相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
この条文の過去問 9問
誤り。違うのは「Bは、登記を備えないで、甲土地の所有権の取得を第三者Dに対抗することができる」の部分である。
相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条)。Aの唯一の相続人Cは、Bに対して所有権移転登記をすべき売主の地位をそのまま引き継ぐので、177条の第三者に当たらず、BはCに対しては登記なしに所有権を主張できる。しかし、そのCが甲土地をDに売却すると、Aの地位にあるCを起点としてBとDに二重に譲渡されたのと同じ関係が生じる。Dは同じ売主から相容れない物権を取得した者として、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たる。したがって、BとDの優劣は登記の先後で決まり、登記を備えていないBはDに所有権の取得を対抗できない。相続人本人と相続人から譲り受けた者とで扱いが分かれるのは、後者が当事者の地位を承継していない独立の取得者だからである。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
誤り。違うのは「Bは、登記を備えないで、甲土地の所有権の取得を第三者Dに対抗することができる」の部分である。
相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条)。Aの唯一の相続人Cは、Bに対して所有権移転登記をすべき売主の地位をそのまま引き継ぐので、177条の第三者に当たらず、BはCに対しては登記なしに所有権を主張できる。しかし、そのCが甲土地をDに売却すると、Aの地位にあるCを起点としてBとDに二重に譲渡されたのと同じ関係が生じる。Dは同じ売主から相容れない物権を取得した者として、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たる。したがって、BとDの優劣は登記の先後で決まり、登記を備えていないBはDに所有権の取得を対抗できない。相続人本人と相続人から譲り受けた者とで扱いが分かれるのは、後者が当事者の地位を承継していない独立の取得者だからである。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
誤り。違うのは「相続財産に属する債務を承継しない」の部分である。割合で包括遺贈を受けた者は相続人と同一の権利義務を有し、その割合で債務も承継する(990条)。
遺言者は、包括又は特定の名義で財産の全部又は一部を処分することができ(964条)、遺産の全部や一定の割合を示してする遺贈を包括遺贈という。相続財産の一部の割合についての遺贈は、目的物を特定せず割合で引き継がせるものなので、包括遺贈に当たる。990条は、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有すると定めるので、包括受遺者には相続人と同じく被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐ規律(896条)が及び、指定された割合に応じて積極財産だけでなく相続債務も当然に引き継ぐ。財産の割合を受け取る以上、それに見合う債務も負うのが公平だからである。債務を引き継ぎたくなければ、包括遺贈があったことを知った時から3か月以内に放棄することになる。したがって、債務を承継しないとする肢は誤っている。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
正しい。墳墓などの祭祀財産は相続財産に含まれず、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するから(897条)、被相続人の指定がなくても遺産分割の対象とならない。
897条1項は、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、896条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、ただし被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときはその者が承継すると定め、同条2項は、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めるとする。祭祀財産は先祖をまつるための特別な財産であり、相続人の間で相続分に応じて分けることになじまないから、相続財産から外して一人の主宰者に引き継がせることにしたのである。したがって、祭祀財産は相続人の共有にならず、遺産分割の対象にもならない。主宰者を決める順序は、被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の決定であり、いずれも共同相続人の協議による遺産分割とは別の手続である。被相続人が主宰者を指定していなかった場合も、慣習や家庭裁判所の判断で主宰者が決まるだけであり、墳墓が遺産分割の対象に変わるわけではない。相続人以外の者が主宰者となることもできる。

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
- 祭祀財産(897条):系譜・祭具・墳墓は祭祀を主宰すべき者が承継し、遺産分割に入らない
- 当然に分割される:貸金債権などの可分債権、金銭債務、相続開始前の延滞賃料債務(最判昭和34年6月19日)
- 遺産分割の対象:預貯金債権(最大決平成28年12月19日)、相続開始時の金銭
- 各相続人が全部を負う:賃借人の地位を承継した後の賃料債務など不可分債務
- 慰謝料請求権:被害者が死亡すれば当然に相続される(最大判昭和42年11月1日)
正しい。訴訟物が一身専属権で承継する者がいなければ、原告の死亡によって訴訟は中断せずに当然に終了する(最大判昭42.5.24)。
124条1項1号の中断は、死亡した当事者の地位を相続人などが受け継ぐことを前提に、受継までの間手続を止めて承継人の手続保障を図る制度である。訴訟物である権利が一身専属的で相続の対象とならず(民法896条ただし書)、訴訟承継を認める特別の規定もない場合には、受け継ぐべき者がそもそも存在しないから、原告の死亡によって対立する当事者の一方が欠け、訴訟は当然に終了する。最大判昭42.5.24は、生活保護を受ける権利は被保護者の一身に専属する権利であって相続の対象とならないから、被保護者の死亡によって訴訟は終了し、相続人が承継する余地はないとした。婚姻無効確認訴訟の原告が死亡した場合についても、最判平元.10.13は、その請求権は一身専属的で相続されず、訴訟は原告の死亡と同時に終了するとしている。肢は判例どおりである。

