公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
この条文の過去問 19問
誤り。違うのは「社会的に許容し得る範囲にとどまる場合」の部分である。三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)が民法1条・90条等の運用による調整を語るのは、侵害の態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときである。
三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)は、憲法19条・14条をはじめとする自由権的基本権の保障規定は専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないとして、私人間への直接適用も類推適用も否定した。そのうえで、私人間でも事実上の支配力の格差から一方が他方の自由や平等を侵害する事態が生じうることを踏まえ、私的支配関係において個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害又はそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、立法措置による是正のほか、民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、私的自治を尊重しつつ許容限度を超える侵害から自由や平等の利益を保護し、適切な調整を図る方途があるとした。一般条項を通じた調整が要るのは、侵害が社会的許容限度を超える場合である。許容し得る範囲にとどまる侵害なら、私的自治が尊重される場面であって是正の必要がない。本肢は、憲法を適用ないし類推適用しないという部分は判例のとおりだが、調整が働く場面の要件を裏返している。

私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、(中略)その間の適切な調整を図る方途も存する。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 学生運動歴を理由とする本採用拒否(三菱樹脂事件) | 最大判昭48.12.12 | 人権規定は私人間に直接適用も類推適用もされない。侵害が社会的許容限度を超えるときに民法1条・90条等の運用で調整する |
| 学外団体加入を理由とする私立大学の退学処分(昭和女子大事件) | 最判昭49.7.19 | 学生の政治的活動への広範な規律は不合理な制限ではない。退学前に補導の過程を経ることは法的義務ではない |
| 男女別定年制の就業規則(日産自動車事件) | 最判昭56.3.24 | 企業経営上の観点から合理的理由がなく、性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効 |
| ユニオン・ショップ協定に基づく解雇(三井倉庫港運事件) | 最判平元.12.14 | 他の組合に加入した者の解雇を義務づける部分は民法90条により無効。28条を参照 |
正しい。ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者について使用者の解雇義務を定める部分は、労働者の組合選択の自由と他の労働組合の団結権を侵害するので民法90条により無効である(最判平元.12.14)。
ユニオン・ショップ協定は、労働協約で、使用者に対し組合に加入しない者や組合員でなくなった者を解雇する義務を負わせる定めであり、組合の組織を強化し団結を維持する機能をもつ。労働組合法7条1号ただし書も、組合が工場事業場の労働者の過半数を代表する場合には組合員であることを雇用条件とする協約を許しており、協定自体は適法である。最判平元.12.14(三井倉庫港運事件)は、労働者には自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、締結組合の団結権と同様に他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきだから、解雇の威嚇の下に特定の組合への加入を強制することは、組合選択の自由と他の組合の団結権を侵害する場合には許されないとし、協定のうち締結組合以外の他の組合に加入している者、及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の組合に加入し又は新たな組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は民法90条により無効と判示した。一方の組合の団結強化のために他方の組合の団結を犠牲にすることは28条が許さないからである。肢はこの判示のとおりであり正しい。

労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。
- ["統制権", "団結権保障の効果として、目的達成に必要かつ合理的な範囲内で、組合の決定に従わない組合員を処分できる(最大判昭43.12.4)"]
- ["立候補の自由", "勧告や説得は許されるが、立候補の取りやめを要求し従わない者を処分することは統制権の限界を超え違法(三井美唄労組事件)"]
- ["ユニオン・ショップ協定", "組合に加入しない者や組合員でなくなった者の解雇義務を使用者に負わせる定め自体は有効"]
- ["他の組合に加入した者", "その者の解雇義務を定める部分は、組合選択の自由と他の組合の団結権を侵害し民法90条により無効(三井倉庫港運事件)"]
正しい。最判平元.12.14(三井倉庫港運事件)は、ユニオン・ショップ協定のうち他の労働組合に加入している者について解雇義務を定める部分は、組合選択の自由と他の組合の団結権を侵害するため民法90条により無効とした。
ユニオン・ショップ協定は、労働協約で、使用者に対し協定を締結した組合に加入しない者や組合員でなくなった者を解雇する義務を負わせて組合の団結を維持する仕組みであり、労働組合法7条1号ただし書が過半数組合についてこれを不当労働行為の例外として認めているから、協定自体が直ちに無効になるわけではない。しかし最判平元.12.14(三井倉庫港運事件)は、労働者には自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、締結組合の団結権と同様に他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないとし、協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者、及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の組合に加入し若しくは新たな組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条により無効であるとした。肢は定義も結論も判例どおりである。

ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 組合の統一候補に反して立候補した組合員の統制処分 | 最大判昭43.12.4(三井美唄労組事件) | 統制権は団結権の効果として認められるが、立候補の自由は15条1項の重要な権利であり、勧告・説得の域を超えて処分すれば統制権の限界を超え違法 |
| 政党への寄付や選挙応援のための臨時組合費 | 最判昭50.11.28(国労広島地本事件) | 組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益を比較衡量し、政党への寄付は納付を強制できない |
| 他の労働組合に加入した者へのユニオン・ショップ協定の適用 | 最判平元.12.14(三井倉庫港運事件) | 組合選択の自由と他の組合の団結権を侵害するため、その部分は民法90条により無効 |
| 国家公務員の争議行為とあおり行為の禁止 | 最大判昭48.4.25(全農林警職法事件) | 労働基本権の保障は公務員にも及ぶが、地位の特殊性と職務の公共性、勤務条件法定、代償措置から、一律禁止は国民全体の共同利益の見地からやむを得ない制約で合憲 |
正しい。判例は、女子の定年を男子より低く定めた部分を民法90条により無効とし、その解釈に当たって憲法14条1項と当時の民法1条ノ2(現2条)を参照した(最判昭56.3.24)。
最判昭56.3.24(日産自動車事件)は、男子60歳、女子55歳と定めた就業規則について、女子従業員と男子従業員の担当職務、賃金体系、要求される職務遂行能力等の事情に照らし、企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められないとした原審の判断を是認した。その上で、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条により無効であると解するのが相当であると述べ、その末尾に「憲法14条1項、民法1条ノ2参照」と付した。当時の民法1条ノ2は、本法は個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として解釈しなければならないと定める規定で、現行の民法2条に当たる。憲法14条1項は私人相互の関係を直接規律するものではない(最大判昭48.12.12)から、判例は民法90条の解釈を媒介とし、その解釈指針として民法の規定と憲法14条1項を参照したのである。肢はこの参照関係を正確に述べている。

上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法九〇条の規定により無効であると解するのが相当である(憲法一四条一項、民法一条ノ二参照)。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 学生運動歴を理由とする本採用拒否 | 最大判昭48.12.12(三菱樹脂) | 人権規定は私人相互の関係を直接規律しない。侵害が社会的許容性の限度を超えるときに民法1条・90条等の運用で調整する |
| 女子の定年を男子より低く定めた就業規則 | 最判昭56.3.24(日産自動車) | 性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効。14条1項と民法1条ノ2を参照 |
| 在日朝鮮人への人種差別的な街頭宣伝 | 大阪高判平26.7.8(最決平26.12.9 上告棄却) | 人種差別撤廃条約も13条・14条1項も私人間を直接規律しない。民法709条の解釈適用を通じて趣旨を実現し、高額の賠償を認めた |
誤り。違うのは末尾の「私法規定の解釈を通じてその間の適切な調整を図ることができるとの見解は採り得ない」の部分である。人権規定が私人相互の関係を直接規律しないという前提と、私法の一般条項による調整とは両立する(最大判昭48.12.12)。
本肢が引く説示は三菱樹脂事件判決(最大判昭48.12.12)のものである。同判決は、憲法第3章の自由権的基本権の保障規定は国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないとして、直接適用を否定する立場を出発点に置いた。しかし判決はそこで止まらず、私人間の関係は原則として私的自治に委ねられ、侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ法が介入するという建前を確認した上で、そのような侵害には、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって適切な調整を図る方途も存すると述べた。憲法が私人間を直接規律しないという前提から、私法規定の解釈を通じた調整という見解がまさに導かれているのである。間接適用説も、憲法は国家と国民の関係を規律し私人間は私法が規律するという原則自体は維持する見解であるから、この前提の上に立ちうる。本肢は両者を両立しないものとして扱う点で誤っている。

