第162条所有権の取得時効過去問 23
1二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
この条文の過去問 23問
自己の所有物については、所有権の取得時効を援用することができない。
解説
本肢は誤り。民法162条1項・2項は取得時効の要件として「他人の物」の占有を掲げており、文言上は自己の所有物の時効取得は問題とならないようにも読める。
しかし判例は、取得時効は物を永続して占有するという事実状態を一定の場合に権利関係にまで高める制度であるから、所有権に基づいて不動産を永く占有する者であっても、登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であったり、所有権の取得を第三者に対抗できない場合には、取得時効による権利取得を主張できると解することが制度本来の趣旨に合致するとして、自己の所有物についても取得時効の援用を認めた(最判昭和42年7月21日)。162条の「他人の物」という文言は、通常の事例を示したにすぎず、自己物を時効取得の対象から排除する趣旨ではないと解されている。
この法理は、例えば売買により所有権を取得したが登記を備えないうちに二重譲渡がされた場合や、所有権取得を基礎づける証拠が散逸した場合に、占有継続の事実によって権利を確保する実益がある。したがって、自己の所有物について取得時効を援用できないとする本肢は判例の趣旨に反し、誤りである。
AがA所有の甲土地をBに売却し、Bがその引渡しを受けた時から1年を経過した後、Aが甲土地をCに売却し、Cが所有権移転登記を備えたときは、Bが主張する所有権の取得時効の期間は、Cが所有権移転登記を備えた時から起算する。
解説
本肢は誤り。不動産の二重譲渡において、第一譲受人が目的物の占有を継続した場合の取得時効(162条)の起算点をどう捉えるかが問題となる。判例(最判昭和46年11月5日民集25巻8号1087頁)は、第一の買主が買受け後に不動産の占有を取得し、その時から162条所定の時効期間を経過したときは、同条により当該不動産を時効によって取得しうるとした。すなわち、後に登場した第二譲受人が所有権移転登記を備えた時点は起算点とならず、あくまで自己の占有を開始した時が起算点となる。時効の起算点は占有という客観的事実によって定まり、当事者がこれを任意に選択・移動させることはできない(最判昭和35年7月27日民集14巻10号1871頁参照)以上、登記具備時に起算点をずらす扱いは認められない。
本肢では、Bが引渡しを受けてから1年経過後にCが登記を備えているが、Bの取得時効の期間はCの登記具備時ではなくBが占有を開始した時から起算される。なお、Cは時効完成前に権利を取得した者にあたるから、時効完成後の第三者と異なり、Bは時効完成後に登記を経なくてもCに所有権の取得を対抗しうる関係に立つ(最判昭和41年11月22日民集20巻9号1901頁)。したがって、起算点をCの登記具備時とする本肢は誤りである。
AがA所有の甲土地をBに売却し、Bがその引渡しを受けた時から1年を経過した後、Aが甲土地をCに売却し、Cが所有権移転登記を備えたときは、Bが主張する所有権の取得時効の期間は、Cが所有権移転登記を備えた時から起算する。
解説
本肢は誤り。不動産の二重譲渡において、第一譲受人が目的物の占有を継続した場合の取得時効(162条)の起算点をどう捉えるかが問題となる。判例(最判昭和46年11月5日民集25巻8号1087頁)は、第一の買主が買受け後に不動産の占有を取得し、その時から162条所定の時効期間を経過したときは、同条により当該不動産を時効によって取得しうるとした。すなわち、後に登場した第二譲受人が所有権移転登記を備えた時点は起算点とならず、あくまで自己の占有を開始した時が起算点となる。時効の起算点は占有という客観的事実によって定まり、当事者がこれを任意に選択・移動させることはできない(最判昭和35年7月27日民集14巻10号1871頁参照)以上、登記具備時に起算点をずらす扱いは認められない。
本肢では、Bが引渡しを受けてから1年経過後にCが登記を備えているが、Bの取得時効の期間はCの登記具備時ではなくBが占有を開始した時から起算される。なお、Cは時効完成前に権利を取得した者にあたるから、時効完成後の第三者と異なり、Bは時効完成後に登記を経なくてもCに所有権の取得を対抗しうる関係に立つ(最判昭和41年11月22日民集20巻9号1901頁)。したがって、起算点をCの登記具備時とする本肢は誤りである。
Eは、甲の占有を開始した時に善意無過失であり、10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と甲を占有したときは、甲の所有権を取得する。
解説
