1二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
この条文の過去問 27問
誤り。違うのは「自己の所有物については、所有権の取得時効を援用することができない」の部分である。
162条は取得時効の対象を「他人の物」と書くが、最判昭42.7.21は、取得時効は物を永続して占有するという事実状態を一定の場合に権利関係にまで高めようとする制度であるとして、所有権に基づいて不動産を永く占有する者であっても、登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であったり、所有権の取得を第三者に対抗できない場合には、取得時効による権利取得を主張できるとした。条文の「他人の物」は通常の場面を示したにすぎず、自己の物を対象から外す趣旨ではないと読むのである。売買で所有権を得たが登記をしないうちに二重譲渡された場合や、取得の証拠が散逸した場合に、占有の継続で権利を確保できる実益がある。本肢は自己の所有物についての援用を否定する点で判例とずれている。

取得時効は、当該物件を永続して占有するという事実状態を、一定の場合に、権利関係にまで高めようとする制度であるから、所有権に基づいて不動産を永く占有する者であつても、その登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であつたり、または所有権の取得を第三者に対抗することができない等の場合において、取得時効による権利取得を主張できると解することが制度本来の趣旨に合致する
誤り。違うのは「Cが所有権移転登記を備えた時から起算する」の部分である。
最判昭46.11.5は、不動産の二重譲渡で、第一の買主がその買受け後に不動産の占有を取得し、その時から162条の時効期間を経過したときは、同条により時効取得し得るとし、第二の買主が登記を備えた時から起算した原審を否定した。取得時効の起算点は占有の開始という客観的な事実で決まり、当事者が任意に選んで時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない(最判昭35.7.27)。起算点を動かせるとすると、時効完成前の第三者か完成後の第三者かという区別が意味を失うからである。本肢ではBが引渡しを受けた時から起算し、Cはその1年後に登記をしたので時効完成前の第三者に当たり、Bは時効完成後に登記がなくてもCに時効取得を対抗できる(最判昭41.11.22)。Cの登記の時を起算点とする本肢は判例とずれている。

第一の買主がその買受後不動産の占有を取得し、その時から民法162条に定める時効期間を経過したときは、同法条により当該不動産を時効によつて取得しうる
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 時効完成前に登場した第三者 | 最判昭41.11.22 | 登記がなくても時効取得を対抗できる |
| 時効完成後に登場した第三者 | 最判昭33.8.28 | 登記がなければ対抗できない |
| 起算点を後ろにずらす主張 | 最判昭35.7.27 | 起算点は任意に選べない |
誤り。違うのは「Cが所有権移転登記を備えた時から起算する」の部分である。
最判昭46.11.5は、不動産の二重譲渡で、第一の買主がその買受け後に不動産の占有を取得し、その時から162条の時効期間を経過したときは、同条により時効取得し得るとし、第二の買主が登記を備えた時から起算した原審を否定した。取得時効の起算点は占有の開始という客観的な事実で決まり、当事者が任意に選んで時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない(最判昭35.7.27)。起算点を動かせるとすると、時効完成前の第三者か完成後の第三者かという区別が意味を失うからである。本肢ではBが引渡しを受けた時から起算し、Cはその1年後に登記をしたので時効完成前の第三者に当たり、Bは時効完成後に登記がなくてもCに時効取得を対抗できる(最判昭41.11.22)。Cの登記の時を起算点とする本肢は判例とずれている。

第一の買主がその買受後不動産の占有を取得し、その時から民法162条に定める時効期間を経過したときは、同法条により当該不動産を時効によつて取得しうる
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 時効完成前に登場した第三者 | 最判昭41.11.22 | 登記がなくても時効取得を対抗できる |
| 時効完成後に登場した第三者 | 最判昭33.8.28 | 登記がなければ対抗できない |
| 起算点を後ろにずらす主張 | 最判昭35.7.27 | 起算点は任意に選べない |
正しい。162条2項により、善意無過失で占有を始めた者が10年間所有の意思をもって平穏公然と占有すれば、動産でも所有権を取得する。
162条2項は、10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。取得時効の対象は不動産に限られず動産も含まれるので、遺失された自転車甲についても10年の取得時効が成立し得る。Eは占有を始めた時に善意無過失で、所有の意思をもって平穏公然と10年間占有しているので、162条2項の要件をすべて満たし、甲の所有権を取得する。即時取得(192条)は取引行為によって占有を得た場合に限られるので、拾得のように取引によらずに占有を始めた者は即時取得できないが、その場合でも取得時効の要件を満たせば所有権を取得できる。遺失者の回復請求(193条)は遺失の時から2年間に限られるので、10年が過ぎればそれも問題にならない。

