第342条質権の内容過去問 5
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
この条文の過去問 5問
質権の被担保債権に係る債務と質物の返還義務とは、同時履行の関係にある。
解説
本肢は誤り。質権は、債権者が債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利であり(民法342条)、質権者は、被担保債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる(民法347条本文)。この留置的効力こそが質権の本質的な効力であり、目的物の占有を質権者にとどめ置くことによって債務者に心理的圧迫を加え、弁済を間接的に強制する点にその機能がある。したがって、質物の所有者は、まず被担保債権を弁済してはじめて質物の返還を請求できるのであって、弁済が先履行の関係に立つ。判例も、質物返還義務と被担保債権の弁済とは同時履行の関係に立たず、弁済が先履行であるとしている(大判大正9年3月29日)。仮に両者を同時履行の関係と解すると、債務者は弁済の提供をしないまま質物の返還を拒む質権者に対して抗弁を主張し得ることとなり、留置的効力を正面から否定する結果となる。加えて、質物の価値が被担保債権額を常に十分に担保するとは限らない以上、両債務を対価的に牽連させて同時履行を認めることが公平の理念に適合するともいえない。そもそも同時履行の抗弁権(民法533条)は一個の双務契約から生じた対価的債務の牽連関係を前提とする制度であり、質権設定契約から生じる関係はこれに当たらない。よって、両者が同時履行の関係にあるとする本肢は誤りである。
質権は,債務者の財産についてのみ設定することができる。
解説
本肢は誤り。質権の内容を定める342条は、質権者は「その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物」を占有し、その物について他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有すると規定している。すなわち、質権は債務者自身の財産のみならず、第三者の財産の上にも設定することができ、この第三者が物上保証人である。物上保証人が債務を弁済し、または質権の実行によって目的物の所有権を失ったときは、保証債務の規定に従って債務者に対する求償権を取得する(351条)。同様の仕組みは抵当権にも用意されており、抵当権も「債務者又は第三者」が占有を移転しないで債権の担保に供した不動産を目的とする(369条1項)。物上保証人は債務を負担するわけではなく、目的物の価値による責任のみを負う点で保証人と異なるが、他人の債務のために自己の財産を担保に供する点は共通する。したがって、質権の目的を債務者の財産に限る本肢は条文に反し、誤りである。
Bは,質権の被担保債権の発生原因事実を主張・立証する必要はなく,Aが,質権の被担保債権の消滅原因事実を主張・立証する必要がある。
解説
解説は準備中です。
Bは,質権の被担保債権の発生原因事実を主張・立証する必要はなく,Aが,質権の被担保債権の消滅原因事実を主張・立証する必要がある。
解説
解説は準備中です。
留置権者は,留置物について留置権に基づき競売を申し立てることができ,換価金から優先的に弁済を受けることができる。
解説
本肢は誤り。留置権者が留置物について競売を申し立てること自体は認められているが、その換価金から優先的に弁済を受けることはできない。後段が誤っている。
まず前段について、民事執行法195条は「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による」と定めており、留置権者は形式競売(換価のための競売)を申し立てることができる。留置権者は目的物を保管し続けなければならず(298条1項の善管注意義務)、その負担から解放される必要があるためである。
しかし、留置権は目的物を留置して債務者に心理的圧迫を加え、事実上弁済を促すという効力(事実上の優先弁済的効力)を有するにとどまり、法律上の優先弁済権を伴わない。優先弁済権を明文で認めるのは、先取特権(303条)、質権(342条)、抵当権(369条1項)であり、留置権にはこれに対応する規定が存在しない。したがって、民事執行法195条による競売は担保権実行としての競売の手続を借用するだけの換価手続にすぎず、その売却代金は本来所有者(債務者)に交付されるべきものである。留置権者は、交付されるべき代金の上に留置権類似の地位を及ぼす(あるいは引渡しを拒む)にとどまり、他の債権者が配当要求をした場合には、一般債権者として債権額に応じた按分弁済を受けるにすぎない。
なお、留置権者が留置物から生じた果実については、297条により他の債権者に先立って弁済に充当することができるが、これは果実に限った例外であり、留置権に一般的な優先弁済権を認めたものではない。