双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
この条文の過去問 37問
誤り。違うのは「損害相当額を限度として」の部分である。修補に代わる損害賠償債権と報酬債権は同時履行の関係に立ち、注文者は特段の事情のない限り報酬全額の支払を拒める(最判平9.2.14)。
引き渡された建物が契約の内容に適合しないとき、注文者は請負人に履行の追完に代わる損害賠償を請求できる(559条・564条・415条)。最判平9.2.14は、注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償を求め、いずれからも報酬債権との相殺の意思表示がされなかった場合には、両債権は同時履行の関係に立ち、当事者の一方は相手方から履行を受けるまで自己の債務の履行を拒め、履行遅滞の責任も負わないとした。そのうえで、瑕疵の程度や交渉態度等に照らし、損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払を拒むことが信義則に反するときに限って例外とした。損害賠償は実質的に報酬の減額と同じ働きをするので、注文者の立場を全体として守るため、拒める範囲を損害額に限らなかったのである。債権法改正は、533条に「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む」と書き加えて、この判例を条文に取り込んだ。本肢は、拒める範囲を損害相当額に限る点で判例とずれている。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
正しい。報酬支払義務と修補に代わる損害賠償義務は、533条の括弧書により同時履行の関係にある(最判平9.2.14)。
533条は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができると定める。括弧書は、本来の債務が損害賠償の債務に変わった場合にも、対価関係にある債務とのつながりが残ることを示している。請負で引き渡された目的物が契約の内容に適合しないとき、注文者は請負人に修補を求めることも、修補に代わる損害賠償を求めることもできる(559条・562条・564条・415条)。この損害賠償債務は、請負人の仕事を完成して引き渡す債務が形を変えたものなので、その対価である注文者の報酬支払債務と同時履行の関係に立つ。判例も、修補に代わる損害賠償債権と報酬債権は同時履行の関係に立つとし、ただ不適合の程度や交渉態度に照らして報酬全額の支払を拒むことが信義則に反するときは、その限りでないとした(最判平9.2.14)。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 二つの債務 | 同時履行か | 根拠 |
|---|---|---|
| 質権の被担保債務の弁済と質物の返還 | 否定(弁済が先) | 347条・大判大9.3.29 |
| 敷金の返還と賃借物の返還 | 否定(明渡しが先) | 622条の2第1項1号・最判昭49.9.2 |
| 請負の報酬と修補に代わる損害賠償 | 肯定 | 533条括弧書・最判平9.2.14 |
| 詐欺による取消し後の代金返還と抹消登記 | 肯定 | 533条の類推・最判昭47.9.7 |
| 弁済と受取証書の交付 | 肯定 | 486条1項 |
| 弁済と債権証書の返還 | 否定(全部の弁済が先) | 487条 |
正しい。詐欺による取消し後の当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により同時履行の関係に立つ(最判昭47.9.7)。
第三者が詐欺をした場合でも、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときは、表意者は意思表示を取り消すことができる(96条2項)。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づいて給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。本肢では代金の支払と所有権移転登記がすでにされているので、取消しによって、売主は代金を返す義務を、買主は移転登記を抹消する義務を、それぞれ負う。判例は、売買契約が詐欺を理由に取り消された場合の当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により同時履行の関係に立つとした(最判昭47.9.7)。解除の場合の原状回復義務について同時履行を定める546条と同じく、互いに原状回復義務を負う場面では、公平の観点から一方だけに先に履行する危険を負わせるべきでないからである。したがって、代金の返還と抹消登記は同時履行の関係にある。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
| 二つの債務 | 同時履行か | 根拠 |
|---|---|---|
| 質権の被担保債務の弁済と質物の返還 | 否定(弁済が先) | 347条・大判大9.3.29 |
| 敷金の返還と賃借物の返還 | 否定(明渡しが先) | 622条の2第1項1号・最判昭49.9.2 |
| 請負の報酬と修補に代わる損害賠償 | 肯定 | 533条括弧書・最判平9.2.14 |
| 詐欺による取消し後の代金返還と抹消登記 | 肯定 | 533条の類推・最判昭47.9.7 |
| 弁済と受取証書の交付 | 肯定 | 486条1項 |
| 弁済と債権証書の返還 | 否定(全部の弁済が先) | 487条 |
誤り。違うのは「Cからの50万円の支払請求を拒むことができない」の部分である。債務者Bは、AB間の契約に基づく同時履行の抗弁をCにも対抗できる(539条)。
539条は、債務者は537条1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができると定める。第三者の権利は要約者と諾約者の契約から生じるものであるから、その契約に付いている制約をそのまま引き継ぐのであり、第三者だけが契約より有利な権利を取得する理由はない。したがって、諾約者は、契約の無効・取消し・解除のほか、同時履行の抗弁権(533条)も第三者に主張することができる。本問のAB間の契約は絵画甲の売買であり、Aの甲の引渡債務とBの代金支払債務は対価の関係にあって同時履行の関係に立つ。代金の支払先がCとされていても、この関係は変わらない。そうすると、AがBに甲を引き渡していない以上、Bは、Aに対する同時履行の抗弁を539条によりCにも主張し、Cからの50万円の支払請求を拒むことができる。受益の意思表示をした後であっても、Cが契約上の制約を免れるわけではない。

債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
- 直接請求(537条1項):第三者は債務者(諾約者)に直接給付を請求できる
- 第三者の現存・特定(537条2項):契約成立時に第三者が存在しなくても、特定していなくても有効(胎児・設立中の法人など)
- 権利の発生(537条3項):第三者が債務者に受益の意思を表示した時
- 発生後の変更・消滅(538条1項):当事者の合意でもできない。発生前ならできる
- 解除(538条2項):権利発生後に債務者が履行しないとき、要約者は第三者の承諾がなければ解除できない
- 抗弁(539条):債務者は契約に基づく抗弁(同時履行の抗弁権など)を第三者に対抗できる
