第3節
民法取得日 2026年9月6日この範囲 3条 ・ 過去問 15問
第3節
第396条抵当権の消滅時効過去問 6
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
この条文の過去問 6問
2025年 司法試験 第14問 肢ア
Bの抵当権の被担保債権の債務者Cが甲土地の所有権を時効により取得したときは、Bの抵当権は、消滅する。
解説
誤り。違うのは「Bの抵当権は、消滅する」の部分である。
取得時効による所有権の取得は原始取得なので、本来は抵当権の負担のない所有権を得ることになりそうである。しかし397条は、債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは抵当権はこれによって消滅すると定め、時効取得で抵当権が消える主体を債務者・設定者以外の者に限っている。反対に、被担保債権の債務者や抵当権設定者が時効取得しても、抵当権は消えない。396条が、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効で消滅しないと定めるのと同じ考え方である。自分で債務を負い、又は担保を差し出した者が、債務を払わないまま時効を理由に抵当権だけを消すのは信義に反するからである。Cは被担保債権の債務者なので、甲土地を時効取得してもBの抵当権は消えない。

民法397条
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
2020年 予備試験 第5問 肢ア
Aは,抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば,被担保債権が消滅していなくても,抵当権が時効により消滅したと主張することができる。
解説
誤り。違うのは「被担保債権が消滅していなくても,抵当権が時効により消滅したと主張することができる」の部分である。抵当権は、債務者及び設定者に対しては、被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条)。
396条は、抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しないと定める。抵当権は被担保債権を担保するための権利であるから、債務を負っている債務者や自ら担保を差し出した設定者が、債務を残したまま抵当権だけを時効で消し、債権者を無担保の状態にすることは、担保を設定した趣旨に反するからである。本問のAは債務者であり、自分の所有する甲に抵当権を設定した設定者でもあるから、396条がそのまま当てはまる。したがって、抵当権を実行できる時から20年が経過しても、被担保債権が残っている限り、Aは抵当権が時効で消滅したと主張することはできない。20年という期間は、債権又は所有権以外の財産権の消滅時効(166条2項)を意識したものであるが、抵当権が被担保債権と離れて単独で時効消滅することがあるとしても、それは債務者・設定者以外の者との関係にとどまる。被担保債権そのものが時効で消滅すれば、付従性により抵当権も消滅する。

民法396条
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
ポイント整理
抵当権の消滅
- 被担保債権の弁済・時効:付従性により抵当権も消滅する
- 抵当権だけの時効消滅:債務者・設定者に対してはできない(396条)。第三取得者などに対してはできる
- 抵当不動産の時効取得:債務者・設定者以外の者の時効取得で消滅する(397条)
- 抵当権者による所有権の取得:後順位抵当権者がいる第一順位は消えない(179条1項ただし書)
- 競売による売却:申立人や順位を問わず全部の抵当権が消える(民事執行法59条1項)
- 目的物の滅失:故意によるものでも消える。保険金請求権などに物上代位できる
2020年 司法試験 第12問 肢ア
Aは,抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば,被担保債権が消滅していなくても,抵当権が時効により消滅したと主張することができる。
解説
誤り。違うのは「被担保債権が消滅していなくても,抵当権が時効により消滅したと主張することができる」の部分である。抵当権は、債務者及び設定者に対しては、被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条)。
396条は、抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しないと定める。抵当権は被担保債権を担保するための権利であるから、債務を負っている債務者や自ら担保を差し出した設定者が、債務を残したまま抵当権だけを時効で消し、債権者を無担保の状態にすることは、担保を設定した趣旨に反するからである。本問のAは債務者であり、自分の所有する甲に抵当権を設定した設定者でもあるから、396条がそのまま当てはまる。したがって、抵当権を実行できる時から20年が経過しても、被担保債権が残っている限り、Aは抵当権が時効で消滅したと主張することはできない。20年という期間は、債権又は所有権以外の財産権の消滅時効(166条2項)を意識したものであるが、抵当権が被担保債権と離れて単独で時効消滅することがあるとしても、それは債務者・設定者以外の者との関係にとどまる。被担保債権そのものが時効で消滅すれば、付従性により抵当権も消滅する。

