1抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
この条文の過去問 9問
正しい。財産権を目的とする権利質(362条1項)や、地上権・永小作権を目的とする抵当権(369条2項)のように、物権が権利を目的として成立することがある。
物権は物を直接支配する権利であり、その客体は有体物(85条)であるのが原則であるが、民法は権利そのものを客体とする物権を明文で認めている。362条1項は、質権は財産権をその目的とすることができると定めており、債権や株式などの財産権を目的とする権利質が成立する。また369条2項は、地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができると定めており、土地そのものではなく用益物権という権利の上に抵当権が成立する。いずれも、権利にも交換価値があり、それを担保として把握する必要があるからである。このほか205条は、自己のためにする意思をもって財産権を行使する準占有に占有の規定を準用している。肢は物権が権利を目的として成立することがあるとしており、正しい。

質権は、財産権をその目的とすることができる。/地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
- 一筆の土地の一部:特定できれば所有権が成立し、譲渡・時効取得の対象になる(大連判大13.10.7)
- 集合物:種類・所在場所・量的範囲で特定された集合動産は1個の譲渡担保の目的になる(最判昭54.2.15)
- 財団抵当:工場財団などは多数の物を1個の物とみなして抵当権を設定する
- 権利の上の物権:権利質(362条)、地上権・永小作権を目的とする抵当権(369条2項)
誤り。違うのは「無効である」の部分である。被担保債権は金銭債権に限られず、物の引渡請求権も不履行で損害賠償請求権に変われば抵当権で担保できるので、その設定契約は有効である。
369条1項は、抵当権者は債務の担保に供された不動産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると定めるだけで、被担保債権を金銭債権に限っていない。物の引渡請求権のような金銭債権以外の債権も、債務不履行があれば履行に代わる損害賠償請求権(415条)という金銭債権に変わるので、その段階で抵当不動産の換価代金から優先弁済を受けることができる。したがって、物の引渡請求権を被担保債権として抵当権を設定することに支障はなく、その契約は有効である。登記の面でも、不動産登記法は、債権額が一定の金額でないときはその債権の価額を抵当権の登記事項としており、金銭債権以外の債権を担保する抵当権を予定している。肢は無効としており、誤っている。

抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 成立:被担保債権は設定時に存在しなくてよく、将来の貸付金・求償権も担保できる(大判明38.12.6・最判昭33.5.9)
- 被担保債権の種類:金銭債権に限られず、物の引渡請求権も担保できる
- 消滅:被担保債権が弁済等で消滅すれば抵当権も消滅する
- 根抵当権:一定の範囲の不特定の債権を極度額の限度で担保する(398条の2)
誤り。違うのは「無効である」の部分である。被担保債権は金銭債権に限られず、物の引渡請求権も不履行で損害賠償請求権に変われば抵当権で担保できるので、その設定契約は有効である。
369条1項は、抵当権者は債務の担保に供された不動産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると定めるだけで、被担保債権を金銭債権に限っていない。物の引渡請求権のような金銭債権以外の債権も、債務不履行があれば履行に代わる損害賠償請求権(415条)という金銭債権に変わるので、その段階で抵当不動産の換価代金から優先弁済を受けることができる。したがって、物の引渡請求権を被担保債権として抵当権を設定することに支障はなく、その契約は有効である。登記の面でも、不動産登記法は、債権額が一定の金額でないときはその債権の価額を抵当権の登記事項としており、金銭債権以外の債権を担保する抵当権を予定している。肢は無効としており、誤っている。

抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 成立:被担保債権は設定時に存在しなくてよく、将来の貸付金・求償権も担保できる(大判明38.12.6・最判昭33.5.9)
- 被担保債権の種類:金銭債権に限られず、物の引渡請求権も担保できる
- 消滅:被担保債権が弁済等で消滅すれば抵当権も消滅する
- 根抵当権:一定の範囲の不特定の債権を極度額の限度で担保する(398条の2)
正しい。地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができる(369条2項)。
抵当権は不動産を目的とするのが原則であるが(369条1項)、同条2項は、地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができ、この場合には抵当権の章の規定を準用すると定めている。地上権と永小作権は登記できる物権であり、登記によって権利の存在と内容を公示できるので、目的物の占有を移さない抵当権の目的にしても第三者に不測の損害を与えないからである。また、これらの用益物権は譲渡でき、交換価値を持つので、担保として把握する意味がある。これに対し、不動産の賃借権は債権であり、369条2項に挙げられていないので、それ自体を抵当権の目的とすることはできない。借地上の建物の抵当権が敷地の賃借権に及ぶのは、建物の従たる権利として効力が及ぶという別の問題である。肢は永小作権を目的として抵当権を設定できるとしており、条文のとおりで正しい。

地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
誤り。違うのは地上権も「抵当権の目的とすることができない」とする部分である。地上権は抵当権の目的とすることができる(369条2項)。
369条2項は、地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができ、その場合には抵当権の章の規定を準用すると定める。地上権は物権として譲渡性を持ち、登記で公示されるので、その交換価値を担保に取ることができるのである。抵当権が実行されれば、地上権は競売によって買受人に移転する。したがって、地上権が抵当権の目的とならないとする点で本肢は誤りである。これに対し、土地賃借権は債権であり、369条2項が挙げる権利に含まれないので、それ自体を抵当権の目的とすることはできない。もっとも、借地上の建物に抵当権が設定されれば、その効力は建物の従たる権利である敷地の賃借権にも及び、建物の買受人は建物とともに敷地の賃借権を取得する(最判昭40.5.4)。本肢は前半の地上権について誤っている。