誤り。違うのは「Bは、代金の支払を拒むことができない」の部分である。受領遅滞中でも債務者の重過失による滅失は債務者の帰責事由による不能であり、Bは履行に代わる損害賠償債務との同時履行などを理由に代金の支払を拒める。
債権者が受領を拒んだ場合、特定物の引渡しを目的とする債務者は、履行の提供をした時から引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって保存すれば足りる(413条1項)。受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能となったときは、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ(413条の2第2項)、債権者は反対給付の履行を拒めない(536条2項)。しかし本肢では、甲はAの重過失で滅失しており、自己の財産に対するのと同一の注意すら尽くしていないので、履行不能はAの責めに帰すべき事由による。そのため413条の2第2項は当てはまらず、536条2項によって代金の支払を拒めなくなることもない。Bは、Aに履行に代わる損害賠償を請求でき(415条2項1号)、その債務と代金債務は同時履行の関係に立つので(533条)、代金の支払を拒むことができる。催告なしに解除して代金債務を免れることもできる(542条1項1号)。肢は誤っている。

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
- 引渡し前・売主の帰責:買主は解除と損害賠償ができる
- 引渡し前・双方無責:買主は代金の支払を拒める(536条1項)。代金債務を消すには解除が要る
- 引渡し前・買主の帰責:買主は代金の支払を拒めず、解除もできない(536条2項・543条)
- 引渡し後・双方無責:買主は追完・減額・損害賠償・解除ができず、代金も払う(567条1項)
- 適合物の提供を拒んだ後・双方無責:引渡し後と同じく買主の負担(567条2項・413条の2第2項)
正しい。第三者の詐欺による取消し後の双方の原状回復義務は533条の類推で同時履行の関係に立ち(最判昭47.9.7)、もとの代金後払いの定めはこれを左右しない。
第三者Cの詐欺を理由に売買契約が取り消されると(96条2項)、契約は初めから無効であったものとみなされ(121条)、すでに給付を受けた当事者は互いに相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。Aは受け取った代金を、Bは受け取った時計甲を返さなければならない。判例は、売買契約が第三者の詐欺を理由に取り消された事案で、買主の移転登記の抹消義務と売主の代金返還義務は、533条の類推適用により同時履行の関係に立つとした(最判昭47.9.7)。同じ契約の巻き戻しとして生じる互いの返還義務なので、一方だけに先に返させるのは公平でないからである。本肢では、引渡しから1か月後に代金を払う後払いの定めがあったが、これは契約が有効であることを前提に本来の履行の順序を決めたものにすぎず、契約が遡って効力を失った後に生じる原状回復義務の順序まで決めるものではない。したがって、双方の原状回復義務は同時履行の関係に立ち、肢は正しい。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
正しい。売買契約が解除された場合の当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ(546条・533条)。
契約が解除されると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負い(545条1項本文)、546条は、この場合について同時履行の抗弁権を定める533条を準用する。したがって、当事者双方の原状回復義務は同時履行の関係に立つ。解除は契約から生じた関係を巻き戻すものであり、もともと対価の関係にあった給付どうしを返し合う場面でも、引換えに履行させるのが当事者の公平に合うからである。本肢では、売主の代金返還義務と買主の建物返還義務が向かい合っており、両者は同時履行の関係にある。建物が未登記であることは結論に影響しない。本肢は解除の原因を隠れた瑕疵としているが、平成29年の改正で瑕疵担保責任の規定は削られ、現行法では、引き渡された目的物が契約の内容に適合しないとき、買主は541条・542条によって解除することができる(564条)。どちらの規定による解除であっても、原状回復義務が同時履行の関係に立つことに変わりはない。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、未成年者の取消し・詐欺による取消しの相互の返還義務
- 立つ:土地の売買の所有権移転登記義務と代金支払義務、受取証書の交付と弁済
- 立たない:有償委任の報酬支払と事務処理(報酬は後払い。648条2項)
- 立たない:造作買取代金の支払と建物の明渡し(最判昭和29年7月22日)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先。622条の2第1項1号)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・譲渡担保の受戻しと被担保債務の弁済(弁済が先)
正しい。未成年者の取消しによる双方の返還義務には、解除の546条に準じて533条が準用され、同時履行の関係に立つ(最判昭28.6.16)。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は取り消すことができ(5条2項)、取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、給付を受けた当事者は互いに原状回復の義務を負う(121条の2第1項)。判例は、未成年者の取消しについては、契約の解除による原状回復義務に関する546条に準じて533条の準用があると解するのが相当であるとし、公平の観念上、解除の場合と区別すべき理由がないとした(最判昭28.6.16)。取消しによる巻戻しの場面でも、もともと対価の関係にあった給付を引換えに返し合わせるのが、当事者の公平に合うからである。したがって、動産の売買が取り消された場合、売主の代金返還義務と買主の動産返還義務は同時履行の関係にあり、どちらの当事者も相手方の履行の提供があるまで自分の返還を拒むことができる。行為の時に制限行為能力者であった者の返還の範囲は現に利益を受けている限度に限られるが(121条の2第3項後段)、これは返す範囲の問題であり、同時履行の関係を否定するものではない。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、未成年者の取消し・詐欺による取消しの相互の返還義務
- 立つ:土地の売買の所有権移転登記義務と代金支払義務、受取証書の交付と弁済
- 立たない:有償委任の報酬支払と事務処理(報酬は後払い。648条2項)
- 立たない:造作買取代金の支払と建物の明渡し(最判昭和29年7月22日)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先。622条の2第1項1号)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・譲渡担保の受戻しと被担保債務の弁済(弁済が先)
正しい。先履行の義務を負う売主が履行しないうちに買主の代金支払の期限も到来すれば、両債務は同時履行の関係に立ち、売主は引渡しを拒める(533条)。