本肢は正しい。所有権の取得時効について、民法162条2項は、10年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に善意でありかつ過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。取得時効の目的物は不動産に限られず、動産も含まれるから、遺失された自転車甲についても短期取得時効が成立しうる。Eは占有開始時に善意無過失で、所有の意思(自主占有)をもって平穏・公然に10年間占有しているから、162条2項の要件を全て満たし、甲の所有権を原始取得する。なお、即時取得(民法192条)は取引行為によって動産の占有を承継取得した場合に限って認められるから、拾得のように取引行為を介さずに占有を開始した者は即時取得できないが、その場合でも取得時効の要件を満たせば所有権を取得できる。また、民法193条による回復請求は遺失の時から2年間に限られるところ、10年の経過はこれをはるかに超えており、Eの取得を妨げるものではない。以上より、本肢は正しく、誤っている記述の組合せには含まれない。
所有権の取得時効期間の計算においては、占有の開始の時が午前零時でなかったときであっても、占有開始の日が算入される。
解説
本肢は誤り。期間の計算方法については民法138条以下の通則が適用され、140条本文は、日・週・月又は年によって期間を定めたときは期間の初日を算入しないと定め、同条ただし書は、その期間が午前零時から始まるときに限って初日を算入するとしている。取得時効の期間(162条1項の20年、同条2項の10年)についてこの通則の適用を排除する特則は存在しないから、占有の開始時が午前零時でない限り初日不算入の原則が妥当し、占有開始の日は期間に算入されず、その翌日から起算される。判例も初日を算入しない立場を採る(大判大正6年11月8日)。本肢は、午前零時から始まる場合という140条ただし書の例外と、初日不算入という同条本文の原則とを逆転させて説明するものであり、誤りである。なお、時効の効力はその起算日に遡るが(144条)、時効取得を主張する者が起算点を任意に選択して時効期間の始期を動かすことは許されないとされており(最判昭和35年7月27日)、占有開始の時を基準に期間を算定するという枠組み自体は動かない。
所有権の取得時効期間の計算においては、占有の開始の時が午前零時でなかったときであっても、占有開始の日が算入される。
解説
本肢は誤り。期間の計算方法については民法138条以下の通則が適用され、140条本文は、日・週・月又は年によって期間を定めたときは期間の初日を算入しないと定め、同条ただし書は、その期間が午前零時から始まるときに限って初日を算入するとしている。取得時効の期間(162条1項の20年、同条2項の10年)についてこの通則の適用を排除する特則は存在しないから、占有の開始時が午前零時でない限り初日不算入の原則が妥当し、占有開始の日は期間に算入されず、その翌日から起算される。判例も初日を算入しない立場を採る(大判大正6年11月8日)。本肢は、午前零時から始まる場合という140条ただし書の例外と、初日不算入という同条本文の原則とを逆転させて説明するものであり、誤りである。なお、時効の効力はその起算日に遡るが(144条)、時効取得を主張する者が起算点を任意に選択して時効期間の始期を動かすことは許されないとされており(最判昭和35年7月27日)、占有開始の時を基準に期間を算定するという枠組み自体は動かない。
占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合であっても、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときは、所有の意思があると認められる。
解説
本肢は誤り。162条の取得時効が成立するには「所有の意思」をもってする占有(自主占有)であることを要するところ、その判断基準が問題となる。判例は、所有の意思は占有者の内心の意思によってではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものであるとし、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づいて占有を取得した事実(他主占有権原)が証明されるか、又は、占有者が占有中に真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情(他主占有事情)が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず所有の意思は否定されるとした(最判昭和58年3月24日)。すなわち、内心の意思は自主占有の判断において決め手とならない。本肢は、外形的客観的にみて所有の意思があるといえない場合であっても、内心において他人の所有権を排斥する意思があれば所有の意思が認められるとするもので、内心の意思を基準に据える点で右判例の趣旨に反する。なお、所有の意思は186条1項により推定されるから、他主占有権原・他主占有事情の主張立証責任は時効取得を争う相手方が負う。
10年の取得時効によって不動産の所有権を取得したと主張する者は、当該不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であったことの立証責任を負う。