十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
誤り。違うのは「占有開始の日が算入される」の部分である。
140条本文は、日、週、月又は年によって期間を定めたときは期間の初日は算入しないと定め、同条ただし書は、その期間が午前零時から始まるときはこの限りでないとする。取得時効の20年・10年(162条)もこの通則に従い、適用を除く特則はない。したがって、占有の開始が午前零時でなければ、占有を始めた日は数えず、翌日から起算する。判例も時効期間の初日を算入しない立場をとる(大判大6.11.8)。1日の途中から始まった日を1日として数えると、実際には1日に満たない時間を1日分として扱うことになり不公平だからである。本肢は、午前零時から始まる場合に限られるただし書の扱いを、午前零時でない場合に当てはめている点で140条と逆である。時効を援用する者が起算点を任意に動かせないこと(最判昭35.7.27)もあわせて、占有開始の時を基準に期間を数える枠組みは変わらない。

日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
誤り。違うのは「占有開始の日が算入される」の部分である。
140条本文は、日、週、月又は年によって期間を定めたときは期間の初日は算入しないと定め、同条ただし書は、その期間が午前零時から始まるときはこの限りでないとする。取得時効の20年・10年(162条)もこの通則に従い、適用を除く特則はない。したがって、占有の開始が午前零時でなければ、占有を始めた日は数えず、翌日から起算する。判例も時効期間の初日を算入しない立場をとる(大判大6.11.8)。1日の途中から始まった日を1日として数えると、実際には1日に満たない時間を1日分として扱うことになり不公平だからである。本肢は、午前零時から始まる場合に限られるただし書の扱いを、午前零時でない場合に当てはめている点で140条と逆である。時効を援用する者が起算点を任意に動かせないこと(最判昭35.7.27)もあわせて、占有開始の時を基準に期間を数える枠組みは変わらない。

日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
誤り。違うのは「内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときは、所有の意思があると認められる」の部分である。所有の意思は内心ではなく、権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に定められる(最判昭58.3.24)。
取得時効には、所有の意思をもってする占有が要る(162条)。最判昭58.3.24は、所有の意思は、占有者の内心の意思によってではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものであるとした。そのうえで、性質上所有の意思のないものとされる権原に基づいて占有を取得した事実が証明されるか、占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず所有の意思を否定すべきであるとした。内心は外から分からず、それで時効の成否が決まると、所有者の側は時効を止める手段を考えようがないからである。本肢は、外形的客観的に所有の意思がない場合でも内心で決まるとする点で判例とずれている。

右の所有の意思は、占有者の内心の意思によつてではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものである
正しい。186条1項は善意を推定するが無過失は推定しないので、10年の取得時効を主張する者は無過失を立証しなければならない(最判昭46.11.11)。
162条2項は、10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。186条1項は、占有者は所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ公然と占有をするものと推定するが、無過失は推定の対象に含めていない。そこで判例は、不動産の時効取得を主張する者は、その不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であったことの立証責任を負うとした(最判昭46.11.11)。186条1項が無過失を推定の対象に挙げていない以上、時効を主張する側がこれを示さなければならず、登記で権利関係を確かめられる不動産では、確かめないまま占有を始めた者をたやすく保護すべきでないという考慮も働く。したがって、10年の取得時効を主張する者は、善意については186条1項の推定を使えるが、無過失は自ら立証しなければならない。即時取得では、188条を通じて無過失も推定される点が異なる。

