後見は、次に掲げる場合に開始する。未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。後見開始の審判があったとき。
1 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
2 後見開始の審判があったとき。
この条文の過去問 8問
誤り。違うのは「生存している母が、直ちに親権者となる」の部分である。単独の親権者が死亡すると親権を行う者がないときに当たり、未成年後見が開始する(838条1号)。
離婚の際に親権者と定められた父が死亡しても、他方の親である母が当然に親権者となるという規定はない。この場合は、未成年者に対して親権を行う者がないときに当たり、未成年後見が開始する(838条1号)。親権者の定めは父母の協議か裁判所の判断で子ごとにされるもので、親権者でない親の地位は、親権者の死亡によって自動的に親権者に変わるものではないからである。そこで、原則として家庭裁判所が未成年後見人を選任することになる(840条1項)。もっとも、生存している母が子を現に監護していて、母を親権者とすることが子の利益にかなう場合もあるので、819条6項の親権者変更の審判を申し立て、これが認められれば母が親権者となる扱いがされている。この場合も、母が親権者となるのは家庭裁判所の審判によるのであって、父の死亡によって当然にそうなるのではない。本肢は、直ちに親権者となるとする点で誤っている。

未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
正しい。親権停止の審判によって親権を行う者がなくなれば、未成年者に対して親権を行う者がないときに当たり、後見が開始する(838条1号)。
838条1号は、未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときに後見が開始すると定める。親権停止の審判(834条の2第1項)は、2年を超えない範囲で定めた期間、親権者から親権を行う資格を奪うものである(同条2項)。父母の一方だけが親権を停止され、他方がなお親権を行うなら後見は始まらないが、停止によって親権を行使できる者がいなくなれば、838条1号の親権を行う者がないときに当たる。ここでいう親権を行う者がないときは、親権者の死亡だけでなく、親権喪失や親権停止の審判、親権の辞任によって現に親権を行う者がいなくなった場合も含むからである。そして、親権停止の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(841条)。本肢は838条1号のとおりである。

未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
誤り。違うのは「生存している父が,直ちに親権者となる」の部分である。単独親権者の母が死亡しても父が当然に親権者となる規定はなく、未成年後見が開始する。父を親権者とするには家庭裁判所の審判を経る必要がある。
819条は、離婚の際に親権者を定める方法と、その後に親権者を変更する方法を定めているが、親権者と定められた一方が死亡した場合に他方の親が当然に親権者となるという規定は置かれていない。838条1号は、未成年者に対して親権を行う者がないときに後見が開始すると定めているから、単独の親権者である母が死亡すれば、生存している父がいても父は現に親権者ではないため、親権を行う者がない状態となり、未成年後見が開始して、家庭裁判所が未成年後見人を選ぶことになる(840条1項)。生存している親が親権者の地位を自動的に取り戻すわけではない。もっとも、生存している親が親権者にふさわしい場合にまで一律に未成年後見によらせるのは子の利益に合わないから、実務では819条6項を類推して、家庭裁判所が生存している親を親権者と定める審判をすることも認められている。いずれにしても家庭裁判所の審判という手続が必要であり、父が直ちに親権者となるとする本肢は誤りである。

未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
- 監護に関する事項(766条1項・2項):協議で定め、調わなければ家庭裁判所が定める。子の利益を最も優先する
- 定めの変更(766条3項):家庭裁判所は必要があれば変更できる
- 婚姻中の別居(最決平成12年5月1日):766条を類推して家庭裁判所が面会交流について処分できる
- 子の氏(791条1項):父又は母と氏が違う子は家庭裁判所の許可+届出で父又は母の氏に
- 子の出生前の離婚(819条3項):母が行う。出生後に協議で父母の双方又は父と定められる
- 単独親権者の死亡:他方が当然に親権者にはならない。後見が開始し、819条6項の類推で親権者変更の余地
正しい。未成年者に対して親権を行う者がないときは後見が開始し(838条1号)、親権停止の審判でそうなった場合も同じである。
838条1号は、未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときに後見が開始すると定める。親権停止の審判(834条の2)は、父又は母の親権の行使が困難又は不適当であることで子の利益を害するときに、家庭裁判所が2年を超えない範囲で期間を定めて親権の行使を止める制度である。それまでは期間の定めのない親権喪失しかなく、児童虐待の事案でも申立てがためらわれたので、一時的な介入の手段として設けられた。停止の審判を受けた親権者は、その期間中は親権を行うことができない。したがって、単独の親権者や、共同親権者の双方が停止の審判を受ければ、未成年者に対して親権を行う者がない状態となり、後見が開始する。遺言で指定された未成年後見人(839条)がいなければ、家庭裁判所が請求によって未成年後見人を選任する(840条1項)。