解説
本肢は正しい。162条2項は、10年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。ここで、186条1項が推定するのは「所有の意思」「善意」「平穏」「公然」の4点であり、無過失は推定の対象に含まれていない。そこで、占有者は188条により占有物について行使する権利を適法に有するものと推定される以上、これを介して無過失も推定されるのではないかが問題となるが、判例は、不動産の時効取得を主張する者は、当該不動産を自己の所有と信じたことについて無過失であったことを主張立証しなければならないとしている(最判昭和46年11月11日)。登記制度が整備されている不動産については、登記を確認しないまま占有を始めた者を保護すべきでないという考慮が働くためである。したがって、10年の短期取得時効を主張する者は、善意については186条1項の推定を援用できるが、無過失については自ら立証責任を負う。本肢はこれと同旨であり、正しい。
地上権の取得時効期間は、時効取得を主張する者の主観的事情にかかわらず、10年である。
解説
本肢は誤り。地上権は物権であるが所有権ではないから、「所有権以外の財産権」(163条)に当たり、その時効取得については163条が適用される。同条は、所有権以外の財産権を自己のためにする意思をもって、平穏かつ公然と行使する者は、「前条の区別に従い」20年又は10年を経過した後にその権利を取得すると定める。すなわち162条と同じ区別が妥当し、権利行使の開始時に善意無過失であれば10年、悪意又は有過失であれば20年の期間が必要となる。したがって、時効取得を主張する者の主観的事情にかかわらず一律に10年であるとする本肢は誤りである。なお、判例は、地上権の時効取得が認められるためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在するだけでは足りず、その使用が賃借権等ではなく地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要するとしている(最判昭和45年5月28日)。他人の土地を長年使用していても、それが賃貸借に基づくものと外形上評価される限り、地上権の時効取得は認められない。
甲土地の所有権が自己にあると過失なく信じて10年間その占有を継続した者は,甲土地上の抵当権の存在につき悪意であったときは,甲土地の所有権を時効取得することができない。
解説
本肢は誤り。162条2項の短期取得時効が要求する占有者の善意・無過失とは、自己に当該不動産の所有権があると信じ、かつそう信じたことに過失がないことをいう。すなわち、判断の対象はあくまで所有権の帰属についての認識であって、目的物の上に抵当権などの制限物権が存在することを知っていたかどうかは、これとは別の事柄である。最判昭和43年12月24日も、目的物件に抵当権が設定され、その設定登記まで経由されていることを知り、または不注意で知らなかった場合であっても、162条2項にいう善意・無過失の占有であることは妨げられないとしている。したがって、抵当権の存在につき悪意であった者も、所有権が自己にあると過失なく信じて10年間占有を継続すれば、甲土地の所有権を時効取得することができる。時効取得できないとする本肢は誤りである。なお、所有権を時効取得できることと、その反射として抵当権が消滅するかどうかは別問題であり、占有者が抵当権の存在を容認していたような場合には抵当権は消滅しないと解されている(大判昭和13年2月12日、後掲最判平成24年3月16日参照)。
甲土地の所有権が自己にあると過失なく信じて10年間その占有を継続した者は,甲土地上の抵当権の存在につき悪意であったときは,甲土地の所有権を時効取得することができない。
解説
本肢は誤り。162条2項の短期取得時効が要求する占有者の善意・無過失とは、自己に当該不動産の所有権があると信じ、かつそう信じたことに過失がないことをいう。すなわち、判断の対象はあくまで所有権の帰属についての認識であって、目的物の上に抵当権などの制限物権が存在することを知っていたかどうかは、これとは別の事柄である。最判昭和43年12月24日も、目的物件に抵当権が設定され、その設定登記まで経由されていることを知り、または不注意で知らなかった場合であっても、162条2項にいう善意・無過失の占有であることは妨げられないとしている。したがって、抵当権の存在につき悪意であった者も、所有権が自己にあると過失なく信じて10年間占有を継続すれば、甲土地の所有権を時効取得することができる。時効取得できないとする本肢は誤りである。なお、所有権を時効取得できることと、その反射として抵当権が消滅するかどうかは別問題であり、占有者が抵当権の存在を容認していたような場合には抵当権は消滅しないと解されている(大判昭和13年2月12日、後掲最判平成24年3月16日参照)。
被相続人の占有により不動産の取得時効が完成した場合,その共同相続人の一人は,自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