533条は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができるが、相手方の債務が弁済期にないときはこの限りでないと定める。したがって、自分の債務が先に履行すべきものとされている当事者は、原則として同時履行の抗弁権を主張できない。しかし、先に履行すべき者が履行しないうちに相手方の債務の弁済期も来た場合には、もはや一方だけに先に履行させる理由はなくなり、両方の債務は同時履行の関係に立つと解されている。双方の債務がともに弁済期にある以上、引換えに履行させるのが公平だからである。本肢では、Aの引渡債務の期日は4月10日、Bの代金支払債務の期日は4月20日であり、Aの債務が先であるが、Bが引渡しを求めた4月21日にはBの代金支払債務の弁済期も来ている。したがって、両債務は同時履行の関係に立ち、Aは、代金の提供をしないまま引渡しを求めるBに対して、同時履行の抗弁権を主張して引渡しを拒むことができる。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
正しい。同時履行の抗弁権の行使は、売買契約の締結という請求原因と両立し、引渡請求権の行使を阻止するから抗弁である。
売買契約に基づく動産の引渡請求の請求原因は、その動産について売買契約を締結したことであり、代金の支払やその提供は請求原因に含まれない。他方、売買は双務契約であるから、特約がない限り目的物の引渡債務と代金支払債務は同時履行の関係に立ち、被告は原告が代金を支払うまで引渡しを拒むことができる(民法533条)。この主張は、売買契約の締結という請求原因事実を認めたうえで、引渡請求権の存在は否定せずにその行使を阻止するものであり、請求原因と両立してその効果を妨げる抗弁に当たる。もっとも、同時履行の抗弁権は権利抗弁であり、その発生原因となる事実が弁論に出ているだけでは足りず、被告が権利を行使する意思を表明して初めて裁判所が判決の基礎にできる。「代金の支払をするまで引渡しを拒絶する」という主張はまさにその行使であり、認められれば引換給付判決となる。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
- 単純否認:理由を述べずに相手方の主張事実を認めないこと
- 積極否認(理由付き否認):相手方の主張と両立しない事実を挙げて認めないこと。挙げた事実は間接事実にとどまる
- 抗弁:請求原因事実と両立し、その法律効果を障害・消滅・阻止する事実で、被告が主張立証責任を負う
- 権利抗弁:同時履行の抗弁権・留置権のように、権利者が行使の意思を表明して初めて抗弁になる
正しい。同時履行の抗弁権が存在するだけで履行遅滞にならないという見解に立てば、原告は請求原因として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない。
533条は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定める。この同時履行の抗弁権について、抗弁権が存在するだけで履行しないことが違法でなくなり、履行遅滞にならないとする見解がある(大判大14.10.29はこの立場に立つ)。この見解によれば、相手方を履行遅滞にするには、まず相手方の同時履行の抗弁権を失わせる必要があり、そのためには自分の債務を履行するか、履行の提供をしなければならない。そして、履行遅滞に基づく損害賠償を請求するには、相手方が違法に遅滞していることが請求の要件になるので、原告は請求原因の段階で自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない。肢は正しい。抗弁権を行使して初めて履行拒絶が正当化されるとする見解では、被告が抗弁として主張することになり、分担が変わる。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「前者を自働債権,後者を受働債権として相殺することはできない」の部分である。注文者は、修補に代わる損害賠償債権を自働債権、請負代金債権を受働債権として相殺できる(最判昭53.9.21)。
自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付いているときは、相殺を認めると相手方の抗弁権を一方的に奪うことになるので、原則として相殺は許されない。しかし最判昭53.9.21は、注文者が請負人に対して持つ修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし、請負代金債権を受働債権とする相殺を認めた。両債権は同じ請負契約から生じた金銭債権であり、修補に代わる損害賠償は実質的・経済的には請負代金を減らして当事者間の釣り合いを回復させるものなので、同時履行の関係にあっても互いに現実に払わせる特別の利益はなく、相殺で清算するほうが双方にとって便利で公平だからである。肢は相殺できないとしており、誤っている。出題当時は請負の瑕疵担保責任の規定によっていたが、現行法でも履行に代わる損害賠償債務は代金債務と同時履行の関係に立ち(533条括弧書)、この判例の趣旨は当てはまる。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
正しい。同時履行の抗弁権が存在するだけで履行遅滞にならないという見解に立てば、原告は請求原因として自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない。
533条は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定める。この同時履行の抗弁権について、抗弁権が存在するだけで履行しないことが違法でなくなり、履行遅滞にならないとする見解がある(大判大14.10.29はこの立場に立つ)。この見解によれば、相手方を履行遅滞にするには、まず相手方の同時履行の抗弁権を失わせる必要があり、そのためには自分の債務を履行するか、履行の提供をしなければならない。そして、履行遅滞に基づく損害賠償を請求するには、相手方が違法に遅滞していることが請求の要件になるので、原告は請求原因の段階で自己の債務の履行又は履行の提供を主張立証しなければならない。肢は正しい。抗弁権を行使して初めて履行拒絶が正当化されるとする見解では、被告が抗弁として主張することになり、分担が変わる。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「同時履行の関係にない」の部分である。解除による双方の原状回復義務には533条が準用され、目的物の返還と代金の返還は同時履行の関係に立つ(546条)。
546条は、533条の規定を解除による原状回復の場合に準用している。契約を巻き戻す場面で、一方だけが先に返還を強いられるのは公平でないので、双務契約での引換えの関係を解除後の返還にも及ぼしたのである。したがって、売主の目的物返還請求権と買主の代金返還請求権は同時履行の関係に立つ。代金の一部しか支払われていない場合でも変わらない。判例も、解除に伴う一方の給付が可分であっても、その価額に比べて相手方の給付の価額が著しく少ないなど、相手方が履行を提供するまで自分の債務の全部の履行を拒むことが信義則に反するといえる特段の事情がない限り、同時履行の抗弁で拒める範囲が一部に限られることはないとしている(最判昭63.12.22)。肢は同時履行の関係にないとしており、誤っている。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
