正しい。未成年を理由とする取消しには第三者を保護する規定がなく、取り消された売買は初めから無効とみなされるから(121条)、善意無過失のCも所有権の取得を主張できない。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は取り消すことができ(5条2項)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。AがBに対する売買を取り消せば、Bは初めから無権利者であったことになり、Bから買ったCも原則として所有権を取得できない。錯誤による取消しには95条4項、詐欺による取消しには96条3項が、善意でかつ過失がない第三者を保護する規定を置いているが、制限行為能力を理由とする取消しにはそのような規定がない。判断能力が十分でない者を、本人の落ち度を問わずに一律に保護し、取引の安全よりも優先させる趣旨である。また、取消し前に現れた第三者との関係は、二重に物権変動が生じる場面ではないから、177条の対抗問題にならない。したがって、CがAの未成年を過失なく知らず登記を備えていても保護されず、CはAに対して甲土地の所有権の取得を主張できない。これに対し、取消し後に現れた第三者との関係は177条の対抗問題として登記の先後で決まる。

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
| 場面 | 取消し・解除の前に現れた第三者 | 後に現れた第三者 |
|---|---|---|
| 制限行為能力による取消し | 保護規定がなく、登記があっても保護されない(121条) | 177条の対抗問題(登記の先後) |
| 錯誤・詐欺による取消し | 善意でかつ過失がない第三者は保護される(95条4項・96条3項) | 177条の対抗問題 |
| 強迫による取消し | 保護規定がなく保護されない | 177条の対抗問題 |
| 解除 | 第三者の権利を害せない(545条1項ただし書)。善意悪意を問わず、登記を要する | 177条の対抗問題 |
正しい。第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合の当事者双方の返還義務は、533条の類推適用により同時履行の関係に立つ(最判昭47.9.7)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。本肢では、A・B双方が代金の支払と宝石の引渡しを終えた後に、Bが第三者Cの詐欺を理由に売買契約を取り消している(相手方Aがその事実を知り又は知ることができたときに取り消せる。96条2項)から、AはBに代金100万円の返還債務を、BはAに宝石の返還債務を負う。この二つの返還債務は、一つの売買契約を巻き戻した結果として生じたもので、互いに対価的な関係にある。契約が有効に存続していれば双務契約上の債務として同時履行の関係に立つのに、巻き戻しの場面では一方だけが先に返還しなければならないとするのは公平に反する。判例も、売買契約が第三者の詐欺を理由に取り消された事案で、双方の返還義務は533条の類推適用により同時履行の関係に立つとした(最判昭47.9.7)。したがって肢は正しい。

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、詐欺・第三者の詐欺・未成年者の取消しによる相互の返還義務
- 立つ:請負の修補に代わる損害賠償義務と報酬支払義務(533条括弧書)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・質物の返還と被担保債務の弁済(弁済が先)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先)
正しい。詐欺による取消しは、売買契約が有効に成立したことを前提にその効力を失わせる事実であるから、請求原因と両立してその効果を妨げる抗弁となり得る。
民法96条1項は、詐欺による意思表示は取り消すことができると定める。代理人が相手方にした意思表示の効力が詐欺によって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は代理人について決するから(民法101条1項)、XがZを欺いた本件では、Zの意思表示に詐欺による瑕疵があるものとして扱われ、その効果が帰属する本人Yは売買契約を取り消すことができる。取り消すことができる行為も、取消しがされるまでは有効に成立しているから、Yの本陳述は、売買契約の締結や代理権の授与という請求原因事実を争うものではなく、それらを前提にしたうえで契約の効力を失わせるものである。取消しの意思表示があれば、売買契約は初めから無効であったものとみなされ(民法121条)、請求原因から生じる登記請求権の発生が妨げられる。したがって、本陳述は請求原因と両立しつつその法律効果を障害する事実の主張であり、抗弁となり得る。

詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。/取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
| Yの陳述 | 請求原因との関係 | 扱い |
|---|---|---|
| 代理権を授与したことはない | 代理権授与と両立しない | 否認 |
| 授与したのは賃貸借の代理権である | 売買の代理権授与と両立しない | 積極否認 |
| 契約前に合意で授権を撤回した | 代理権授与を前提に消滅させる | 抗弁 |
| Zの意思表示はXの詐欺によるので取り消す | 契約の成立を前提に効力を失わせる | 抗弁 |
| 契約の相手方はXではなくAである | XとZの契約締結と両立しない | 積極否認 |
誤り。違うのは後半の「その旨の登記をしなくても,その取消し後にBからその不動産を買い受けたCに対抗することができる」の部分である。取消し後の第三者との関係は、詐欺でも強迫でも登記の先後で決まる(177条)。
96条3項の第三者は、取消しの前に、取り消される行為を前提として新たに利害関係に入った者に限られる。取消し後に相手方から権利を取得した者との関係について判例は、取消しによって所有権が相手方から表意者に復帰したものとみて、相手方を起点とする二重譲渡と同じ関係として177条の対抗問題で処理する(大判昭17.9.30)。そのため、詐欺で取り消したAは、登記を回復しなければ取消し後の譲受人Cに対抗できず、前半は正しい。強迫の場合、取消し前の第三者に対しては善意無過失でも表意者が優先するが、それは表意者が登記を回復する機会のなかった取消し前の場面の扱いである。取消し後は、表意者は速やかに登記名義を回復することができたのであり、それを怠って第三者の出現を招いた以上、詐欺の場合と区別する理由はない。判例も取消し後の第三者については取消原因を問わず対抗問題として扱っている。したがって、強迫で取り消したAも登記なしにCに対抗できず、後半が誤っている。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
| 詐欺 | 強迫 | |
|---|---|---|
| 第三者がした場合 | 相手方が知り又は知ることができたときに限り取り消せる(96条2項) | 相手方の事情を問わず取り消せる |
| 取消し前の第三者 | 善意無過失の第三者に対抗できない(96条3項) | 善意無過失の第三者にも対抗できる |
| 取消し後の第三者 | 登記の先後で決まる(177条) | 登記の先後で決まる(177条) |
正しい。他の連帯債務者は代物弁済の反射的な利益を受けるにすぎず、96条3項の第三者に当たらないから、善意でも代物弁済による債務の消滅を主張できない(大判昭7.8.9)。
96条3項の第三者は、詐欺による意思表示を前提として、それによって生じた法律関係について新たに独立の法律上の利害関係を持った者をいい、詐欺による行為の反射的な効果として事実上の利益を受けたにすぎない者は含まれない。連帯債務者の一人Aがした代物弁済(482条)は、弁済と同じく債権を満足させる行為であり、他の連帯債務者の債務も消滅させる。しかし、他の連帯債務者はAの代物弁済の結果として自分の債務を免れる利益を受けるだけで、代物弁済によって取得された権利について新たな取引関係に入った者ではない。判例も、他の連帯債務者は96条3項の第三者に当たらないとしている(大判昭7.8.9)。そのため、Aが詐欺を理由に代物弁済を取り消せば、代物弁済は初めから無効であったものとみなされ(121条)、債務の消滅も生じなかったことになる。他の連帯債務者は96条3項の保護を受けられない以上、詐欺を知らなかったとしても債務の消滅を主張できず、肢は正しい。