解説
本肢は正しい。時効は「当事者」が援用しなければその効果が確定的に生じない(民法145条)。ここにいう「当事者」とは、時効によって直接に利益を受ける者をいうと解されており(大判明43.1.25)、援用権は各援用権者ごとに、その者が受ける利益の範囲で個別に認められる(援用の相対効)。
被相続人の占有によって不動産の取得時効が完成した場合、被相続人が有していた時効の利益は相続財産として共同相続人に承継される。もっとも、相続財産に属する権利は遺産分割までは共同相続人の共有に属し(898条)、各共同相続人は自己の相続分に応じた持分を有するにとどまる。そうすると、共同相続人の一人が時効の完成によって直接に利益を受けるのは、自己の相続分に対応する持分の限度においてであり、他の共同相続人の持分部分についてまで援用権を行使することはできない。判例も、被相続人の占有により取得時効が完成した場合、共同相続人の一人は自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないとしている(最判平13.7.10)。
したがって、本肢は判例の趣旨に合致し正しく、本問が求める「誤っているもの」には当たらない。
自己の所有物を占有する者は,その物について取得時効を援用することができない。
解説
本肢は誤り。民法162条は取得時効の客体を「他人の物」と規定しており、文言上は自己の所有物について取得時効を援用できないようにも読める。しかし判例は、所有権に基づいて不動産を占有する者についても162条の適用があると解している(最判昭42.7.21・民法判例百選I41事件)。その理由として判例は、取得時効は目的物を永続して占有するという事実状態を一定の場合に権利関係にまで高める制度であるから、所有権に基づいて長く占有する者であっても、登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であったり、所有権の取得を第三者に対抗できない場合に、取得時効による権利取得の主張を認めることが制度本来の趣旨に合致すること、および162条が客体を「他人の物」としたのは、通常の場合には自己の物について取得時効を援用することが無意味であるからにほかならず、同条は自己の物について援用を許さない趣旨ではないことを挙げる。
このように「他人の物」の要件は、時効取得を基礎づける積極的要件ではなく、通常想定される場面を述べたにすぎないものと位置づけられる。よって、自己の所有物を占有する者も、立証困難や対抗関係の存在といった実益がある限り、その物について取得時効を援用することができる。
したがって、援用できないとする本肢は誤りであり、本問の正解肢の一つとなる。
占有主体に変更があって承継された二個以上の占有が併せて主張される場合,占有者の善意無過失は,最初の占有者の占有開始時に判定される。
解説
本肢は正しい。民法162条2項は、占有の開始の時に善意無過失であった占有者について10年の短期取得時効を認める。この善意無過失は占有開始の時点を基準に判定され、その後に他人の物であることを知るに至っても時効期間や要件に影響しない。他方、占有者の承継人は、自己の占有のみを主張することも、前の占有者の占有を併せて主張することもでき、後者の場合には前主の瑕疵をも承継する(187条1項・2項)。
そこで、占有主体に変更があり、承継された二個以上の占有が併せて主張される場合に、善意無過失をいずれの時点で判定するかが問題となる。判例は、162条2項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合に適用されるだけでなく、占有主体に変更があって承継された二個以上の占有が併せて主張される場合にも適用されるとし、後者の場合にはその主張に係る最初の占有者につき、その占有開始の時点において善意無過失を判定すれば足りるとしている(最判昭53.3.6・民法判例百選I42事件)。占有の併合主張においては前主の占有がそのまま承継されると考える以上、その瑕疵の有無も前主の占有開始時を基準とするのが一貫するからである。
したがって、本肢は判例の趣旨に合致し正しく、本問が求める「誤っているもの」には当たらない。
Aは,Bが所有する甲土地を解除条件付でBから買い受ける旨の売買契約を締結し,当該売買契約に基づいてBから甲土地の引渡しを受けた。その後,解除条件が成就した場合,Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる。
解説
本肢は誤り。取得時効の要件である「所有の意思」(民法162条)の有無は、占有者の内心の意思によってではなく、占有取得の原因である権原の性質又は占有に関する事情により外形的客観的に決せられる(最判昭和45年6月18日、最判平成7年12月15日)。売買契約に基づく買主としての占有は、権原の性質上、所有の意思をもってする占有すなわち自主占有である。
