1二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
この条文の過去問 18問
誤り。違うのは「甲債権について弁済期が到来していなくても」相殺できるとする部分である。
505条1項本文は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときに、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができると定める。このうち受働債権の弁済期については、相殺する者は自分の期限の利益を放棄できる(136条2項)ので、放棄すれば相殺でき、受働債権の弁済期が来ていないことは相殺の妨げにならない(大判昭8.5.30)。これに対し、自働債権の弁済期が来ていないのに相殺を認めると、自働債権の債務者である相手方の期限の利益を一方的に奪うことになるので許されない。本肢で相殺するのはAなので、甲債権が自働債権、乙債権が受働債権である。本肢は、自働債権である甲債権の弁済期が来ていなくても受働債権の弁済期が来ていれば相殺できるとしており、要件の当てはめが逆である。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 弁済期:自働債権は弁済期が到来していなければならない。受働債権は期限の利益を放棄すれば足りる(505条1項)
- 抗弁権:自働債権に同時履行の抗弁権が付いていれば相殺できない
- 時効:消滅前に相殺に適するようになっていれば、時効消滅した債権で相殺できる(508条)
- 禁止:悪意による不法行為と、人の生命・身体の侵害による損害賠償の債務者は相殺を対抗できない(509条)
- 差押え:差押え後に取得した債権でも、差押え前の原因に基づくものなら差押債権者に対抗できる(511条2項)
誤り。違うのは「甲債権について弁済期が到来していなくても」相殺できるとする部分である。
505条1項本文は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときに、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができると定める。このうち受働債権の弁済期については、相殺する者は自分の期限の利益を放棄できる(136条2項)ので、放棄すれば相殺でき、受働債権の弁済期が来ていないことは相殺の妨げにならない(大判昭8.5.30)。これに対し、自働債権の弁済期が来ていないのに相殺を認めると、自働債権の債務者である相手方の期限の利益を一方的に奪うことになるので許されない。本肢で相殺するのはAなので、甲債権が自働債権、乙債権が受働債権である。本肢は、自働債権である甲債権の弁済期が来ていなくても受働債権の弁済期が来ていれば相殺できるとしており、要件の当てはめが逆である。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 弁済期:自働債権は弁済期が到来していなければならない。受働債権は期限の利益を放棄すれば足りる(505条1項)
- 抗弁権:自働債権に同時履行の抗弁権が付いていれば相殺できない
- 時効:消滅前に相殺に適するようになっていれば、時効消滅した債権で相殺できる(508条)
- 禁止:悪意による不法行為と、人の生命・身体の侵害による損害賠償の債務者は相殺を対抗できない(509条)
- 差押え:差押え後に取得した債権でも、差押え前の原因に基づくものなら差押債権者に対抗できる(511条2項)
正しい。相殺を禁止する意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗できる(505条2項)。
505条2項は、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができると定める。相殺を禁止する特約の付いた債権が譲渡された場合、譲受人が特約を知っていたか、重大な過失で知らなかったのであれば、特約を譲受人に対抗でき、譲受人はその債権について相殺を主張できない。逆に、譲受人が善意で重大な過失もなければ、特約は譲受人に対抗できない。取引の安全を守りつつ、特約を知っていた者やそれに近い者まで守る必要はないという考え方であり、譲渡制限の意思表示について悪意・重過失の譲受人に履行を拒めるとする466条3項と同じ線引きである。改正前の505条2項は善意の第三者に対抗できないと定めるだけであったが、債権法改正で重大な過失のある第三者を悪意の者と同じに扱うことを明らかにした。

前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
| 場面 | 求められる主観 | 条文 |
|---|---|---|
