1相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
この条文の過去問 8問
正しい。919条1項により、相続の承認及び放棄は、熟慮期間内であっても撤回することができない。
919条1項は、相続の承認及び放棄は、915条1項の期間内でも撤回することができないと定める。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間が残っていても、いったん放棄した以上、自由に翻すことはできない。放棄が受理されると、放棄した者はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされ(939条)、他の共同相続人や次順位の相続人、相続債権者などの立場がこれを前提に定まる。撤回を許すと相続人の範囲が後から動き、これらの者の立場が不安定になるからである。もっとも、撤回できないことと取消しができないことは別の問題であり、同条2項は総則・親族編による取消し(制限行為能力・詐欺・強迫など)を妨げないとしている。本肢は撤回の可否を問うので、919条1項のとおり撤回はできない。

相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
| できるか | 方法・期間 | |
|---|---|---|
| 撤回 | できない(熟慮期間内でも。1項) | — |
| 総則・親族編による取消し | できる(制限行為能力・詐欺・強迫など。2項) | 家庭裁判所に申述(4項)。追認できる時から6か月、承認・放棄の時から10年(3項) |
正しい。919条1項により、相続の承認及び放棄は、熟慮期間内であっても撤回することができない。
919条1項は、相続の承認及び放棄は、915条1項の期間内でも撤回することができないと定める。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間が残っていても、いったん放棄した以上、自由に翻すことはできない。放棄が受理されると、放棄した者はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされ(939条)、他の共同相続人や次順位の相続人、相続債権者などの立場がこれを前提に定まる。撤回を許すと相続人の範囲が後から動き、これらの者の立場が不安定になるからである。もっとも、撤回できないことと取消しができないことは別の問題であり、同条2項は総則・親族編による取消し(制限行為能力・詐欺・強迫など)を妨げないとしている。本肢は撤回の可否を問うので、919条1項のとおり撤回はできない。

相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
| できるか | 方法・期間 | |
|---|---|---|
| 撤回 | できない(熟慮期間内でも。1項) | — |
| 総則・親族編による取消し | できる(制限行為能力・詐欺・強迫など。2項) | 家庭裁判所に申述(4項)。追認できる時から6か月、承認・放棄の時から10年(3項) |
正しい。相続人が未成年者であるときは、熟慮期間は法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算する(917条)。
915条1項本文は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に単純承認、限定承認又は放棄をしなければならないと定める。そして917条は、相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、915条1項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算すると定めている。承認や放棄は相続人の財産を大きく左右する判断であり、未成年者本人が知った時から期間を進めると、本人が事情を理解できないまま期間が過ぎ、単純承認とみなされてしまうおそれがある。そこで、本人に代わって判断する法定代理人が知った時を基準にしたのである。肢は正しい。

相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
- 熟慮期間:自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(915条1項)。未成年者・成年被後見人は法定代理人が知った時から(917条)
- 法定単純承認:相続の開始を知りながら相続財産を処分した、熟慮期間内に限定承認も放棄もしなかった等(921条)
- 限定承認:共同相続人全員が共同してする(923条)。限定承認者は固有財産と同一の注意で管理を続ける(926条1項)
- 相続放棄:初めから相続人とならなかったものとみなされ(939条)、放棄者の子は代襲しない
誤り。違うのは「相続の承認又は放棄をすべき期間内は、撤回することができる」の部分である。相続の承認及び放棄は、熟慮期間内でも撤回することができない(919条1項)。
919条1項は、相続の承認及び放棄は、915条1項の期間内でも撤回することができないと定める。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間(915条1項)がまだ残っていても、いったんした相続の放棄を撤回することはできない。相続の放棄は家庭裁判所への申述でする手続であり(938条)、放棄した者は初めから相続人とならなかったものとみなされる(939条)ので、それによって他の相続人の相続分や次の順位の相続人、相続債権者の立場が決まる。後から気が変わって撤回できるとすると、これらの者の立場が覆され、法律関係が不安定になる。したがって、熟慮期間内なら撤回できるとする肢は誤っている。もっとも、撤回の禁止は取消しまで否定するものではなく、詐欺や強迫などを理由とする取消しはでき(919条2項)、放棄の取消しは家庭裁判所への申述でする(同条4項)。