判例は、残代金を約定期限までに支払わないときは契約が当然に解除されたものとする旨の解除条件が付された売買契約についても、これに基づいて開始された占有は民法162条にいう所有の意思をもってする占有であることを妨げず、かつ「現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもってする占有でなくなるというものではない」としている(最判昭和60年3月28日)。占有開始時の権原の性質によって自主占有と評価された以上、その後に契約が遡って効力を失っても、占有者が現実に占有を続けている限り、その態様は当然には他主占有に転換しないのである。
もっとも、自主占有が他主占有に変わる余地が全くないわけではなく、その場合には民法185条の類推により、占有者が所有者に対し所有の意思がないことを表示するなど、占有の性質を変更する事情が別途必要となる。本肢は、解除条件の成就という一事のみで自主占有でなくなるとする点で誤りである。
Aは,Bが所有する甲土地を解除条件付でBから買い受ける旨の売買契約を締結し,当該売買契約に基づいてBから甲土地の引渡しを受けた。その後,解除条件が成就した場合,Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる。
解説
本肢は誤り。取得時効の要件である「所有の意思」(民法162条)の有無は、占有者の内心の意思によってではなく、占有取得の原因である権原の性質又は占有に関する事情により外形的客観的に決せられる(最判昭和45年6月18日、最判平成7年12月15日)。売買契約に基づく買主としての占有は、権原の性質上、所有の意思をもってする占有すなわち自主占有である。
判例は、残代金を約定期限までに支払わないときは契約が当然に解除されたものとする旨の解除条件が付された売買契約についても、これに基づいて開始された占有は民法162条にいう所有の意思をもってする占有であることを妨げず、かつ「現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもってする占有でなくなるというものではない」としている(最判昭和60年3月28日)。占有開始時の権原の性質によって自主占有と評価された以上、その後に契約が遡って効力を失っても、占有者が現実に占有を続けている限り、その態様は当然には他主占有に転換しないのである。
もっとも、自主占有が他主占有に変わる余地が全くないわけではなく、その場合には民法185条の類推により、占有者が所有者に対し所有の意思がないことを表示するなど、占有の性質を変更する事情が別途必要となる。本肢は、解除条件の成就という一事のみで自主占有でなくなるとする点で誤りである。
10年の時効取得を原因とする土地の所有権移転登記手続を求める訴えの請求原因に対する「原告は,占有開始の時に当該土地の所有権を有しないことを知っていた。」との主張は,抗弁である。
解説
本肢は正しい。10年の取得時効(民法162条2項)の要件は、①所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有したこと、②その占有が10年間継続したこと、③占有開始時に善意であり、かつ無過失であったこと、④時効の援用(同法145条)である。もっとも、同法186条1項は、占有者は所有の意思をもって善意で平穏かつ公然に占有するものと推定すると定めており、これは要件事実論上いわゆる暫定真実、すなわち条文の形式は推定規定であるが、実質は「悪意であること」等を相手方が主張立証すべき事実(抗弁事由)として切り出したものと解されている。したがって、時効取得を主張する原告は善意を積極的に主張立証する必要がなく(無過失は推定されないため原告が評価根拠事実を主張立証すべきこととは区別される)、被告の側が占有開始時の悪意を主張立証して時効の成立を妨げることになる。そして、「原告は、占有開始の時に当該土地の所有権を有しないことを知っていた」との主張は、原告が10年間占有を継続したという請求原因事実と論理的に両立しつつ、162条2項による時効取得という法律効果の発生を障害するものである。両立性と効果障害という抗弁の要件を満たすから、この主張は抗弁に当たる。よって本肢は正しい。
10年の取得時効を援用して所有権の取得を主張する者は,占有を開始した時及びその時から10年を経過した時の2つの時点の占有を主張・立証すれば足り,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と物を占有したこと,占有の開始時に善意無過失であったことについて主張・立証する必要はない。
解説
