第703条不当利得の返還義務過去問 9
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
この条文の過去問 9問
善意の受益者がその利得に法律上の原因がないことを認識した後にその利益が消滅したときは、その受益者は、現に利益が存しないことを理由として不当利得に基づく返還請求を拒むことができない。
解説
本肢は正しい。民法703条は、善意の受益者は「その利益の存する限度において」返還義務を負うとし、同法704条は悪意の受益者に受けた利益に利息を付して返還すべき義務を課す。善意者の責任が現存利益に限定される趣旨は、法律上の原因があると信じて財産を費消した者に、不当利得がなかった場合以上の不利益を負わせるべきではないという信頼保護にある。そうであれば、受益者が自己の利得に法律上の原因がないことを認識した後は、もはやそのような信頼は存在せず、責任を軽減する根拠を欠く。したがって、受益の当時は善意であっても、その後悪意に転じた者は、悪意となった時点から704条の責任を負い、それ以降に生じた利益の消滅は返還義務の範囲を減少させる理由とならない。判例も、不当利得の受益者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は返還義務の範囲を減少させないとしている(最判平成3年11月19日)。よって、善意の受益者であっても、法律上の原因がないことを認識した後に利益が消滅した場合には、現に利益が存しないことを理由に返還を拒むことはできず、本肢の記述は正しい。
所有者から寄託された動産を受寄者が売却し,買主に即時取得が成立した場合,買主は,寄託者に対し,不当利得返還義務を負わない。
解説
本肢は正しい。受寄者は寄託物について処分権限を有しない無権利者であるが、買主が平穏・公然に動産の占有を始め、前主が無権利であることにつき善意無過失であれば、即時取得(民法192条)によりその動産の所有権を原始取得する。即時取得は、動産取引において占有に対する信頼を保護し、取引の安全を図る制度であり、真の所有者の追及効を遮断して権利の帰属自体を確定させるものである。したがって、買主が所有権を取得したことは即時取得という法律上の根拠に基づくものであって、不当利得の要件である「法律上の原因なく」(703条)他人の財産により利益を受けたとはいえない。よって、買主は寄託者(所有者)に対して不当利得返還義務を負わない。もっとも、これにより所有権を失った寄託者が無保護となるわけではなく、寄託者は受寄者に対し、寄託契約上の債務不履行(415条)や不法行為(709条)に基づく損害賠償を請求できるほか、受寄者が取得した売却代金について不当利得返還請求をすることもできる。責任追及の相手方が買主ではなく受寄者となる点に、即時取得の制度趣旨が現れている。
Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において,Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。
解説
本肢は正しい。所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合には、動産の付合に関する243条および244条が準用される(245条)。すなわち、主従の区別をすることができるときは主たる動産の所有者が混和物の所有権を取得し、主従の区別をすることができないときは混和の時における価格の割合に応じた共有となる。そして、添付(付合・混和・加工)の規定の適用によって所有権を失う等の損失を受けた者は、703条および704条の規定に従い、その償金を請求することができる(248条)。ここでの償金請求権は、添付によって所有権の帰属が法律上当然に決せられた結果生じる利得と損失を調整するものであり、不当利得返還請求権の性質を有する。本肢では、Aの液体甲100立方メートルとBの液体乙10立方メートルが混和して識別不能となり、量的に圧倒的に優る甲を主たる動産としてAが液体丙の所有権を取得している。その結果、Bは液体乙の所有権を失って損失を受けているから、Bは248条により、不当利得の規定に従ってAに対し償金を請求することができる。したがって、本肢は正しい。
Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において,Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。
解説
本肢は正しい。所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合には、動産の付合に関する243条および244条が準用される(245条)。すなわち、主従の区別をすることができるときは主たる動産の所有者が混和物の所有権を取得し、主従の区別をすることができないときは混和の時における価格の割合に応じた共有となる。そして、添付(付合・混和・加工)の規定の適用によって所有権を失う等の損失を受けた者は、703条および704条の規定に従い、その償金を請求することができる(248条)。ここでの償金請求権は、添付によって所有権の帰属が法律上当然に決せられた結果生じる利得と損失を調整するものであり、不当利得返還請求権の性質を有する。本肢では、Aの液体甲100立方メートルとBの液体乙10立方メートルが混和して識別不能となり、量的に圧倒的に優る甲を主たる動産としてAが液体丙の所有権を取得している。その結果、Bは液体乙の所有権を失って損失を受けているから、Bは248条により、不当利得の規定に従ってAに対し償金を請求することができる。したがって、本肢は正しい。