次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。一 当事者の死亡 相続人、相続財産の管理人、相続財産の清算人その他法令により訴訟を続行すべき者
- 当事者の死亡(1号):相続人などが受け継ぐ。訴訟代理人がある間は中断しない(2項)
- 口頭弁論終結後の死亡:中断するが、判決の言渡しは中断中でもできる(132条1項)
- 一身専属権が訴訟物:承継する者がいないので中断せず訴訟は終了する
- 独立当事者参加・必要的共同訴訟:一人の中断が全員に及ぶ(47条4項・40条3項)
- 訴訟担当の被担当者の死亡:当事者の死亡ではないので中断しない
- 訴訟代理人の死亡:中断事由ではない
誤り。違うのは「Aに対して甲土地の所有権を主張することができる」の部分である。仮装譲受人の相続人は一般承継人であり、94条2項の第三者に当たらない。
94条2項が善意の第三者を保護するのは、虚偽の外観を信頼して新たに取引関係に入った者の取引の安全を守るためである。そこで判例は、同項の第三者とは、虚偽の意思表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的について法律上の利害関係を持つに至った者をいうとしている。相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継し(896条)、被相続人の地位をそのまま引き継ぐにすぎない。本肢のCは仮装譲受人Bの単独相続人であるから、虚偽の外観を新たに信頼して利害関係に入った者ではなく、Bと同じ地位に立つ一般承継人として第三者から外れる。相続を原因とする移転登記をしていても、Bの登記名義を引き継いだにとどまる。したがって、AはCに仮装譲渡の無効を主張でき、CはAに甲土地の所有権を主張できない。

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
- 仮装譲受人から目的物を譲り受けた者・抵当権の設定を受けた者:当たる
- 目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者:当たる(最判昭48.6.28)
- 仮装譲受人の相続人:一般承継人なので当たらない
- 借地上の建物が仮装譲渡された場合の土地の賃貸人:当たらない(最判昭38.11.28)
- 善意の第三者からの悪意の転得者:善意の第三者の地位を承継し、無効を対抗されない(大判大3.7.9)
誤り。違うのは「相続人は、これを取り消すことができない」の部分である。詐欺によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者の承継人も取り消すことができ(120条2項)、相続人はこの承継人に当たる。
120条2項は、錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができると定める。896条は、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めており、被相続人が持っていた詐欺による取消権も、財産上の権利として相続人に承継される。取消権は、だまされて不利な契約をした表意者を保護するためのものであるが、表意者が取り消さないまま死亡した場合に取消しができなくなるとすると、詐欺をした相手方が不当に利益を得ることになり、相続人は不利な契約の効果だけを引き継ぐことになって不合理である。そのため、相続人は120条2項の承継人として売買契約を取り消すことができる。もっとも、取消権は追認をすることができる時から5年、行為の時から20年で時効によって消滅する(126条)。したがって、本肢は誤りである。

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 使用借権:借主の死亡で使用貸借が終了し、相続されない(597条3項)
- 定期贈与:贈与者又は受贈者の死亡で効力を失う(552条)
- 占有権:事実的支配がなくても当然に相続人に移る(最判昭44.10.30)
- 祭祀財産:慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、相続財産とは別に扱う(897条)
- 取消権などの財産上の権利:相続人が承継する(896条・120条)
正しい。買主の相続人は包括承継人であり、94条2項の第三者に当たらないので、売主は善意の相続人に対しても虚偽表示の無効を主張できる。
94条1項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とすると定め、同条2項は、その無効は善意の第三者に対抗することができないと定める。ここでいう第三者とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者であって、虚偽表示の外形を基礎として新たに法律上の利害関係を持つに至った者をいう。94条2項は、虚偽の外観を信頼して新たに取引関係に入った者を保護する規定だからである。相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条本文)包括承継人であり、被相続人である買主と同じ立場に立つにすぎず、虚偽の外観を信頼して新たな利害関係を持った者ではない。したがって、買主の相続人が偽装の事実を知らなかったとしても94条2項の第三者には当たらず、売主はこの者に意思表示の無効を主張できる。本肢は正しい。

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
正しい。判例は、遺贈も不動産の二重譲渡等と同様に登記をもって物権変動の対抗要件とするとした(最判昭39.3.6)。受遺者Xは、相続人Bからの譲受人Yに登記なくして対抗できない。
判例(最判昭39.3.6)は、遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきであるとした。遺贈は遺言者の意思表示による物権変動であり、相続人は被相続人の地位を包括承継するから、遺言者から受遺者への移転と、相続人から第三者への譲渡とは、二重譲渡と同じ関係に立つ。意思表示による物権変動である点で売買と変わらない以上、177条の原則どおり登記の先後で優劣を決めるのが取引の安全にかなうからである。受遺者が遺贈の事実を知らず、登記を備える機会がなかったとしても、第三者からはその事情は分からないから、結論は変わらない。したがって、受遺者Xは、相続人Bから甲を買い受けて登記を備えたYに対し、所有権の取得を対抗できない。現行法でも遺贈は899条の2ではなく177条の問題として扱われる。本肢は正しい。

遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもつて物権変動の対抗要件とするものと解すべきである。
| 場面 | 登記なしに対抗できるか |
|---|---|
| 自己の法定相続分(共同相続人の単独登記からの譲受人に対し) | できる(最判昭38.2.22) |
| 遺産分割・特定財産承継遺言で法定相続分を超えて取得した部分 | できない(899条の2第1項)。出題当時、相続させる遺言はできるとされた |
| 遺贈 | できない(177条、最判昭39.3.6) |
| 被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人・差押債権者 | できない(相続人は被相続人と同一視され対抗関係) |
| 相続放棄 | できる(放棄は絶対的効力) |