相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
| 意思表示 | 撤回 | 条文 |
|---|---|---|
| 選択権の行使 | 相手方の承諾がなければできない | 407条2項 |
| 解除 | できない | 540条2項 |
| 相続の承認・放棄 | 熟慮期間内でもできない(取消しは別) | 919条1項 |
| 遺贈の承認・放棄 | できない(取消しは別) | 989条1項 |
| 遺言 | いつでも遺言の方式でできる。撤回権の放棄はできない | 1022条・1026条 |
誤り。違うのは「相続の承認又は放棄をすべき期間内には,することができない」の部分である。共同相続人は、遺言による禁止などの場合を除き、いつでも協議で遺産を分割できる(907条1項)。
907条1項は、共同相続人は、908条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条の契約によって分割をしない旨を定めた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができると定める。遺産分割の時期は自由が原則であり、相続の承認又は放棄をすべき期間(915条1項)の間は分割できないという規定はない。したがって、その期間内であっても、共同相続人が確定していれば遺産分割の協議を成立させることができる。もっとも、相続人が遺産分割の協議に加わって遺産を処分することは、相続財産の処分(921条1号)に当たり、単純承認をしたものとみなされることがあるから、その後に相続を放棄することは原則としてできなくなる。これは分割が禁じられているからではなく、分割に加わったことで単純承認とみなされる結果にすぎない。遺産分割を禁じることができるのは、遺言による5年以内の禁止(908条1項)や、家庭裁判所による禁止などの場合に限られる。本肢は誤りである。

共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
正しい。相続の承認及び放棄は、熟慮期間内でも撤回することができない(919条1項)。
919条1項は、相続の承認及び放棄は915条1項の期間内でも撤回することができないと定める。相続の放棄は家庭裁判所への申述によってする要式行為であり(938条)、放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされる(939条)。その結果、次の順位の者が相続人になり、相続債権者が引当てにできる財産の帰属先も変わるなど、多くの利害関係人の地位が一度に動く。熟慮期間が残っているからといって気が変わるたびに撤回を認めると、これらの法律関係がいつまでも安定しないから、撤回を許さないことにしたのである。もっとも、同項が禁じるのは撤回であり、制限行為能力や詐欺・強迫といった総則・親族編の規定による取消しは妨げられない(同条2項)。その取消権は、追認できる時から6か月、承認又は放棄の時から10年で時効により消滅し(同条3項)、家庭裁判所への申述によってする(同条4項)。本肢は同条1項の内容どおりである。

相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。/前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
誤り。違うのは「遺産分割によってその金銭債務を負う者が決定するまでの間は,その債務について消滅時効は中断する」の部分である。債務者の死亡や遺産分割の未了は時効の完成猶予・更新の事由ではなく、金銭債務は相続開始と同時に相続分に応じて分割承継される。
時効の完成猶予・更新の事由は147条から161条までに定められており、債務者が死亡して相続が開始したことや、遺産分割が終わっていないことはそのいずれにも当たらない。そもそも金銭債務のような可分の債務は、相続開始と同時に法律上当然に分割され、各共同相続人が相続分に応じて承継するのであり、遺産分割の対象とはならない。債権者は相続開始と同時に各相続人に対して権利を行使できるから、権利の行使が妨げられている状態もない。160条は、相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しないと定めるが、これは誰に権利を行使すればよいか分からない間の完成猶予である。そこでいう相続人が確定した時とは、相続の承認や放棄によって誰が相続人となるかが確定した時を指し、遺産分割で債務の負担者が決まる時ではない。出題当時の中断は、現行法では完成猶予・更新に改められた。

相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
正しい。強迫による相続放棄は取り消すことができるが(919条2項・96条1項)、取消権は追認できる時から6か月で時効消滅し(919条3項)、取消しは家庭裁判所への申述によってする(同条4項)。
919条1項は、相続の承認及び放棄は熟慮期間内でも撤回することができないと定め、同条2項は、総則及び親族の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げないと定める。強迫による意思表示は取り消すことができる(96条1項)から、共同相続人に強迫されてした相続放棄も取り消すことができる。もっとも、同条3項は、この取消権は追認をすることができる時から6か月間行使しないときは時効によって消滅し、承認又は放棄の時から10年を経過したときも同様とすると定め、同条4項は、限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者はその旨を家庭裁判所に申述しなければならないと定める。相続関係は多くの利害関係人に影響するから、取消しの期間を一般の取消権(126条の5年)より短くし、家庭裁判所への申述によって明確にさせたのである。本肢は正しい。

前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。4 第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
- 撤回と取消し(919条):熟慮期間内でも撤回できないが、強迫などによる取消しはできる。追認できる時から6か月・承認又は放棄の時から10年。家庭裁判所への申述が必要
- 熟慮期間中の管理(918条):固有財産におけるのと同一の注意
- 法定単純承認(921条3号):放棄後の隠匿・私的消費でも単純承認とみなす。ただし放棄で相続人となった者が承認した後は除く
- 限定承認(923条・931条):共同相続人全員で共同してする。相続債権者に弁済した後でなければ受遺者に弁済できない