私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存する。
- ["直接適用説", "憲法の人権規定が私人間にも直接適用されるとする。私法の国家化をもたらし、私的自治と契約自由を否定しないかという批判がある"]
- ["間接適用説", "民法90条などの私法の一般条項を媒介として憲法の趣旨を及ぼす。判例の立場(最大判昭48.12.12)"]
- ["無適用説", "憲法の人権規定は私人間には適用されないとする。国家と社会を分離する自由主義的国家論を背景とする"]
- ["国家同視説", "社会的力関係で一方が他方に優越し服従を強いる場合に、国家の支配と同視して人権規定を適用ないし類推適用する。判定が困難だという難点がある"]
誤り。違うのは「私法規定の解釈を通じてその間の適切な調整を図ることができるとの見解は採り得ない」の部分である。三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)は、人権規定が私人相互の関係を直接規律しないという前提から、まさに私法規定の運用による調整を導いた。
本肢が引く説示は三菱樹脂事件判決のものである。同判決は、憲法第3章の自由権的基本権の保障規定は国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないと述べ、人権規定は私人間に直接適用されないという立場を出発点に据えた。しかし判決はそこで止まらず、私人間の法律関係は原則として私的自治に委ねられ、侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合に初めて法が介入して調整を図るという建前を確認した上で、そのようなときは立法措置による是正のほか、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定の適切な運用によって適切な調整を図る方途があるとした。すなわち、人権規定が私人相互の関係を直接規律しないという前提と、私法規定の解釈を通じた調整という見解は矛盾せず、後者は前者を出発点として導かれている。間接適用説も、憲法は国家と国民の関係を規律する法であり私人間は私法が規律するという原則を維持する見解であるから、この前提の上に立ち得る。

私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、(中略)その間の適切な調整を図る方途も存する。
- 直接適用説:憲法の人権規定が私人間にも直接適用される。私法の国家化をもたらし、私的自治と契約自由を否定しないかという批判がある。本質的な核心が侵されない限度で相対化を認める見解は、対立利益との衡量を認める点で間接適用説に類似する
- 間接適用説:民法90条などの私法の一般条項を媒介として憲法の趣旨を及ぼす。判例(三菱樹脂事件)の立場
- 無適用説:憲法の人権規定は私人間には適用されない。国家と社会を分離する自由主義的国家論を背景とする。私法規定を通じた調整とは矛盾せず、間接適用説の前提となり得る
- 国家同視説:社会的力関係で一方が他方に優越し服従を強いる場合に、国家の支配と同視して人権規定を適用ないし類推適用する。判例は、支配関係の態様・程度・規模が様々で判定が困難だとして採らない
誤り。違うのは「私人間の関係に適用される余地はなく」の部分である。憲法28条は正当な争議行為の民事免責という形で私人間にも直接に及び、判例もユニオン・ショップ協定の効力判断で28条を参照している。
憲法28条は、使用者に経済的に従属せざるを得ない勤労者の地位を保護することを直接の目的とする権利であり、その名宛人は国家に限られない。正当な争議行為を理由とする解雇や損害賠償請求は私法上その効力を否定されるという意味で、同条は私人間の関係にも直接適用されると解されており、労働組合法7条や8条はこれを確認した規定である。最大判昭48.12.12(三菱樹脂事件)が人権規定は私人相互の関係を直接規律しないと述べたのは一般論であって、28条のような例外を否定する趣旨ではない。したがって、その性質上私人間に適用される余地がないとする前段は誤りである。また、最判平元.12.14(三井倉庫港運事件)は、ユニオン・ショップ協定のうち他の労働組合に加入している者などについて使用者の解雇義務を定める部分を、労働者の組合選択の自由と他の労働組合の団結権を侵害するものとして民法90条により無効とし、その判文で憲法28条を参照している。民法90条を直接の根拠にした点では憲法を直接適用したとはいえないが、憲法を顧慮していないかのようにいう後段も正確ではない。

ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。
誤り。違うのは「権利者の資格を原則として男子孫に限る旨の特定の地域団体における慣習も,直ちに公序良俗に反するとはいえない」の部分である。
最判平18.3.17は、入会部落の会則が入会権者の資格を原則として男子孫に限っていた事案で、入会権の内容が各地方の慣習によって定まるとしても、その慣習が民法90条の公序良俗に反するときは効力を認められないという枠組みを採った。その上で、各世帯の代表者だけに入会権者の地位を認める部分は不合理とはいえないとする一方、男子孫要件は専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものであり、入会団体の統制の維持という点からも、各世帯間の平等という点からも何ら合理性を有しないとし、男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らせば、入会地の歴史的沿革等を考慮しても差別を正当化できないとして、遅くとも補償金の請求がされた平成4年以降は性別のみによる不合理な差別として無効と判断した。肢は慣習の存続を理由に公序良俗違反を否定しており、判例の結論と逆である。女性の定年だけを低くする就業規則を民法90条で無効とした最判昭56.3.24と同じ筋である。

本件慣習のうち、男子孫要件は、専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり、遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては、性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効である。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 学生運動歴の秘匿を理由とする本採用拒否 | 最大判昭48.12.12(三菱樹脂事件) | 人権規定は私人間に直接適用されない。雇入れの拒否も思想・信条の調査も違法ではない |
| 私立大学の学則による学生の政治活動の規律と退学処分 | 最判昭49.7.19(昭和女子大学事件) | 大学は包括的権能を有し、かなり広範な規律も直ちに不合理とはいえない |
| 女性の定年を男性より低くする就業規則 | 最判昭56.3.24(女子若年定年制事件) | 性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効 |
| 入会権者の資格を男子孫に限る慣習 | 最判平18.3.17 | 性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効 |
| ユニオン・ショップ協定に基づく解雇 | 最判平元.12.14(三井倉庫港運事件) | 他の組合に加入した者を解雇させる部分は民法90条により無効(28条を参照) |
誤り。違うのは末尾の「権利者の資格を原則として男子孫に限る旨の特定の地域団体における慣習も,直ちに公序良俗に反するとはいえない」の部分である。
最判平18.3.17は、入会部落の会則が入会権者の資格を原則として男子孫に限っていた事案で、入会権の内容が各地方の慣習によって定まるとしても、その慣習が民法90条の公序良俗に反するときは効力を認めることができないという枠組みを前提とした。その上で、各世帯の代表者にのみ入会権者の地位を認める部分は不合理とはいえず公序良俗に反しないとする一方、男子孫要件は専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものであり、入会団体の統制の維持という点からも、入会権の行使における各世帯間の平等という点からも何ら合理性を有しないとして、遅くとも補償金の請求がされている平成4年以降は性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効であるとした。同判決は、男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らせば、入会地の歴史的沿革等の事情を考慮しても女子孫に対する差別を正当化できないとしており、慣習が長期間にわたり形成され存続しているという事実そのものは尊重の理由にならない。本肢はこの結論を逆にしている。

本件慣習のうち、男子孫要件は、専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり、遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては、性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効である。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 学生運動歴を理由とする本採用拒否 | 最大判昭48.12.12(三菱樹脂) | 人権規定は私人間を直接規律しない。雇入れの拒否も、思想、信条の調査・申告要求も当然に違法ではない |
| 私立大学が学生の政治的活動を学則で規律 | 最判昭49.7.19(昭和女子大) | 大学は学則等で学生を規律する包括的権能を有し、かなり広範な規律も直ちに不合理とはいえない |
| 就業規則で女子の定年を男子より低く設定 | 最判昭56.3.24(女子若年定年制) | 性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効 |
| 入会権者の資格を原則として男子孫に限る慣習 | 最判平18.3.17 | 性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効。歴史的沿革を考慮しても正当化できない |
正しい。売買契約を無効とし代金支払義務を否定する結論は公序良俗違反(90条)を根拠とするものであり、設問の公序良俗に違反することを根拠とするものに当たる。
判例(最判昭39.1.23)は、菓子の製造販売業者が、有毒物質を混入した菓子の販売を食品衛生法が禁止していることを知りながら、あえてこれを製造し、同じく事情を知る販売業者の求めに応じて継続的に売り渡した事案で、その売買契約は90条に抵触して無効であるとし、買主は代金を支払う義務を負わないとした。取締法規に反する契約が直ちに私法上無効になるわけではないが、国民の健康を害する食品であることを双方が知りながら、法の禁止をくぐって継続的に流通させる取引は、その内容自体が社会の秩序に反し、裁判所がその履行に力を貸すべきではないからである。本肢は、法令の禁止を知りながらあえて製造し、混入の事実を知る販売者に継続的に売り渡すという判例と同じ事情を挙げ、契約を無効として代金支払義務を否定しているから、根拠は公序良俗違反である。