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
誤り。違うのは「時効取得を主張する者の主観的事情にかかわらず、10年である」の部分である。所有権以外の財産権も162条の区別に従い、善意無過失なら10年、そうでなければ20年である(163条)。
地上権は所有権以外の財産権なので、その時効取得には163条が適用される。163条は、所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得すると定める。前条の区別とは162条の区別であり、権利の行使を始めた時に善意無過失であれば10年、悪意又は有過失であれば20年となる。所有権の時効取得と同じく、権利がないことを知っていた者や不注意で知らなかった者には長い期間を求め、真の権利者との釣り合いをとるためである。したがって、地上権の取得時効期間は時効取得を主張する者の主観によって10年か20年かが分かれ、一律に10年とする本肢は誤っている。なお、土地を使い続けるだけでは足りず、その使用が地上権を行使する意思に基づくことが外形上表れていなければ、地上権の時効取得は認められない。

所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。
誤り。違うのは「甲土地の所有権を時効取得することができない」の部分である。162条2項の善意無過失は自己に所有権があると信じることについてであり、抵当権の存在を知っていても妨げられない(最判昭43.12.24)。
162条2項は、10年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。判例は、162条2項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信じるにつき過失がないことをいい、占有の目的物件に対し抵当権が設定されていること、さらにはその設定登記も経由されていることを知り、又は不注意により知らなかったような場合でも、善意・無過失の占有であることを妨げないとした(最判昭43.12.24)。10年の取得時効で問われるのは所有権が誰にあるかについての認識であり、その所有権に抵当権の負担が付いていることを知っていても、自分が所有者だと信じることとは矛盾しないからである。したがって、抵当権の存在について悪意であった者も、所有権が自分にあると過失なく信じて10年間占有を続ければ、甲土地の所有権を時効取得することができる。抵当権が消滅するかどうかは、これとは別の問題である。

民法一六二条二項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信じるにつき過失がないことをいい、占有の目的物件に対し抵当権が設定されていること、さらには、その設定登記も経由されていることを知り、または、不注意により知らなかつたような場合でも、ここにいう善意・無過失の占有というを妨げない
誤り。違うのは「甲土地の所有権を時効取得することができない」の部分である。162条2項の善意無過失は自己に所有権があると信じることについてであり、抵当権の存在を知っていても妨げられない(最判昭43.12.24)。
162条2項は、10年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。判例は、162条2項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信じるにつき過失がないことをいい、占有の目的物件に対し抵当権が設定されていること、さらにはその設定登記も経由されていることを知り、又は不注意により知らなかったような場合でも、善意・無過失の占有であることを妨げないとした(最判昭43.12.24)。10年の取得時効で問われるのは所有権が誰にあるかについての認識であり、その所有権に抵当権の負担が付いていることを知っていても、自分が所有者だと信じることとは矛盾しないからである。したがって、抵当権の存在について悪意であった者も、所有権が自分にあると過失なく信じて10年間占有を続ければ、甲土地の所有権を時効取得することができる。抵当権が消滅するかどうかは、これとは別の問題である。

民法一六二条二項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信じるにつき過失がないことをいい、占有の目的物件に対し抵当権が設定されていること、さらには、その設定登記も経由されていることを知り、または、不注意により知らなかつたような場合でも、ここにいう善意・無過失の占有というを妨げない
正しい。被相続人の占有により取得時効が完成した場合、共同相続人の一人は自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用できる(最判平13.7.10)。
時効は当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることができない(145条)。ここでいう当事者は時効によって直接に利益を受ける者であり、援用の効果はそれぞれの援用権者について、その者が受ける利益の範囲で生じる。被相続人の占有によって不動産の取得時効が完成した場合、その利益は相続によって共同相続人に引き継がれるが、遺産分割までは相続財産は共同相続人の共有に属し(898条)、各共同相続人は自分の相続分に応じた持分を持つにとどまる。共同相続人の一人が時効によって直接に利益を受けるのは自分の持分の限度であるから、他の共同相続人の持分についてまで援用することはできない。判例も、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないとした(最判平13.7.10)。時効の利益を受けるかどうかは、他の共同相続人がそれぞれ決めることだからである。したがって本肢は正しい。