| 代理権の濫用 | 相手方が知り、又は知ることができた(過失で足りる) | 107条 |
| 預貯金債権の譲渡制限 | 譲受人等の悪意又は重大な過失。差押債権者には対抗できない | 466条の5 |
| 相殺禁止の意思表示 | 第三者の悪意又は重大な過失 | 505条2項 |
| 非債弁済 | 給付者が債務の不存在を知っていたこと(悪意だけ) | 705条 |
| 失火責任法 | 失火者の重大な過失。不法行為にだけ適用され、債務不履行には及ばない | 失火責任法・415条 |
正しい。保証人が自己の債権で相殺して保証債務を消滅させれば、債権者は弁済を受けたのと同じ満足を得るので、主たる債務も対当額で消滅する。
相殺は、互いに同種の目的の債務を負う者が、その対当額について債務を免れる制度である(505条1項)。保証人が債権者に対して持つ自分の債権を自働債権とし、保証債務を受働債権として相殺すれば、保証債務は対当額で消滅し、債権者は保証債務の弁済を受けたのと同じ満足を得る。保証債務は主たる債務を担保するためのものであるから、保証人の弁済で債権者が満足を得れば、その限度で主たる債務も消滅する。相殺による満足も弁済と同じに扱うべきであり、債権者が主たる債務についてさらに請求できるとすれば二重の満足を得ることになるからである。したがって、主たる債務も対当額において消滅し、保証人は主たる債務者に求償できる。肢は正しい。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「その債権を受働債権とする相殺をすることができない」の部分である。受働債権の債務者は期限の利益を放棄して弁済期を到来させれば相殺できる(136条2項・505条1項)。
505条1項は、双方の債務が弁済期にあるときに相殺できると定める。もっとも、この要件は自働債権と受働債権とで意味が違う。自働債権が弁済期前なのに相殺を認めると、相手方の期限の利益を一方的に奪うことになるので、自働債権は現実に弁済期が来ていなければならない。これに対し受働債権の期限の利益は、相殺しようとする者自身のためのものであるから、その者は136条2項により期限の利益を放棄して弁済期を到来させ、相殺することができる。判例も、受働債権について期限の利益を放棄し又は喪失するなどして弁済期が現実に到来すれば相殺適状になるとしている(最判平25.2.28)。したがって、弁済期が来ていない債権の債務者も、期限の利益を放棄すればその債権を受働債権として相殺できる。肢は誤っている。

期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
- 自働債権:現実に弁済期が到来していることが必要(相手方の期限の利益を奪えない)
- 受働債権:期限の利益を放棄すれば弁済期前でも相殺できる(136条2項)
- 期限の定めのない貸金債権:成立と同時に弁済期にあり、催告なしに自働債権とできる
- 時効消滅した債権:消滅前に相殺適状にあれば相殺できる(508条)。時効にかかった他人の債権を譲り受けて相殺はできない
- 受働債権の禁止:悪意の不法行為・生命身体侵害の損害賠償債務(509条)。被害者からの相殺は禁止されない
誤り。違うのは「乙債権の弁済期到来前であっても」相殺を対抗できるとする部分である。自働債権である乙債権の弁済期が来ていなければ相殺適状がなく、そもそも相殺できない(505条1項)。
505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができると定める。このうち受働債権は相殺する者自身が負う債務であるから、期限の利益を放棄して弁済期を到来させることができるが(136条2項)、自働債権は弁済期が現実に到来していなければならない。自働債権の弁済期前の相殺を認めると、相手方から期限の利益を一方的に奪うことになるからである。本肢でBがするのは乙債権を自働債権とする相殺であり、乙債権の弁済期が到来していないから、相殺適状がなく、Bは相殺をすることができない。511条1項は、差押え前に取得した債権による相殺を差押債権者に対抗できるとするが、相殺できることを前提に差押債権者に主張できるかを定めたものであり、相殺適状の要件を免除するものではない。乙債権の弁済期が到来すれば、差押え前に取得した債権としてBは相殺をFに対抗できる。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
| 差押えと相殺(511条) | 債権譲渡と相殺(469条) | |
|---|---|---|
| 基準となる時 | 差押えの時 | 対抗要件具備時 |
| 基準時より前に取得した債権 | 相殺を対抗できる(弁済期の先後を問わない) | 相殺を対抗できる |