民法90条に抵触し無効のものと解するを相当とする。然らば、すなわち、上告人は前示アラレの売買取引に基づく代金支払の義務なき筋合なれば
| 場面 | 判例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自ら地上権を設定した売主の催告・解除 | 最判昭43.5.30 | 信義則(催告は無効) |
| 有害物質入り食品と知りながらの継続的売買 | 最判昭39.1.23 | 公序良俗違反(90条で無効) |
| 誤信を招いた貸主の期限の利益喪失の主張 | 最判平21.9.11 | 信義則(主張は許されない) |
| 単独相続登記をした相続人の抵当権無効の主張 | 最判昭42.4.7 | 信義則(主張は許されない) |
正しい。既登記の不動産について708条の給付があったといえるには引渡しだけでは足りず所有権移転登記まで必要であり(最判昭46.10.28)、登記がAに残っている以上、Aの引渡請求は認められる。
大麻の密売のために土地を贈与する契約は、公序良俗に反して無効である(90条)。708条本文は、不法な原因のために給付をした者はその給付したものの返還を請求することができないと定める。判例(最判昭46.10.28)は、不法の原因に基づく贈与について、同条にいう給付があったとして贈与者の返還請求を拒むためには、既登記の建物にあっては、その占有の移転だけでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることをも要するとした。708条は、不法な行為をした者に裁判所が助力しないことで不法を抑止する制度であるが、給付が終局的にされていないうちは、返還を認めないことで不法な目的の実現にかえって手を貸すことになりかねない。登記がされた不動産では、登記が移らなければ受益者の地位は確定せず、給付が完了したとはいえないのである。本肢では土地は引き渡されているが登記名義はAのままであるから、708条の給付はまだなく、Aの引渡請求は認められる。

贈与が不法の原因に基づくものであり、同条にいう給付があつたとして贈与者の返還請求を拒みうるとするためには、本件のような既登記の建物にあつては、その占有の移転のみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることをも要する
- 不法:公序良俗に反する醜悪なもの
- 給付:終局的な利益の付与。未登記建物は引渡し、既登記の不動産は移転登記まで(最判昭46.10.28)
- ただし書:不法な原因が受益者についてのみあるときは返還請求できる
- 効果:不当利得返還請求も所有権に基づく返還請求もできない
- 給付後の返還の合意:有効で、合意に基づき返還を請求できる(最判昭28.1.22)
誤り。違うのは「この合意は,無効である」の部分である。不法原因契約を合意で解除して給付を返還する特約をすることは708条の禁ずるところではなく、有効である(最判昭28.1.22)。
判例(最判昭28.1.22)は、708条が不法の原因のため給付をした者に返還請求を認めないのは、給付者の返還請求に法律上の保護を与えないというだけであって、受領者にその給付を受けたものを法律上正当の原因があったものとして保持させる趣旨ではないとし、したがって受領者がその給付を受けたものを給付者に任意に返還することはもちろん、不法原因契約を合意のうえ解除してその給付を返還する特約をすることも同条の禁ずるところではないとした。708条は不法な行為をした者への裁判所の助力を拒むものにすぎないから、当事者が自分たちの意思で不法な状態を解消し、給付を元に戻そうとすることまで妨げる理由はない。むしろ、そのような合意は不法な状態を解消するものとして望ましく、公序良俗に反するとはいえない。したがって、本肢の返還の合意は有効であり、贈与者はこの合意に基づいて土地の返還を請求することができる。本肢は誤りである。