正しい。同時履行の抗弁は相手方の債務が弁済期にないときは主張できないから(533条ただし書)、代金の先履行の合意は同時履行の抗弁に対する再抗弁となる。
不動産の売買では、売主の引渡しと登記の義務と、買主の代金支払義務は同時履行の関係にあり、買主は売主が自分の債務の履行を提供するまで代金の支払を拒むことができる(533条本文)。売主の代金請求に対して、買主はこの同時履行の抗弁を主張できる。しかし、533条ただし書は、相手方の債務が弁済期にないときはこの限りでないと定めるから、売主の引渡しや登記の債務がまだ弁済期にない場合には、同時履行の抗弁は認められない。代金の支払を引渡しや登記よりも先に行う合意があれば、売主の債務は代金支払の時点ではまだ弁済期にないことになる。そこで、売主は買主の同時履行の抗弁に対し、代金の支払を先に履行するという合意があったことを再抗弁として主張でき、その要件事実はそのような合意をしたことである。したがって、本肢は正しい。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 段階 | 主張する者 | 要件事実 |
|---|---|---|
| 請求原因 | 売主 | 売買契約の締結(目的物の特定と代金額の合意)。売主の所有や代金不払は不要 |
| 同時履行の抗弁 | 買主 | 売主が目的物の引渡し・登記手続をするまで代金の支払を拒むとの権利主張 |
| 再抗弁 | 売主 | 代金支払を先履行とする合意、又は自己の債務の履行(提供の継続を含む) |
正しい。目的物の欠陥(現行法の契約不適合)による買主の損害賠償請求権は債務の履行に代わる損害賠償請求権であり、売主の代金請求権と同時履行の関係にある(533条括弧書)。
533条本文は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまで自己の債務の履行を拒むことができるとし、括弧書で、相手方の債務の履行には債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含むと定める。引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときは、売主の債務不履行として、買主は損害賠償を請求できる(564条・415条)。この損害賠償の債務は、売主が本来果たすべき債務の履行に代わるものであるから、533条括弧書により、売主の代金請求権と買主の損害賠償請求権は同時履行の関係に立つ。目的物の欠陥の分を清算しないまま代金だけ先に払わせるのは、買主にとって公平でないからである。したがって、本肢は正しい。肢の隠れた瑕疵は出題当時の瑕疵担保責任の語であり、出題当時も旧571条が533条を準用して同時履行を認めていたから、結論は変わらない。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
正しい。判例は、修補に代わる損害賠償債権と報酬債権は同時履行の関係にあり、注文者は賠償を受けるまで報酬全額の支払を拒めるとした(最判平9.2.14)。現行法では533条括弧書がこのことを明記している。
引き渡された仕事の目的物が契約の内容に適合しないとき、注文者は、559条により準用される562条などに基づき修補を求められるほか、修補に代わる損害賠償を請求できる(415条)。判例(最判平9.2.14)は、注文者の修補に代わる損害賠償債権と請負人の報酬債権は同時履行の関係に立ち、注文者は損害賠償を受けるまで、賠償額が報酬額より少ないときでも報酬全額の支払を拒むことができ、その間は報酬債務について履行遅滞の責任を負わないとした。損害賠償は実質的には報酬を減らして清算するものであり、清算が済まないうちに報酬だけ先に払わせるのは注文者に不利だからである。平成29年改正で、533条括弧書は同時履行の対象に債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含むと明記した。もっとも、欠陥が軽く報酬の残額に比べてわずかであるなど、同時履行を主張することが信義則に反するときは、全額を拒むことはできない。したがって、本肢は正しい。肢の瑕疵は、現行法の契約の内容に適合しないことにあたる。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
- 報酬の支払時期(633条):目的物の引渡しと同時。引渡しを要しなければ仕事の終了後
- 修補に代わる損害賠償(533条括弧書):報酬と同時履行。賠償を受けるまで報酬全額の支払を拒める(信義則に反する場合を除く)
- 建替えを要する重大な不適合:建替費用相当額の損害賠償を請求できる。建物でも解除できる(旧635条ただし書は削除)
- 不適合の通知期間(637条):知った時から1年以内。任意規定で、特約で延ばせる
- 注文者の任意解除(641条):完成前に限り、損害を賠償していつでも。可分で有益な完成部分は仕事の完成とみなし、割合的報酬(634条)
誤り。違うのは「報酬債権と相殺することはできない」の部分である。同一の請負契約から生じた修補に代わる損害賠償債権と報酬債権はともに金銭債権であり、注文者は相殺できる(最判昭53.9.21)。
請負人は仕事の完成に対して報酬を請求でき(632条)、仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、注文者は追完の請求のほか、債務不履行に基づく損害賠償を請求できる(559条・562条・415条1項)。この損害賠償債務と報酬債務は同一の双務契約から生じた対価関係にある債務として同時履行の関係に立つ(533条括弧書)。そして、相手方が同時履行の抗弁権を持つ債権を自働債権として相殺することは、相手方の抗弁権を一方的に奪うことになるので原則として許されない。しかし、同一の双務契約から生じた両債権がともに金銭債権であり、対当額で清算されるにすぎない場合には、相手方の抗弁権を害することにはならず、簡易な決済という相殺の趣旨にもかなう。最判昭53.9.21も、請負の目的物の瑕疵の修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし、報酬債権を受働債権とする相殺を認めている。したがって肢は誤っている。出題当時の瑕疵は、現在の契約不適合に当たるが、結論は変わらない。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
正しい。第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合の当事者双方の返還義務は、533条の類推適用により同時履行の関係に立つ(最判昭47.9.7)。
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(121条)、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。本肢では、A・B双方が代金の支払と宝石の引渡しを終えた後に、Bが第三者Cの詐欺を理由に売買契約を取り消している(相手方Aがその事実を知り又は知ることができたときに取り消せる。96条2項)から、AはBに代金100万円の返還債務を、BはAに宝石の返還債務を負う。この二つの返還債務は、一つの売買契約を巻き戻した結果として生じたもので、互いに対価的な関係にある。契約が有効に存続していれば双務契約上の債務として同時履行の関係に立つのに、巻き戻しの場面では一方だけが先に返還しなければならないとするのは公平に反する。判例も、売買契約が第三者の詐欺を理由に取り消された事案で、双方の返還義務は533条の類推適用により同時履行の関係に立つとした(最判昭47.9.7)。したがって肢は正しい。

