1債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
この条文の過去問 31問
正しい。他の転得者から転得したIに取消しを求めるには、受益者Gと、HとIのすべての転得者が、それぞれ取得の時に悪意であることを要する(424条の5)。
424条の5柱書は、転得者に対する詐害行為取消請求の前提として、債権者が受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合であることを求める。受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかったときは受益者に取消請求ができない(424条1項ただし書)ので、受益者Gが贈与を受けた時に悪意であることが必要となる。そのうえで同条2号は、転得者が他の転得者から転得した者である場合には、その転得者及びその前に転得したすべての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたときに限り、取消請求ができるとする。Iは転得者Hから取得しているので、I自身だけでなくHの悪意も必要である。途中に善意の者がいれば、その者は保護され、その後に取得した者からも取り戻せなくなる。取引の安全を守るためである。本肢は424条の5のとおりである。

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
- 判決の効力:債務者とそのすべての債権者に及ぶ(425条)。受益者と転得者の間の行為は取り消されない
- 受益者の反対給付:財産処分が取り消されたとき、受益者は債務者に反対給付の返還を請求できる(425条の2)
- 受益者の債権の回復:債務消滅行為が取り消されたとき、受益者が給付を返還した時に受益者の債権が原状に復する(425条の3)
- 転得者の権利:受益者なら行使できた反対給付の返還請求権などを、自分が前者にした反対給付の価額を限度に行使できる(425条の4)
正しい。弁済を取り消すには、支払不能の時の行為であることに加え、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもってしたことを要する(424条の3第1項)。
弁済のような債務の消滅に関する行為は、債務者が本来果たすべき義務の履行であり、責任財産を減らすものではないが、特定の債権者だけに満足を与える面がある。そこで424条の3第1項は、一般の詐害行為(424条1項)より要件を重くし、その行為が債務者の支払不能の時に行われたものであること(1号)と、その行為が債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること(2号)のどちらにも当たる場合に限って、詐害行為取消請求を認めている。弁済はもともと正当な行為なので、債務者と受益者が手を組んで他の債権者を害しようとした場合に限って取り消すのである。改正前の判例が、弁済は原則として詐害行為とならず、債務者が一部の債権者と通謀して他の債権者を害する意図でした場合に限り詐害行為となるとしていたのを、条文にしたものである。本肢では、Bは支払不能なので1号は満たすが、害する意図を持つのは受益者Cだけで、Bとの通謀がないので2号を欠く。したがって、Aは弁済を取り消せない。

債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
| 行為 | 要件 |
|---|---|
| 贈与など(424条) | 債務者が債権者を害することを知ってした行為で、受益者も行為の時に知っていたこと |
| 相当の対価を得てした財産の処分(424条の2) | 隠匿等の処分のおそれ、債務者の隠匿等の意思、受益者がその意思を知っていたこと |
| 弁済・担保の供与(424条の3) | 支払不能の時の行為で、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもってしたこと |
| 過大な代物弁済(424条の4) | 424条の要件を満たせば、消滅した債務の額を超える部分を取り消せる |
正しい。過大な代物弁済は、424条の要件を満たせば、消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について取り消せる(424条の4)。
424条の4は、債務者がした債務の消滅に関する行為で、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、424条の要件に当たるときは、債権者は、424条の3第1項にかかわらず、消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について詐害行為取消請求をすることができると定める。代物弁済のうち債務の額に見合う部分は弁済と同じく特定の債権者への満足にすぎず、424条の3の重い要件に服させるべきであるが、債務の額を超える部分は、実質的には財産をただで減らす行為と変わらないので、通常の詐害行為の要件、すなわち債務者が債権者を害することを知っていたことと受益者の悪意で取り消せるとしたのである。本肢では、500万円の債務のために2000万円相当の土地が代物弁済に出されており、1500万円分が過大な部分に当たる。Bは債権者を害することを知っており、Dも知っていたので、Aは500万円に相当する部分以外の部分について取り消せる。

債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。
| 行為 | 要件 |
|---|---|
| 贈与など(424条) | 債務者が債権者を害することを知ってした行為で、受益者も行為の時に知っていたこと |
| 相当の対価を得てした財産の処分(424条の2) | 隠匿等の処分のおそれ、債務者の隠匿等の意思、受益者がその意思を知っていたこと |
| 弁済・担保の供与(424条の3) | 支払不能の時の行為で、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもってしたこと |
| 過大な代物弁済(424条の4) | 424条の要件を満たせば、消滅した債務の額を超える部分を取り消せる |
正しい。債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない(424条4項)。
424条4項は、債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができないと定める。詐害行為取消権は、債務者の財産から出ていった財産を取り戻し、強制執行に備えて責任財産を保全するための制度なので、もともと強制執行で満足を得られない債権については、保全する必要がないからである。債権者代位権についても同じ制限がある(423条3項)。当事者の間で強制執行をしない旨の合意がされた債権は、強制執行により実現することのできない債権に当たる。本肢では、AB間で売買代金債権について強制執行をしない旨の合意が成立しているので、Aの債権はこれに当たる。したがって、Bの贈与が財産をただで減らす行為で、Bが債権者を害することを知り、Gもそれを知っていたとしても、Aはその贈与を取り消せない。