| 基準時より後に取得したが、前の原因に基づく債権 | 対抗できる(511条2項本文) | 対抗できる(469条2項1号) |
| 譲受人の債権の発生原因である契約に基づく債権 | ― | 対抗できる(469条2項2号) |
| 基準時より後に他人から取得した債権 | 対抗できない(511条2項ただし書) | 対抗できない(469条2項ただし書) |
誤り。違うのは「乙債権の弁済期到来前であっても」相殺を対抗できるとする部分である。自働債権である乙債権の弁済期が来ていなければ相殺適状がなく、そもそも相殺できない(505条1項)。
505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができると定める。このうち受働債権は相殺する者自身が負う債務であるから、期限の利益を放棄して弁済期を到来させることができるが(136条2項)、自働債権は弁済期が現実に到来していなければならない。自働債権の弁済期前の相殺を認めると、相手方から期限の利益を一方的に奪うことになるからである。本肢でBがするのは乙債権を自働債権とする相殺であり、乙債権の弁済期が到来していないから、相殺適状がなく、Bは相殺をすることができない。511条1項は、差押え前に取得した債権による相殺を差押債権者に対抗できるとするが、相殺できることを前提に差押債権者に主張できるかを定めたものであり、相殺適状の要件を免除するものではない。乙債権の弁済期が到来すれば、差押え前に取得した債権としてBは相殺をFに対抗できる。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
| 差押えと相殺(511条) | 債権譲渡と相殺(469条) | |
|---|---|---|
| 基準となる時 | 差押えの時 | 対抗要件具備時 |
| 基準時より前に取得した債権 | 相殺を対抗できる(弁済期の先後を問わない) | 相殺を対抗できる |
| 基準時より後に取得したが、前の原因に基づく債権 | 対抗できる(511条2項本文) | 対抗できる(469条2項1号) |
| 譲受人の債権の発生原因である契約に基づく債権 | ― | 対抗できる(469条2項2号) |
| 基準時より後に他人から取得した債権 | 対抗できない(511条2項ただし書) | 対抗できない(469条2項ただし書) |
誤り。違うのは「相殺することができる」の部分である。被担保債務の債務者はCであり、第三取得者AはBに対して債務を負わないから、AのBに対する債権とCの債務とは互いに対立せず、相殺できない(大判昭8.12.5)。
505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合に、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができると定める。相殺には、当事者の間で債権と債務が互いに向き合っていることが必要である。本肢で抵当権者Bが持つ被担保債権はCに対する貸金債権であり、その債務者はCである。抵当不動産の所有権を取得したAは、その不動産が抵当権の実行を受けるという物の上の負担を引き受けているだけで、被担保債権についてBに債務を負っているわけではない。したがって、AのBに対する売買代金債権とCの貸金債務とは対立しておらず、判例(大判昭8.12.5)も、このような場合の相殺を認めていない。第三取得者が抵当権の負担を免れる方法としては、代価弁済(378条)、抵当権消滅請求(379条以下)、第三者としての弁済(474条)が用意されている。本肢は誤りである。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
正しい。自働債権は弁済期にあることが必要であるが、受働債権については期限の利益を放棄して弁済期を到来させれば相殺できる(136条2項)。
相殺をするには、双方の債務が弁済期にあること(505条1項)が必要であるが、自働債権と受働債権では意味が違う。自働債権が弁済期になければ、相殺によって相手方の期限の利益を一方的に奪うことになるから、自働債権は現実に弁済期にあることが必要である。これに対し、受働債権の期限は相殺をしようとする者自身のためにあるから、その利益は放棄することができ(136条2項本文)、放棄すれば受働債権の弁済期が到来して相殺に適する状態になる。判例も、受働債権の弁済期が現実に到来していることが必要であり、期限の利益を放棄して初めて相殺に適する状態になるとしている。本肢の自働債権は弁済期の定めのない貸金債権であり、返還の催告をして相当の期間を経過すれば弁済期が来るから(591条1項)自働債権として用いることができ、受働債権の売買代金債務は期限の利益を放棄すれば弁済期が到来する。したがって、本肢は正しい。

