第369条抵当権の内容過去問 7
1抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
この条文の過去問 7問
物権は,権利を目的として成立することがある。
解説
本肢は正しい。物権は物を直接支配する権利であるから、その客体は有体物(民法85条)であるのが原則であるが、民法は権利それ自体を客体とする物権を明文で認めている。第一に、権利質である。民法362条1項は財産権を目的として質権を設定することができる旨を定め、同条2項は権利質について質権の規定を準用しており、債権や株式などの財産権が担保物権の客体となる。第二に、民法369条2項前段は、地上権および永小作権を抵当権の目的とすることができると定めており、不動産そのものではなく用益物権という権利の上に抵当権が成立する。第三に、民法348条の転質は、質権者が自己の債務の担保として質物の上に質権を設定するものであり、これを権利の上の物権と説明する見解も有力である。このほか、財産権を客体とする点では、民法205条が準占有(自己のためにする意思をもって財産権を行使する場合)を定めていることも、物権法の規律が権利に及ぶことを示している。したがって、権利を目的として物権が成立することがあるとする本肢は正しい。
物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は,無効である。
解説
本肢は誤り。369条1項は、抵当権者が「債権の担保に供した不動産」から優先弁済を受ける権利を有すると定めるにとどまり、被担保債権を金銭債権に限定していない。抵当権は債権の弁済を確保するための担保物権であるところ、被担保債権が金銭債権でなくとも、債務不履行があれば履行に代わる損害賠償請求権(415条2項、なお同条1項)という金銭債権に転化するから、その段階で目的不動産の換価代金から優先弁済を受けさせることが可能である。したがって、物の引渡請求権のような非金銭債権であっても、被担保債権とすることに支障はなく、これを担保するための抵当権設定契約は有効である。
手続面でも、非金銭債権を被担保債権とする抵当権の登記が想定されており、不動産登記法83条1項1号は、債権額が一定の金額でないときはその債権の価額を登記事項とする旨を定めている。これは、金銭債権以外の債権を被担保債権とする抵当権が認められることを前提とした規定にほかならない。
よって、物の引渡請求権を担保するための抵当権設定契約を一律に無効とする本肢の記述は誤りであり、ウとともに誤っているものの組合せを構成する。
物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は,無効である。
解説
本肢は誤り。369条1項は、抵当権者が「債権の担保に供した不動産」から優先弁済を受ける権利を有すると定めるにとどまり、被担保債権を金銭債権に限定していない。抵当権は債権の弁済を確保するための担保物権であるところ、被担保債権が金銭債権でなくとも、債務不履行があれば履行に代わる損害賠償請求権(415条2項、なお同条1項)という金銭債権に転化するから、その段階で目的不動産の換価代金から優先弁済を受けさせることが可能である。したがって、物の引渡請求権のような非金銭債権であっても、被担保債権とすることに支障はなく、これを担保するための抵当権設定契約は有効である。
手続面でも、非金銭債権を被担保債権とする抵当権の登記が想定されており、不動産登記法83条1項1号は、債権額が一定の金額でないときはその債権の価額を登記事項とする旨を定めている。これは、金銭債権以外の債権を被担保債権とする抵当権が認められることを前提とした規定にほかならない。
よって、物の引渡請求権を担保するための抵当権設定契約を一律に無効とする本肢の記述は誤りであり、ウとともに誤っているものの組合せを構成する。
抵当権は,永小作権を目的として設定することができる。
解説
本肢は正しい。抵当権は不動産を目的とするのが原則であるが(369条1項)、同条2項前段は「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる」と定め、これらの用益物権を抵当権の目的とすることを明文で認めている。この場合には抵当権に関する規定が準用される(同項後段)。地上権・永小作権が抵当権の目的とされているのは、これらが登記することのできる物権であり(不動産登記法3条3号・4号)、登記による公示が可能であるため、目的物の占有を移転しない非占有担保である抵当権の目的としても第三者に不測の損害を与えないからである。これに対し、不動産賃借権や使用借権は、賃借権につき登記が可能な場合があるとしてもあくまで債権であって、369条2項に列挙されていないから抵当権の目的とすることはできない(もっとも、抵当不動産の従たる権利として敷地賃借権に抵当権の効力が及ぶことは別問題である)。よって、永小作権を目的として抵当権を設定できるとする本肢は条文どおりであり、正しい。