債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
誤り。違うのは「Hに対する詐害行為取消請求において価額償還を請求することができない」の部分である。受益者Hが財産を転得者に渡していれば返還が困難なときに当たり、転得者に返還を求められる場合でも、Hに価額の償還を請求できる(424条の6第1項)。
424条の6第1項は、債権者は受益者に対する詐害行為取消請求で、債務者の行為の取消しとともに受益者に移転した財産の返還を請求でき、受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、その価額の償還を請求することができると定める。受益者が目的物を第三者に譲り渡して転得者のもとにあるときは、受益者はもはや自分で物を取り戻して返すことができないので、返還が困難なときに当たる。そしてこのことは、債権者が転得者に対しても、424条の5の要件を満たして財産の返還を請求できる場合でも変わらない。受益者と転得者は別々に取消請求の相手方となりうる者であり、債権者は、受益者に価額の償還を求めるか、転得者に物の返還を求めるかを選べるからである。本肢では、Hはすでに動産甲をIに贈与して引き渡しているので、Hによる返還は困難であり、AはHに価額の償還を請求できる。もっとも、Aが二重に満足を受けることはできない。

債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
誤り。違うのは「被保全債権がその権利の発生の前の原因に基づいて生じたものでなければならない」の部分である。債権者代位権では、被保全債権が被代位権利より後に成立したものでもよい(最判昭33.7.15)。
423条は、債権者は自己の債権を保全するため必要があるときは債務者に属する権利を行使することができると定め、被保全債権の期限の到来(同条2項)や強制執行により実現できる債権であること(同条3項)を求めるが、被保全債権が被代位権利より先に発生していることは要件としていない。判例も、代位権者の債権が債務者の権利より前に成立することは必要でないとしている(最判昭33.7.15)。債権者代位権は債務者の責任財産を保全するための制度であり、債務者が持っている権利を代わりに行使させるだけで、すでにされた行為を覆したり第三者の得た利益を奪ったりするものではないから、被代位権利の発生後に債権者となった者を除く理由がないのである。これに対し詐害行為取消権では、424条3項が、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り取消しを請求できるとしている。すでにされた行為を取り消して受益者の地位を覆す強い効果があるからである。本肢は、詐害行為取消権の要件を債権者代位権に持ち込んでいる。

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
- 代位できない:認知請求権などの身分上の権利、差押えを禁じられた権利、金額が確定する前の名誉侵害の慰謝料請求権、内容が確定する前の財産分与請求権
- 代位できる:詐欺による取消権・解除権などの財産上の形成権、消滅時効の援用権、金額が確定した慰謝料請求権、内容が確定した財産分与請求権
- 被保全債権の時期:被代位権利より後に成立した債権でもよい(詐害行為取消権は行為の前の原因が必要)
誤り。違うのは「被保全債権がその権利の発生の前の原因に基づいて生じたものでなければならない」の部分である。債権者代位権では、被保全債権が被代位権利より後に成立したものでもよい(最判昭33.7.15)。
423条は、債権者は自己の債権を保全するため必要があるときは債務者に属する権利を行使することができると定め、被保全債権の期限の到来(同条2項)や強制執行により実現できる債権であること(同条3項)を求めるが、被保全債権が被代位権利より先に発生していることは要件としていない。判例も、代位権者の債権が債務者の権利より前に成立することは必要でないとしている(最判昭33.7.15)。債権者代位権は債務者の責任財産を保全するための制度であり、債務者が持っている権利を代わりに行使させるだけで、すでにされた行為を覆したり第三者の得た利益を奪ったりするものではないから、被代位権利の発生後に債権者となった者を除く理由がないのである。これに対し詐害行為取消権では、424条3項が、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り取消しを請求できるとしている。すでにされた行為を取り消して受益者の地位を覆す強い効果があるからである。本肢は、詐害行為取消権の要件を債権者代位権に持ち込んでいる。

