賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
この条文の過去問 6問
誤り。違うのは「Bが甲の引渡しを受けるまで、契約の解除をすることができる」の部分である。借用物の受取り前の解除は使用貸借の規定(593条の2)であり、賃貸借には準用されていない(622条)。
書面によらない契約について、目的物を受け取る前なら貸主が解除できるとするのは、使用貸借についての593条の2である。同条は、貸主は借主が借用物を受け取るまで契約の解除をすることができ、ただし書面による使用貸借についてはこの限りでないと定める。使用貸借は無償で物を貸す契約なので、軽い気持ちで貸すと約束した貸主を守る必要があり、書面にしたときは貸す意思がはっきりしているので解除を認めないのである。これに対し賃貸借は、賃料を対価とする有償の契約であり(601条)、貸主がただで負担を負う場面ではないので、こうした保護は要らない。そのため賃貸借には593条の2にあたる規定がなく、使用貸借の規定を賃貸借に準用する622条も、597条1項、599条1項・2項、600条を挙げるだけで593条の2を準用していない。したがって、書面によらない賃貸借でも、Aは甲を引き渡す前であることを理由に解除することはできない。

第五百九十七条第一項、第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百条の規定は、賃貸借について準用する。
誤り。違うのは「賃借人に重大な過失がない限り、債務不履行による損害賠償の請求をすることができない」の部分である。失火責任法は709条の不法行為責任についての法律であり、債務不履行責任には適用されない(最判昭30.3.25)。
失火責任法は、民法709条の規定は失火の場合には適用せず、ただし失火者に重大な過失があったときはこの限りでないと定める。木造家屋が密集する事情の下で、軽い過失で火を出した者に際限のない賠償を負わせるのは酷であるとして、不法行為の要件を重大な過失に引き上げたもので、その対象は文言どおり709条の不法行為責任に限られる。これに対し賃借人は、賃貸借契約に基づいて賃借物を保管し、契約が終わったときに返す義務を負う(601条・621条)。賃借人の失火で賃借物が滅失して返せなくなれば、契約上の債務の不履行であり、賃貸人は415条1項によって損害賠償を請求できる。判例も、失火責任法は債務不履行による損害賠償には適用されないとした(最判昭30.3.25)。契約の当事者の間では、責任が不特定多数に広がるおそれがなく、同法の趣旨が当てはまらないからである。したがって、賃借人に重大な過失がなくても、責めに帰すべき事由があれば損害賠償責任を負う。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
| 場面 | 求められる主観 | 条文 |
|---|---|---|
| 代理権の濫用 | 相手方が知り、又は知ることができた(過失で足りる) | 107条 |
| 預貯金債権の譲渡制限 | 譲受人等の悪意又は重大な過失。差押債権者には対抗できない | 466条の5 |
| 相殺禁止の意思表示 | 第三者の悪意又は重大な過失 | 505条2項 |
| 非債弁済 | 給付者が債務の不存在を知っていたこと(悪意だけ) | 705条 |
| 失火責任法 | 失火者の重大な過失。不法行為にだけ適用され、債務不履行には及ばない | 失火責任法・415条 |
誤り。違うのは「書面でしなければ,その効力を生じない」の部分である。賃貸借は当事者の合意だけで効力を生じる諾成・不要式の契約である(601条)。
601条は、賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずると定める。賃貸借は当事者の意思表示が合致するだけで成立する契約であり、書面の作成などの方式は要らない。契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き書面などの方式を要しないのが原則であり(522条2項)、民法で書面が効力の要件とされているのは、軽はずみに重い債務を負うことを防ぐ必要がある保証契約(446条2項)などの例外に限られる。賃貸借にそのような規定はないから、口頭の合意だけでも有効に成立する。借地借家法には定期借地権など書面を求める規定があるが、同法は建物の所有を目的とする土地の賃借権などに適用されるものであり、資材置場とするための本問の賃貸借には適用されない。したがって本肢は誤りである。