被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎない
誤り。違うのは「取得時効を援用することができない」の部分である。所有権に基づいて不動産を占有する者についても、162条の取得時効の規定の適用がある(最判昭42.7.21)。
162条は取得時効の対象を他人の物と定めており、文言からは自分の物について取得時効を主張できないようにも読める。しかし判例は、所有権に基づいて不動産を占有する者についても162条の適用があるとした(最判昭42.7.21)。取得時効は、物を長く占有しているという事実の状態を一定の場合に権利関係にまで高める制度であるから、所有権に基づいて長く占有している者であっても、登記をしていないなどのために所有権を取得したことの証明が難しい場合や、所有権の取得を第三者に対抗できない場合に、取得時効による権利の取得を主張できるとするのが制度の趣旨に合うのである。162条が対象を他人の物としたのは、ふつうは自分の物について取得時効を援用しても意味がないからにすぎず、自分の物についての援用を許さない趣旨ではない。したがって、自己の所有物を占有する者も、その物について取得時効を援用することができ、本肢は誤りである。

所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法一六二条の適用があるものと解すべきである。
正しい。承継された二個以上の占有を併せて主張する場合、善意無過失はその主張に係る最初の占有者の占有開始時に判定すれば足りる(最判昭53.3.6)。
162条2項は、10年間占有した者が占有の開始の時に善意無過失であったときに所有権を取得するとし、善意無過失は占有を始めた時を基準に判定する。他方、占有者の承継人は、自分の占有だけを主張することも、前の占有者の占有を併せて主張することもでき(187条1項)、併せて主張する場合には前の占有者の瑕疵も引き継ぐ(同条2項)。判例は、162条2項の規定は、同じ人が占有を続けた場合だけでなく、占有主体に変更があって承継された二個以上の占有が併せて主張される場合にも適用され、その場合には、その主張に係る最初の占有者についてその占有開始の時点で善意無過失を判定すれば足りるとした(最判昭53.3.6)。前の占有者の占有をそのまま引き継いで主張する以上、その占有に瑕疵があったかどうかも前の占有者が占有を始めた時で判断するのが筋だからである。したがって、後の占有者が悪意であっても、最初の占有者が善意無過失であれば10年の取得時効を主張できる。本肢は正しい。

民法一六二条二項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があつて承継された二個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点においてこれを判定すれば足りる
- 相続による占有の承継:事実的支配がなくても当然に承継(最判昭和44年10月30日)
- 相続人の選択:自己の占有のみか併せて主張か選べる(187条1項)
- 併せて主張した場合:瑕疵も承継し、善意無過失は最初の占有者の開始時で判定(187条2項・最判昭和53年3月6日)
誤り。違うのは「解除条件が成就した場合,Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる」の部分である。解除条件付の売買に基づく占有も自主占有であり、条件が成就して契約が失効しても、それだけでは自主占有でなくならない(最判昭60.3.28)。
所有の意思の有無は、占有者の内心ではなく、占有を取得した原因である権原の性質や占有に関する事情によって外形的客観的に決まる。売買契約に基づく買主の占有は、権原の性質上、所有の意思をもってする自主占有である。最判昭60.3.28は、売買契約に基づいて開始される占有は、その売買契約に残代金を期限までに支払わないときは当然に解除されたものとする解除条件が付されていても、162条にいう所有の意思をもってする占有であることを妨げず、現にその解除条件が成就して売買契約が失効しても、それだけでは所有の意思をもってする占有でなくなるものではないとした。占有開始の時の権原で自主占有と評価された以上、その後に契約が効力を失っても、占有の性質が当然に変わるわけではないからである。肢は条件成就だけで自主占有でなくなるとしており、誤っている。

