次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。不動産の保存不動産の工事不動産の売買
1 不動産の保存
2 不動産の工事
3 不動産の売買
この条文の過去問 4問
正しい。抵当不動産の第三取得者が支出した必要費は、抵当不動産の代価から他の債権者より先に償還を受けることができ(391条)、最先順位の抵当権者にも優先する。
391条は、抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができると定める。ここでいう他の債権者には抵当権者も含まれ、最先順位の抵当権者よりも先に償還を受ける。第三取得者が支出した費用によって目的不動産の価値が保たれ、又は増えているから、その利益は競売の代金という形で抵当権者にも及んでいる。費用を出した者を最後に回せば、誰も抵当不動産を維持管理しなくなり、かえって抵当権者の担保の価値が損なわれる。必要費は支出した額の全部が償還の対象となり、有益費は価格の増加が残っている場合に限り、支出額か増価額が対象となる。不動産の保存の費用には不動産保存の先取特権も成立するが、抵当権に優先させるには登記が要る(337条・339条)のに対し、391条は登記なしで優先を認める。本肢は正しい。

抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。
- 代価弁済(378条):所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて代価を弁済すれば、抵当権はその第三者のために消滅する
- 抵当権消滅請求(379条・380条):所有権を取得した第三取得者ができる。主たる債務者・保証人・これらの承継人はできない
- みなし承諾(384条):書面の送付から2か月以内に競売の申立てがないときなど
- 費用の償還(391条):必要費・有益費を196条の区別に従い、抵当不動産の代価から他の債権者より先に償還される
誤り。違うのは「その優先権の順位は同一となる」の部分である。同一の不動産の特別の先取特権の順位は325条各号の順序に従うから(331条1項)、不動産保存が第一順位、不動産工事が第二順位となる。
331条1項は、同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、325条各号に掲げる順序に従うと定める。325条は、不動産の先取特権の原因として、1号に不動産の保存、2号に不動産の工事、3号に不動産の売買を掲げているから、不動産保存の先取特権が第一順位、不動産工事の先取特権が第二順位となり、順位は同一にはならない。保存は目的物の価値がなくなったり減ったりするのを防ぐもので、他の債権者も含めた全員の利益になるから、価値を増やすにとどまる工事よりもさらに優先させたのである。したがって、両者が競合する場合は不動産保存の先取特権が優先し、順位が同一となるとする本肢は誤りである。なお、同一の不動産が順に売買された場合の売主どうしの順位は、売買の前後による(331条2項)。順位が同じ先取特権者が複数いる場合に債権額の割合で弁済を受けるのは332条の場面であり、本肢の場合とは違う。

同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
- 一般と特別の競合(329条2項):特別が優先。ただし共益の費用はその利益を受けた債権者に優先する
- 動産の特別の先取特権(330条1項):第一順位は不動産の賃貸・旅館の宿泊・運輸、第二順位は動産の保存、第三順位は動産の売買・種苗肥料の供給・農業と工業の労務
- 果実(330条3項):農業の労務、種苗又は肥料の供給、土地の賃貸の順
- 不動産の特別の先取特権(331条1項):保存、工事、売買の順
- 同一順位(332条):債権額の割合に応じて弁済を受ける
- 抵当権との関係(339条):登記をした不動産保存・不動産工事の先取特権は抵当権に先立つ
誤り。違うのは「その登記より前にその不動産について登記された抵当権に先立って行使することができない」の部分である。保存行為の完了後直ちに登記をした不動産保存の先取特権は、先に登記された抵当権にも先立って行使できる(337条・339条)。
不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用などに関し、その不動産の上に存在する(325条1号・326条)。その効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない(337条)。そして339条は、337条と338条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができると定める。不動産の保存や工事の費用は目的不動産の価値を維持し又は増加させるものであり、その利益は抵当権者を含む他の債権者にも及ぶ。そこで法は、同一不動産上の担保権の順位を登記の前後で決める原則を修正し、所定の時期に登記をした保存・工事の先取特権に、先に登記された抵当権に対する優先を認めた。したがって、保存行為の完了後直ちに保存の先取特権の登記をした本肢では、その登記より前に登記された抵当権があっても、保存の先取特権がこれに優先する。肢は339条に反しており誤っている。

前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
- 保存:保存行為が完了した後直ちに登記する(337条)
- 工事:工事を始める前に費用の予算額を登記する。予算額を超える部分には存在しない(338条1項)
- 売買:売買契約と同時に代価又は利息が未払である旨を登記する(340条)
- 抵当権との関係:登記した保存・工事の先取特権は先に登記された抵当権にも優先する(339条)。売買の先取特権は登記の前後による
誤り。違うのは「登記の先後を問わず,抵当権に先立って先取特権を行使することができる」の部分である。登記の先後を問わず抵当権に優先するのは不動産保存・不動産工事の先取特権であり(339条)、不動産売買の先取特権と抵当権の優劣は登記の先後による。
不動産の先取特権には、不動産の保存、不動産の工事、不動産の売買の3種がある(325条)。このうち保存の先取特権は保存行為の完了後直ちに登記し(337条)、工事の先取特権は工事を始める前に費用の予算額を登記すれば(338条1項)、339条により抵当権に先立って行使することができる。保存や工事は目的不動産の価値を維持し又は高めるもので、先に登記した抵当権者もその利益を受けるから、費用を優先して回収させるのが公平だからである。これに対し、不動産売買の先取特権については、340条が売買契約と同時に代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記すべきことを定めるにとどまり、339条は適用されない。売買は不動産の価値を高めるものではないからである。そのため、抵当権に関する規定の準用(341条)により、抵当権との優劣は登記の先後で決まる。本肢は不動産売買の先取特権に339条の優先を認めている点が誤りである。

前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
| 種類 | 効力を保存する登記 | 抵当権との優劣 |
|---|---|---|
| 不動産保存(326条) | 保存行為の完了後直ちに登記(337条) | 登記の先後を問わず優先(339条) |
| 不動産工事(327条) | 工事を始める前に予算額を登記(338条1項) | 登記の先後を問わず優先(339条) |
| 不動産売買(328条) | 売買契約と同時に代価等の未払を登記(340条) | 登記の先後による(341条) |