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
- 代位できない:認知請求権などの身分上の権利、差押えを禁じられた権利、金額が確定する前の名誉侵害の慰謝料請求権、内容が確定する前の財産分与請求権
- 代位できる:詐欺による取消権・解除権などの財産上の形成権、消滅時効の援用権、金額が確定した慰謝料請求権、内容が確定した財産分与請求権
- 被保全債権の時期:被代位権利より後に成立した債権でもよい(詐害行為取消権は行為の前の原因が必要)
誤り。違うのは「BD間の甲の売買の取消しを請求することができる」の部分である。取消しの対象は債務者がした行為(AB間の贈与)であり、受益者と転得者の間の売買ではない。
424条1項は、債権者は債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができると定め、詐害行為取消権の対象を債務者の行為としている。転得者に対する請求についても、424条の6第2項は、債権者は債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができると定めており、取消しの対象はあくまで債務者の行為である。詐害行為取消権は、債務者の責任財産を減らした債務者の行為を問題にする制度であり、受益者と転得者の間の取引はその後の財産の行方にすぎないからである。したがって、CがDを相手に詐害行為取消請求をする場合でも、取り消すのはAB間の贈与であり、BD間の売買の取消しを請求することはできない。Dに対する請求が認められれば、AB間の贈与が取り消され、Dは甲を返還することになる。本問のDは転得の時に悪意であり、受益者Bも悪意であるから、Dに対する請求の要件(424条の5第1号)は満たすが、取消しの対象を誤っている点で本肢は誤りである。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 被告(424条の7第1項):受益者又は転得者。債務者は被告にならず、訴訟告知をする(同条2項)
- 取消しの対象(424条1項・424条の6):債務者がした行為。受益者と転得者の間の行為ではない
- 受益者に対する請求(424条の6第1項):財産の返還。返還が困難なら価額の償還
- 判決の効力(425条):債務者とその全ての債権者に及ぶ
- 転得者の権利(425条の4):受益者が取消しで取得したはずの反対給付の返還請求権などを、債務者に対して行使する
誤り。違うのは「BD間の甲の売買の取消しを請求することができる」の部分である。取消しの対象は債務者がした行為(AB間の贈与)であり、受益者と転得者の間の売買ではない。
424条1項は、債権者は債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができると定め、詐害行為取消権の対象を債務者の行為としている。転得者に対する請求についても、424条の6第2項は、債権者は債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができると定めており、取消しの対象はあくまで債務者の行為である。詐害行為取消権は、債務者の責任財産を減らした債務者の行為を問題にする制度であり、受益者と転得者の間の取引はその後の財産の行方にすぎないからである。したがって、CがDを相手に詐害行為取消請求をする場合でも、取り消すのはAB間の贈与であり、BD間の売買の取消しを請求することはできない。Dに対する請求が認められれば、AB間の贈与が取り消され、Dは甲を返還することになる。本問のDは転得の時に悪意であり、受益者Bも悪意であるから、Dに対する請求の要件(424条の5第1号)は満たすが、取消しの対象を誤っている点で本肢は誤りである。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 被告(424条の7第1項):受益者又は転得者。債務者は被告にならず、訴訟告知をする(同条2項)
- 取消しの対象(424条1項・424条の6):債務者がした行為。受益者と転得者の間の行為ではない
- 受益者に対する請求(424条の6第1項):財産の返還。返還が困難なら価額の償還
- 判決の効力(425条):債務者とその全ての債権者に及ぶ
- 転得者の権利(425条の4):受益者が取消しで取得したはずの反対給付の返還請求権などを、債務者に対して行使する
誤り。違うのは「背信性の程度が著しい場合に限り,詐害行為取消権の対象となる」の部分である。相続の放棄は、背信性の程度を問わず詐害行為取消権の対象とならない(最判昭49.9.20)。
最判昭49.9.20は、相続の放棄は詐害行為取消権の対象とならないとした。取消しの対象は債務者の財産を積極的に減少させる行為であり、消極的にその増加を妨げるにすぎない行為は含まれないところ、相続の放棄は初めから相続人とならなかったものとみなされる効果(939条)を生ずるだけで、既に債務者のものだった財産を減らすものではない。また、相続を承認するか放棄するかは相続人の意思に委ねられた身分上の行為であり、債権者が取り消すことで他人の意思により相続を強制する結果になるのは相当でない。現行法も、財産権を目的としない行為を取消しの対象から外している(424条2項)。肢は背信性が著しい場合には対象になるという限定を付けており、判例と異なる。これに対し、遺産分割協議は財産権を目的とする行為として取消しの対象になる(最判平11.6.11)。

前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
- 相続の放棄:対象にならない(最判昭49.9.20)
- 遺産分割協議:対象になる(最判平11.6.11)
- 特定物の引渡請求権を持つ買主:目的物の処分で債務者が無資力になれば取り消せる(最大判昭36.7.19)
- 不可分の目的物:価額が債権額を超えても全部を取り消せる(最判昭30.10.11)
- 債権譲渡の通知・登記などの対抗要件具備行為:対象にならない(最判平10.6.12)
誤り。違うのは「当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができない」の部分である。特定物の引渡請求権を持つ者も、債務者がその物を処分して無資力となれば、その処分を詐害行為として取り消せる(最大判昭36.7.19)。
最大判昭36.7.19は、424条の債権者取消権は総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権であっても、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、その特定物債権者は処分行為を詐害行為として取り消すことができるとした。特定物の引渡請求権も、債務者が目的物を処分すれば履行不能となって損害賠償請求権という金銭債権に変わり、債務者の財産全体を引当てにすることになるからである。したがって、不動産の買主は、売主がその不動産を第三者に贈与して無資力となったときは、その贈与を取り消すことができる。肢は対象にできないとしており、誤っている。もっとも、保全されるのは金銭債権としての価値であり、取り消した買主が受益者に自分への所有権移転登記を直接求めることはできず、不動産では債務者名義への回復を求めることになる。