地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
| 項目 | 地上権 | 土地賃借権 |
|---|---|---|
| 権利の性質 | 物権 | 債権 |
| 土地を使用に適する状態にする義務 | 土地所有者は負わない | 賃貸人は修繕義務を負う(606条1項) |
| 譲渡 | 承諾不要 | 賃貸人の承諾(612条1項)か裁判所の許可(借地借家法19条)が要る |
| 抵当権の目的 | なる(369条2項) | ならない |
| 時効取得 | できる(163条) | できる(最判昭43.10.8) |
| 有益費の償還 | 回復者の選択(196条2項) | 賃貸人の選択(608条2項・196条2項) |
誤り。違うのは「換価金から優先的に弁済を受けることができる」の部分である。留置権者は競売を申し立てることはできるが(民事執行法195条)、留置権に優先弁済権はない。
民事執行法195条は、留置権による競売は担保権の実行としての競売の例によると定めており、留置権者は留置物の競売を申し立てることができる。留置権者は物を保管し続けなければならず(298条1項)、その負担から解放される必要があるからである。本肢の前段は正しい。しかし、留置権は物を留め置いて債務者に心理的な圧力を加え、事実上弁済を促す効力を持つにとどまり、法律上の優先弁済権を伴わない。優先弁済権を明文で認めているのは先取特権(303条)、質権(342条)、抵当権(369条1項)であり、留置権にはこれに当たる規定がない。そのため、留置権による競売は換価のための手続にすぎず、換価金から他の債権者に先立って弁済を受けることはできない。なお、留置物から生じた果実を他の債権者に先立って弁済に充てられる(297条1項)のは、果実についての特別の規定である。

留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。
- 留置権(法定):物上代位性・優先弁済的効力はない。留置的効力と競売申立権(民事執行法195条)がある
- 先取特権(法定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
- 質権(約定):物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力がある
- 抵当権(約定):物上代位性・優先弁済的効力がある。留置的効力はない
誤り。違うのは「抵当権の目的とすることができない」の部分である。地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができる(369条2項)。
369条2項は、地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができ、この場合には抵当権の章の規定を準用すると定める。抵当権は目的物の交換価値を把握し、競売によって換価して優先弁済を受ける権利であるから、目的となるのは独立して譲渡でき、登記で公示できる財産権でなければならない。地上権は物権であり、土地所有者の承諾なしに譲渡でき、登記によって公示されるから、競売で第三者に移転させて換価することができ、抵当権の目的に適している。これに対し、土地の賃借権は債権であり、譲渡には賃貸人の承諾が必要であるため(612条1項)、369条2項に挙げられておらず、抵当権の目的とはならない。地上権と賃借権は、どちらも他人の土地を使う権利であるが、物権か債権かによって処分の自由が違い、その違いが抵当権の目的になるかどうかにも表れる。本肢は地上権への抵当権の設定を否定している点が誤りである。

地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
正しい。抵当権設定契約は抵当権者と設定者の合意だけで成立する不要式の契約であり、書面は要らず、設定登記は第三者に対抗するための要件にすぎない(177条)。
369条1項は、抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると定める。抵当権は、抵当権者と、抵当目的物の所有者である設定者との間の設定契約によって成立する約定担保物権であり、その設定契約は合意だけで成立し、書面の作成や目的物の引渡しを要しない。目的物の占有を設定者に残したまま担保とするので、質権のような引渡しは要件とならないのである。抵当権の設定の登記は、抵当権の取得を第三者に対抗するための要件であり(177条)、抵当権設定契約の成立要件や効力要件ではない。そのため、登記がなくても当事者の間では抵当権は有効に成立し、抵当権者は設定者に対して登記手続を請求することもできる。したがって、本肢は正しい。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
- 書面が効力要件:保証契約(446条2項・3項)、個人根保証の極度額の定め(465条の2第3項)、書面でする消費貸借(587条の2)
- 公正証書が効力要件:事業のための貸金等債務の個人保証の保証意思(465条の6)、事業用定期借地権、任意後見契約
- 諾成・不要式:売買・贈与・使用貸借・賃貸借・委任・請負・寄託・組合・死因贈与・抵当権設定契約
- 書面の有無で引渡し前の解除が変わる:贈与(550条)・使用貸借(593条の2)・無報酬の寄託(657条の2第2項)
正しい。抵当権は債務不履行の後に生じた果実に及ぶが(371条)、所有者の果実収取権は物上代位や担保不動産収益執行がされるまで失われないので、それまでに収受した果実は不当利得にならない。
371条は、抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶと定める。抵当権は、目的物の使用収益を設定者に委ねたまま担保とする非占有担保であるから、設定者が抵当不動産を使用し、果実を収取するのが原則である。371条は、債務不履行が生じた後は、抵当権者が果実から優先弁済を受けられるようにするため、賃料への物上代位や担保不動産収益執行(民事執行法)の基礎として、抵当権の効力が果実に及ぶことを明らかにしたものである。もっとも、抵当権者がこれらの手続をとるまでは、所有者の果実収取権は失われないから、所有者が債務不履行後に生じた果実を収受しても、法律上の原因を欠くものではなく、不当利得にはならない。本肢は正しい。

抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。