受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、曩に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでない
- 不法:公序良俗に反する醜悪なもの
- 給付:終局的な利益の付与。未登記建物は引渡し、既登記の不動産は移転登記まで(最判昭46.10.28)
- ただし書:不法な原因が受益者についてのみあるときは返還請求できる
- 効果:不当利得返還請求も所有権に基づく返還請求もできない
- 給付後の返還の合意:有効で、合意に基づき返還を請求できる(最判昭28.1.22)
誤り。違うのは「社会的権力の登場による人権侵害の危険性と可能性が増大していることを看過していると指摘されている」の部分である。この指摘が向けられるのは、私人間には適用されないとする説である。
民法90条の公序良俗規定等の私法の一般条項を媒介として憲法の人権規定を私人間に間接的に適用する説(間接適用説)は、資本主義の高度化に伴い、国家類似の組織を有し国家類似の機能を行使する社会的権力が登場し、これによる人権侵害が問題となったことを受けて、私人間には適用されないとする説に代わって主張されたものである。この説は、私的自治を尊重しつつ、社会的権力による侵害に対しては一般条項の解釈に人権規定の趣旨を取り込むことで対処しようとするのであるから、その危険を看過しているという指摘は当たらない。社会的権力による人権侵害の危険性と可能性の増大を看過していると指摘されるのは、人権規定の適用を国家対国民の関係に限り、私人間の侵害を憲法の問題としない無適用説である。本肢は、無適用説に向けられる指摘を間接適用説に対するものとして述べている点で誤りである。

私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、(中略)その間の適切な調整を図る方途も存する。
| 見解 | 内容 | 背景・向けられる指摘 |
|---|---|---|
| 無適用説 | 憲法の人権規定は、特段の定めのある場合を除き私人間には適用されない | 国家と社会を分離する自由主義的国家論が背景。社会的権力による人権侵害の危険を看過していると指摘される |
| 直接適用説 | 人権規定が私人間にも直接適用される | 私法の国家化をもたらし、私的自治・契約自由の否定にならないか、国家権力に対抗するという人権の本質が変質・希薄化しないかと指摘される |
| 間接適用説(判例) | 民法90条などの私法の一般条項を媒介として憲法の趣旨を及ぼす | 人権はすべての法秩序に妥当すべき価値であるとの考え方と、私的自治の尊重とを調和させる。三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12) |
| 国家同視説 | 社会的力関係で一方が他方に優越し服従を強いる場合に、人権規定を適用ないし類推適用する | 判例は、単なる社会的事実としての力の優劣の関係にすぎず、権力の法的独占に基づく国の支配とは性質上の区別があるとして採用しない |
正しい。公序良俗に反する消費貸借は無効で被担保債権がなく、抵当権の設定登記をしただけでは708条の給付に当たらないので、設定者は登記の抹消を求めることができる(最判昭40.12.17)。
90条により公序良俗に反する金銭消費貸借契約は無効であるから、貸金債権は発生せず、抵当権の被担保債権は存在しない。もっとも、708条本文は、不法な原因のために給付をした者はその給付したものの返還を請求できないと定めるから、抵当権設定者が登記の抹消を求めることが、不法原因給付の返還請求として封じられないかが問題となる。判例(最判昭40.12.17)は、賭博行為によって生じた金銭債権のためにされた抵当権設定登記の抹消を請求するについては、708条は適用されないとした。708条の給付は、受益者に終局的な利益を与えるものをいうところ、抵当権の設定は、実行によって初めて受益者に利益をもたらすものであり、設定登記をしただけでは終局的な利益を与えたとはいえないからである。抹消を認めないと、不法な債権の取立てに法が手を貸すことにもなる。本肢は正しい。

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
- 将来債権・条件付債権:被担保債権とすることができ、設定登記の抹消は求められない
- 元本が交付されなかった貸金:被担保債権が発生しておらず、抹消を求められる
- 公序良俗違反の貸金:抵当権の設定だけでは708条の給付に当たらず、抹消を求められる
- 流用登記:流用の前に現れた後順位抵当権者には対抗できない
- 代位弁済:抵当権は代位弁済者に移転して存続し、設定者は抹消を求められない(499条・501条1項)
誤り。違うのは「給付者から受益者に対する給付物返還請求が認められることはない」の部分である。判例は、給付者の不法が受益者の不法に比べて極めて微弱な場合には、給付者は返還を請求できるとした(最判昭29.8.31)。
708条ただし書は、不法な原因が受益者についてのみ存したときは返還請求ができると定める。判例(最判昭29.8.31)は、消費貸借の成立の過程で貸主の側に多少の不法があったとしても、借主の側にも不法の点があり、貸主の不法性が借主の不法性に比べて極めて微弱なものにすぎない場合には、90条及び708条の適用はなく、貸主は貸金の返還を請求できるとした。708条が返還を否定するのは、自ら不法に関わった者に法の助力を与えないためであるが、給付者の不法がわずかで、受益者の方がはるかに強い不法を行っている場合にまで返還を否定すると、より悪質な受益者に利益を保持させることになり、かえって正義に反するからである。そこで、708条ただし書の趣旨を広げ、双方の不法の程度を比べて判断することにしたのである。本肢は誤りである。