民法396条
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
ポイント整理
抵当権の消滅
- 被担保債権の弁済・時効:付従性により抵当権も消滅する
- 抵当権だけの時効消滅:債務者・設定者に対してはできない(396条)。第三取得者などに対してはできる
- 抵当不動産の時効取得:債務者・設定者以外の者の時効取得で消滅する(397条)
- 抵当権者による所有権の取得:後順位抵当権者がいる第一順位は消えない(179条1項ただし書)
- 競売による売却:申立人や順位を問わず全部の抵当権が消える(民事執行法59条1項)
- 目的物の滅失:故意によるものでも消える。保険金請求権などに物上代位できる
2014年 予備試験 第6問 肢エ
抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば,抵当権設定者は,抵当権者に対し,時効による抵当権の消滅を主張することができる。
解説
誤り。違うのは「抵当権設定者は,抵当権者に対し,時効による抵当権の消滅を主張することができる」の部分である。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条)。
396条は、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しないと定める。抵当権の負担を負う債務者や設定者が、被担保債権が残っているのに担保だけを時効で消滅させられるとするのは、債権を担保するという抵当権の趣旨と付従性に反するからである。したがって、抵当権設定者との関係では、被担保債権が消滅時効にかからない限り、抵当権だけが独立して時効で消滅することはない。これに対し、396条の反対解釈として、抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者など債務者・設定者以外の者との関係では、抵当権は被担保債権と別に、所有権以外の財産権として権利を行使できる時から20年で時効消滅しうる(166条2項)。肢は、396条によって排除されている抵当権設定者にこの20年の枠組みを当てはめている点で誤っている。抵当不動産を占有する者が取得時効の要件を満たした場合の抵当権の消滅は、397条が別に定めている。

民法396条
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
ポイント整理
抵当権の消滅
- 被担保債権の弁済・混同:付従性により抵当権も消滅する
- 抵当権だけの時効消滅:債務者・設定者に対してはできない(396条)。第三取得者に対してはできる
- 抵当不動産の時効取得:債務者・設定者以外の者の時効取得で消滅する(397条)
- 抵当権者による所有権の取得:後順位抵当権者がいれば第一順位は消えない(179条1項ただし書)
2014年 司法試験 第14問 肢エ
抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば,抵当権設定者は,抵当権者に対し,時効による抵当権の消滅を主張することができる。
解説
誤り。違うのは「抵当権設定者は,抵当権者に対し,時効による抵当権の消滅を主張することができる」の部分である。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条)。
396条は、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しないと定める。抵当権の負担を負う債務者や設定者が、被担保債権が残っているのに担保だけを時効で消滅させられるとするのは、債権を担保するという抵当権の趣旨と付従性に反するからである。したがって、抵当権設定者との関係では、被担保債権が消滅時効にかからない限り、抵当権だけが独立して時効で消滅することはない。これに対し、396条の反対解釈として、抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者など債務者・設定者以外の者との関係では、抵当権は被担保債権と別に、所有権以外の財産権として権利を行使できる時から20年で時効消滅しうる(166条2項)。肢は、396条によって排除されている抵当権設定者にこの20年の枠組みを当てはめている点で誤っている。抵当不動産を占有する者が取得時効の要件を満たした場合の抵当権の消滅は、397条が別に定めている。

民法396条
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
ポイント整理
抵当権の消滅
- 被担保債権の弁済・混同:付従性により抵当権も消滅する
- 抵当権だけの時効消滅:債務者・設定者に対してはできない(396条)。第三取得者に対してはできる
- 抵当不動産の時効取得:債務者・設定者以外の者の時効取得で消滅する(397条)
- 抵当権者による所有権の取得:後順位抵当権者がいれば第一順位は消えない(179条1項ただし書)
2012年 司法試験 第9問 肢1
債権は時効により消滅することがあるが,物権は時効により消滅することはない。
解説
誤り。違うのは「物権は時効により消滅することはない」の部分である。所有権は時効で消滅しないが、地役権や抵当権など所有権以外の物権は消滅時効にかかりうる(166条2項・291条・396条)。
債権は、権利を行使できることを知った時から5年間、又は行使できる時から10年間行使しないときは時効によって消滅する(166条1項)から、前段は正しい。後段について、166条2項は、債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは時効によって消滅すると定める。時効によって消滅しないのは所有権だけであり、地上権や地役権など所有権以外の物権は消滅時効にかかりうる。地役権については、消滅時効の期間の起算点を定める規定も置かれている(291条)。抵当権も、債務者及び抵当権設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しないが(396条)、それ以外の者、たとえば抵当不動産の第三取得者との関係では、抵当権だけが20年の消滅時効にかかると解されている。所有権が消滅時効にかからないのは、物を全面的に支配する権利であり、行使しないことも所有者の自由だからである。本肢は物権一般の時効消滅を否定している点が誤りである。