売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法一六二条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではない
誤り。違うのは「解除条件が成就した場合,Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる」の部分である。解除条件付の売買に基づく占有も自主占有であり、条件が成就して契約が失効しても、それだけでは自主占有でなくならない(最判昭60.3.28)。
所有の意思の有無は、占有者の内心ではなく、占有を取得した原因である権原の性質や占有に関する事情によって外形的客観的に決まる。売買契約に基づく買主の占有は、権原の性質上、所有の意思をもってする自主占有である。最判昭60.3.28は、売買契約に基づいて開始される占有は、その売買契約に残代金を期限までに支払わないときは当然に解除されたものとする解除条件が付されていても、162条にいう所有の意思をもってする占有であることを妨げず、現にその解除条件が成就して売買契約が失効しても、それだけでは所有の意思をもってする占有でなくなるものではないとした。占有開始の時の権原で自主占有と評価された以上、その後に契約が効力を失っても、占有の性質が当然に変わるわけではないからである。肢は条件成就だけで自主占有でなくなるとしており、誤っている。

売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法一六二条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではない
正しい。占有開始時の善意は民法186条1項で推定されるから、原告が悪意であったとの主張は、請求原因と両立して時効取得の効果を妨げる抗弁である。
民法162条2項は、10年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったときはその所有権を取得すると定める。しかし同法186条1項は、占有者は所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ公然と占有をするものと推定すると定めている。この推定は、要件の一部の不存在を相手方に主張立証させる趣旨のものと解されており、時効取得を主張する原告は占有開始時の善意を自ら主張立証する必要がない。そのため、被告が原告は占有開始の時に所有権を有しないことを知っていたと主張することは、原告の10年間の占有という請求原因事実と両立しながら、時効取得という法律効果の発生を妨げるものとなる。請求原因と両立し、その効果を障害する事実の主張であるから抗弁に当たる。なお、無過失は推定されないので、その評価根拠事実は原告が主張立証する。

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
- 単純否認:理由を述べずに相手方の主張事実を認めないこと
- 積極否認(理由付き否認):相手方の主張と両立しない事実を挙げて認めないこと。挙げた事実は間接事実にとどまる
- 抗弁:請求原因事実と両立し、その法律効果を障害・消滅・阻止する事実で、被告が主張立証責任を負う
- 権利抗弁:同時履行の抗弁権・留置権のように、権利者が行使の意思を表明して初めて抗弁になる
誤り。違うのは「占有の開始時に善意無過失であったことについて主張・立証する必要はない」のうち無過失の部分である。所有の意思・平穏公然・善意は推定されるが、無過失は推定されず、10年の時効を主張する者が主張・立証しなければならない(最判昭46.11.11)。
10年の取得時効(162条2項)の要件は、所有の意思をもって、平穏かつ公然に、他人の物を10年間占有し、占有の開始の時に善意かつ無過失であったことである。このうち、所有の意思、平穏・公然、善意は186条1項によって推定されるから、時効取得を主張する者が立証する必要はなく、争う相手方が他主占有であることや悪意であることを立証しなければならない。占有の継続も、186条2項により前後の両時点の占有の証拠があればその間継続したものと推定されるので、占有開始時と10年経過時の二つの時点の占有を立証すれば足りる。しかし、無過失は186条1項に挙げられておらず、判例は無過失は推定されず、時効取得を主張する者がこれを立証しなければならないとしている(最判昭46.11.11)。動産の即時取得では188条によって無過失が推定されるが、不動産の取得時効には同じ扱いが及ばないのである。したがって、無過失まで主張・立証を要しないとする肢は誤っている。

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
| 要件 | 主張・立証の要否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 前後の二つの時点の占有 | 必要 | その間の継続は推定される(186条2項) |
| 所有の意思・平穏・公然・善意 | 不要(推定) | 186条1項 |
| 占有開始時の無過失 | 必要 | 推定されない(最判昭46.11.11) |
誤り。違うのは「取得時効によりその土地の所有権を取得することはできない」の部分である。取得時効の占有は賃借人を通じた代理占有(間接占有)でも足り、自己所有の土地として賃貸した者は所有の意思をもって占有しているといえる(162条1項・181条)。
162条1項の取得時効に必要な占有は、自ら物を所持する自己占有に限られず、占有代理人を通じて所持する代理占有(181条)でもよい。他人の土地を自分の物として第三者に賃貸した者は、賃借人を占有代理人として土地を間接的に占有しているから、賃借人の占有が続く限り、賃貸人自身の占有も続いていると評価される。また、所有の意思は外形的客観的に判断されるところ、他人の土地を自分の所有物として賃貸に出し、賃料を受け取ることは、所有者でなければ通常しない支配の仕方であり、むしろ自主占有を基礎づける事情である。したがって、賃貸人は所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間占有を続けたものとして、善意無過失でなくても162条1項により土地の所有権を時効取得できる。賃借人自身は賃借権に基づいて占有しており、所有の意思がないから所有権を時効取得できないが、それは賃貸人の時効取得を妨げない。肢は時効取得を否定しており誤っている。

