相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
この条文の過去問 3問
正しい。相続放棄の効力は絶対的で、何人に対しても登記なしに生じるから、Cは放棄者Bの持分を差し押さえたDに登記なしに単独相続を対抗できる(最判昭42.1.20)。
相続の放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされる(939条)。判例は、民法が相続の承認又は放棄をすべき期間を定めたのは、相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして相続人の利益を守るためであり、家庭裁判所に放棄の申述をすると、相続人は相続開始時にさかのぼって相続開始がなかったのと同じ地位に置かれ、この効力は絶対的で、何人に対しても登記等なくしてその効力を生ずるとした(最判昭42.1.20)。放棄をしたBは初めから相続人でなかったことになるから、Bの持分はもともと存在せず、Bが共同相続したものとしてされた登記は実体に合わない無効のものであり、それを前提とするDの差押えも効力を持たない。したがって、Cは登記をしなくても、Dに対して単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。遺産分割や遺贈で法定相続分を超えて取得した部分については登記が必要とされるのと、扱いが異なる。

家庭裁判所に放棄の申述をすると、相続人は相続開始時に遡ぼつて相続開始がなかつたと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずる
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 相続放棄をした相続人の持分を差し押さえた債権者 | 最判昭和42年1月20日 | 放棄の効力は絶対的で、登記なしに対抗できる |
| 遺贈を受けた者と共同相続人の持分の差押債権者 | 最判昭和39年3月6日 | 対抗関係となり、登記がなければ対抗できない |
| 遺産分割・特定財産承継遺言で法定相続分を超えて取得した部分 | 899条の2第1項 | 登記などの対抗要件がなければ対抗できない |
誤り。違うのは「Bの子Cが遺留分権利者となる」の部分である。相続放棄は代襲原因ではないのでCは相続人とならず、遺留分権利者にもならない(887条2項・1042条1項)。
1042条1項は、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分を認めている。遺留分権利者は相続人であることが前提であり、相続人でない者に遺留分はない。887条2項は、被相続人の子が相続の開始以前に死亡したとき、又は欠格・廃除によって相続権を失ったときに、その者の子が代襲して相続人となると定めており、相続放棄は代襲原因に挙げられていない。相続を放棄した者は初めから相続人とならなかったものとみなされ(939条)、それは相続人自身が相続から離れることを選んだ結果だからである。したがって、Aの子Bが相続を放棄しても、Bの子CはBを代襲して相続人となることはなく、遺留分権利者にもならない。肢は誤っている。

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一 二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
- 遺留分権利者:兄弟姉妹以外の相続人(1042条1項)。相続放棄をした者の子は代襲せず権利者にならない
- 算定の基礎:相続人への特別受益の贈与は相続開始前10年以内のものを算入する(1044条3項)。持戻し免除の意思表示があっても算入する
- 生命保険の受取人変更:遺贈・贈与に当たらず、これに準ずるものでもない(最判平14.11.5)
- 期間:相続の開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年(1048条)
- 相続開始前の放棄:家庭裁判所の許可が要る(1049条1項)
正しい。特定遺贈の受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄でき(986条1項)、家庭裁判所への申述は要しない。
986条1項は、受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができると定め、同条2項は、遺贈の放棄は遺言者の死亡の時にさかのぼって効力を生ずるとする。特定遺贈の放棄の方式について、家庭裁判所への申述を求める規定はなく、遺贈義務者である相続人や遺言執行者に対して放棄の意思表示をすれば足りる。特定遺贈は特定の財産を与えるものにすぎず、受遺者が放棄しても、その財産が相続財産に戻るだけで、債務の承継などで第三者の利害に大きく影響することはないからである。法律関係がいつまでも決まらない不都合は、遺贈義務者などが相当の期間を定めて承認するかどうかを催告し、期間内に答えがなければ承認とみなす仕組みで解消される(987条)。これに対し、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つから(990条)、その放棄には相続の放棄の規定が適用され、家庭裁判所に申述しなければならない(938条)。本肢は正しい。

1 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。/2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
| 特定遺贈 | 包括遺贈 | |
|---|---|---|
| 放棄の時期 | 遺言者の死亡後いつでも(986条1項) | 包括遺贈を知った時から3か月以内(990条・915条1項) |
| 方式 | 遺贈義務者への意思表示 | 家庭裁判所への申述(990条・938条) |
| 受遺者の地位 | 特定の財産を取得するだけ | 相続人と同一の権利義務(990条) |