民法166条2項
債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
ポイント整理
物権と債権の対比(本問の論点)
| 論点 | 物権 | 債権 |
|---|
| 消滅時効 | 所有権は消滅しない。地役権・抵当権など所有権以外は消滅しうる(166条2項・291条・396条) | 消滅しうる(166条1項) |
| 妨害排除 | 物権的請求権 | 対抗要件を備えた不動産賃借権は妨害停止・返還を請求できる(605条の4) |
| 一筆の土地の一部 | 特定できれば所有権が成立する | 一部を目的とする契約もできる |
| 債権を目的とすること | 権利質(362条) | 債権を目的とする契約もできる |
| 取得時効 | 所有権(162条)・その他の物権(163条) | 賃借権も取得できる(163条、最判昭43.10.8) |
第397条抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅過去問 3
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
この条文の過去問 3問
2025年 司法試験 第14問 肢ア
Bの抵当権の被担保債権の債務者Cが甲土地の所有権を時効により取得したときは、Bの抵当権は、消滅する。
解説
誤り。違うのは「Bの抵当権は、消滅する」の部分である。
取得時効による所有権の取得は原始取得なので、本来は抵当権の負担のない所有権を得ることになりそうである。しかし397条は、債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは抵当権はこれによって消滅すると定め、時効取得で抵当権が消える主体を債務者・設定者以外の者に限っている。反対に、被担保債権の債務者や抵当権設定者が時効取得しても、抵当権は消えない。396条が、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効で消滅しないと定めるのと同じ考え方である。自分で債務を負い、又は担保を差し出した者が、債務を払わないまま時効を理由に抵当権だけを消すのは信義に反するからである。Cは被担保債権の債務者なので、甲土地を時効取得してもBの抵当権は消えない。

民法397条
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
2013年 予備試験 第7問 肢2
債務者が所有する不動産に抵当権が設定され,その登記がされている場合,その債務者が当該不動産を10年間継続して占有したとしても,その債務者は,抵当権者に対し,抵当権の負担のない所有権を時効により取得したとして,抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない。
解説
正しい。取得時効によって抵当権が消滅するのは、債務者又は抵当権設定者でない者が占有した場合に限られるから、債務者は抵当権の負担のない所有権を時効取得したと主張できない(397条)。
397条は、債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権はこれによって消滅すると定める。取得時効は原始取得であるから、第三者が抵当不動産を時効取得すれば、その上の抵当権も消滅するのが筋である。しかし同条は、債務者と抵当権設定者をその対象から除いている。債務者や抵当権設定者は、自ら被担保債権を負い又は抵当権の負担を引き受けた者であり、その者が目的物を占有し続けたからといって抵当権の消滅を主張できるとすれば、債務を払わずに担保だけを免れることになり不合理だからである。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条)こととも同じ考え方である。本肢の債務者は自分の不動産に抵当権を設定した者であり、10年間占有したとしても、抵当権の負担のない所有権を時効取得したとして抵当権設定登記の抹消を請求することはできない。したがって肢は正しい。

民法397条
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
ポイント整理
抵当権の消滅
- 被担保債権の弁済・混同:付従性により抵当権も消滅する
- 抵当権だけの時効消滅:債務者・設定者に対してはできない(396条)
- 抵当不動産の時効取得:債務者・設定者以外の者の時効取得で消滅する(397条)
- 競売による売却:順位を問わず全部の抵当権が消滅する(民事執行法59条1項)
2013年 司法試験 第15問 肢2
債務者が所有する不動産に抵当権が設定され,その登記がされている場合,その債務者が当該不動産を10年間継続して占有したとしても,その債務者は,抵当権者に対し,抵当権の負担のない所有権を時効により取得したとして,抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない。
解説
正しい。取得時効によって抵当権が消滅するのは、債務者又は抵当権設定者でない者が占有した場合に限られるから、債務者は抵当権の負担のない所有権を時効取得したと主張できない(397条)。
397条は、債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権はこれによって消滅すると定める。取得時効は原始取得であるから、第三者が抵当不動産を時効取得すれば、その上の抵当権も消滅するのが筋である。しかし同条は、債務者と抵当権設定者をその対象から除いている。債務者や抵当権設定者は、自ら被担保債権を負い又は抵当権の負担を引き受けた者であり、その者が目的物を占有し続けたからといって抵当権の消滅を主張できるとすれば、債務を払わずに担保だけを免れることになり不合理だからである。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条)こととも同じ考え方である。本肢の債務者は自分の不動産に抵当権を設定した者であり、10年間占有したとしても、抵当権の負担のない所有権を時効取得したとして抵当権設定登記の抹消を請求することはできない。したがって肢は正しい。