前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
誤り。違うのは後半の「その旨の登記をしなくても,その取消し後にBからその不動産を買い受けたCに対抗することができる」の部分である。取消し後の第三者との関係は、詐欺でも強迫でも登記の先後で決まる(177条)。
96条3項の第三者は、取消しの前に、取り消される行為を前提として新たに利害関係に入った者に限られる。取消し後に相手方から権利を取得した者との関係について判例は、取消しによって所有権が相手方から表意者に復帰したものとみて、相手方を起点とする二重譲渡と同じ関係として177条の対抗問題で処理する(大判昭17.9.30)。そのため、詐欺で取り消したAは、登記を回復しなければ取消し後の譲受人Cに対抗できず、前半は正しい。強迫の場合、取消し前の第三者に対しては善意無過失でも表意者が優先するが、それは表意者が登記を回復する機会のなかった取消し前の場面の扱いである。取消し後は、表意者は速やかに登記名義を回復することができたのであり、それを怠って第三者の出現を招いた以上、詐欺の場合と区別する理由はない。判例も取消し後の第三者については取消原因を問わず対抗問題として扱っている。したがって、強迫で取り消したAも登記なしにCに対抗できず、後半が誤っている。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
| 詐欺 | 強迫 | |
|---|---|---|
| 第三者がした場合 | 相手方が知り又は知ることができたときに限り取り消せる(96条2項) | 相手方の事情を問わず取り消せる |
| 取消し前の第三者 | 善意無過失の第三者に対抗できない(96条3項) | 善意無過失の第三者にも対抗できる |
| 取消し後の第三者 | 登記の先後で決まる(177条) | 登記の先後で決まる(177条) |
正しい。他の連帯債務者は代物弁済の反射的な利益を受けるにすぎず、96条3項の第三者に当たらないから、善意でも代物弁済による債務の消滅を主張できない(大判昭7.8.9)。
96条3項の第三者は、詐欺による意思表示を前提として、それによって生じた法律関係について新たに独立の法律上の利害関係を持った者をいい、詐欺による行為の反射的な効果として事実上の利益を受けたにすぎない者は含まれない。連帯債務者の一人Aがした代物弁済(482条)は、弁済と同じく債権を満足させる行為であり、他の連帯債務者の債務も消滅させる。しかし、他の連帯債務者はAの代物弁済の結果として自分の債務を免れる利益を受けるだけで、代物弁済によって取得された権利について新たな取引関係に入った者ではない。判例も、他の連帯債務者は96条3項の第三者に当たらないとしている(大判昭7.8.9)。そのため、Aが詐欺を理由に代物弁済を取り消せば、代物弁済は初めから無効であったものとみなされ(121条)、債務の消滅も生じなかったことになる。他の連帯債務者は96条3項の保護を受けられない以上、詐欺を知らなかったとしても債務の消滅を主張できず、肢は正しい。

前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
正しい。行為能力者となった後の本人に1か月以上の期間を定めて催告し、期間内に確答を発しなければ、その行為を追認したものとみなされる(20条1項)。
20条1項は、制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、期間内に確答を発しないときは追認したものとみなすと定める。取り消すことができる行為の相手方は、いつ取り消されるか分からない不安定な立場に置かれるので、自分から決着を促す手段を与えたのである。行為能力者となった本人は、単独で追認も取消しもできるから、黙っていることを追認の意思と扱っても本人の保護に欠けない。そのため、確答がないときの効果は取消しではなく追認とされている。これに対し、被保佐人や同意権付与の審判を受けた被補助人に保護者の追認を得るよう催告して通知がないときは、取り消したものとみなされる(同条4項)。本肢は同条1項の内容どおりである。

制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
- 行為能力者となった本人(1項):確答を発しなければ追認擬制
- 法定代理人・保佐人・補助人(2項):権限内の行為について確答を発しなければ追認擬制
- 特別の方式を要する行為(3項):方式を具備した旨の通知を発しなければ取消し擬制
- 被保佐人・同意権付与の審判を受けた被補助人(4項):保護者の追認を得た旨の通知を発しなければ取消し擬制
正しい。相手方が115条により無権代理の契約を取り消せば、本人に効果が帰属しないことが確定するので、本人はその後に追認することができない。
115条本文は、代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができると定める。無権代理の相手方は、本人が追認するかどうかによって契約の効力が決まる不安定な立場に置かれるので、本人の追認権と釣り合うように、善意の相手方に契約から離脱する手段を与えたのである。相手方がこの取消しをすると、無権代理行為の効果が本人に帰属しないことが確定する。追認は効果の帰属しない行為を本人のために有効にする意思表示であるが、取消しによって追認の対象となる契約がもはや存在しなくなるから、本人はその後に追認することができない。逆に、本人が先に追認すれば契約は確定的に本人に効力を生じ、相手方は以後取り消すことができない。どちらが先に意思表示をしたかで決まる関係であり、本肢は取消し後の追認を否定しているから正しい。

代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
- 本人の追認(113条・116条):契約の時にさかのぼって効力が生じる。第三者の権利は害せない
- 本人の追認拒絶:効力が本人に及ばないことが確定し、以後は本人も追認できない
- 相手方の催告(114条):悪意の相手方もできる。本人が期間内に確答しなければ追認拒絶とみなされる
- 相手方の取消し(115条):契約の時に善意の相手方が、本人の追認前に限りできる。取消し後は本人も追認できない
正しい。詐欺による意思表示は取り消すことができるにとどまり、取り消されるまでは有効であるから、取り消さない限り詐欺を理由に自らの債務の履行を拒むことはできない(96条1項・121条)。
96条1項は、詐欺による意思表示は取り消すことができると定める。取り消すことができる行為は、取り消されて初めて、初めから無効であったものとみなされるのであり(121条)、取り消されるまでは有効な行為として扱われる。詐欺を受けた表意者は、契約を取り消すか、そのまま有効なものとして維持するかを選ぶことができ、その選択権が表意者の保護になっている。したがって、表意者が取消しをしていない以上、契約は有効であり、表意者は契約に基づく自らの債務を負っている。相手方の債務がまだ履行されていなくても、詐欺があったということだけで自分の債務の履行を拒むことはできない。履行を拒みたければ、取消しの意思表示をして契約を初めから無効にするか、相手方の債務と同時履行の関係にあれば同時履行の抗弁を主張することになる。詐欺を受けたことは、取消しをして初めて意味を持つのである。本肢は正しい。

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
正しい。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされるが(121条)、婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じ(748条1項)、縁組の取消しにもこれが準用される(808条1項)。
121条は、取り消された行為は初めから無効であったものとみなすと定め、取消しには遡及効があるのが原則である。これに対し、748条1項は、婚姻の取消しは将来に向かってのみその効力を生ずると定め、808条1項は、同条を縁組について準用する。婚姻や縁組は、取り消されるまでの間に夫婦や親子としての共同生活の事実が積み重なり、その間に生まれた子の身分や、同居中にされた取引などの法律関係も形成されているので、遡って無効にするとそれらがすべて覆り、当事者や子の地位を著しく不安定にするからである。そこで身分行為については既成の事実を尊重し、取消しの効果を将来に向かってのみ生じさせることとした。したがって、本肢は正しい。なお、婚姻の取消しの際の財産の返還は、取消しの原因を知っていたかどうかで範囲が異なる(748条2項・3項)。