民法424条の債権者取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができる
- 相続の放棄:対象にならない(最判昭49.9.20)
- 遺産分割協議:対象になる(最判平11.6.11)
- 特定物の引渡請求権を持つ買主:目的物の処分で債務者が無資力になれば取り消せる(最大判昭36.7.19)
- 不可分の目的物:価額が債権額を超えても全部を取り消せる(最判昭30.10.11)
- 債権譲渡の通知・登記などの対抗要件具備行為:対象にならない(最判平10.6.12)
誤り。違うのは「背信性の程度が著しい場合に限り,詐害行為取消権の対象となる」の部分である。相続の放棄は、背信性の程度を問わず詐害行為取消権の対象とならない(最判昭49.9.20)。
最判昭49.9.20は、相続の放棄は詐害行為取消権の対象とならないとした。取消しの対象は債務者の財産を積極的に減少させる行為であり、消極的にその増加を妨げるにすぎない行為は含まれないところ、相続の放棄は初めから相続人とならなかったものとみなされる効果(939条)を生ずるだけで、既に債務者のものだった財産を減らすものではない。また、相続を承認するか放棄するかは相続人の意思に委ねられた身分上の行為であり、債権者が取り消すことで他人の意思により相続を強制する結果になるのは相当でない。現行法も、財産権を目的としない行為を取消しの対象から外している(424条2項)。肢は背信性が著しい場合には対象になるという限定を付けており、判例と異なる。これに対し、遺産分割協議は財産権を目的とする行為として取消しの対象になる(最判平11.6.11)。

前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
- 相続の放棄:対象にならない(最判昭49.9.20)
- 遺産分割協議:対象になる(最判平11.6.11)
- 特定物の引渡請求権を持つ買主:目的物の処分で債務者が無資力になれば取り消せる(最大判昭36.7.19)
- 不可分の目的物:価額が債権額を超えても全部を取り消せる(最判昭30.10.11)
- 債権譲渡の通知・登記などの対抗要件具備行為:対象にならない(最判平10.6.12)
誤り。違うのは「当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができない」の部分である。特定物の引渡請求権を持つ者も、債務者がその物を処分して無資力となれば、その処分を詐害行為として取り消せる(最大判昭36.7.19)。
最大判昭36.7.19は、424条の債権者取消権は総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権であっても、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、その特定物債権者は処分行為を詐害行為として取り消すことができるとした。特定物の引渡請求権も、債務者が目的物を処分すれば履行不能となって損害賠償請求権という金銭債権に変わり、債務者の財産全体を引当てにすることになるからである。したがって、不動産の買主は、売主がその不動産を第三者に贈与して無資力となったときは、その贈与を取り消すことができる。肢は対象にできないとしており、誤っている。もっとも、保全されるのは金銭債権としての価値であり、取り消した買主が受益者に自分への所有権移転登記を直接求めることはできず、不動産では債務者名義への回復を求めることになる。

民法424条の債権者取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができる
- 相続の放棄:対象にならない(最判昭49.9.20)
- 遺産分割協議:対象になる(最判平11.6.11)
- 特定物の引渡請求権を持つ買主:目的物の処分で債務者が無資力になれば取り消せる(最大判昭36.7.19)
- 不可分の目的物:価額が債権額を超えても全部を取り消せる(最判昭30.10.11)
- 債権譲渡の通知・登記などの対抗要件具備行為:対象にならない(最判平10.6.12)
正しい。債権者代位権の行使には、被保全債権が被代位権利より前に成立していることは必要でない(最判昭33.7.15)。
債権者代位権は、債務者の責任財産が債権の共同担保として保たれることを保障する制度であり、債権者は代位権を行使する時点の債務者の責任財産を引当てとして把握すれば足りる。そのため、被保全債権が被代位権利より前に成立している必要はなく、判例も、代位権者の債権が債務者の権利より前に成立することは必要でないとしている(最判昭33.7.15)。この点は詐害行為取消権と対照的である。詐害行為取消権は、債務者がすでにした行為の効力を覆して逸出した財産を取り戻す強い制度であるから、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものであることが要求される(424条3項)。これに対し債権者代位権は、債務者が現に持っている権利を行使するにとどまり、取引の安全を害する程度が小さいので、成立の先後は問題とならないのである。