後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 後見開始の審判があったとき。
誤り。違うのは「既にその成年者につき後見開始の事由が存在していたことを証明して,その成年者のした契約を取り消すことができる」の部分である。成年被後見人として取り消せるのは後見開始の審判を受けた後の行為に限られる(8条・9条)。
後見開始の審判を受けた者は成年被後見人とし(8条)、成年被後見人の法律行為は取り消すことができる(9条本文)。成年後見の制度は、個々の行為の時に判断能力が欠けていたことを証明させずに、定型的に取消権を与える代わりに、家庭裁判所の後見開始の審判という形で、誰が制限行為能力者かをはっきりさせる仕組みである。行為能力の制限は審判によって初めて生じ、その効果は将来に向かってのみ働く。審判前の行為までさかのぼって取り消せるとすると、取引の時に何の公示もなかった相手方が不測の損害を受けるからである。したがって、契約当時に後見開始の事由があったことを後から証明しても、審判前の契約を成年被後見人の行為として取り消すことはできない。もっとも、契約の時に意思能力を欠いていたことを証明できれば、その契約は意思能力の欠如により無効となる(3条の2)。本肢は審判前の契約の取消しを認めている点が誤りである。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
誤り。違うのは「いずれも,家庭裁判所が後見開始の審判をしたときに開始される」の部分である。成年後見は後見開始の審判で開始するが、未成年後見は親権を行う者がないときなどに審判なしに当然開始する(838条)。
838条は、後見は、未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき(1号)と、後見開始の審判があったとき(2号)に開始すると定める。未成年後見は、親権者の死亡や親権の喪失などによって、未成年者を保護する親権者がいなくなった場合に、その空白を埋めるために開始するものであり、家庭裁判所の審判を待たずに当然に開始する。未成年者であることは年齢から客観的に明らかであり、親権者がいないという事実があれば保護の必要が生ずるからである。未成年後見人は、遺言による指定(839条)がなければ、請求によって家庭裁判所が選任する(840条1項)。これに対し成年後見は、精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く常況にあるかどうかを家庭裁判所が判断しなければならないから、後見開始の審判によって開始する(7条・838条2号)。本肢は未成年後見も審判によって開始するとしている点が誤りである。

後見は、次に掲げる場合に開始する。一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。二 後見開始の審判があったとき。
- 未成年後見の開始(838条1号):親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。審判は要らない
- 成年後見の開始(838条2号):後見開始の審判があったとき
- 成年後見人の選任(843条):後見開始の審判の際に職権で選任。欠けたときは請求又は職権で選任。法人もなれる
- 後見人の注意義務(869条・644条):善良な管理者の注意
- 欠格事由(847条):未成年者、破産者、被後見人に対して訴訟をした者など
正しい。未成年者に対して親権を行う者がないときは、後見が開始する(838条1号)。
838条1号は、未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときに後見が開始すると定める。未成年者は原則として親権者が法定代理人となって財産を管理し、身上の監護をするが、父母がともに死亡した場合や親権を喪失した場合など、親権を行う者がいなくなると、未成年者を保護する者が欠けてしまう。そこで、親権に代わって未成年者の保護に当たる未成年後見を開始させることにしたのである。成年後見が後見開始の審判によって開始する(同条2号)のと異なり、未成年後見は親権を行う者がないという事実によって当然に開始し、未成年後見人は遺言による指定(839条)か、家庭裁判所の選任(840条)によって定まる。本肢は838条1号のとおりであり、正しい。

後見は、次に掲げる場合に開始する。一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。二 後見開始の審判があったとき。
誤り。違うのは「家庭裁判所が職権で未成年後見人を選任する」の部分である。遺言による指定がないときは、家庭裁判所は未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって未成年後見人を選任する(840条1項)。
未成年者に対して親権を行う者がないときは後見が開始する(838条1号)。未成年後見人は、まず未成年者に対して最後に親権を行う者が遺言で指定することができ(839条1項)、その指定によって未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所が、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって選任する(840条1項)。未成年後見は親権を行う者がいないという事実によって当然に開始するものであり、家庭裁判所がその開始を当然に知る立場にはないから、関係者の請求を待って選任する仕組みとしたのである。これに対し、成年後見人は、後見開始の審判によって後見が始まる以上、家庭裁判所がその審判の際に職権で選任する(843条1項)。本肢は未成年後見人を職権で選任するとしている点で誤りである。

前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
- 未成年後見人の就任:遺言による指定(839条)→指定がなければ請求による家庭裁判所の選任(840条1項)。職権では選任しない
- 成年後見人の就任:後見開始の審判の際に家庭裁判所が職権で選任(843条1項)
- 追加の選任:未成年後見人も成年後見人も、必要があれば請求又は職権で更に選任できる(840条2項・843条3項)
- 後見人の義務:善良な管理者の注意(869条・644条)。利益相反行為は後見監督人がいなければ特別代理人の選任を請求(860条・826条)