債務の免除があった場合において,債務者が債務の免除を受けたことを忘れて弁済したときは,債務者はその返還を求めることはできない。
解説
本肢は誤り。債務の免除によって債権は消滅する(519条)。したがって、その後に債務者がした弁済は、存在しない債務に対する給付、すなわち非債弁済であり、債権者は法律上の原因なくして利得したことになるから、原則として不当利得返還義務を負う(703条、悪意であれば704条)。この原則の例外が705条であり、同条は「債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。」と定める。すなわち返還請求が封じられるのは、給付者が給付の時点で債務の不存在を積極的に認識していた場合に限られる。判例も、債務の不存在を知らなかった以上、そのことにつき過失があったとしても705条の適用はなく、不当利得返還請求を認めている(大判昭和16年4月19日)。本肢の債務者は、免除を受けたことを「忘れて」弁済しているのであるから、給付の時点で債務の不存在を認識しておらず、705条は適用されない。よって債務者は不当利得としてその返還を求めることができるのであり、「返還を求めることはできない」とする本肢は誤りである。
Bが自ら生け垣を修理した場合には,Bは,Aに対し,その修理に対する報酬の支払を請求することはできない。
解説
本肢は正しい。Aの不在中に隣人Bが義務なくAの生け垣を修理する行為は、他人のためにその事務を処理する行為であり、事務管理(697条1項)に当たる。問題は、管理者Bが管理行為の対価としての報酬をAに請求できるかである。
事務管理は、他人の生活領域への干渉を、相互扶助・好意による利他的行為として例外的に適法とする制度であり、当事者間に契約関係がない以上、労務の対価を発生させる法的根拠がない。実際、法が管理者に認めた請求権は、702条1項の「有益な費用」の償還請求権、同条2項の代弁済請求権(650条2項準用)にとどまる。ここにいう費用とは、管理のために現実に支出した金銭その他の出捐をいい、管理者自身の労務の対価は含まれない。
また、事務管理の効果として委任の規定を準用する701条は、報告義務(645条)、受取物等の引渡義務(646条)、金銭消費の責任(647条)を準用するにとどまり、報酬に関する648条は準用の対象とされていない。委任ですら特約がなければ無償が原則である(648条1項)ことに照らせば、契約に基づかない事務管理において報酬請求権を認める余地はない。不当利得(703条)として構成しても、返還の対象は本人の受けた利益であって管理者の労務の対価そのものではなく、報酬請求を基礎づけることはできない。
したがって、Bは修理費用の償還を求め得るとしても、修理に対する報酬の支払を請求することはできず、本肢は正しい。
債務者の弁済が,債権の準占有者に対する弁済として有効となる場合においては,真の債権者は,弁済を受けた者に対し,不当利得返還請求をすることができない。
解説
本肢は誤り。478条は、受領権者としての外観を有する者に対して善意無過失で弁済した債務者を保護し、その債務を消滅させる規定にすぎない。すなわち、同条が働く局面で保護されるのは弁済をした債務者であって、給付を受領した者が受け取った利益を終局的に保持してよいことまで基礎づけるものではない。弁済が有効とされる結果、真の債権者は自らの債権を失って損失を被る一方、受領者は自己に帰属すべきでない給付を保持しており、両者の間には給付を正当化する法律上の原因が存在しない。したがって、真の債権者は受領者に対して不当利得の返還を請求することができる(703条)。受領者が自己に受領権限のないことを知っていた悪意の受益者であれば、受けた利益に利息を付して返還すべきであり、なお損害があるときはその賠償責任も負う(704条)。さらに、通帳や印章を窃取して払戻しを受けた場合のように、受領者の行為が権利侵害として違法性を備えるときは、真の債権者は709条の不法行為に基づく損害賠償請求をすることもできる。よって、不当利得返還請求ができないとする本肢は誤りである。
債務者の弁済が,債権の準占有者に対する弁済として有効となる場合においては,真の債権者は,弁済を受けた者に対し,不当利得返還請求をすることができない。
解説
本肢は誤り。478条は、受領権者としての外観を有する者に対して善意無過失で弁済した債務者を保護し、その債務を消滅させる規定にすぎない。すなわち、同条が働く局面で保護されるのは弁済をした債務者であって、給付を受領した者が受け取った利益を終局的に保持してよいことまで基礎づけるものではない。弁済が有効とされる結果、真の債権者は自らの債権を失って損失を被る一方、受領者は自己に帰属すべきでない給付を保持しており、両者の間には給付を正当化する法律上の原因が存在しない。したがって、真の債権者は受領者に対して不当利得の返還を請求することができる(703条)。受領者が自己に受領権限のないことを知っていた悪意の受益者であれば、受けた利益に利息を付して返還すべきであり、なお損害があるときはその賠償責任も負う(704条)。さらに、通帳や印章を窃取して払戻しを受けた場合のように、受領者の行為が権利侵害として違法性を備えるときは、真の債権者は709条の不法行為に基づく損害賠償請求をすることもできる。よって、不当利得返還請求ができないとする本肢は誤りである。
建物に設定された抵当権が実行された場合において,抵当権の設定登記後であって競売手続の開始前からその建物の引渡しを受けて占有し使用している者が存在するときは,その建物の占有者は,買受人による建物買受けの時から6か月間,買受人に対する使用の対価を支払うことなく建物の明渡しを猶予される。
解説
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