代位権者の債権が債務者の権利より前に成立することは必要でな(い)
| 項目 | 債権者代位権 | 詐害行為取消権 |
|---|---|---|
| 被保全債権の成立時期 | 被代位権利より前である必要はない(最判昭33.7.15) | 詐害行為の前の原因に基づいて生じたものに限る(424条3項) |
| 行使の方法 | 裁判外でも行使できる | 裁判所に請求しなければならない(424条1項) |
| 債務者の無資力 | 金銭債権の保全では必要(転用型では不要) | 必要 |
誤り。違うのは「そのことをB及びCが知っていたことを主張・立証しなければならない」のうちCの悪意の部分である。受益者の善意は受益者が自ら主張・立証すべき事実であり、AはCの悪意を主張・立証する必要はない(最判昭37.3.6、424条1項ただし書)。
424条1項本文は、債権者は債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求できると定め、ただし書は、受益者がその行為の時に債権者を害することを知らなかったときはこの限りでないとする。この本文とただし書の構造からすると、行為が債権者を害すること(詐害性)と債務者がそれを知っていたこと(詐害意思)は、取消しを求める債権者が請求原因として主張・立証すべき事実であるのに対し、受益者の善意は取消しを妨げる事由として受益者が抗弁で主張・立証すべき事実である。最判昭37.3.6も、424条1項ただし書にいう受益者又は転得者の善意の挙証責任は受益者又は転得者自身にあるとした。したがって、AはBC間の贈与がAを害すること及びBがそれを知っていたことを主張・立証すれば足り、Cが知っていたことまで主張・立証する必要はない。Cの悪意までAの主張・立証事項とする肢は誤っている。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
| 事実 | 主張・立証する者 |
|---|---|
| 行為が債権者を害すること(行為時の無資力) | 取消債権者(請求原因) |
| 債務者が債権者を害することを知っていたこと | 取消債権者(請求原因) |
| 受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかったこと | 受益者(抗弁。最判昭37.3.6) |
| 口頭弁論終結時までに債務者が資力を回復したこと | 受益者・転得者(抗弁。大判大5.5.1) |
誤り。違うのは「そのことをB及びCが知っていたことを主張・立証しなければならない」のうちCの悪意の部分である。受益者の善意は受益者が自ら主張・立証すべき事実であり、AはCの悪意を主張・立証する必要はない(最判昭37.3.6、424条1項ただし書)。
424条1項本文は、債権者は債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求できると定め、ただし書は、受益者がその行為の時に債権者を害することを知らなかったときはこの限りでないとする。この本文とただし書の構造からすると、行為が債権者を害すること(詐害性)と債務者がそれを知っていたこと(詐害意思)は、取消しを求める債権者が請求原因として主張・立証すべき事実であるのに対し、受益者の善意は取消しを妨げる事由として受益者が抗弁で主張・立証すべき事実である。最判昭37.3.6も、424条1項ただし書にいう受益者又は転得者の善意の挙証責任は受益者又は転得者自身にあるとした。したがって、AはBC間の贈与がAを害すること及びBがそれを知っていたことを主張・立証すれば足り、Cが知っていたことまで主張・立証する必要はない。Cの悪意までAの主張・立証事項とする肢は誤っている。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
| 事実 | 主張・立証する者 |
|---|---|
| 行為が債権者を害すること(行為時の無資力) | 取消債権者(請求原因) |
| 債務者が債権者を害することを知っていたこと | 取消債権者(請求原因) |
| 受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかったこと | 受益者(抗弁。最判昭37.3.6) |
| 口頭弁論終結時までに債務者が資力を回復したこと | 受益者・転得者(抗弁。大判大5.5.1) |
誤り。違うのは「詐害行為取消権の対象とならない」の部分である。遺産分割協議は相続財産の帰属を確定させる財産権を目的とする法律行為であり、詐害行為取消権の対象となりうる(最判平11.6.11)。
詐害行為取消請求は、財産権を目的としない行為には適用されない(424条2項)。逆にいえば、財産権を目的とする行為であれば取消しの対象になりうる。最判平11.6.11は、共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権行使の対象となりうるとした。遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移すことによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるからである。これに対し、相続の放棄は相続人としての地位そのものを選ぶ身分行為として取消しの対象にならないとされており(最判昭49.9.20)、遺産分割協議とは区別される。したがって、債務超過の相続人が自己の相続分に相当する財産を取得しない内容の遺産分割協議に応じ、責任財産を減らした場合には、詐害行為として取り消されうる。対象とならないとする肢は誤っている。

共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。
正しい。財産分与の金銭給付の合意は、不相当に過大で財産分与に仮託された財産処分と認められる特段の事情があるときは、不相当に過大な部分についてその限度で詐害行為として取り消される(最判平12.3.9)。
離婚に伴う財産分与(768条)は、婚姻中の夫婦の実質的な共同財産の清算、離婚後の扶養、慰謝料という複数の要素を持ち、単純に責任財産を減らす財産処分と同じには扱えない。そのため判例は、財産分与は768条3項の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事情のない限り、詐害行為とはならないとしている(最判昭58.12.19)。そして最判平12.3.9は、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、その特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものとした。合意全体を取り消すのではなく、財産分与として相当な範囲を超える部分だけを取り消すのである。同判決は、離婚に伴う慰謝料の支払の合意も、負担すべき損害賠償債務の額を超えた部分に限って取消しの対象となりうるとしている。肢はこの判例どおりであり正しい。