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、詐欺・第三者の詐欺・未成年者の取消しによる相互の返還義務
- 立つ:請負の修補に代わる損害賠償義務と報酬支払義務(533条括弧書)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・質物の返還と被担保債務の弁済(弁済が先)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先)
誤り。違うのは「報酬債権と相殺することはできない」の部分である。同一の請負契約から生じた修補に代わる損害賠償債権と報酬債権はともに金銭債権であり、注文者は相殺できる(最判昭53.9.21)。
請負人は仕事の完成に対して報酬を請求でき(632条)、仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、注文者は追完の請求のほか、債務不履行に基づく損害賠償を請求できる(559条・562条・415条1項)。この損害賠償債務と報酬債務は同一の双務契約から生じた対価関係にある債務として同時履行の関係に立つ(533条括弧書)。そして、相手方が同時履行の抗弁権を持つ債権を自働債権として相殺することは、相手方の抗弁権を一方的に奪うことになるので原則として許されない。しかし、同一の双務契約から生じた両債権がともに金銭債権であり、対当額で清算されるにすぎない場合には、相手方の抗弁権を害することにはならず、簡易な決済という相殺の趣旨にもかなう。最判昭53.9.21も、請負の目的物の瑕疵の修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし、報酬債権を受働債権とする相殺を認めている。したがって肢は誤っている。出題当時の瑕疵は、現在の契約不適合に当たるが、結論は変わらない。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「同時履行の抗弁を主張することができない」の部分である。債務者は対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由を譲受人に対抗でき(468条1項)、同時履行の抗弁も主張できる。
債権が譲渡された場合、債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる(468条1項)。双務契約から生じた債権には、契約の成立と同時に相手方の同時履行の抗弁権(533条)が付いており、これは対抗要件具備時までに譲渡人との間ですでに生じていた事由にほかならない。債権譲渡は債権を同一性を保ったまま移す制度であるから、債権に付いた抗弁もそのまま譲受人に引き継がれる。したがって、債務者は譲受人からの履行の請求に対しても同時履行の抗弁を主張できる。譲渡の通知を受けた債務者が遅滞なく異議を述べなかったとしても、単なる沈黙に抗弁を失わせる規定はない。出題当時は、異議をとどめない承諾をすると抗弁を対抗できなくなる制度があったが、それは積極的な承諾を要件とするもので、通知に異議を述べなかっただけの本肢には当たらなかった。この制度は平成29年改正で廃止された。

債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
- 立つ:売買の所有権移転登記義務と代金支払義務
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)
- 立つ:債権が譲渡されても、債務者は譲受人に同時履行の抗弁を主張できる(468条1項)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先。622条の2第1項1号)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・譲渡担保の受戻しと被担保債務の弁済(弁済が先)
誤り。違うのは「同時履行の関係にない」の部分である。解除による相互の原状回復義務には533条が準用され、同時履行の関係に立つ(546条)。
契約が解除されると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う(545条1項本文)。売買契約が解除されれば、売主は受け取った代金を、買主は受け取った目的物を返さなければならない。これら双方の原状回復義務は、同じ契約を巻き戻すために生じる対価的な関係にある債務であるから、公平の観点から、一方だけが先に返すことを強いられないようにすべきである。そこで546条は、533条の規定を原状回復義務に準用すると定めている。したがって、両当事者の原状回復義務は同時履行の関係に立ち、一方は相手方が原状回復義務の履行を提供するまで自己の義務の履行を拒むことができる。判例は、契約が取り消された場合や無効の場合の相互の返還義務にも同じ考え方を当てはめている。本肢は同時履行の関係にないとしている点で誤りである。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
- 立つ:売買の所有権移転登記義務と代金支払義務
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)
- 立つ:債権が譲渡されても、債務者は譲受人に同時履行の抗弁を主張できる(468条1項)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先。622条の2第1項1号)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・譲渡担保の受戻しと被担保債務の弁済(弁済が先)
誤り。違うのは「同時履行の抗弁を主張することができない」の部分である。一度履行の提供があっても、その提供が継続されない限り、相手方は同時履行の抗弁権を失わない(最判昭34.5.14)。
売買の売主の引渡債務と買主の代金債務は、同時履行の関係に立つ(533条)。そこで、売主が一度現実の提供をしたことで、買主の同時履行の抗弁権が確定的に消えるかが問題となる。最判昭34.5.14は、双務契約の当事者の一方は、相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されない限り同時履行の抗弁権を失うものではないとした。同時履行の抗弁権は、自分の給付と引換えに相手方の給付を確保するための制度であるから、提供がやんだ後もなお相手方に先に履行させるのは公平に反するからである。もっとも、一度の提供によっても492条の効果は生じ、買主は受領遅滞の責任を負うので、これとは区別しなければならない。本肢では、提供から1週間後に売主が代金の支払を求めているが、その時点で提供が続けられていない以上、買主はワインの引渡しとの同時履行の抗弁を主張できる。

双務契約の当事者の一方は相手方の履行の提供があつても、その提供が継続されない限り同時履行の抗弁権を失うものでない
正しい。詐欺による取消しで生ずる双方の返還義務は、533条の類推適用により同時履行の関係にある(最判昭47.9.7)。