期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
正しい。代弁済請求権は債務の免脱を求める権利で、通常の金銭債権と目的が同種ではないから、委任者はこれを受働債権として相殺できない(最判昭47.12.22)。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し自己に代わってその弁済をすることを請求できる(650条2項前段)。最判昭47.12.22は、委任者は、受任者が650条2項前段に基づき委任者をして受任者に代わって第三者に弁済をさせることができる権利を受働債権とし、委任者が受任者に対して有する金銭債権を自働債権として相殺することはできないとした。相殺には双方の債務が同種の目的を有することが必要である(505条1項)。ところが代弁済請求権は、受任者が委任者から一定額の金銭の支払を受ける権利ではなく、第三者に対する債務から解放されること、すなわち委任者が第三者に弁済することを求める権利であるから、委任者の金銭債権とは給付の目的が異なる。相殺を認めると、受任者は債務を免れないまま自己の権利だけを失い、受任者に負担を残さない650条の趣旨も損なわれる。したがって肢は正しい。

委任者は、受任者が同法六五〇条二項前段の規定に基づき委任者をして受任者に代わつて第三者に弁済をなさしめうる権利を受働債権とし、委任者が受任者に対して有する金銭債権を自働債権として相殺することはできない
正しい。代弁済請求権は債務の免脱を求める権利で、通常の金銭債権と目的が同種ではないから、委任者はこれを受働債権として相殺できない(最判昭47.12.22)。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し自己に代わってその弁済をすることを請求できる(650条2項前段)。最判昭47.12.22は、委任者は、受任者が650条2項前段に基づき委任者をして受任者に代わって第三者に弁済をさせることができる権利を受働債権とし、委任者が受任者に対して有する金銭債権を自働債権として相殺することはできないとした。相殺には双方の債務が同種の目的を有することが必要である(505条1項)。ところが代弁済請求権は、受任者が委任者から一定額の金銭の支払を受ける権利ではなく、第三者に対する債務から解放されること、すなわち委任者が第三者に弁済することを求める権利であるから、委任者の金銭債権とは給付の目的が異なる。相殺を認めると、受任者は債務を免れないまま自己の権利だけを失い、受任者に負担を残さない650条の趣旨も損なわれる。したがって肢は正しい。

委任者は、受任者が同法六五〇条二項前段の規定に基づき委任者をして受任者に代わつて第三者に弁済をなさしめうる権利を受働債権とし、委任者が受任者に対して有する金銭債権を自働債権として相殺することはできない
正しい。相殺は、一方の意思表示によって両債権を対当額で消滅させる単独行為であり(506条1項)、法律行為に当たる。
二人が互いに同種の目的を持つ債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができ(505条1項本文)、相殺は当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする(506条1項前段)。この意思表示によって両債権が対当額で消滅するという、表示された意思の内容どおりの効果が生じるので、相殺の意思表示は法律行為に当たる。しかも、相手方の承諾を要しない単独行為である。法律関係を一方的に変える行為であるから、相手方の地位を不安定にしないよう、相殺の意思表示には条件又は期限を付けることができない(同項後段)。また、その効力は双方の債務が相殺に適するようになった時にさかのぼって生じる(同条2項)。平成29年改正で相殺の禁止などが整理されたが、相殺が単独行為であることに変わりはない。

相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
- 契約:申込みと承諾の合致で成立する
- 単独行為(法律行為):一方の意思表示だけで表示どおりの効果が生じる(取消し・追認・追認拒絶・解除・相殺・免除・遺言)
- 意思の通知(準法律行為):意思は表示するが、効果は法律が定める(受領の拒絶・制限行為能力者の相手方の催告)
- 観念の通知(準法律行為):事実を知らせるだけで、効果は法律が定める(時効完成前の債務の承認・債権譲渡の通知)
誤り。違うのは「報酬債権と相殺することはできない」の部分である。同一の請負契約から生じた修補に代わる損害賠償債権と報酬債権はともに金銭債権であり、注文者は相殺できる(最判昭53.9.21)。