本肢は誤り。10年の短期取得時効(162条2項)の要件は、①所有の意思をもって、②平穏かつ公然に、③他人の物を、④10年間占有し、⑤占有開始時に善意でありかつ無過失であったことである。もっとも、これらのうち①所有の意思、②平穏・公然、⑤のうち善意については、186条1項が占有者に有利な法律上の推定を置いているため、時効取得を主張する者がこれらを積極的に立証する必要はなく、これを争う相手方が他主占有であること、強暴・隠秘であること、悪意であることを立証すべき責任を負う。また、占有の継続についても、186条2項が前後の両時点における占有の証拠があればその間の継続を推定するとしているから、占有開始時と10年経過時の二時点の占有を立証すれば足りる。しかし、無過失については186条1項に掲げられておらず、188条による権利適法の推定から当然に導かれるものでもないため、判例は無過失は推定されず、時効取得を主張する者がこれを主張・立証しなければならないとする(最判昭和46年11月11日)。したがって、無過失についてまで主張・立証を要しないとする本肢は、この点で判例の趣旨に反し誤りである。
他人が所有する土地を自己所有の土地として第三者に賃貸した者は,その第三者が20年間その土地を占有したとしても,取得時効によりその土地の所有権を取得することはできない。
解説
本肢は誤り。162条1項の取得時効に必要な占有は、占有者自身が物を所持する自己占有(直接占有)に限られず、占有代理人を通じて所持する代理占有(間接占有、181条)でも足りる。他人の土地を自己の所有物として第三者に賃貸した者は、賃借人を占有代理人として当該土地を間接的に占有していることになるから、賃借人の占有が継続する限り、賃貸人自身の占有も継続していると評価される。また、所有の意思の有無は外形的・客観的に判断されるところ、他人の土地をあえて自己所有の物として賃貸に出し、賃料を収受する行為は、所有者でなければ通常しない態様の支配であって、むしろ自主占有であることを基礎づける事情である。したがって、賃貸人は所有の意思をもって平穏・公然に20年間占有を継続したものとして、善意・無過失でなくとも同項により当該土地の所有権を時効取得しうる。取得時効を否定する本肢は誤りである。
10年の取得時効を援用して所有権の取得を主張する者は,占有を開始した時及びその時から10年を経過した時の2つの時点の占有を主張・立証すれば足り,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と物を占有したこと,占有の開始時に善意無過失であったことについて主張・立証する必要はない。
解説
本肢は誤り。10年の短期取得時効(162条2項)の要件は、①所有の意思をもって、②平穏かつ公然に、③他人の物を、④10年間占有し、⑤占有開始時に善意でありかつ無過失であったことである。もっとも、これらのうち①所有の意思、②平穏・公然、⑤のうち善意については、186条1項が占有者に有利な法律上の推定を置いているため、時効取得を主張する者がこれらを積極的に立証する必要はなく、これを争う相手方が他主占有であること、強暴・隠秘であること、悪意であることを立証すべき責任を負う。また、占有の継続についても、186条2項が前後の両時点における占有の証拠があればその間の継続を推定するとしているから、占有開始時と10年経過時の二時点の占有を立証すれば足りる。しかし、無過失については186条1項に掲げられておらず、188条による権利適法の推定から当然に導かれるものでもないため、判例は無過失は推定されず、時効取得を主張する者がこれを主張・立証しなければならないとする(最判昭和46年11月11日)。したがって、無過失についてまで主張・立証を要しないとする本肢は、この点で判例の趣旨に反し誤りである。
他人が所有する土地を自己所有の土地として第三者に賃貸した者は,その第三者が20年間その土地を占有したとしても,取得時効によりその土地の所有権を取得することはできない。
解説
本肢は誤り。162条1項の取得時効に必要な占有は、占有者自身が物を所持する自己占有(直接占有)に限られず、占有代理人を通じて所持する代理占有(間接占有、181条)でも足りる。他人の土地を自己の所有物として第三者に賃貸した者は、賃借人を占有代理人として当該土地を間接的に占有していることになるから、賃借人の占有が継続する限り、賃貸人自身の占有も継続していると評価される。また、所有の意思の有無は外形的・客観的に判断されるところ、他人の土地をあえて自己所有の物として賃貸に出し、賃料を収受する行為は、所有者でなければ通常しない態様の支配であって、むしろ自主占有であることを基礎づける事情である。したがって、賃貸人は所有の意思をもって平穏・公然に20年間占有を継続したものとして、善意・無過失でなくとも同項により当該土地の所有権を時効取得しうる。取得時効を否定する本肢は誤りである。
Aが所有する不動産をBが占有する場合において,Bが,10年間の占有を継続したことを理由として,この不動産の所有権を時効により取得するためには,Bは,占有を開始した時に善意無過失であればよく,その後にBが悪意になっても,Bの時効取得の成否に影響しない。
解説
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物権は時効により取得することができるが,債権は時効により取得することはできない。
解説
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