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
- 不法:強行法規違反にとどまらず倫理・道徳に反する醜悪なもの(最判昭37.3.8)。当事者の認識は要らない
- 給付:終局的な利益の付与。既登記建物は移転登記まで要る(最判昭46.10.28)
- ただし書:不法な原因が受益者についてのみあるときは返還請求できる。給付者の不法が受益者に比べて極めて微弱な場合も同じ(最判昭29.8.31)
- 返還の合意:給付後に任意に返還する特約は有効(最判昭28.1.22)
誤り。違うのは後半の「学生運動歴を秘匿していたことを理由に本採用を拒否することもできる」の部分である。判例は、本採用の拒否は雇入れ後の解雇に当たり、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されるとした(最大判昭48.12.12)。
三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)は、企業者は経済活動の一環として契約締結の自由を有し、いかなる者を雇い入れるかを原則として自由に決定できるから、特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないとした。本肢の前半はこれに沿う。しかし同判決は、試用期間後の本採用の拒否は留保解約権の行使、すなわち雇入れ後における解雇に当たり、通常の雇入れの拒否と同視することはできないとした。そのため留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許される。学生運動歴の秘匿についても、それが解雇し得る客観的に合理的な理由となるかどうかを審理すべきであるとしており、秘匿があれば本採用を拒否できるとはしていない。本肢は雇入れの拒否と本採用の拒否を同列に扱っている点で誤りである。

本採用の拒否は、留保解約権の行使、すなわち雇入れ後における解雇にあたり、これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。…留保解約権の行使は、…解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される
誤り。違うのは「企業経営の上で合理的であるが,必要不可欠とまでは言えないのであるから」の部分である。判例は、企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められないとして、民法90条により無効とした(最判昭56.3.24)。
女子若年定年制事件(最判昭56.3.24)は、定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた就業規則について、原審の認定判断を正当として是認した。原審は、少なくとも60歳前後までは男女とも通常の職務であれば企業経営上要求される職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないから、企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められないとしていた。そこで最高裁は、就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着し、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であるとした。無効という結論は本肢と同じであるが、判例は企業経営上の合理性そのものを否定したのであって、合理的ではあるが必要不可欠とはいえないという基準を当てはめて無効としたのではない。本肢は結論に至る理由づけが判旨と異なっている。

上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である
正しい。判例は、ユニオン・ショップ協定のうち、他の組合に加入している者や脱退・除名後に他の組合に加入し又は新たな組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条により無効であるとした(最判平元.12.14)。
三井倉庫港運事件(最判平元.12.14)は、ユニオン・ショップ協定は、労働者が組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に使用者に当該労働者との雇用関係を終了させることにより、間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるとした。他方、労働者には自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、締結組合の団結権と同様、協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないとした。そこで、協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条の規定により無効と解すべきであるとした。本肢は判旨をそのまま述べている。

ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法28条参照)。
正しい。判例は、9条の宣明する規範は私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範であり、そのままの内容で民法90条の公の秩序を形成して私法上の行為の効力を一律に否定する作用を営むことはないとした(最判平元.6.20)。
百里基地訴訟(最判平元.6.20)は、国が自衛隊基地の用地を取得するために私人と締結した売買契約の効力が争われた事案である。同判決は、国が行政の主体としてでなく私人と対等の立場に立って締結する私法上の契約は、特段の事情のない限り憲法98条1項にいう国務に関するその他の行為に当たらず、9条の直接適用を受けないとした。そのうえで、9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範であるから、私法的な価値秩序において、そのままの内容で民法90条にいう公の秩序の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むことはないとした。9条は、私法上の規範によって相対化され、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が社会の一般的な観念として確立しているかという観点から、公の秩序の内容の一部を形成するにとどまる。本肢はこの判旨を正確に述べている。

憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範であるから、私法的な価値秩序において、右規範がそのままの内容で民法90条にいう『公ノ秩序』の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない