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。/婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
正しい。行為能力の制限によって取り消すことができる行為は制限行為能力者本人も取り消すことができ(120条1項)、保佐開始の原因が消滅していなくても被保佐人の取消しは有効であり、行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定め、制限行為能力者本人を取消権者に含めている。取消しは、行為をなかったことにして制限行為能力者を元の状態に戻すものであり、本人にとって不利益になることはないから、能力の制限が続いている間でも本人が単独で取り消すことを認めたのである。取消原因となった状況が消滅していることを要件とするのは追認であり(124条1項)、追認は取り消すことのできる行為を確定的に有効にして取消権を失わせるので、判断能力の回復を待つ必要がある。本肢では、被保佐人がした取り消すことのできる行為を被保佐人自身が取り消しているので、取消しは有効であり、その行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。本肢は正しい。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者。本人は能力の制限が続いていても単独で取り消せる
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の譲受人など
- 効果:初めから無効であったものとみなす(121条)
1無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
この条文の過去問 9問
正しい。121条の2第3項により、行為の時に意思能力を有しなかった者は、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。
無効な行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。原則として、受け取った物が残っていればその物を、なければその価値を返さなければならず、利益が残っているかは問われない。しかし、意思能力のない者にまでこれを貫くと、その者を守るために無効とした意味がなくなる。受け取った金銭を使い果たしてしまった場合にまで全額を返させるのでは保護にならないからである。そこで同条3項前段は、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負うと定める。同項後段は、制限行為能力者であった者も同じとする。遊興費に使えば利益は残らないが、生活費など本来出すべき費用に充てたときは、その分の出費を免れた利益が残っていると扱われる。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
正しい。121条の2第3項により、行為の時に意思能力を有しなかった者は、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。
無効な行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。原則として、受け取った物が残っていればその物を、なければその価値を返さなければならず、利益が残っているかは問われない。しかし、意思能力のない者にまでこれを貫くと、その者を守るために無効とした意味がなくなる。受け取った金銭を使い果たしてしまった場合にまで全額を返させるのでは保護にならないからである。そこで同条3項前段は、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負うと定める。同項後段は、制限行為能力者であった者も同じとする。遊興費に使えば利益は残らないが、生活費など本来出すべき費用に充てたときは、その分の出費を免れた利益が残っていると扱われる。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
正しい。強迫による贈与は相手方が善意でも取り消せるが、無償行為で取消しの可能性を知らずに給付を受けたCは現存利益の限度で返還すれば足り(121条の2第2項)、遊興で費消した利益は現存しない。
強迫による意思表示は取り消すことができる(96条1項)。詐欺には、第三者が詐欺をした場合に相手方が悪意又は有過失のときに限って取り消せるとする制限(同条2項)があるが、強迫にはこれに当たる規定がないので、第三者Aによる強迫でも、相手方Cが善意でも、Bは贈与を取り消せる。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、給付を受けた者は原状回復の義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。しかし同条2項は、無効な無償行為に基づいて給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りるとする。対価を出していない善意の受領者に全額を返させると、思わぬ損失を負わせるからである。受け取った金銭を生活費に充てれば出費を免れた分の利益が残るが、遊興に使った場合は利益が残っていない。したがって、CはBに何も返さなくてよい。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
誤り。違うのは「借入金全額を貸主に返還する義務を負う」の部分である。行為の時に制限行為能力者であった者は現に利益を受けている限度で返還すれば足り、賭博に浪費した分は利益が現存しない。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。しかし、行為の時に制限行為能力者であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還すれば足りる(同条3項後段)。判断能力が不十分なために受けた利益を浪費するおそれのある者に全額の返還を求めると、行為能力の制限によって保護した意味が失われるからである。現存利益は受け取った金銭の使い道で決まり、生活費や債務の弁済に充てた分は本来の出費を免れているので利益が残っているが、判例は、賭博に浪費された利益は現存しないとしている(最判昭50.6.27)。被保佐人Aは借入金を賭博で使い切っているから、返還すべき現存利益はなく、全額の返還義務を負うとする本肢は誤りである。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
誤り。違うのは「借入金全額を貸主に返還する義務を負う」の部分である。行為の時に制限行為能力者であった者は現に利益を受けている限度で返還すれば足り、賭博に浪費した分は利益が現存しない。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。しかし、行為の時に制限行為能力者であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還すれば足りる(同条3項後段)。判断能力が不十分なために受けた利益を浪費するおそれのある者に全額の返還を求めると、行為能力の制限によって保護した意味が失われるからである。現存利益は受け取った金銭の使い道で決まり、生活費や債務の弁済に充てた分は本来の出費を免れているので利益が残っているが、判例は、賭博に浪費された利益は現存しないとしている(最判昭50.6.27)。被保佐人Aは借入金を賭博で使い切っているから、返還すべき現存利益はなく、全額の返還義務を負うとする本肢は誤りである。

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
正しい。無効な無償行為に基づいて給付を受けた者は、給付を受けた当時取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる(121条の2第2項)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。もっとも同条2項は、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること、後に取り消されて初めから無効であったものとみなされた行為については給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りると定める。無償で物を受け取った者は対価を払っておらず、受け取った物を使ってしまっても不当な利益を持ち続けているとはいえないから、知らずに受け取った者に全部の返還を求めるのは酷だからである。本肢の贈与は負担のない贈与であるから無償行為に当たり、受贈者Bは給付を受けた時にその贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったから、Bは現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
正しい。無効な無償行為に基づいて給付を受けた者は、給付を受けた当時取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる(121条の2第2項)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負うのが原則である(121条の2第1項)。もっとも同条2項は、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること、後に取り消されて初めから無効であったものとみなされた行為については給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りると定める。無償で物を受け取った者は対価を払っておらず、受け取った物を使ってしまっても不当な利益を持ち続けているとはいえないから、知らずに受け取った者に全部の返還を求めるのは酷だからである。本肢の贈与は負担のない贈与であるから無償行為に当たり、受贈者Bは給付を受けた時にその贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったから、Bは現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
- 原則(121条の2第1項):相手方を原状に復させる義務を負い、受け取った物をすべて返す
- 無効な無償行為の善意の受領者(同条2項):給付を受けた当時、無効であること・取り消すことができるものであることを知らなければ、現存利益の返還で足りる
- 意思能力を有しなかった者(同条3項前段):現存利益の返還で足りる
- 行為の時に制限行為能力者であった者(同条3項後段):現存利益の返還で足りる
正しい。未成年者の取消しによる双方の返還義務には、解除の546条に準じて533条が準用され、同時履行の関係に立つ(最判昭28.6.16)。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は取り消すことができ(5条2項)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、給付を受けた当事者は互いに原状回復の義務を負う(121条の2第1項)。判例は、未成年者の取消しについては、契約の解除による原状回復義務に関する546条に準じて533条の準用があると解するのが相当であるとし、公平の観念上、解除の場合と区別すべき理由がないとした(最判昭28.6.16)。取消しによる巻戻しの場面でも、もともと対価の関係にあった給付を引換えに返し合わせるのが、当事者の公平に合うからである。したがって、動産の売買が取り消された場合、売主の代金返還義務と買主の動産返還義務は同時履行の関係にあり、どちらの当事者も相手方の履行の提供があるまで自分の返還を拒むことができる。行為の時に制限行為能力者であった者の返還の範囲は現に利益を受けている限度に限られるが(121条の2第3項後段)、これは返す範囲の問題であり、同時履行の関係を否定するものではない。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、未成年者の取消し・詐欺による取消しの相互の返還義務
- 立つ:土地の売買の所有権移転登記義務と代金支払義務、受取証書の交付と弁済
- 立たない:有償委任の報酬支払と事務処理(報酬は後払い。648条2項)
- 立たない:造作買取代金の支払と建物の明渡し(最判昭和29年7月22日)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先。622条の2第1項1号)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・譲渡担保の受戻しと被担保債務の弁済(弁済が先)
正しい。第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合の当事者双方の返還義務は、533条の類推適用により同時履行の関係に立つ(最判昭47.9.7)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。本肢では、A・B双方が代金の支払と宝石の引渡しを終えた後に、Bが第三者Cの詐欺を理由に売買契約を取り消している(相手方Aがその事実を知り又は知ることができたときに取り消せる。96条2項)から、AはBに代金100万円の返還債務を、BはAに宝石の返還債務を負う。この二つの返還債務は、一つの売買契約を巻き戻した結果として生じたもので、互いに対価的な関係にある。契約が有効に存続していれば双務契約上の債務として同時履行の関係に立つのに、巻き戻しの場面では一方だけが先に返還しなければならないとするのは公平に反する。判例も、売買契約が第三者の詐欺を理由に取り消された事案で、双方の返還義務は533条の類推適用により同時履行の関係に立つとした(最判昭47.9.7)。したがって肢は正しい。

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、詐欺・第三者の詐欺・未成年者の取消しによる相互の返還義務
- 立つ:請負の修補に代わる損害賠償義務と報酬支払義務(533条括弧書)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・質物の返還と被担保債務の弁済(弁済が先)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先)
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
この条文の過去問 8問
誤り。違うのは「その行為を追認したものとみなされる」の部分である。
取り消すことができる行為の相手方は、取消権者が取り消すか追認するか分からない不安定な立場に置かれる。民法はこれを解消する手段として催告の権利を認めているが、それは制限行為能力を理由とする取消しに限られる。20条1項は、制限行為能力者の相手方は、その者が行為能力者となった後、1か月以上の期間を定めて追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に確答を発しないときは追認したものとみなすと定める。これに対し、強迫による意思表示(96条1項)の取消しについては、相手方の催告とその効果を定めた規定はない。強迫をした側に、沈黙を追認とみなすという強い効果で守られる立場を与える理由はないからである。したがって、強迫を受けた者が催告に確答しなくても、追認したものとはみなされない。

制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
| 催告 | 確答がない場合 | 条文 |
|---|---|---|
| 制限行為能力者が行為能力者となった後への追認の催告 | 追認したものとみなす | 20条1項 |
| 無権代理の本人への追認の催告 | 追認を拒絶したものとみなす | 114条 |
| 解除権者への解除するかの催告 | 解除権が消滅する | 547条 |
| 選択権者への選択の催告 | 選択権が相手方に移る | 408条 |
| 遺言執行者への就職承諾の催告 | 承諾したものとみなす | 1008条 |
| 負担付遺贈の受遺者への履行の催告 | 遺言の取消しを家庭裁判所に請求できる | 1027条 |
| 詐欺・強迫を受けた者への追認の催告 | 規定なし(効果は生じない) | — |
正しい。120条に規定する者が追認すれば、以後その行為は取り消すことができず(122条)、被保佐人の代理人もこれに当たる。
122条は、取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは以後取り消すことができないと定める。追認は取消権の放棄であり、追認できる者は取消権者と一致する。120条1項は、行為能力の制限による取消しの取消権者として制限行為能力者の代理人を掲げており、特定の法律行為について代理権を付与する審判(876条の4第1項)を受けた保佐人のように被保佐人の法定代理人となる者は、これに当たる。また、追認は取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じないのが原則であるが(124条1項)、法定代理人や保佐人が追認するときはこの制限を受けない(同条2項1号)。したがって、法定代理人が追認すれば行為は確定的に有効となり、取消権は被保佐人A本人についても消滅するから、Aは以後取り消すことができない。取消権者の一人がした追認は、他の取消権者の取消権も失わせるのである。

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
正しい。120条に規定する者が追認すれば、以後その行為は取り消すことができず(122条)、被保佐人の代理人もこれに当たる。
122条は、取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは以後取り消すことができないと定める。追認は取消権の放棄であり、追認できる者は取消権者と一致する。120条1項は、行為能力の制限による取消しの取消権者として制限行為能力者の代理人を掲げており、特定の法律行為について代理権を付与する審判(876条の4第1項)を受けた保佐人のように被保佐人の法定代理人となる者は、これに当たる。また、追認は取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じないのが原則であるが(124条1項)、法定代理人や保佐人が追認するときはこの制限を受けない(同条2項1号)。したがって、法定代理人が追認すれば行為は確定的に有効となり、取消権は被保佐人A本人についても消滅するから、Aは以後取り消すことができない。取消権者の一人がした追認は、他の取消権者の取消権も失わせるのである。

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
誤り。違うのは「本人は,無権代理人に対しても追認の効果を主張することができない」の部分である。無権代理人に対してした追認は、相手方が知るまで相手方に対抗できないだけで、本人と無権代理人の間では直ちに効力を生ずる(113条2項、大判大8.10.23)。
113条2項本文は、追認又はその拒絶は相手方に対してしなければその相手方に対抗することができないと定め、ただし書は相手方がその事実を知ったときはこの限りでないとする。この規定は、追認を無権代理人に対してすることもできることを前提に、追認の事実を知らない相手方の地位を守るためのものである。取り消すことができる行為の追認が相手方に対する意思表示によってする(123条)のと異なり、無権代理行為の追認は、相手方に対しても無権代理人に対してもすることができると解されている。そして、無権代理人に対して追認がされた場合に効力が制限されるのは、追認の事実を知らない相手方との関係だけである。本人と無権代理人の間では追認は直ちに効力を生じ、本人は無権代理人に追認の効果を主張できる(大判大8.10.23)。そのため本人は、たとえば無権代理人が相手方から受け取った金銭の引渡しを求めることができる。したがって肢は誤っている。

追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
誤り。違うのは「本人は,無権代理人に対しても追認の効果を主張することができない」の部分である。無権代理人に対してした追認は、相手方が知るまで相手方に対抗できないだけで、本人と無権代理人の間では直ちに効力を生ずる(113条2項、大判大8.10.23)。
113条2項本文は、追認又はその拒絶は相手方に対してしなければその相手方に対抗することができないと定め、ただし書は相手方がその事実を知ったときはこの限りでないとする。この規定は、追認を無権代理人に対してすることもできることを前提に、追認の事実を知らない相手方の地位を守るためのものである。取り消すことができる行為の追認が相手方に対する意思表示によってする(123条)のと異なり、無権代理行為の追認は、相手方に対しても無権代理人に対してもすることができると解されている。そして、無権代理人に対して追認がされた場合に効力が制限されるのは、追認の事実を知らない相手方との関係だけである。本人と無権代理人の間では追認は直ちに効力を生じ、本人は無権代理人に追認の効果を主張できる(大判大8.10.23)。そのため本人は、たとえば無権代理人が相手方から受け取った金銭の引渡しを求めることができる。したがって肢は誤っている。

追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
誤り。違うのは「その追認があったことを表意者本人が知らなかったときは,表意者本人は,その法律行為を取り消すことができる」の部分である。取消権者の一人が追認すれば、以後は誰も取り消すことができない(122条)。
詐欺によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り取り消すことができ(120条2項)、122条は、取り消すことができる行為は120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができないと定める。表意者の法定代理人は同条にいう代理人に当たるから、その追認は取消権者による追認であり、行為は有効なものとして確定する。追認は取消権を放棄する意思表示であり、取消権者のうち一人がこれをすれば、不安定な状態を終わらせて相手方を保護するという追認の目的が達せられ、ほかの取消権者がなお取り消せるとすると確定の意味がなくなるからである。法定代理人の追認の効力は、表意者本人がそれを知っていたかどうかに左右されない。本肢は本人の不知を理由に取消しを認めている点が誤りである。

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
誤り。違うのは「Bは、当該法律行為を取り消すことができない」の部分である。Aの法定代理人は親権者Bであり、親権者でないCは追認をすることができないので、Cが追認してもBは取り消すことができる(120条1項・122条)。
5条1項・2項により、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができる。122条は、取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは以後取り消すことができないと定め、120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為を取り消せる者を、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限っている。未成年者の法定代理人は親権者であり(818条1項・824条)、父母が婚姻していない場合に父が認知した子の親権は、協議などで父を親権者と定めない限り母が行う(819条4項)。本肢では親権者はBであり、Cは父ではあっても法定代理人ではないから、120条の代理人に当たらず、その追認には122条の効果は生じない。そのため、親権者Bはなおその法律行為を取り消すことができる。したがって、本肢は誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。/取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
誤り。違うのは「行為の時にさかのぼってその効力を生ずる」の部分である。無効な行為は、無効と知って追認しても、追認の時に新たな行為をしたものとみなされるだけで、さかのぼって効力を生じない(119条)。現行法では錯誤は取消しの原因であり、追認は以後取り消せなくなる効果を持つにとどまる(122条)。
119条は、無効な行為は追認によってもその効力を生じないと定め、ただし書で、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなすとする。無効な行為は初めから効力がないので、追認によって過去にさかのぼって有効にすることはできず、当事者が改めて同じ内容の行為をしたものとして、追認の時から効力を生じさせるにとどめたのである。出題当時の95条は錯誤による意思表示を無効としていたので、本肢の追認にはこの規定が適用され、さかのぼって効力を生ずるとする点で誤りとされた。平成29年改正後は、錯誤による意思表示は取り消すことができるものとなり(95条1項)、取り消すまでは有効である。その追認は、取消権を放棄して以後取り消せなくするものであり(122条)、追認によって初めて効力がさかのぼって生じるわけではない。いずれにしても、本肢は誤りである。