売買契約が詐欺を理由に取り消されると、契約は初めから無効であったものとみなされ(121条)、給付を受けた当事者は相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。売主は受け取った代金を、買主は目的物と登記を返さなければならない。533条は双務契約から生じた対立する債務についての規定であるが、判例(最判昭47.9.7)は、詐欺を理由に土地の売買契約が取り消された事案で、買主側の仮登記の抹消登記手続や所有権移転登記手続の義務と、売主側の受領金の返還義務とは、533条の類推適用により同時履行の関係にあるとした。双方の返還義務は取消しという同じ原因から生じ、一方だけが先に返さなければならないとすると、相手方の資力が悪化したときに先に返した側が回収できなくなるおそれがあり、当事者間の公平を害するからである。本肢は判例の内容どおりである。

原状に回復するため、被上告人は、上告人に対し、本件(一)の土地について右仮登記の抹消登記手続を、本件(二)の土地について上告人へ所有権移転登記手続をそれぞれなすべき義務があり、また、上告人は、被上告人に対し、右一〇〇万円の返還義務を負うものであるところ、上告人、被上告人の右各義務は、民法五三三条の類推適用により同時履行の関係にあると解すべき
- 立つ:土地の売買の所有権移転登記義務と代金支払義務
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、詐欺取消しによる相互の返還義務
- 立つ:有償寄託の返還義務と報酬支払義務、受取証書の交付と弁済
- 立たない:抵当権設定登記の抹消と被担保債務の弁済(弁済が先)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先)、造作買取代金の支払と建物の明渡し
誤り。違うのは「目的動産の引渡しを提供したことを請求原因として主張立証しなければならない」の部分である。売買代金請求権は売買契約の成立によって発生し(555条)、引渡しの提供は買主の同時履行の抗弁に対する再抗弁に位置づけられる。
555条は、売買は当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生ずると定める。売買代金請求権は、この合意、すなわち売買契約の締結によって発生するから、売主が代金を請求する訴訟の請求原因は売買契約の締結で足りる。目的物の引渡義務と代金支払義務とは同時履行の関係にあり(533条)、買主は売主が引渡しを提供するまで代金の支払を拒むことができるが、それは買主が同時履行の抗弁を主張したときにはじめて問題となる。そこで、売主が目的物の引渡しを提供したことは、買主の同時履行の抗弁に対する再抗弁として主張立証すれば足りる。代金請求のたびに売主に引渡しの提供まで主張立証させると、契約によって発生した権利を行使するのに余計な負担を課すことになるからである。本肢は引渡しの提供を請求原因としている点が誤りである。

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
| 訴訟 | 事実 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 保証債務履行請求 | 主たる債務者への催告 | 被告の催告の抗弁に対する再抗弁(催告の抗弁は権利抗弁) |
| 請負報酬請求 | 目的物の引渡し | 被告の同時履行の抗弁に対する再抗弁(仕事の完成は請求原因) |
| 売買代金請求 | 目的物の引渡しの提供 | 被告の同時履行の抗弁に対する再抗弁 |
| 貸金返還請求に対する相殺の抗弁 | 自働債権の目的物の引渡しの提供 | 相殺の抗弁の要件(同時履行の抗弁権が付いた自働債権では相殺できない) |
正しい。Yの陳述はXY間の売買を認めたうえで同時履行の抗弁権(民法533条)を主張するもので、代金支払請求権の行使を阻止する。したがって抗弁となり得る。
Yの陳述は、まずXから買ったとしてXY間の売買契約という請求原因事実を認め、そのうえで絵画の引渡しを受けていないと述べるものであり、請求原因事実と両立する。売買は双務契約であり、買主の代金支払債務と売主の目的物引渡債務は対価的な関係に立つから、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる(民法533条)。Yはこの同時履行の抗弁権を行使することで、Xの代金支払請求権の行使を一時的に阻止することができ、これは権利の行使を阻止する抗弁に当たる。抗弁が認められれば、請求棄却ではなく、絵画の引渡しと引換えに代金の支払を命じる引換給付判決がされる。同時履行の抗弁権は権利抗弁なので、Yがこれを行使する意思を示すことが必要であり、イの陳述はその意思を含むと評価できる。イは抗弁となり得る。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| Yの陳述 | 請求原因と | 性質 |
|---|---|---|
| Aから買い、代金もAに払った | 両立しない | 否認(抗弁にならない) |
| Xから買ったが引渡しを受けていない | 両立する | 同時履行の抗弁(権利阻止) |
| XからBが買い、Bから買った | 両立しない | 否認(抗弁にならない) |
| Xから買ったが代金全額を払った | 両立する | 弁済の抗弁(権利消滅) |
| Xから贈与された | 両立しない | 否認(抗弁にならない) |
正しい。Yの陳述はXY間の売買を認めたうえで同時履行の抗弁権(民法533条)を主張するもので、代金支払請求権の行使を阻止する。したがって抗弁となり得る。
Yの陳述は、まずXから買ったとしてXY間の売買契約という請求原因事実を認め、そのうえで絵画の引渡しを受けていないと述べるものであり、請求原因事実と両立する。売買は双務契約であり、買主の代金支払債務と売主の目的物引渡債務は対価的な関係に立つから、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる(民法533条)。Yはこの同時履行の抗弁権を行使することで、Xの代金支払請求権の行使を一時的に阻止することができ、これは権利の行使を阻止する抗弁に当たる。抗弁が認められれば、請求棄却ではなく、絵画の引渡しと引換えに代金の支払を命じる引換給付判決がされる。同時履行の抗弁権は権利抗弁なので、Yがこれを行使する意思を示すことが必要であり、イの陳述はその意思を含むと評価できる。イは抗弁となり得る。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| Yの陳述 | 請求原因と | 性質 |
|---|---|---|
| Aから買い、代金もAに払った | 両立しない | 否認(抗弁にならない) |
| Xから買ったが引渡しを受けていない | 両立する | 同時履行の抗弁(権利阻止) |
| XからBが買い、Bから買った | 両立しない | 否認(抗弁にならない) |
| Xから買ったが代金全額を払った | 両立する | 弁済の抗弁(権利消滅) |
| Xから贈与された | 両立しない | 否認(抗弁にならない) |
正しい。留置権は物を留置する権利であるから拒めるのは物の引渡しに限られる(295条1項)が、同時履行の抗弁権は自己の債務の履行一般を拒める(533条)。