二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
誤り。違うのは「占有の開始時に善意無過失であったことについて主張・立証する必要はない」のうち無過失の部分である。所有の意思・平穏公然・善意は推定されるが、無過失は推定されず、10年の時効を主張する者が主張・立証しなければならない(最判昭46.11.11)。
10年の取得時効(162条2項)の要件は、所有の意思をもって、平穏かつ公然に、他人の物を10年間占有し、占有の開始の時に善意かつ無過失であったことである。このうち、所有の意思、平穏・公然、善意は186条1項によって推定されるから、時効取得を主張する者が立証する必要はなく、争う相手方が他主占有であることや悪意であることを立証しなければならない。占有の継続も、186条2項により前後の両時点の占有の証拠があればその間継続したものと推定されるので、占有開始時と10年経過時の二つの時点の占有を立証すれば足りる。しかし、無過失は186条1項に挙げられておらず、判例は無過失は推定されず、時効取得を主張する者がこれを立証しなければならないとしている(最判昭46.11.11)。動産の即時取得では188条によって無過失が推定されるが、不動産の取得時効には同じ扱いが及ばないのである。したがって、無過失まで主張・立証を要しないとする肢は誤っている。

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
| 要件 | 主張・立証の要否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 前後の二つの時点の占有 | 必要 | その間の継続は推定される(186条2項) |
| 所有の意思・平穏・公然・善意 | 不要(推定) | 186条1項 |
| 占有開始時の無過失 | 必要 | 推定されない(最判昭46.11.11) |
誤り。違うのは「取得時効によりその土地の所有権を取得することはできない」の部分である。取得時効の占有は賃借人を通じた代理占有(間接占有)でも足り、自己所有の土地として賃貸した者は所有の意思をもって占有しているといえる(162条1項・181条)。
162条1項の取得時効に必要な占有は、自ら物を所持する自己占有に限られず、占有代理人を通じて所持する代理占有(181条)でもよい。他人の土地を自分の物として第三者に賃貸した者は、賃借人を占有代理人として土地を間接的に占有しているから、賃借人の占有が続く限り、賃貸人自身の占有も続いていると評価される。また、所有の意思は外形的客観的に判断されるところ、他人の土地を自分の所有物として賃貸に出し、賃料を受け取ることは、所有者でなければ通常しない支配の仕方であり、むしろ自主占有を基礎づける事情である。したがって、賃貸人は所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間占有を続けたものとして、善意無過失でなくても162条1項により土地の所有権を時効取得できる。賃借人自身は賃借権に基づいて占有しており、所有の意思がないから所有権を時効取得できないが、それは賃貸人の時効取得を妨げない。肢は時効取得を否定しており誤っている。

二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
正しい。10年の取得時効の善意無過失は占有の開始の時に備えていれば足り、その後に悪意になっても時効取得は妨げられない(162条2項)。
162条2項は、10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。善意無過失は占有の開始の時点で判断され、占有期間中ずっと善意である必要はない。占有を始める時に自分の物だと信じ、そう信じることに過失がなかった者は、その信頼に基づいて生活や取引を積み重ねていくから、後に事情を知ったとしても、それまでの占有の積み重ねを無にするのは酷だからである。占有期間中ずっと善意であることを求めると、真の所有者から指摘を受けるなどして事情を知った時点で短期取得時効の道が閉ざされ、制度の意味が大きく失われる。したがって、Bが占有開始時に善意無過失であれば、その後に悪意になっても10年の時効取得は妨げられない。占有開始時に悪意又は有過失であれば、20年の時効取得(同条1項)によることになる。本肢は同条2項の内容どおりである。