離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解する
誤り。違うのは「訴えによる必要はなく,抗弁によって行使することもできる」の部分である。詐害行為取消権は訴えによって行使しなければならず、抗弁として主張することはできない(424条1項、最判昭39.6.12)。
424条1項は、債権者は債務者の行為の取消しを裁判所に請求することができると定めており、詐害行為取消権は裁判外の意思表示では行使できず、裁判上行使しなければならない。そのうえで判例は、詐害行為取消権は訴えによって行使すべきものであり、抗弁として主張することは許されないとしている(最判昭39.6.12)。取消しは債務者と第三者の間の行為の効力を否定するもので、取消しの効果を判決の主文で明確に確定させる必要があり、判決理由の中の判断にとどまる抗弁による行使では足りないからである。現行法は、詐害行為取消請求の被告を受益者又は転得者とし(424条の7第1項)、債務者に訴訟告知を義務づけたうえで(同条2項)、取消しを認める確定判決の効力が債務者とそのすべての債権者に及ぶとしており(425条)、訴えによる行使を前提とする仕組みになっている。もっとも、訴えであればよいので、反訴によって行使することはできる(最判昭40.3.26)。抗弁による行使を認める肢は誤っている。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
誤り。違うのは「詐害行為取消権の対象とならない」の部分である。遺産分割協議は相続財産の帰属を確定させる財産権を目的とする法律行為であり、詐害行為取消権の対象となりうる(最判平11.6.11)。
詐害行為取消請求は、財産権を目的としない行為には適用されない(424条2項)。逆にいえば、財産権を目的とする行為であれば取消しの対象になりうる。最判平11.6.11は、共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権行使の対象となりうるとした。遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移すことによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるからである。これに対し、相続の放棄は相続人としての地位そのものを選ぶ身分行為として取消しの対象にならないとされており(最判昭49.9.20)、遺産分割協議とは区別される。したがって、債務超過の相続人が自己の相続分に相当する財産を取得しない内容の遺産分割協議に応じ、責任財産を減らした場合には、詐害行為として取り消されうる。対象とならないとする肢は誤っている。

共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。
正しい。財産分与の金銭給付の合意は、不相当に過大で財産分与に仮託された財産処分と認められる特段の事情があるときは、不相当に過大な部分についてその限度で詐害行為として取り消される(最判平12.3.9)。
離婚に伴う財産分与(768条)は、婚姻中の夫婦の実質的な共同財産の清算、離婚後の扶養、慰謝料という複数の要素を持ち、単純に責任財産を減らす財産処分と同じには扱えない。そのため判例は、財産分与は768条3項の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事情のない限り、詐害行為とはならないとしている(最判昭58.12.19)。そして最判平12.3.9は、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、その特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものとした。合意全体を取り消すのではなく、財産分与として相当な範囲を超える部分だけを取り消すのである。同判決は、離婚に伴う慰謝料の支払の合意も、負担すべき損害賠償債務の額を超えた部分に限って取消しの対象となりうるとしている。肢はこの判例どおりであり正しい。

離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解する
誤り。違うのは「訴えによる必要はなく,抗弁によって行使することもできる」の部分である。詐害行為取消権は訴えによって行使しなければならず、抗弁として主張することはできない(424条1項、最判昭39.6.12)。
424条1項は、債権者は債務者の行為の取消しを裁判所に請求することができると定めており、詐害行為取消権は裁判外の意思表示では行使できず、裁判上行使しなければならない。そのうえで判例は、詐害行為取消権は訴えによって行使すべきものであり、抗弁として主張することは許されないとしている(最判昭39.6.12)。取消しは債務者と第三者の間の行為の効力を否定するもので、取消しの効果を判決の主文で明確に確定させる必要があり、判決理由の中の判断にとどまる抗弁による行使では足りないからである。現行法は、詐害行為取消請求の被告を受益者又は転得者とし(424条の7第1項)、債務者に訴訟告知を義務づけたうえで(同条2項)、取消しを認める確定判決の効力が債務者とそのすべての債権者に及ぶとしており(425条)、訴えによる行使を前提とする仕組みになっている。もっとも、訴えであればよいので、反訴によって行使することはできる(最判昭40.3.26)。抗弁による行使を認める肢は誤っている。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
誤り。違うのは「AC間の贈与の当時,Dが知っていたことが必要である」の部分である。転得者に対する取消請求では、転得者が転得の当時に債権者を害することを知っていたかを問う(424条の5第1号)。
424条の5は、債権者は受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者から財産を転得した者があるときは、その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたときに限り、転得者に対しても詐害行為取消請求をすることができると定める(1号)。転得者は債務者と受益者の間の行為には関わっておらず、その者が保護に値するかどうかは、自らが財産を取得した時点で詐害の事情を知っていたかどうかで判断すべきだからである。債務者と受益者の間の贈与の時点では、転得者はまだ取引に登場していないことも多く、その時点の認識を問うのは筋が違う。したがって、本肢でBがDを被告として取り消すには、DがCから転得した当時、AC間の贈与がBを害することを知っていたことが必要であり、AC間の贈与の当時の認識が問われるわけではない。なお、転得者に対する請求は、受益者に対して請求できる場合であることも前提となる。

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
| 場面 | 誰の善意・悪意か | いつで判断するか |
|---|---|---|
| 遺留分算定に算入する1年前より前の贈与(1044条1項) | 贈与の当事者双方 | 贈与の当時 |
| 10年の取得時効(162条2項) | 占有者(承継した占有なら最初の占有者) | 占有開始の時 |
| 本権の訴えで敗訴した占有者(189条2項) | 占有者 | 訴え提起の時から悪意とみなす |
| 転得者に対する詐害行為取消請求(424条の5) | 転得者 | 転得の当時 |
正しい。詐害行為の取消しは、債権者が裁判所に請求してするものである(424条1項)。
424条1項は、債権者は債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができると定める。詐害行為取消権は、債務者が自分の財産を減らす行為をした場合に、債権者がその行為を取り消して債務者の責任財産を回復させる権利である。しかし、取り消される行為は債務者と受益者との間の取引であり、債権者はその当事者ではない。他人どうしの取引の効力を否定することは、受益者や転得者など第三者の利益に大きく影響し、取引の安全を害するおそれがあるから、債権者の意思表示だけで取り消せるとはせず、裁判所が要件を審理したうえで判決によって取り消すことにしたのである。そのため、詐害行為取消権は訴えによって行使しなければならず、抗弁として主張することはできないと解されている。取消しを認める確定判決は、債務者とそのすべての債権者に対しても効力を有する(425条)。本肢は同条1項の内容どおりである。