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
- 無効な行為(119条本文):追認しても効力を生じない
- 無効と知って追認(119条ただし書):追認の時に新たな行為をしたものとみなす(遡らない)
- 取り消すことができる行為(122条):追認すれば以後取り消せない
- 無効な婚姻の追認:実質的生活関係があり届出を知って追認すれば、届出の当初に遡って有効(最判昭47.7.25)
取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
この条文の過去問 6問
誤り。違うのは「B及びCの双方に対する意思表示によってする」の部分である。取消しは契約の相手方Cに対する意思表示によってすれば足りる。
123条は、取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消しは相手方に対する意思表示によってすると定める。ここでいう相手方は、取り消される法律行為の相手方当事者である。本肢で取り消されるのはAC間の売買におけるAの意思表示であるから、取消しの意思表示はCに対してすれば足り、契約当事者でない詐欺者Bに対してする必要はない。第三者による詐欺でBが意味を持つのは、取り消せるかどうかの場面である。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合には、相手方Cがその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消すことができる(96条2項)。これは詐欺に関わっていない相手方の信頼を守るための要件であり、取消しを誰に向けるかとは別の問題である。本肢は、詐欺をしたBにも意思表示を要するとしている点が誤りである。

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
誤り。違うのは「B及びCの双方に対する意思表示によってする」の部分である。取消しは契約の相手方Cに対する意思表示によってすれば足りる。
123条は、取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消しは相手方に対する意思表示によってすると定める。ここでいう相手方は、取り消される法律行為の相手方当事者である。本肢で取り消されるのはAC間の売買におけるAの意思表示であるから、取消しの意思表示はCに対してすれば足り、契約当事者でない詐欺者Bに対してする必要はない。第三者による詐欺でBが意味を持つのは、取り消せるかどうかの場面である。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合には、相手方Cがその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消すことができる(96条2項)。これは詐欺に関わっていない相手方の信頼を守るための要件であり、取消しを誰に向けるかとは別の問題である。本肢は、詐欺をしたBにも意思表示を要するとしている点が誤りである。

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
誤り。違うのは「本人は,無権代理人に対しても追認の効果を主張することができない」の部分である。無権代理人に対してした追認は、相手方が知るまで相手方に対抗できないだけで、本人と無権代理人の間では直ちに効力を生ずる(113条2項、大判大8.10.23)。
113条2項本文は、追認又はその拒絶は相手方に対してしなければその相手方に対抗することができないと定め、ただし書は相手方がその事実を知ったときはこの限りでないとする。この規定は、追認を無権代理人に対してすることもできることを前提に、追認の事実を知らない相手方の地位を守るためのものである。取り消すことができる行為の追認が相手方に対する意思表示によってする(123条)のと異なり、無権代理行為の追認は、相手方に対しても無権代理人に対してもすることができると解されている。そして、無権代理人に対して追認がされた場合に効力が制限されるのは、追認の事実を知らない相手方との関係だけである。本人と無権代理人の間では追認は直ちに効力を生じ、本人は無権代理人に追認の効果を主張できる(大判大8.10.23)。そのため本人は、たとえば無権代理人が相手方から受け取った金銭の引渡しを求めることができる。したがって肢は誤っている。

追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
誤り。違うのは「本人は,無権代理人に対しても追認の効果を主張することができない」の部分である。無権代理人に対してした追認は、相手方が知るまで相手方に対抗できないだけで、本人と無権代理人の間では直ちに効力を生ずる(113条2項、大判大8.10.23)。
113条2項本文は、追認又はその拒絶は相手方に対してしなければその相手方に対抗することができないと定め、ただし書は相手方がその事実を知ったときはこの限りでないとする。この規定は、追認を無権代理人に対してすることもできることを前提に、追認の事実を知らない相手方の地位を守るためのものである。取り消すことができる行為の追認が相手方に対する意思表示によってする(123条)のと異なり、無権代理行為の追認は、相手方に対しても無権代理人に対してもすることができると解されている。そして、無権代理人に対して追認がされた場合に効力が制限されるのは、追認の事実を知らない相手方との関係だけである。本人と無権代理人の間では追認は直ちに効力を生じ、本人は無権代理人に追認の効果を主張できる(大判大8.10.23)。そのため本人は、たとえば無権代理人が相手方から受け取った金銭の引渡しを求めることができる。したがって肢は誤っている。

追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
正しい。取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消しは相手方に対する意思表示によってする(123条)。
123条は、取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は相手方に対する意思表示によってすると定める。未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができ(5条2項)、取消権者は未成年者やその法定代理人などである(120条1項)。取消しは、取消権者が一方的にする意思表示によって効力を生ずる単独行為であり、裁判所に請求したり、相手方の承諾を得たりする必要はない。取消しによって行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、相手方は大きな影響を受けるから、その意思表示は相手方に向けてしなければならず、相手方に到達した時に効力を生ずる(97条1項)。相手方が確定していれば、取消権者は相手方に対して取り消す旨を伝えれば足り、方式も問われない。訴訟の中で取消しを主張することもでき、書面である必要もない。本肢は同条の内容どおりである。

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
- 制限行為能力・錯誤・詐欺・強迫による取消し:相手方に対する意思表示(123条)
- 詐害行為の取消し:債権者が裁判所に請求する(424条1項)
- 不適法な婚姻の取消し:各当事者・親族・検察官が家庭裁判所に請求する(744条1項)
- 負担付遺贈に係る遺言の取消し:相続人が催告のうえ家庭裁判所に請求する(1027条)
誤り。違うのは「その第三者に対する意思表示によって行う」の部分である。取り消すことができる意思表示が向けられた相手方は契約の当事者である要約者であり、第三者が受益の意思表示をしていても、取消しは要約者に対してする(123条)。
123条は、取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、取消しは相手方に対する意思表示によってすると定める。ここでいう相手方とは、取り消そうとする意思表示が向けられた者、すなわち契約の相手方である。第三者のためにする契約では、契約は諾約者と要約者の間で結ばれ、第三者は受益の意思を表示した時に諾約者に対して直接給付を請求する権利を取得するにとどまる(537条1項・3項)。第三者は契約の当事者ではなく、諾約者の意思表示が向けられた相手でもない。したがって、諾約者が要約者の詐欺を理由に契約を取り消す場合、取消しの意思表示は契約の相手方である要約者に対してしなければならない。第三者が受益の意思表示をしていても、取消しの相手方が第三者に変わるわけではない。取消しによって契約が効力を失えば、第三者の権利も失われる。本肢は第三者に対する意思表示によるとしている点が誤りである。

契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。/第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
- 制限行為能力・錯誤・詐欺・強迫による取消し:相手方に対する意思表示(123条)
- 詐害行為の取消し:債権者が裁判所に請求する(424条1項)
- 不適法な婚姻の取消し:各当事者・親族・検察官が家庭裁判所に請求する(744条1項)
- 負担付遺贈に係る遺言の取消し:相続人が催告のうえ家庭裁判所に請求する(1027条)
1取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
1 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
2 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
この条文の過去問 9問
誤り。違うのは「成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ、自らその契約を取り消すことができない」の部分である。未成年者は単独で取り消すことができる。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消権者として、制限行為能力者本人を代理人・承継人・同意権者と並べて掲げ、本人が取り消すのに同意権者の同意を要するとはしていない。取消しは、すでにした法律行為を初めから無効とし(121条)、原状回復の関係を生じさせるだけで、未成年者に新たな負担を負わせるものではないから、単独でさせても保護に欠けることはない。かえって同意を要するとすれば、親権者が同意しない限り未成年者は不利な契約から離れられず、保護の趣旨に反する。これに対し追認は、取消権を放棄して契約を確定的に有効にする行為であるから、124条2項2号が成年前の追認に法定代理人の同意を求めている(肢エ)。本肢は、追認についての同意の要求を取消しにまで及ぼしている点が誤りである。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
| 取消し | 追認 | |
|---|---|---|
| 性質 | 行為を初めから無効にする(121条) | 取消権を放棄して行為を確定させる(122条) |
| 成年前に本人がするとき | 同意は要らない(120条1項) | 法定代理人の同意が要る(124条2項2号) |
| 成年後に本人がするとき | 単独でできる | 取消権を有することを知った後なら単独でできる(124条1項) |
正しい。追認は取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じず(124条1項)、成年前の未成年者が自ら追認するには法定代理人の同意が要る(同条2項2号)。
追認は、取消権を放棄して、取り消すことができる行為を確定的に有効とする意思表示である(122条)。追認をすれば未成年者は契約に拘束されることが確定するから、取消しとは違って保護の必要がある。そこで124条1項は、追認は取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じないと定める。未成年者にとって原因の消滅とは18歳の成年に達すること(4条)であるから、成年前に単独でした追認は効力を生じない。もっとも、124条2項2号は、成年被後見人を除く制限行為能力者が法定代理人の同意を得て追認をするときは、原因の消滅を待たなくてよいとする。したがって、成年に達するまでは親権者の同意を得なければ自ら追認できないとする本肢は正しい。親権者自身が追認することも、124条2項1号により成年前から可能である。