十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
| 場面 | 誰の善意・悪意か | いつで判断するか |
|---|---|---|
| 遺留分算定に算入する1年前より前の贈与(1044条1項) | 贈与の当事者双方 | 贈与の当時 |
| 10年の取得時効(162条2項) | 占有者(承継した占有なら最初の占有者) | 占有開始の時 |
| 本権の訴えで敗訴した占有者(189条2項) | 占有者 | 訴え提起の時から悪意とみなす |
| 転得者に対する詐害行為取消請求(424条の5) | 転得者 | 転得の当時 |
誤り。違うのは「債権は時効により取得することはできない」の部分である。所有権以外の財産権も時効取得でき、土地の賃借権も、継続的な用益の外形と賃借の意思の客観的な表現があれば時効取得できる(163条、最判昭43.10.8)。
所有権は取得時効の対象となり(162条)、163条は、所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、20年又は10年を経過した後その権利を取得すると定める。この財産権には地上権や地役権のような物権だけでなく、債権も含まれうる。判例(最判昭43.10.8)は、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、163条により賃借権の時効取得が可能であるとした。賃借権は継続して土地を使う権利であり、所有権と同じく占有を伴う事実状態が長く続くので、その状態を尊重して権利を認める時効の趣旨が当てはまるからである。地主だと思った者に長年地代を払い続けて土地を使っていたような場合がその典型である。したがって、債権である賃借権も時効によって取得できるから、本肢は誤りである。

所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。
| 論点 | 物権 | 債権 |
|---|---|---|
| 消滅時効 | 所有権は消滅しない。地役権・抵当権など所有権以外は消滅しうる(166条2項・291条・396条) | 消滅しうる(166条1項) |
| 妨害排除 | 物権的請求権 | 対抗要件を備えた不動産賃借権は妨害停止・返還を請求できる(605条の4) |
| 一筆の土地の一部 | 特定できれば所有権が成立する | 一部を目的とする契約もできる |
| 債権を目的とすること | 権利質(362条) | 債権を目的とする契約もできる |
| 取得時効 | 所有権(162条)・その他の物権(163条) | 賃借権も取得できる(163条、最判昭43.10.8) |
正しい。承継された二個以上の占有を併せて主張する場合には、善意無過失はその主張に係る最初の占有者の占有開始の時点で判定すれば足りる(最判昭53.3.6)。
162条2項は、10年の取得時効の要件として、占有の開始の時に善意であり、かつ過失がなかったことを求める。187条1項は、占有者の承継人は自己の占有のみを主張し、又は前の占有者の占有を併せて主張することができると定め、同条2項は、前の占有者の占有を併せて主張する場合にはその瑕疵をも承継するとする。最判昭53.3.6は、162条2項は占有主体に変更があって承継された二個以上の占有が併せて主張される場合にも適用され、その場合には最初の占有者についてその占有開始の時点で善意無過失を判定すれば足りるとした。併せて主張された占有は一個の占有として扱われるので、その占有の始まりで善意無過失を判断するのが同項の文言にも合うからである。前の占有者が善意無過失なら、承継人が悪意でも10年の時効を主張でき、逆に前の占有者の悪意も承継される。したがって、本肢は正しい。

10年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする民法162条2項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点においてこれを判定すれば足りるものと解するのが相当である。
- 相続による占有の承継:事実的支配がなくても当然に承継する(最判昭44.10.30)
- 承継人の選択:自己の占有のみか、前の占有者の占有を併せて主張するかを選べる(187条1項)
- 併せて主張した場合:瑕疵も承継し、善意無過失は最初の占有者の開始時で判定する(187条2項・最判昭53.3.6)
- 社団から法人へ:187条1項を適用し、法人格取得の日を起算点にもできる(最判平元.12.22)
- 他主占有者の相続人:所有の意思に基づく事情は相続人が証明する(最判平8.11.12)
正しい。占有者は善意で占有するものと推定される(民法186条1項)から、短期取得時効の善意は原告が立証する必要がなく、被告が原告の悪意について立証責任を負う。
民法162条2項は、10年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有した者が、占有の開始の時に善意無過失であったときに所有権を取得すると定めるので、本来は時効取得を主張する原告が善意について立証責任を負うはずである。しかし民法186条1項は、占有者は所有の意思をもって善意で平穏かつ公然と占有をするものと推定すると定める。これは前提事実を要せず、占有という要件事実から他の要件を推定するもので、暫定真実と呼ばれ、実質的には立証責任を転換する働きを持つ。そのため、原告は善意を立証しなくてよく、時効取得を争う被告が、占有開始時に原告が悪意であったことを抗弁として主張立証しなければならない。なお、無過失は推定されないので、原告が立証する。肢は正しい。