295条1項本文は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。留置権の効力は留置している物の引渡しを拒むという形でしか現れないから、留置権によって拒める給付は物の引渡しに限られる。これに対し、533条本文は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定める。拒める対象は自己が負う債務そのものであるから、代金の支払、労務の提供、登記手続への協力など、物の引渡し以外の給付も含まれる。留置権は物を押さえることで弁済を促す担保物権であり、同時履行の抗弁権は双務契約の両債務の結び付きから公平のために認められる抗弁である、という性質の違いが表れているのである。したがって、肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。/双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 留置権 | 同時履行の抗弁権 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 物権(295条) | 双務契約の効力(533条) |
| 拒める給付 | 物の引渡しだけ | 自己の債務一般 |
| 主張できる相手 | 第三者にも | 契約の相手方(債権譲受人・代位債権者を含む) |
| 占有の喪失 | 消滅する(302条) | 影響を受けない |
| 代担保による消滅請求 | できる(301条) | できない |
| 訴訟での扱い | 引換給付判決 | 引換給付判決 |
誤り。違うのは「原則として共に相殺することができないが、双方の債権額が等しい場合には例外として相殺をすることができる」の部分である。判例は、請負代金債権と修補に代わる損害賠償債権は、金額に差があっても対当額で相殺できるとする(最判昭53.9.21)。
同時履行の抗弁権が付いた債権を自働債権とする相殺は、相手方の抗弁権を一方的に奪うことになるため、原則として許されない。しかし最判昭53.9.21は、請負代金債権と目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権は同時履行の関係にあるとはいえ、相互に現実の履行をさせなければならない特別の利益があるとは認められず、相殺を認めても相手方に抗弁権の喪失による不利益を与えないとし、むしろ相殺による清算が当事者双方の便宜と公平にかない法律関係を簡明にするとして、対当額による相殺を認めた。そして、この理は自働債権と受働債権の金額に差異があることによって異ならないとした。相殺はもともと対当額で効力を生じるから(505条1項)、額が等しいことを要件にする理由はない。したがって、額が等しい場合に限って例外的に相殺できるとする肢は誤りである。現行法では、履行の追完に代わる損害賠償債務と報酬債権は533条括弧書により同時履行の関係に立ち、この判例の考え方は今も当てはまる。

この理は、相殺に供される自働債権と受働債権の金額に差異があることにより異なるものではない。
正しい。留置権は物を留置する権利であるから拒めるのは物の引渡しに限られる(295条1項)が、同時履行の抗弁権は自己の債務の履行一般を拒める(533条)。
295条1項本文は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができると定める。留置権の効力は留置している物の引渡しを拒むという形でしか現れないから、留置権によって拒める給付は物の引渡しに限られる。これに対し、533条本文は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定める。拒める対象は自己が負う債務そのものであるから、代金の支払、労務の提供、登記手続への協力など、物の引渡し以外の給付も含まれる。留置権は物を押さえることで弁済を促す担保物権であり、同時履行の抗弁権は双務契約の両債務の結び付きから公平のために認められる抗弁である、という性質の違いが表れているのである。したがって、肢は正しい。

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。/双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 留置権 | 同時履行の抗弁権 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 物権(295条) | 双務契約の効力(533条) |
| 拒める給付 | 物の引渡しだけ | 自己の債務一般 |
| 主張できる相手 | 第三者にも | 契約の相手方(債権譲受人・代位債権者を含む) |
| 占有の喪失 | 消滅する(302条) | 影響を受けない |
| 代担保による消滅請求 | できる(301条) | できない |
| 訴訟での扱い | 引換給付判決 | 引換給付判決 |
誤り。違うのは「原則として共に相殺することができないが、双方の債権額が等しい場合には例外として相殺をすることができる」の部分である。判例は、請負代金債権と修補に代わる損害賠償債権は、金額に差があっても対当額で相殺できるとする(最判昭53.9.21)。
同時履行の抗弁権が付いた債権を自働債権とする相殺は、相手方の抗弁権を一方的に奪うことになるため、原則として許されない。しかし最判昭53.9.21は、請負代金債権と目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権は同時履行の関係にあるとはいえ、相互に現実の履行をさせなければならない特別の利益があるとは認められず、相殺を認めても相手方に抗弁権の喪失による不利益を与えないとし、むしろ相殺による清算が当事者双方の便宜と公平にかない法律関係を簡明にするとして、対当額による相殺を認めた。そして、この理は自働債権と受働債権の金額に差異があることによって異ならないとした。相殺はもともと対当額で効力を生じるから(505条1項)、額が等しいことを要件にする理由はない。したがって、額が等しい場合に限って例外的に相殺できるとする肢は誤りである。現行法では、履行の追完に代わる損害賠償債務と報酬債権は533条括弧書により同時履行の関係に立ち、この判例の考え方は今も当てはまる。

この理は、相殺に供される自働債権と受働債権の金額に差異があることにより異なるものではない。
正しい。目的物が契約の内容に適合しないとき、注文者は修補を請求でき(559条・562条1項)、修補が提供されるまで同時履行の抗弁により報酬の支払を拒むことができる(533条)。
559条は売買の規定を有償契約に準用し、請負の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、注文者は562条1項により目的物の修補による履行の追完を請求することができる。他方、633条は、報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならないと定め、報酬の支払と契約に適合した目的物の引渡しは対価の関係にある。そのため、目的物に不適合があり注文者が修補を請求したときは、請負人がまだ契約に適合した給付をしていない以上、注文者は533条の同時履行の抗弁により、修補又はそれに代わる損害賠償の提供があるまで報酬の支払を拒むことができる。報酬は完全な仕事の対価であり、不完全な給付のまま報酬だけを先に払わせるのは公平に反するからである。したがって、本肢は正しい。出題当時の旧634条は瑕疵修補請求を定め、同時履行の関係も明記しており、結論は同じである。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「仕事の目的物の引渡しを要するときはこれを引き渡したこと」の部分である。633条は報酬と引渡しの同時履行を定めたものにすぎず、引渡しは注文者の同時履行の抗弁に対する再抗弁として主張立証すれば足りる。