民法397条
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
ポイント整理
抵当権の消滅
- 被担保債権の弁済・混同:付従性により抵当権も消滅する
- 抵当権だけの時効消滅:債務者・設定者に対してはできない(396条)
- 抵当不動産の時効取得:債務者・設定者以外の者の時効取得で消滅する(397条)
- 競売による売却:順位を問わず全部の抵当権が消滅する(民事執行法59条1項)
第398条抵当権の目的である地上権等の放棄過去問 6
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
この条文の過去問 6問
2023年 予備試験 第3問 肢オ
永小作権を目的として抵当権を設定した永小作人は、その永小作権を放棄したとしても、その放棄をもって抵当権者に対抗することができない。
解説
正しい。398条により、永小作権を抵当権の目的とした永小作人は、その権利を放棄しても抵当権者に対抗できない。
抵当権は不動産のほか、地上権と永小作権を目的として設定することができる(369条2項)。この場合、抵当権者は地上権や永小作権の交換価値を把握している。権利者が自分でその権利を放棄すると抵当権の客体がなくなり、抵当権者は把握した価値を一方的に奪われることになる。そこで398条は、地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができないと定める。放棄そのものが無効になるのではなく、抵当権者との関係でその効力を主張できないという意味であり、抵当権者は放棄がなかったものとして永小作権の上の抵当権を実行できる。担保を設定した者が自分の行為で担保の価値を損なうことを許さない趣旨である。本肢は永小作権を目的とする抵当権の場面であり、398条のとおりである。

民法398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
2023年 司法試験 第9問 肢オ
永小作権を目的として抵当権を設定した永小作人は、その永小作権を放棄したとしても、その放棄をもって抵当権者に対抗することができない。
解説
正しい。398条により、永小作権を抵当権の目的とした永小作人は、その権利を放棄しても抵当権者に対抗できない。
抵当権は不動産のほか、地上権と永小作権を目的として設定することができる(369条2項)。この場合、抵当権者は地上権や永小作権の交換価値を把握している。権利者が自分でその権利を放棄すると抵当権の客体がなくなり、抵当権者は把握した価値を一方的に奪われることになる。そこで398条は、地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができないと定める。放棄そのものが無効になるのではなく、抵当権者との関係でその効力を主張できないという意味であり、抵当権者は放棄がなかったものとして永小作権の上の抵当権を実行できる。担保を設定した者が自分の行為で担保の価値を損なうことを許さない趣旨である。本肢は永小作権を目的とする抵当権の場面であり、398条のとおりである。

民法398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
2014年 予備試験 第6問 肢イ
土地を賃借し,その土地上に建物を所有している者が,その建物に抵当権を設定した場合であっても,土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したときは,土地の賃貸人は,その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる。
解説
誤り。違うのは「その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる」の部分である。398条の類推により、土地の賃貸借の合意解除は借地上の建物の抵当権者に対抗できない(大判大14.7.18)。
借地上の建物に抵当権が設定されると、建物の所有に欠かせない敷地の賃借権は建物の従たる権利として扱われ、抵当権の効力はこれにも及ぶ。そうであるのに、土地の賃借人が賃貸人と合意して賃借権を自由に消滅させることを認めると、競売で建物を取得した者は敷地を使う権利を失い、抵当権者は把握していた担保価値を一方的に奪われる。398条は、地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても抵当権者に対抗できないと定め、抵当権の目的である用益権を設定者が自ら消滅させても抵当権者には対抗できないとしている。判例は、この趣旨を借地上の建物の抵当権における敷地の賃借権にも及ぼし、賃借権の放棄を抵当権者に対抗できないとし(大判大11.11.24)、賃貸人と賃借人の合意解除についても同様に抵当権者に対抗できないとした(大判大14.7.18)。したがって肢は誤っている。賃料不払などの債務不履行による解除であれば、賃貸人は賃借権の消滅を抵当権者に対抗できる。

民法398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
2014年 司法試験 第14問 肢イ
土地を賃借し,その土地上に建物を所有している者が,その建物に抵当権を設定した場合であっても,土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したときは,土地の賃貸人は,その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる。
解説
誤り。違うのは「その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる」の部分である。398条の類推により、土地の賃貸借の合意解除は借地上の建物の抵当権者に対抗できない(大判大14.7.18)。
借地上の建物に抵当権が設定されると、建物の所有に欠かせない敷地の賃借権は建物の従たる権利として扱われ、抵当権の効力はこれにも及ぶ。そうであるのに、土地の賃借人が賃貸人と合意して賃借権を自由に消滅させることを認めると、競売で建物を取得した者は敷地を使う権利を失い、抵当権者は把握していた担保価値を一方的に奪われる。398条は、地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても抵当権者に対抗できないと定め、抵当権の目的である用益権を設定者が自ら消滅させても抵当権者には対抗できないとしている。判例は、この趣旨を借地上の建物の抵当権における敷地の賃借権にも及ぼし、賃借権の放棄を抵当権者に対抗できないとし(大判大11.11.24)、賃貸人と賃借人の合意解除についても同様に抵当権者に対抗できないとした(大判大14.7.18)。したがって肢は誤っている。賃料不払などの債務不履行による解除であれば、賃貸人は賃借権の消滅を抵当権者に対抗できる。