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
- 成立(601条):諾成・不要式の契約。書面は要らない
- 存続期間(604条):50年を超えられない(出題当時は20年)。更新後も50年まで
- 期間の定めなし(617条1項):いつでも解約申入れ。土地1年・建物3か月・動産1日の経過で終了
- 解約権の留保(618条):期間を定めても解約権を留保すれば617条を準用
- 黙示の更新(619条1項):使用継続を賃貸人が知りながら異議を述べなければ同一条件で更新と推定。期間の定めのない賃貸借になる
正しい。賃貸借は物を使用収益させる契約で所有権は移転しないが、消費貸借は借主が受け取った物を消費して同種の物を返す契約なので、所有権は借主に移転する。
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方が賃料を支払い、引渡しを受けた物を契約終了時に返還することを約する契約である(601条)。賃借人が得るのは目的物を使用収益する権利にとどまり、借りた物そのものを返さなければならないので、所有権は賃貸人に残る。これに対し消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して、相手方から金銭その他の物を受け取る契約である(587条)。借主が返すのは受け取った物そのものではなく同種・同等・同量の別の物であり、受け取った物を消費することが契約の内容として予定されている。消費するには処分の権限が必要であるから、目的物の所有権は引渡しによって借主に移転する。本肢はこの違いを正しく述べている。

消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
| 項目 | 賃貸借 | 消費貸借 |
|---|---|---|
| 目的物の所有権 | 移転しない(使用収益させる) | 借主に移転する(同種・同等・同量の物を返す) |
| 成立 | 諾成契約(601条) | 要物契約(587条)。書面でするなら諾成(587条の2) |
| 期間・返還時期の定めがない場合 | 各当事者はいつでも解約の申入れ。土地1年・建物3か月・動産1日で終了(617条1項) | 貸主は相当の期間を定めて催告(591条1項)。借主はいつでも返還できる(591条2項) |
| 賃料・利息の支払時期 | 614条は任意規定 | 合意で定める(利息は特約がなければ請求できない。589条1項) |
誤り。違うのは「その合意は無効である」の部分である。書面でする消費貸借は、引き渡す約束と返還の約束だけで効力を生じる(587条の2第1項)。
賃貸借は、601条が「約することによって、その効力を生ずる」と定めるとおり、合意だけで成立する諾成契約であり、本肢の前段は正しい。消費貸借は、587条により、借主が金銭その他の物を受け取ることによって効力を生じる要物契約とされている。しかし587条の2第1項は、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約することによって効力を生ずると定め、諾成的な消費貸借を認めている。電磁的記録でした場合も書面によるものとみなされる(同条4項)。したがって、引渡しを約する合意が要物契約であることを理由に一律に無効となるわけではない。出題当時は明文がなかったが、契約自由の原則から諾成的消費貸借も有効と解されていたので、本肢は当時も誤りであった。

前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
| 項目 | 賃貸借 | 消費貸借 |
|---|---|---|
| 目的物の所有権 | 移転しない(使用収益させる) | 借主に移転する(同種・同等・同量の物を返す) |
| 成立 | 諾成契約(601条) | 要物契約(587条)。書面でするなら諾成(587条の2) |
| 期間・返還時期の定めがない場合 | 各当事者はいつでも解約の申入れ。土地1年・建物3か月・動産1日で終了(617条1項) | 貸主は相当の期間を定めて催告(591条1項)。借主はいつでも返還できる(591条2項) |
| 賃料・利息の支払時期 | 614条は任意規定 | 合意で定める(利息は特約がなければ請求できない。589条1項) |
誤り。違うのは「「本権」とは物権であるから」の部分である。本権は物の占有を正当化する権利であり物権に限られず、対抗要件を備えた不動産賃借権に基づいて返還を請求できる(605条の4)。
本権とは、物の占有を適法なものとする法律上の権利をいい、所有権や地上権のような物権に限られない。賃借権は、賃貸人に対して目的物を使用収益させるよう求める債権であるが、その内容は目的物を占有して使用収益することにあるから、物の占有を正当化する権利として本権に当たる。605条の4は、不動産の賃借人は対抗要件を備えた場合において、その不動産を第三者が占有しているときはその第三者に対する返還を請求できると定めている。出題当時は明文がなかったが、判例は、第三者に対抗できる賃借権を有する者は、その土地を占有する第三者に対して直接に建物の収去・土地の明渡しを請求できるとしており(最判昭28.12.18)、平成29年改正でこれが明文化された。本肢は本権を物権に限っている点で誤りである。

不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求 二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
- 所有権:返還請求できる(物権的請求権)
- 地上権:土地の所有者に対しても返還請求できる
- 対抗要件を備えた不動産賃借権:占有する第三者に返還請求できる(605条の4)
- 留置権:占有を失えば消滅するので返還請求できない(302条)。占有回収の訴えによる
- 一般先取特権:占有する権利を含まないので返還請求できない
- 占有の訴えと本権の訴え:互いに妨げない(202条1項)