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 制限行為能力・錯誤・詐欺・強迫による取消し:相手方に対する意思表示(123条)
- 詐害行為の取消し:債権者が裁判所に請求する(424条1項)
- 不適法な婚姻の取消し:各当事者・親族・検察官が家庭裁判所に請求する(744条1項)
- 負担付遺贈に係る遺言の取消し:相続人が催告のうえ家庭裁判所に請求する(1027条)
正しい。譲渡行為が債権成立前にされていれば取消しの対象とならず、その後にされた登記だけを切り離して詐害行為として取り消すこともできない(最判昭55.1.24)。
424条3項は、債権者はその債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り詐害行為取消請求をすることができると定める。債権者が当てにできるのは、債権が生じる時点での債務者の財産だからである。最判昭55.1.24は、詐害行為と主張される不動産の譲渡が債権者の債権成立前にされたものである場合には、その登記が債権成立後にされても取消権を行使することはできず、物権移転行為自体が詐害行為を構成しない以上、登記だけを切り離して詐害行為として扱うことも相当でないとした。所有権移転登記は、すでにされた譲渡に対抗要件を備えさせる行為にすぎず、それ自体で債務者の財産を減らすものではないからである。したがって、譲渡行為も登記もいずれも詐害行為とならず、肢は正しい。出題当時の424条は取消しの対象を「法律行為」としていたが、改正後もこの判例の考え方は変わらない。

物権移転行為自体が詐害行為を構成しない以上、これについてされた登記のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることも、相当とはいい難い
正しい。譲渡行為が債権成立前にされていれば取消しの対象とならず、その後にされた登記だけを切り離して詐害行為として取り消すこともできない(最判昭55.1.24)。
424条3項は、債権者はその債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り詐害行為取消請求をすることができると定める。債権者が当てにできるのは、債権が生じる時点での債務者の財産だからである。最判昭55.1.24は、詐害行為と主張される不動産の譲渡が債権者の債権成立前にされたものである場合には、その登記が債権成立後にされても取消権を行使することはできず、物権移転行為自体が詐害行為を構成しない以上、登記だけを切り離して詐害行為として扱うことも相当でないとした。所有権移転登記は、すでにされた譲渡に対抗要件を備えさせる行為にすぎず、それ自体で債務者の財産を減らすものではないからである。したがって、譲渡行為も登記もいずれも詐害行為とならず、肢は正しい。出題当時の424条は取消しの対象を「法律行為」としていたが、改正後もこの判例の考え方は変わらない。

物権移転行為自体が詐害行為を構成しない以上、これについてされた登記のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることも、相当とはいい難い
正しい。転得者に対する詐害行為取消請求は、受益者に対して請求できる場合に限られるから(424条の5)、受益者が善意であれば、転得者が悪意でも転得者に取消しを請求できない。
424条の5柱書は、債権者は受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者から財産を転得した者があるときに限り、転得者に対しても詐害行為取消請求をすることができると定め、1号で、受益者からの転得者についてはその転得者が転得の当時に債務者の行為が債権者を害することを知っていたことを要件とする。受益者が債権者を害することを知らなければ、受益者に対して取消しを請求できない(424条1項ただし書)から、その後の転得者が悪意であっても取消しを請求できない。善意の受益者の段階で財産の取得が確定的に保護される以上、その後の取引も安定させるべきだからである。したがって、肢は正しい。出題当時は、受益者が善意でも転得者が悪意であれば転得者に対して取消権を行使できるとする判例があったため、肢は誤りとされていた(公式正解は1と4)。平成29年改正で424条の5が設けられ、結論が変わった。

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
正しい。被保全債権は代位行使する権利より前に成立している必要はないが(最判昭33.7.15)、詐害行為取消権の被保全債権は、出題当時の判例では詐害行為より前に成立していることを要した。
判例(最判昭33.7.15)は、債権者代位権を行使するには、被保全債権が代位行使される債務者の権利より前に成立している必要はないとした。代位権は、債務者の現在の責任財産を維持して将来の強制執行に備える制度であり、債務者の権利がいつ成立したかは債権者の保全の必要と関係がないからである。これに対し、詐害行為取消権は、債務者がすでにした財産処分を取り消すものであるから、債権者が引当てとして期待できなかった時期の処分にまで介入すべきではない。出題当時の判例は、被保全債権が詐害行為の前に成立していることを要するとしており、本肢はこれに沿うので正しいとされた。平成29年改正(令和2年4月施行)で新設された424条3項は、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものであれば足りるとしたので、現在は、詐害行為が被保全債権の発生の後であることまでは要しない。