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
- 法律上の事実推定:前提事実の証明で推定事実が認められ、相手方は推定事実の不存在を証明しなければならない(民法186条2項・619条1項)
- 暫定真実:前提事実なしに、ある要件事実から同じ効果の他の要件が推定される(民法186条1項の善意・平穏・公然)
- 事実上の推定:裁判官の経験則による推認で、相手方は反証で崩せる(登記の推定力、印影からの押印意思の推認)
- 擬制(みなす):反対の証明を許さない(借地借家法26条1項の法定更新)
誤り。違うのは「所有権に基づいて不動産を占有していた場合には、取得時効は成立しない」の部分である。判例は、所有権に基づいて不動産を占有する者についても162条の適用があるとした(最判昭42.7.21)。
162条は、所有の意思をもって平穏かつ公然と「他人の物」を占有した者はその所有権を取得すると定める。判例(最判昭42.7.21)は、所有権に基づいて不動産を占有する者についても162条の適用があるとし、その理由として、同条が時効取得の対象物を他人の物としたのは、通常の場合に自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにほかならず、自己の物について取得時効の援用を許さない趣旨ではないとした。取得時効は、長期間継続した事実状態を尊重して権利関係を安定させるとともに、古い取引について権利取得の証明が困難になった占有者を救済する制度である。売買で買い受けたが登記がなく、その証明が難しい場合などに、自己の物であっても取得時効を主張できるとすることで、所有権の証明の困難から占有者を守ることができる。本肢は誤りである。

二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
- 所有の意思(自主占有)・平穏・公然・占有の継続(162条)。これらは推定される(186条)
- 期間:20年。占有開始の時に善意無過失なら10年(162条2項)
- 善意無過失の判定:占有開始の時を基準とし、後に悪意となっても影響しない
- 自己の物:所有権に基づいて占有する者も取得時効を主張できる(最判昭42.7.21)
- 占有を奪われた場合:時効は中断する(164条)が、占有回収の訴えで占有を回復すれば継続していたものとされる(203条ただし書)
誤り。違うのは「占有継続中に他人の物であることを知った場合には、悪意の占有者として時効期間が計算される」の部分である。善意無過失は占有の開始の時に判定され、その後悪意となっても10年の時効期間は変わらない(162条2項)。
162条2項は、10年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得すると定める。同項は善意無過失の基準時を「占有の開始の時」と明示しているから、占有開始の時に善意無過失であれば、その後に他人の物であることを知っても、時効期間は10年のままである。占有を始めるときに正当な取得原因があると過失なく信じた者は、その信頼に基づいて財産を利用し投資するのであり、後で真実を知ったからといって、それまでの信頼を失わせて20年を要するとすると、占有者の地位が不安定になるからである。また、占有を併せて主張する場合も、善意無過失は最初の占有者の占有開始時で判定される(最判昭53.3.6)。本肢は誤りである。

十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
- 所有の意思(自主占有)・平穏・公然・占有の継続(162条)。これらは推定される(186条)
- 期間:20年。占有開始の時に善意無過失なら10年(162条2項)
- 善意無過失の判定:占有開始の時を基準とし、後に悪意となっても影響しない
- 自己の物:所有権に基づいて占有する者も取得時効を主張できる(最判昭42.7.21)
- 占有を奪われた場合:時効は中断する(164条)が、占有回収の訴えで占有を回復すれば継続していたものとされる(203条ただし書)