請負人は仕事の完成に対して報酬を請求でき(632条)、仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、注文者は追完の請求のほか、債務不履行に基づく損害賠償を請求できる(559条・562条・415条1項)。この損害賠償債務と報酬債務は同一の双務契約から生じた対価関係にある債務として同時履行の関係に立つ(533条括弧書)。そして、相手方が同時履行の抗弁権を持つ債権を自働債権として相殺することは、相手方の抗弁権を一方的に奪うことになるので原則として許されない。しかし、同一の双務契約から生じた両債権がともに金銭債権であり、対当額で清算されるにすぎない場合には、相手方の抗弁権を害することにはならず、簡易な決済という相殺の趣旨にもかなう。最判昭53.9.21も、請負の目的物の瑕疵の修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし、報酬債権を受働債権とする相殺を認めている。したがって肢は誤っている。出題当時の瑕疵は、現在の契約不適合に当たるが、結論は変わらない。

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
誤り。違うのは「保証人が検索の抗弁権を有するときであっても,…することができる」の部分である。催告及び検索の抗弁権が付いている保証契約上の債権を自働債権として相殺することは許されない(最判昭32.2.22)。
相殺をするには双方の債務が弁済期にあることが必要である(505条1項)が、それに加えて、自働債権に相手方の抗弁権が付いている場合には相殺は許されないと解されている。相殺を認めると、相殺する者の一方的な意思表示によって、相手方は抗弁権を行使する機会を奪われるからである。単純保証の保証人は、債権者が主たる債務者に催告せずに請求してきたときは催告の抗弁権(452条)を、主たる債務者に弁済の資力があり執行が容易であることを証明して検索の抗弁権(453条)を、それぞれ主張できる。これらは保証債務が主たる債務の補充であることから認められる抗弁権である。最判昭32.2.22は、催告及び検索の抗弁権の付いている保証契約上の債権を自働債権として、債権者が保証人に対して相殺をすることは許されないとした。したがって、双方の債務が弁済期にあっても、保証人が検索の抗弁権を持つ場合には債権者は相殺できず、肢は誤っている。連帯保証人には催告・検索の抗弁権がない(454条)から、連帯保証であれば相殺できる。

債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
誤り。違うのは「引渡債務の履行を提供しなくても」相殺できるとする部分である。自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付着しているときは、相殺することができない。
505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときは対当額で相殺できるとしつつ、ただし書で債務の性質がこれを許さないときは相殺できないと定める。判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付着している場合には、相殺は許されないとした。相殺は、自働債権を相手方に強制的に行使するのと同じ効果を持つから、これを認めると、相手方は自己の反対給付を受けないまま債務を消滅させられ、同時履行の抗弁権を一方的に奪われてしまうからである。本肢では、Aの売買代金債権に対し、買主Bは引渡しを受けるまで代金の支払を拒める同時履行の抗弁権(533条)を有しているから、Aは引渡債務の履行を提供しない限り、代金債権を自働債権として賃料債務と相殺することはできない。本肢は誤りである。なお、受働債権に抗弁権が付着していても、債務者自らがそれを放棄して相殺することはできる。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 要件(505条1項):同種の目的を有する債務の対立・双方の債務が弁済期にある・債務の性質が許す(自働債権に同時履行の抗弁権が付着していれば不可)
- 方法と効果(506条):一方の意思表示で、相殺適状の時にさかのぼって消滅。遡及効は相殺前の有効な解除に影響しない
- 時効消滅した債権(508条):消滅前に相殺適状なら相殺できる。時効にかかった他人の債権を譲り受けての相殺は不可
- 相殺契約:合意によるので法定相殺の要件を満たさなくてもできる
正しい。同種の目的を要するのは一方的な意思表示による法定相殺の要件であり、当事者の合意による相殺契約では両債権が同種の目的を有する必要はない(大判昭17.2.18)。
505条1項は、相殺の要件として、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担することを求めている。これは、一方の意思表示だけで相手方の債権を消滅させる法定相殺では、相手方が予定していなかった種類の給付で債権を消滅させられることがないよう、同種の債務に限る必要があるからである。これに対し、相殺契約は当事者双方の合意によって互いの債権を消滅させるものであり、契約自由の原則から、法定相殺の要件を満たさない場合でも有効にすることができる。判例(大判昭17.2.18)も、白米の引渡債権と金銭債権との相殺契約を認めている。両当事者が納得して合意している以上、目的の種類が異なっても不利益を受ける者はいないからである。相殺契約は、相殺が禁止される場合や弁済期が到来していない場合にも可能である。本肢は正しい。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 要件(505条1項):同種の目的を有する債務の対立・双方の債務が弁済期にある・債務の性質が許す(自働債権に同時履行の抗弁権が付着していれば不可)
- 方法と効果(506条):一方の意思表示で、相殺適状の時にさかのぼって消滅。遡及効は相殺前の有効な解除に影響しない
- 時効消滅した債権(508条):消滅前に相殺適状なら相殺できる。時効にかかった他人の債権を譲り受けての相殺は不可
- 相殺契約:合意によるので法定相殺の要件を満たさなくてもできる
正しい。代位債権者が行使するのは債務者Aの甲債権であり、第三債務者Yが対抗できるのは債務者Aに対して主張できる抗弁に限られるから(民法423条の4)、Yが代位債権者X個人に対して持つ債権で甲債権と相殺することはできない。
民法423条の4は、債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は債務者に対して主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができると定める。債権者代位訴訟で代位債権者Xが行使するのは、自分の権利ではなく債務者Aが第三債務者Yに対して持つ甲債権であり、Xは他人の権利を自分の名で行使する法定訴訟担当にすぎない。そのため、Yは、甲債権について債務者Aに対して主張できた弁済や相殺などの抗弁をXにも主張できるが、Xとの個人的な関係から生じた事由を甲債権に持ち込むことはできない。相殺は互いに同種の債務を負担することが前提であり(民法505条1項)、YのXに対する債権と、AのYに対する甲債権とは当事者が食い違うから、相殺適状にない。YがXに対する債権で甲債権と相殺すると主張しても抗弁にならないので、肢は正しい。

債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
- 性質:代位債権者が債務者の権利(被代位権利)を自分の名で行使する法定訴訟担当。訴訟物は被代位権利
- 被保全債権:原告適格を基礎づける訴訟要件。存在しなければ訴え却下、被代位権利が存在しなければ請求棄却
- 抗弁:第三債務者は債務者に対して主張できる抗弁を代位債権者に対抗できる(民法423条の4)。代位債権者個人に対する債権での相殺はできない
- 債務者の地位:代位行使後も取立てその他の処分を妨げられない(民法423条の5。改正前の判例は着手の通知・了知後に処分権と当事者適格を失うとした)。代位債権者は債務者に訴訟告知をする(民法423条の6)
- 判決効:債務者に及ぶ(115条1項2号)。代位債権者に当事者適格がなかったときは及ばない
- 債務者の参加:独立当事者参加は重複起訴に触れない(最判昭48.4.24)
正しい。弁済期の合意を消費貸借契約の成立要件とする見解では、弁済期の合意がなければ自働債権乙が発生しないので、相殺の抗弁を主張するBが弁済期の合意を主張立証しなければならない。
505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは対当額で相殺できると定める。相殺の抗弁を主張するBは、自働債権である乙債権が発生したことを主張・立証しなければならず、乙が貸金債権であれば、その発生原因である消費貸借契約の成立に必要な事実がその内容となる。消費貸借は一定期間の利用を目的とする貸借型の契約であるから、弁済期の合意は契約の本質的な要素であって、その合意がなければ消費貸借契約は成立しないという見解がある。この見解に立てば、弁済期の合意は乙債権の発生原因事実の一部となり、相殺の抗弁を主張するBが主張・立証すべき事実に含まれる。したがって本肢は正しい。

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。