債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
| 項目 | 債権者代位権 | 詐害行為取消権 |
|---|---|---|
| 被保全債権の成立時期 | 代位行使する権利より前である必要はない | 詐害行為の前の原因に基づいて生じたもの(424条3項) |
| 行使の方法 | 裁判外でもできる | 訴えによる(424条1項)。抗弁では行使できない |
| 行使の範囲 | 目的が可分なら自己の債権額の限度(423条の2) | 目的が可分なら自己の債権額の限度(424条の8) |
誤り。違うのは「抗弁としても行使することができる」の部分である。判例は、詐害行為の取消しは訴えの方法によるべきであり、抗弁の方法によることは許されないとした(最判昭39.6.12)。
424条1項は、債権者は債務者がした詐害行為の取消しを「裁判所に請求することができる」と定める。判例(最判昭39.6.12)は、詐害行為の取消しは訴えの方法によるべきものであって、抗弁の方法によることは許されないとした。詐害行為取消権は、債務者と受益者の間で有効に成立した行為の効力を否定し、第三者の取引に重大な影響を与えるものであるから、その要件の有無を裁判所が訴訟手続で慎重に審理し、判決主文で取消しを明らかにする必要がある。抗弁として主張するだけで足りるとすると、取消しの効果が判決理由中の判断にとどまり、その範囲や効力の及ぶ者が不明確になるからである。現行法では、取消しの訴えの被告は受益者又は転得者であり(424条の7第1項)、債務者には訴訟告知をしなければならない(同条2項)。本肢は誤りである。

民法424条の詐害行為の取消は訴の方法によるべきものであつて、抗弁の方法によることは許されない
誤り。違うのは「当該第三者に対し、直接自己への所有権移転登記を求めることができる」の部分である。判例は、特定物債権者も処分行為を詐害行為として取り消せるが、目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできないとした(最判昭53.10.5)。
判例(最判昭53.10.5)は、特定物引渡請求権は、究極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは金銭債権と同様であり、債務者が目的物を処分したことにより無資力となった場合には、特定物債権者はその処分行為を詐害行為として取り消すことができるとしつつ、424条の趣旨に照らし、特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできないとして、直接自己への所有権移転登記を求めることを否定した。詐害行為取消権は、総債権者の共同担保である債務者の責任財産を回復させる制度であり、特定の債権者に目的物そのものを取得させる制度ではないからである。直接自己への移転登記を認めると、対抗要件の具備で優劣を決める177条の原則を詐害行為取消権によって覆すことにもなる。したがって、取消しの結果は債務者名義への登記の回復にとどまる。本肢は誤りである。

債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
- 特定物債権者:目的物の処分で債務者が無資力になれば取り消せるが、直接自己への移転登記は求められない(最判昭53.10.5)
- 遺産分割協議:財産権を目的とする法律行為として取消しの対象となりうる(最判平11.6.11)
- 債権発生前の譲渡行為:登記が債権発生後でも、登記だけを切り離して取り消せない(最判昭55.1.24)
- 離婚に伴う財産分与:不相当に過大で財産分与に仮託した処分と認められる特段の事情があれば、過大な部分を取り消せる(最判昭58.12.19・最判平12.3.9)
- 転得者がいる場合の受益者への請求:現物の返還が困難なので価額の償還を請求する(424条の6第1項後段)
誤り。違うのは「当該売買契約は、詐害行為取消権行使の対象となり得る」の部分である。判例は、不動産の譲渡行為が債権者の債権成立前にされた場合には、その登記が債権成立後にされたときでも、取消権を行使できないとした(最判昭55.1.24)。
判例(最判昭55.1.24)は、債務者の行為が詐害行為として取消しの対象となるためには、その行為が債権者の債権の発生後にされたものであることを必要とするから、詐害行為と主張される不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされたものである場合には、たといその登記が債権成立後にされたときであっても、債権者において取消権を行使することはできないとした。債権者が引当てとして期待できるのは、自己の債権が成立した時点の債務者の財産であり、それより前にすでに処分されていた財産は、もともと引当てとして期待できなかったからである。登記は物権変動を第三者に対抗するための手段にすぎず、物権の移転行為自体が詐害行為とならない以上、登記だけを切り離して詐害行為とすることはできない。現在の424条3項は、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものであれば足りるとしているが、譲渡行為の後に原因が生じた債権者が登記を理由に取り消せない点は同じである。本肢は誤りである。

債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
- 特定物債権者:目的物の処分で債務者が無資力になれば取り消せるが、直接自己への移転登記は求められない(最判昭53.10.5)
- 遺産分割協議:財産権を目的とする法律行為として取消しの対象となりうる(最判平11.6.11)
- 債権発生前の譲渡行為:登記が債権発生後でも、登記だけを切り離して取り消せない(最判昭55.1.24)
- 離婚に伴う財産分与:不相当に過大で財産分与に仮託した処分と認められる特段の事情があれば、過大な部分を取り消せる(最判昭58.12.19・最判平12.3.9)
- 転得者がいる場合の受益者への請求:現物の返還が困難なので価額の償還を請求する(424条の6第1項後段)