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
| 取消し | 追認 | |
|---|---|---|
| 性質 | 行為を初めから無効にする(121条) | 取消権を放棄して行為を確定させる(122条) |
| 成年前に本人がするとき | 同意は要らない(120条1項) | 法定代理人の同意が要る(124条2項2号) |
| 成年後に本人がするとき | 単独でできる | 取消権を有することを知った後なら単独でできる(124条1項) |
正しい。追認は取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じず(124条1項)、成年前の未成年者が自ら追認するには法定代理人の同意が要る(同条2項2号)。
追認は、取消権を放棄して、取り消すことができる行為を確定的に有効とする意思表示である(122条)。追認をすれば未成年者は契約に拘束されることが確定するから、取消しとは違って保護の必要がある。そこで124条1項は、追認は取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じないと定める。未成年者にとって原因の消滅とは18歳の成年に達すること(4条)であるから、成年前に単独でした追認は効力を生じない。もっとも、124条2項2号は、成年被後見人を除く制限行為能力者が法定代理人の同意を得て追認をするときは、原因の消滅を待たなくてよいとする。したがって、成年に達するまでは親権者の同意を得なければ自ら追認できないとする本肢は正しい。親権者自身が追認することも、124条2項1号により成年前から可能である。

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
| 取消し | 追認 | |
|---|---|---|
| 性質 | 行為を初めから無効にする(121条) | 取消権を放棄して行為を確定させる(122条) |
| 成年前に本人がするとき | 同意は要らない(120条1項) | 法定代理人の同意が要る(124条2項2号) |
| 成年後に本人がするとき | 単独でできる | 取消権を有することを知った後なら単独でできる(124条1項) |
誤り。違うのは「成年被後見人が行為能力者となった時である」の部分である。起算点は追認をすることができる時であり、行為能力者となったうえで取消権を有することを知った時から進む(126条・124条1項)。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると定める。追認をすることができる時は124条1項で決まり、同項は追認を、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じないとする。成年被後見人だった者は、後見開始の審判が取り消されて行為能力者となれば取消しの原因となっていた状況は消滅するが、事理弁識能力を欠く常況にあった以上、自分がその行為をしたこと自体を知らないのが通常であり、それだけでは追認できない。そのため本人について5年の期間が進むのは、行為能力者となり、かつ取消権を有することを知った時からである。成年後見人が追認する場合は状況の消滅を要しないが(124条2項1号)、行為を知った時から進む。行為能力者となった時だけを起算点とする肢は誤っている。

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。/取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)。法定代理人・保佐人・補助人が追認する場合は状況の消滅を要しない(124条2項1号)
誤り。違うのは「成年被後見人が行為能力者となった時である」の部分である。起算点は追認をすることができる時であり、行為能力者となったうえで取消権を有することを知った時から進む(126条・124条1項)。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると定める。追認をすることができる時は124条1項で決まり、同項は追認を、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じないとする。成年被後見人だった者は、後見開始の審判が取り消されて行為能力者となれば取消しの原因となっていた状況は消滅するが、事理弁識能力を欠く常況にあった以上、自分がその行為をしたこと自体を知らないのが通常であり、それだけでは追認できない。そのため本人について5年の期間が進むのは、行為能力者となり、かつ取消権を有することを知った時からである。成年後見人が追認する場合は状況の消滅を要しないが(124条2項1号)、行為を知った時から進む。行為能力者となった時だけを起算点とする肢は誤っている。

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。/取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)。法定代理人・保佐人・補助人が追認する場合は状況の消滅を要しない(124条2項1号)
正しい。利益相反行為を親権者が代理してした場合は無権代理行為となるから、子は成年に達した後に追認でき、追認すれば完全な効力を生ずる(大判昭11.8.7)。
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(826条1項)。これをせずに親権者自身が子を代理して利益相反行為をしたときは、親権者はその行為について代理権を持たないから、その行為は無権代理行為となる(大判昭11.8.7)。無権代理行為は確定的に無効なのではなく、本人が追認すれば契約の時にさかのぼって効力を生ずる(113条1項・116条本文)。そこで、子が成年に達して自ら法律行為をすることができるようになった後は、本人として親権者のした代理行為を追認することができ、追認すれば無権代理の一般の場合と同じく完全な効力を生ずる。したがって、本肢は正しい。出題当時の成年年齢は20歳であったが、令和4年4月1日から18歳となっており(4条)、本肢の成年に達すればは現在は18歳に達すればを意味する。

親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
- 119条:無効な行為は追認しても効力を生じない。無効と知って追認すれば、追認の時に新たな行為をしたものとみなす
- 無効な婚姻の追認:実質的生活関係があり、届出を知って追認すれば、届出の当初に遡って有効(最判昭和47年7月25日)
- 代諾権のない者の代諾による縁組:養子が15歳に達した後に追認すれば有効(最判昭和27年10月3日)
- 利益相反行為:無権代理行為として、子が成年に達した後に追認できる(大判昭和11年8月7日)
誤り。違うのは「売買の当時未成年者であったことを理由としてその売買を取り消すことができる」の部分である。成年に達した後に代金を支払うと、全部又は一部の履行として追認をしたものとみなされ(125条1号)、もはや取り消すことができない。
125条は、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について全部又は一部の履行などの事実があったときは、異議をとどめない限り、追認をしたものとみなすと定める。取消権者が自らその行為を前提とする行動をとれば、行為を有効なものとして扱う意思があるとみるのが自然であり、相手方もそう信頼するから、取消権者の内心を問わずに追認の効果を与えて法律関係を確定させたのである。未成年者は成年に達すれば取消しの原因となっていた状況が消滅し、追認をすることができるようになるので、その後に代金を支払うことは同条1号の履行に当たる。判例は、法定追認には取消権を有することを知っていることを要しないとしている(大判大12.6.11)。したがって、成年に達した後に代金を支払った者は追認をしたものとみなされ、取り消すことはできないので、本肢は誤りである。

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。一 全部又は一部の履行 二 履行の請求 三 更改 四 担保の供与 五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 六 強制執行
- 全部又は一部の履行(1号):取消権者が履行した場合も、相手方の履行を受領した場合も当たる
- 履行の請求(2号):取消権者が請求した場合に限られ、相手方から請求を受けた場合は当たらない
- 更改(3号):取消権者が債権者としてした場合も債務者としてした場合も当たる
- 担保の供与(4号):取消権者が供与した場合も、相手方から供与を受けた場合も当たる
- 取得した権利の譲渡(5号):取消権者が譲渡した場合に限られる
- 強制執行(6号):取消権者が債権者として執行した場合に限られる
誤り。違うのは「行為の時にさかのぼってその効力を生ずる」の部分である。無効な行為は、無効と知って追認しても、追認の時に新たな行為をしたものとみなされるだけで、さかのぼって効力を生じない(119条)。現行法では錯誤は取消しの原因であり、追認は以後取り消せなくなる効果を持つにとどまる(122条)。
119条は、無効な行為は追認によってもその効力を生じないと定め、ただし書で、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなすとする。無効な行為は初めから効力がないので、追認によって過去にさかのぼって有効にすることはできず、当事者が改めて同じ内容の行為をしたものとして、追認の時から効力を生じさせるにとどめたのである。出題当時の95条は錯誤による意思表示を無効としていたので、本肢の追認にはこの規定が適用され、さかのぼって効力を生ずるとする点で誤りとされた。平成29年改正後は、錯誤による意思表示は取り消すことができるものとなり(95条1項)、取り消すまでは有効である。その追認は、取消権を放棄して以後取り消せなくするものであり(122条)、追認によって初めて効力がさかのぼって生じるわけではない。いずれにしても、本肢は誤りである。