632条は、請負は仕事の完成とその結果に対する報酬の支払を約することで効力を生ずると定め、633条は、報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならないとする。報酬を請求する請負人は、請負契約の締結と、報酬は仕事の結果に対して支払われるものであるから仕事の完成を主張立証しなければならない。他方、633条は、売買の代金と目的物の引渡しの関係と同じく、報酬の支払と目的物の引渡しが同時履行の関係にあることを定めたものと解されている。そのため、注文者が引渡しまで支払を拒むという同時履行の抗弁を主張したときに、請負人が再抗弁として引渡しをしたことを主張立証すればよく、請求原因として引渡しまで主張立証する必要はない。したがって、本肢は誤りである。

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
| 請求 | 請求原因 | 請求原因にならないもの |
|---|---|---|
| 売買代金の支払 | 売買契約の締結 | 履行期の定め(買主の抗弁) |
| 売買の目的物の引渡し | 売買契約の締結 | 売主の所有(他人物売買も有効) |
| 賃貸借終了による返還 | 賃貸借契約の締結・引渡し・終了原因事実 | ― |
| 委任の費用の前払 | 委任契約の締結・費用を要すること | 報酬の定め |
| 請負の報酬の支払 | 請負契約の締結・仕事の完成 | 目的物の引渡し(同時履行の抗弁への再抗弁) |
誤り。違うのは「引渡債務の履行を提供しなくても」相殺できるとする部分である。自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付着しているときは、相殺することができない。
505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときは対当額で相殺できるとしつつ、ただし書で債務の性質がこれを許さないときは相殺できないと定める。判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付着している場合には、相殺は許されないとした。相殺は、自働債権を相手方に強制的に行使するのと同じ効果を持つから、これを認めると、相手方は自己の反対給付を受けないまま債務を消滅させられ、同時履行の抗弁権を一方的に奪われてしまうからである。本肢では、Aの売買代金債権に対し、買主Bは引渡しを受けるまで代金の支払を拒める同時履行の抗弁権(533条)を有しているから、Aは引渡債務の履行を提供しない限り、代金債権を自働債権として賃料債務と相殺することはできない。本肢は誤りである。なお、受働債権に抗弁権が付着していても、債務者自らがそれを放棄して相殺することはできる。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 要件(505条1項):同種の目的を有する債務の対立・双方の債務が弁済期にある・債務の性質が許す(自働債権に同時履行の抗弁権が付着していれば不可)
- 方法と効果(506条):一方の意思表示で、相殺適状の時にさかのぼって消滅。遡及効は相殺前の有効な解除に影響しない
- 時効消滅した債権(508条):消滅前に相殺適状なら相殺できる。時効にかかった他人の債権を譲り受けての相殺は不可
- 相殺契約:合意によるので法定相殺の要件を満たさなくてもできる
誤り。違うのは「甲動産の引渡しの履行期が到来していること及びAがBに甲動産を引き渡していないこと」を主張しなければならないとする部分である。買主は、引渡しがあるまで代金の支払を拒むとの権利主張をすれば足りる。
533条本文は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができると定め、ただし書で、相手方の債務が弁済期にないときはこの限りでないとする。売買契約の締結は売主が請求原因で主張するから、それによって同時履行の抗弁権の存在はすでに基礎づけられており、買主は抗弁として、売主が目的物を引き渡すまで代金の支払を拒むという権利主張をすれば足りる。相手方の債務が弁済期にないことは同条ただし書の事由であり、それを主張して抗弁の効果を妨げるのは売主の側である(再抗弁)。また、売主が引き渡していないことは消極的事実であり、引き渡したこと(履行)を売主が再抗弁として主張立証すべきであるから、買主が引渡しのないことを主張する必要はない。本肢は誤りである。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 段階 | 主張する者 | 要件事実 |
|---|---|---|
| 請求原因 | 売主 | 売買契約の締結。これにより同時履行の抗弁権の存在も基礎づけられる |
| 抗弁 | 買主 | 目的物の引渡しがあるまで代金の支払を拒むとの権利主張 |
| 再抗弁 | 売主 | 代金支払を先履行とする合意(引渡債務の弁済期未到来)、引渡債務の履行(提供の継続を含む) |
| 判決 | 裁判所 | 抗弁が認められれば引換給付判決 |
誤り。違うのは「再抗弁にならない」の部分である。代金支払の10日後に引き渡す旨の合意は、売主の引渡債務が弁済期にないこと(533条ただし書)を基礎づける先履行の合意であり、再抗弁となる。
533条ただし書は、相手方の債務が弁済期にないときは同時履行の抗弁権を行使できないと定める。AB間で代金支払の10日後に甲動産を引き渡す旨を合意していれば、買主Bの代金債務が先に履行期を迎え、売主Aの引渡債務は代金支払の時点ではまだ弁済期にない。つまり、この合意は代金の支払を先履行とする合意であり、Bの同時履行の抗弁の効果の発生を障害する事実である。そのため、Aは、Bの同時履行の抗弁に対して、この合意を再抗弁として主張立証することができ、これが認められれば、Aは引換給付ではなく無条件の代金支払を命じる判決を得られる。本肢は再抗弁にならないとしている点で誤りである。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
| 段階 | 主張する者 | 要件事実 |
|---|---|---|
| 請求原因 | 売主 | 売買契約の締結。これにより同時履行の抗弁権の存在も基礎づけられる |
| 抗弁 | 買主 | 目的物の引渡しがあるまで代金の支払を拒むとの権利主張 |
| 再抗弁 | 売主 | 代金支払を先履行とする合意(引渡債務の弁済期未到来)、引渡債務の履行(提供の継続を含む) |
| 判決 | 裁判所 | 抗弁が認められれば引換給付判決 |
正しい。不適合を理由とする損害賠償債務は債務の履行に代わる損害賠償の債務に当たり、買主は残代金の支払との同時履行を主張できる(533条)。
533条は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができると定める。現行法では、売主の契約不適合責任は契約の内容に適合した物を引き渡す債務の不履行責任と位置づけられ、買主の損害賠償請求は564条・415条による。この損害賠償債務は本来の引渡債務が姿を変えたものであり、代金債務と対価的な牽連関係を保つから、買主はその賠償の提供を受けるまで残代金の支払を拒むことができる。代金の一部を支払った後に不適合が明らかになった場合も、残代金と損害賠償を引換えにすることで当事者の公平が保たれる。したがって本肢は正しい。出題当時は、瑕疵担保による損害賠償と代金の支払について旧571条が533条を準用して同時履行の抗弁を認めており、結論は変わらない。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。




