地上権と土地賃借権は,いずれも抵当権の目的とすることができない。
解説
本肢は誤り。抵当権は不動産の所有権のほか、地上権及び永小作権を目的として設定することができる(民法369条2項前段)。同項後段は、この場合に抵当権の章の規定を準用すると定めており、地上権を目的とする抵当権も、その登記(不動産登記法上、地上権の登記に対する付記登記)によって対抗要件を備え、実行時には地上権が競売により買受人に移転する。したがって、地上権が抵当権の目的とならないとする点で本肢は誤っている。
これに対し、土地賃借権は債権であり、369条2項が列挙する物権ではないから、これ自体を抵当権の目的とすることはできない。もっとも、借地上の建物に抵当権が設定された場合には、抵当権の効力は建物の従たる権利である敷地の賃借権にも及び、建物競売による買受人は建物所有権とともに敷地賃借権を取得するのが判例である(最判昭和40年5月4日民集19巻4号811頁)。この場合、買受人が賃貸人の承諾を得られないときは、借地借家法20条1項の借地権譲受許可の裁判によって処理される。すなわち、地上権と土地賃借権とでは抵当権の目的適格に差があり、両者をひとしく否定する本肢の記述は妥当でない。
留置権者は,留置物について留置権に基づき競売を申し立てることができ,換価金から優先的に弁済を受けることができる。
解説
本肢は誤り。留置権者が留置物について競売を申し立てること自体は認められているが、その換価金から優先的に弁済を受けることはできない。後段が誤っている。
まず前段について、民事執行法195条は「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による」と定めており、留置権者は形式競売(換価のための競売)を申し立てることができる。留置権者は目的物を保管し続けなければならず(298条1項の善管注意義務)、その負担から解放される必要があるためである。
しかし、留置権は目的物を留置して債務者に心理的圧迫を加え、事実上弁済を促すという効力(事実上の優先弁済的効力)を有するにとどまり、法律上の優先弁済権を伴わない。優先弁済権を明文で認めるのは、先取特権(303条)、質権(342条)、抵当権(369条1項)であり、留置権にはこれに対応する規定が存在しない。したがって、民事執行法195条による競売は担保権実行としての競売の手続を借用するだけの換価手続にすぎず、その売却代金は本来所有者(債務者)に交付されるべきものである。留置権者は、交付されるべき代金の上に留置権類似の地位を及ぼす(あるいは引渡しを拒む)にとどまり、他の債権者が配当要求をした場合には、一般債権者として債権額に応じた按分弁済を受けるにすぎない。
なお、留置権者が留置物から生じた果実については、297条により他の債権者に先立って弁済に充当することができるが、これは果実に限った例外であり、留置権に一般的な優先弁済権を認めたものではない。
地上権は,抵当権の目的とすることができない。
解説
本肢は誤り。民法369条2項前段は「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる」と定めており、同項後段はこの場合に抵当権の章の規定を準用するとしている。抵当権の目的となる権利は不動産所有権に限られず、独立の財産的価値を有し、かつ登記によって公示され換価が可能な用益物権である地上権・永小作権にも抵当権の設定が認められている。地上権は物権であって譲渡性・処分性を有し(賃借権と異なり賃貸人の承諾を要しない)、競売により第三者に移転させて優先弁済を受けることが可能であるから、抵当権の把握する交換価値の目的として適することがその実質的理由である。これに対し、不動産賃借権は債権であり譲渡に賃貸人の承諾を要する(612条1項)ことから、369条2項の列挙には含まれず抵当権の目的とはならない。したがって、地上権は抵当権の目的とすることができるのであり、これを否定する本肢は誤りである。