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
- 無効な行為(119条本文):追認しても効力を生じない
- 無効と知って追認(119条ただし書):追認の時に新たな行為をしたものとみなす(遡らない)
- 取り消すことができる行為(122条):追認すれば以後取り消せない
- 無効な婚姻の追認:実質的生活関係があり届出を知って追認すれば、届出の当初に遡って有効(最判昭47.7.25)
正しい。行為能力の制限によって取り消すことができる行為は制限行為能力者本人も取り消すことができ(120条1項)、保佐開始の原因が消滅していなくても被保佐人の取消しは有効であり、行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。
120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り取り消すことができると定め、制限行為能力者本人を取消権者に含めている。取消しは、行為をなかったことにして制限行為能力者を元の状態に戻すものであり、本人にとって不利益になることはないから、能力の制限が続いている間でも本人が単独で取り消すことを認めたのである。取消原因となった状況が消滅していることを要件とするのは追認であり(124条1項)、追認は取り消すことのできる行為を確定的に有効にして取消権を失わせるので、判断能力の回復を待つ必要がある。本肢では、被保佐人がした取り消すことのできる行為を被保佐人自身が取り消しているので、取消しは有効であり、その行為は初めから無効であったものとみなされる(121条)。本肢は正しい。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
- 行為能力の制限による取消し(1項):制限行為能力者本人・その代理人・承継人・同意をすることができる者。本人は能力の制限が続いていても単独で取り消せる
- 錯誤・詐欺・強迫による取消し(2項):瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人
- 取消権者でない者:契約の相手方、保証人、目的物の譲受人など
- 効果:初めから無効であったものとみなす(121条)
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。全部又は一部の履行履行の請求更改担保の供与取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡強制執行
1 全部又は一部の履行
2 履行の請求
3 更改
4 担保の供与
5 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
6 強制執行
この条文の過去問 4問
誤り。違うのは「当該売買契約を追認したものとみなされる」の部分である。法定追認となる履行の請求は取消権者がした請求に限られ、相手方から請求を受けただけでは当たらない(大判明39.5.17)。
125条は、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について同条各号の事実があったときは、異議をとどめない限り追認をしたものとみなすと定め、2号に履行の請求を挙げる。法定追認は、取消権者の行動から追認の意思が推測でき、その行動を見た相手方の信頼も守るべきであるという理由による制度であるから、各号の事実は取消権者の側の行為でなければならない。判例(大判明39.5.17)も、125条2号の履行の請求は取消権者がした請求に限られ、取消権者が相手方から履行を請求されたにすぎない場合は含まれないとしている。請求を受けたからといって、取消権者が契約を有効なものとして維持する意思を示したことにはならないからである。本肢では、行為能力者となったAが相手方Bから所有権移転登記手続を請求されただけであり、Aの側の履行の請求ではないから2号に当たらず、他の号にも当たらない。したがって、追認したものとはみなされず、本肢は誤りである。

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。一 全部又は一部の履行 二 履行の請求 三 更改 四 担保の供与 五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 六 強制執行
- 全部又は一部の履行(1号):取消権者が履行した場合も、相手方の履行を受領した場合も当たる
- 履行の請求(2号):取消権者が請求した場合に限られ、相手方から請求を受けた場合は当たらない
- 更改(3号)・担保の供与(4号):取消権者が債権者でも債務者でも当たる
- 取得した権利の譲渡(5号):取消権者が譲渡した場合に限られる
- 強制執行(6号):取消権者が債権者として執行した場合に限られる
正しい。取り消すことができる行為によって取得した権利の譲渡は法定追認の事由であり(125条5号)、行為能力者となった後のAが代金債権を譲渡すれば追認したものとみなされる。
125条5号は、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡があったときは、追認をしたものとみなすと定める。取消権者が自分の取得した権利を他人に処分することは、その行為を有効なものとして扱う態度の表れであり、追認の意思を推測させるからである。ここでの譲渡は取消権者自身がしたものに限られる。本肢のAは、行為能力者となった後に、AB間の売買契約によって取得した売買代金債権を他人に譲渡している。この代金債権は取り消すことができる行為によって取得した権利であるから、その譲渡は5号に当たる。また、Aは行為能力者となって取消しの原因となっていた状況が消えているから、追認をすることができる時以後という要件も満たす(124条1項)。判例は、法定追認では取消権者が取消権の存在を知っていることを要しないとしているから、Aがそれを知らなかったとしても結論は変わらない。したがって、売買契約は追認したものとみなされ、本肢は正しい。

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。一 全部又は一部の履行 二 履行の請求 三 更改 四 担保の供与 五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 六 強制執行
- 全部又は一部の履行(1号):取消権者が履行した場合も、相手方の履行を受領した場合も当たる
- 履行の請求(2号):取消権者が請求した場合に限られ、相手方から請求を受けた場合は当たらない
- 更改(3号)・担保の供与(4号):取消権者が債権者でも債務者でも当たる
- 取得した権利の譲渡(5号):取消権者が譲渡した場合に限られる
- 強制執行(6号):取消権者が債権者として執行した場合に限られる
誤り。違うのは「売買の当時未成年者であったことを理由としてその売買を取り消すことができる」の部分である。成年に達した後に代金を支払うと、全部又は一部の履行として追認をしたものとみなされ(125条1号)、もはや取り消すことができない。
125条は、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について全部又は一部の履行などの事実があったときは、異議をとどめない限り、追認をしたものとみなすと定める。取消権者が自らその行為を前提とする行動をとれば、行為を有効なものとして扱う意思があるとみるのが自然であり、相手方もそう信頼するから、取消権者の内心を問わずに追認の効果を与えて法律関係を確定させたのである。未成年者は成年に達すれば取消しの原因となっていた状況が消滅し、追認をすることができるようになるので、その後に代金を支払うことは同条1号の履行に当たる。判例は、法定追認には取消権を有することを知っていることを要しないとしている(大判大12.6.11)。したがって、成年に達した後に代金を支払った者は追認をしたものとみなされ、取り消すことはできないので、本肢は誤りである。

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。一 全部又は一部の履行 二 履行の請求 三 更改 四 担保の供与 五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 六 強制執行
- 全部又は一部の履行(1号):取消権者が履行した場合も、相手方の履行を受領した場合も当たる
- 履行の請求(2号):取消権者が請求した場合に限られ、相手方から請求を受けた場合は当たらない
- 更改(3号):取消権者が債権者としてした場合も債務者としてした場合も当たる
- 担保の供与(4号):取消権者が供与した場合も、相手方から供与を受けた場合も当たる
- 取得した権利の譲渡(5号):取消権者が譲渡した場合に限られる
- 強制執行(6号):取消権者が債権者として執行した場合に限られる
誤り。違うのは「行為の時にさかのぼってその効力を生ずる」の部分である。無効な行為は、無効と知って追認しても、追認の時に新たな行為をしたものとみなされるだけで、さかのぼって効力を生じない(119条)。現行法では錯誤は取消しの原因であり、追認は以後取り消せなくなる効果を持つにとどまる(122条)。
119条は、無効な行為は追認によってもその効力を生じないと定め、ただし書で、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなすとする。無効な行為は初めから効力がないので、追認によって過去にさかのぼって有効にすることはできず、当事者が改めて同じ内容の行為をしたものとして、追認の時から効力を生じさせるにとどめたのである。出題当時の95条は錯誤による意思表示を無効としていたので、本肢の追認にはこの規定が適用され、さかのぼって効力を生ずるとする点で誤りとされた。平成29年改正後は、錯誤による意思表示は取り消すことができるものとなり(95条1項)、取り消すまでは有効である。その追認は、取消権を放棄して以後取り消せなくするものであり(122条)、追認によって初めて効力がさかのぼって生じるわけではない。いずれにしても、本肢は誤りである。

