第325条不動産の先取特権過去問 4
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。不動産の保存不動産の工事不動産の売買
1 不動産の保存
2 不動産の工事
3 不動産の売買
この条文の過去問 4問
抵当不動産をその所有者から買い受けた者は,その不動産について必要費を支出した場合において,抵当権の実行によりその不動産が競売されたときは,その代価から最先順位の抵当権者より先にその支出した額の償還を受けることができる。
解説
本肢は正しい。391条は、抵当不動産の第三取得者が抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、196条の区別に従い、抵当不動産の代価から他の債権者より先にその償還を受けることができると定める。ここでいう「他の債権者」には抵当権者も含まれ、しかも最先順位の抵当権者に優先する。したがって、所有者から抵当不動産を買い受けた者が必要費を支出した場合、抵当権の実行による競売代金から最先順位抵当権者に先立って支出額の償還を受けられるとする本肢は正しい。
その趣旨は、第三取得者の支出した費用によって目的不動産の価値が維持され、あるいは増加している以上、その利益は競売代金という形で抵当権者にも及んでいるという点にある。費用を負担した者を最劣後に置けば、誰も抵当不動産の維持管理をしなくなり、かえって抵当権者の把握する担保価値が損なわれる。必要費については支出額全額、有益費については価格の増加が現存する場合に支出額又は増価額(回復者の選択)が償還の対象となる(196条)。
なお、不動産の保存に要した費用については不動産保存の先取特権(325条1号、326条)が成立し、これは抵当権に優先する(339条)が、その優先を主張するには保存行為完了後直ちに登記をすることが必要である。391条は、こうした登記を要することなく第三取得者に優先弁済を認める点に独自の意義がある。
同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合,その優先権の順位は同一となる。
解説
本肢は誤り。331条1項は「同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う」と定める。そして325条は、不動産の先取特権として1号に「不動産の保存」、2号に「不動産の工事」、3号に「不動産の売買」を掲げているから、不動産保存の先取特権が第一順位、不動産工事の先取特権が第二順位となり、両者の順位は同一とはならない。保存行為は目的物そのものの価値の滅失・減少を防ぎ、他の債権者を含む全債権者の共同の利益に資するものであるため、増価をもたらすにとどまる工事よりもなお優先させたものである。したがって、両者が競合する場合には不動産保存の先取特権が優先するのであって、順位が同一となるとする本肢は誤りである。なお、331条2項は、同一の不動産が順次売買された場合には売主相互間の優先権の順位は売買の前後によるとし、先の売主を優先させている。順位が同一となるのは332条が定める場面であり、本肢はこれと混同させる趣旨の記述といえる。
不動産の保存行為が完了した後直ちに不動産の保存の先取特権の登記をした場合であっても,その先取特権は,その登記より前にその不動産について登記された抵当権に先立って行使することができない。
解説
本肢は誤り。不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存・承認・実行のために要した費用に関し、その不動産の上に成立する(325条1号、326条)。その効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない(337条)。この登記は、単なる対抗要件ではなく先取特権の効力そのものを維持するための要件であり、これを怠れば先取特権は効力を失う。
その上で、339条は、337条及び338条1項の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができると定める。不動産の保存や工事の費用は、目的不動産の価値の維持・増加をもたらし、その利益は抵当権者を含む他の債権者にも及ぶ。そこで法は、登記の前後という一般原則(373条参照)を修正し、所定の時期に登記を備えた保存・工事の先取特権に、既登記の抵当権に対する優先を認めたのである。
したがって、保存行為の完了後直ちに不動産の保存の先取特権の登記をした場合には、その登記より前に登記された抵当権が存在していても、保存の先取特権はこれに優先して行使することができる。抵当権に先立って行使することができないとする本肢の記述は、339条に反しており誤りである。
不動産売買の先取特権について登記があるときは,その先取特権者は,登記の先後を問わず,抵当権に先立って先取特権を行使することができる。
解説
本肢は誤り。不動産の先取特権には、不動産の保存、不動産の工事、不動産の売買の三種がある(325条)。このうち保存の先取特権は保存行為が完了した後直ちに登記すること(337条)、工事の先取特権は工事を始める前にその費用の予算額を登記すること(338条1項)が効力保存の要件とされ、これらの登記がされたときは、339条により「抵当権に先立って行使することができる」。すなわち登記の先後を問わず抵当権に優先する。これは、保存行為・工事が目的不動産の価値を維持し又は増加させており、その費用を回収させることが抵当権者を含む他の債権者にとっても公平だからである。
これに対し、不動産売買の先取特権(325条3号・328条)については、340条が売買契約と同時に代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記すべきことを定めるにとどまり、339条は適用されない。そして341条は「先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する」と定めるから、抵当権との優劣は一般原則どおり登記の前後によって決せられる(177条、373条参照)。したがって、抵当権設定登記が先にされていれば抵当権が優先する。「登記の先後を問わず」抵当権に優先するとする本肢は、339条の適用範囲を不動産売買の先取特権にまで広げるもので誤りである。