民法398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
2011年 司法試験 第16問 肢ウ
譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は,強行法規や公序良俗に反しない限り,設定契約の当事者間において元本,利息及び遅延損害金について自由に定めることができ,抵当権の場合におけるような制限はない。
解説
正しい。譲渡担保権によって担保される債権の範囲は、強行法規又は公序良俗に反しない限り当事者間で自由に定めることができ、抵当権の375条のような制約を受けない(最判昭61.7.15)。
判例(最判昭61.7.15)は、譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲については、強行法規又は公序良俗に反しない限り、その設定契約の当事者間において自由にこれを定めることができ、第三者に対する関係においても、抵当権に関する規定(現375条)又は根抵当権に関する398条の3の規定に準ずる制約を受けないとした。抵当権では、利息その他の定期金と遅延損害金は満期となった最後の2年分についてのみ優先弁済を受けられる(375条)。これは、後順位抵当権者など、同じ不動産について後から担保を取る第三者が、登記から優先弁済の額を予測できるようにするための制限である。これに対し、譲渡担保は登記上は所有権の移転という形をとるから、同じ目的物について後順位の担保権者が登場することは実際上考えにくく、こうした第三者を保護する必要が小さい。そのため、375条のような制限を及ぼす理由がないのである。本肢は判例の内容どおりである。

最判昭61.7.15
譲渡担保権によつて担保されるべき債権の範囲については、強行法規又は公序良俗に反しない限り、その設定契約の当事者間において自由にこれを定めることができ、第三者に対する関係においても、抵当権に関する民法三七四条又は根抵当権に関する同法三九八条ノ三の規定に準ずる制約を受けない
ポイント整理
不動産の譲渡担保をめぐる判例
- 効力の及ぶ範囲:借地上の建物の譲渡担保は原則として敷地の賃借権に及ぶ(最判昭51.9.21)
- 被担保債権の範囲:公序良俗等に反しない限り自由に定められ、375条のような制限はない(最判昭61.7.15)
- 弁済期後の処分:帰属清算型でも処分清算型でも処分権能を取得する(最判昭57.1.22・最判平6.2.22)
- 受戻権の放棄:清算金の支払を請求できない(最判平8.11.22)
- 弁済後の譲渡担保権者からの譲受人:背信的悪意者でない限り、設定者は登記がなければ対抗できない(最判昭62.11.12)
2008年 司法試験 第14問 肢ア
A及びBは,土地賃貸借契約を合意解除した。この合意解除に基づいて土地賃貸借契約が終了したことを,BはCに対抗することができない。
解説
正しい。判例は、借地上の建物に抵当権が設定されている場合、398条の趣旨から、土地賃貸借の合意解除による終了を抵当権者に対抗できないとした(大判大14.7.18)。
借地上の建物に設定された抵当権の効力は、建物の従たる権利である土地賃借権にも及ぶ。398条は、地上権又は永小作権を抵当権の目的とした者は、その権利を放棄しても抵当権者に対抗できないと定める。判例(大判大14.7.18)は、建物に抵当権が設定されている場合に、建物所有者が土地所有者と土地賃貸借を合意解除しても、その終了を抵当権者に対抗できないとし、その理由を398条の背後にある原則に求めた。合意解除は当事者の意思で権利を消滅させる点で放棄と同じであり、これを抵当権者に対抗できるとすると、設定者は借地権を消滅させることで抵当権の目的である建物の価値を自由に失わせることができ、抵当権者に不測の損害を与えるからである。したがって、BはCに賃貸借の終了を対抗できない。本肢は正しい。

民法398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
ポイント整理
借地権の消滅を建物の抵当権者に対抗できるか
| 消滅の原因 | 対抗の可否 | 根拠 |
|---|
| 借地権の合意解除 | 対抗できない | 398条の趣旨(大判大14.7.18) |
| 賃料不払による債務不履行解除 | 対抗できる | 抵当権者は545条の第三者でない(最判昭48.11.29) |