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
- 無効な行為(119条本文):追認しても効力を生じない
- 無効と知って追認(119条ただし書):追認の時に新たな行為をしたものとみなす(遡らない)
- 取り消すことができる行為(122条):追認すれば以後取り消せない
- 無効な婚姻の追認:実質的生活関係があり届出を知って追認すれば、届出の当初に遡って有効(最判昭47.7.25)
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
この条文の過去問 8問
誤り。違うのは「取り消すことができる行為をした時から」の部分である。5年の起算点は追認をすることができる時であり、行為の時から数えるのは20年の期間である。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様とすると定める。追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時である(124条1項)。未成年者であれば成年に達して取消権を知った時、詐欺であれば欺かれたことに気づいた時から5年を数える。取消権者が取り消せる状態にない間に期間が進むと、取消権を与えた意味がなくなるからである。他方で、原因が消滅しないまま法律関係がいつまでも不安定になるのを避けるため、行為の時から20年という上限も置かれている。本肢は、5年の期間を「取り消すことができる行為をした時」から数えるとして、20年の期間の起算点と取り違えている点が誤りである。

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)。保護者が追認する場合は状況の消滅を要しない
誤り。違うのは「取り消すことができる行為をした時から」の部分である。5年の起算点は追認をすることができる時であり、行為の時から数えるのは20年の期間である。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様とすると定める。追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時である(124条1項)。未成年者であれば成年に達して取消権を知った時、詐欺であれば欺かれたことに気づいた時から5年を数える。取消権者が取り消せる状態にない間に期間が進むと、取消権を与えた意味がなくなるからである。他方で、原因が消滅しないまま法律関係がいつまでも不安定になるのを避けるため、行為の時から20年という上限も置かれている。本肢は、5年の期間を「取り消すことができる行為をした時」から数えるとして、20年の期間の起算点と取り違えている点が誤りである。

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)。保護者が追認する場合は状況の消滅を要しない
誤り。違うのは「その行為の時から5年間」の部分である。取消権の5年は追認をすることができる時から数え、行為の時から数えるのは20年である(126条)。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様とすると定める。5年の期間の起算点は、行為の時ではなく追認をすることができる時であり、行為の時から数えるのは20年の期間である。追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権を有することを知った時である(124条1項)。詐欺による取消しでいえば、だまされていたことに気づき、取り消せると分かった時から5年を数えることになる。詐欺の被害者は自分がだまされたことになかなか気づかないのが普通であるから、行為の時から5年を数えるとすれば、取り消せることを知らないうちに取消権を失ってしまい、取消権を与えた意味がなくなるのである。他方で、法律関係がいつまでも不安定になることを避けるため、行為の時から20年という上限も置かれている。本肢は、5年の起算点を行為の時としている点で、126条に反する。

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)
誤り。違うのは「その行為の時から5年間」の部分である。取消権の5年は追認をすることができる時から数え、行為の時から数えるのは20年である(126条)。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様とすると定める。5年の期間の起算点は、行為の時ではなく追認をすることができる時であり、行為の時から数えるのは20年の期間である。追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権を有することを知った時である(124条1項)。詐欺による取消しでいえば、だまされていたことに気づき、取り消せると分かった時から5年を数えることになる。詐欺の被害者は自分がだまされたことになかなか気づかないのが普通であるから、行為の時から5年を数えるとすれば、取り消せることを知らないうちに取消権を失ってしまい、取消権を与えた意味がなくなるのである。他方で、法律関係がいつまでも不安定になることを避けるため、行為の時から20年という上限も置かれている。本肢は、5年の起算点を行為の時としている点で、126条に反する。

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)
誤り。違うのは「成年被後見人が行為能力者となった時である」の部分である。起算点は追認をすることができる時であり、行為能力者となったうえで取消権を有することを知った時から進む(126条・124条1項)。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると定める。追認をすることができる時は124条1項で決まり、同項は追認を、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じないとする。成年被後見人だった者は、後見開始の審判が取り消されて行為能力者となれば取消しの原因となっていた状況は消滅するが、事理弁識能力を欠く常況にあった以上、自分がその行為をしたこと自体を知らないのが通常であり、それだけでは追認できない。そのため本人について5年の期間が進むのは、行為能力者となり、かつ取消権を有することを知った時からである。成年後見人が追認する場合は状況の消滅を要しないが(124条2項1号)、行為を知った時から進む。行為能力者となった時だけを起算点とする肢は誤っている。

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。/取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)。法定代理人・保佐人・補助人が追認する場合は状況の消滅を要しない(124条2項1号)
誤り。違うのは「成年被後見人が行為能力者となった時である」の部分である。起算点は追認をすることができる時であり、行為能力者となったうえで取消権を有することを知った時から進む(126条・124条1項)。
126条は、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると定める。追認をすることができる時は124条1項で決まり、同項は追認を、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じないとする。成年被後見人だった者は、後見開始の審判が取り消されて行為能力者となれば取消しの原因となっていた状況は消滅するが、事理弁識能力を欠く常況にあった以上、自分がその行為をしたこと自体を知らないのが通常であり、それだけでは追認できない。そのため本人について5年の期間が進むのは、行為能力者となり、かつ取消権を有することを知った時からである。成年後見人が追認する場合は状況の消滅を要しないが(124条2項1号)、行為を知った時から進む。行為能力者となった時だけを起算点とする肢は誤っている。

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。/取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)。法定代理人・保佐人・補助人が追認する場合は状況の消滅を要しない(124条2項1号)
正しい。現行法では錯誤の効果は取消しであり(95条1項)、取消権は行為の時から20年を経過すると消滅するので(126条後段)、表意者はもはや錯誤を主張できない。
平成29年改正後の95条1項は、要件を満たす錯誤に基づく意思表示を「取り消すことができる」と定め、錯誤の効果を取消しとした。取消権には126条が適用され、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、又は行為の時から20年を経過したときに消滅する。取り消すことができる状態を長く続けると相手方や第三者の地位がいつまでも不安定になるので、期間で区切ったのである。したがって、肢の「無効の主張」を現行法の取消しと読めば、意思表示の時から20年が経過した後は、表意者は錯誤を理由に意思表示の効力を否定することができず、本肢は正しい。出題当時は旧95条が錯誤の効果を無効と定めており、無効の主張には取消権の期間制限が及ばないと解されていたので、本肢は誤りとされていた(公式正解は3)。

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
- 短い期間:追認をすることができる時から5年(126条前段)
- 長い期間:行為の時から20年(126条後段)
- 追認をすることができる時:取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時(124条1項)
正しい。即時取得は有効な取引行為による占有の取得を要するので、CD間の売買が未成年を理由に取り消されれば、2年が過ぎていてもDは甲の所有権を取得できない。
192条の即時取得は、取引行為によって動産の占有を始めた者が、前主に処分の権利があると過失なく信じた場合に、前主の無権利を補って権利を取得させる制度である。保護されるのは前主が権利者であるという信頼であって、取引行為そのものの瑕疵まで治すものではないから、取引行為は有効でなければならない。CD間の売買が、Cが未成年者であることを理由に親権者によって取り消されれば(5条2項)、売買は初めから無効であったものとみなされ(121条)、Dは即時取得の基礎となる有効な取引行為を欠く。これを即時取得で救うと、未成年者を保護する取消しの制度が意味を失うからである。そして、取消権は追認できる時から5年、行為の時から20年行使でき(126条)、Dが買い受けてから2年が過ぎても行使できる。したがって、Dは甲の所有権を取得できず、本肢は正しい。

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。