第877条扶養義務者過去問 7
1直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
この条文の過去問 7問
AとBが離婚した時にCが未成年者であった場合において,Cの親権者をAと定めたときは,BはCに対する扶養義務を負わない。
解説
本肢は誤り。民法877条1項は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定め、扶養義務の発生根拠を親族関係そのものに求めている。他方、親権(818条以下)は未成年の子の監護教育と財産管理を内容とする地位であり、離婚に際して父母の一方を親権者と定めなければならない(819条1項・2項)。しかし、親権者の指定は親権という権利義務の帰属を決めるにとどまり、親子という直系血族関係を消滅させるものではないから、親権を失った親も依然として877条1項の直系血族として扶養義務を負う。しかも未成熟子に対する親の扶養義務は、自己と同程度の生活を保障すべき生活保持義務と解されており、監護に当たらない親は現実の監護をする親に対して養育費を分担すべき立場に立つ(766条1項が離婚に際し「子の監護に要する費用の分担」を協議事項とするのもこの趣旨である)。本肢はAが親権者と定められたことからBの扶養義務を否定するものであり、親権と扶養義務を混同するもので誤りである。
Dを扶養すべき者の順序については,子であるB及びEが先順位であり,孫であるCが後順位である。
解説
本肢は誤り。Dからみて、子であるB及びEは1親等の直系血族、孫であるCは2親等の直系血族であり、いずれも877条1項により互いに扶養義務を負う。もっとも、扶養義務者が複数存在する場合の順序について、民法は親等の近い者が当然に先順位となるという規律を置いていない。878条前段は、扶養をすべき者の順序について当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定めると規定するにとどまる(同条後段は、扶養義務者の資力が全員を扶養するに足りない場合における扶養を受けるべき者の順序についても同様とする)。すなわち、順序は第一次的には当事者間の協議により、それが調わない場合に家庭裁判所が各自の資力・生活状況・扶養権利者との関係等一切の事情を考慮して定めるのであって、法定の固定的順位は存在しない。相続については889条1項が直系尊属の親等の近い者を先順位とする旨を定めるが、これは相続順位の規律であって扶養の順序に及ぶものではない。したがって、子であるB及びEが当然に先順位で孫であるCが後順位であるとする本肢は誤りである。
家庭裁判所は,特別な事情があるときは,Eを扶養する義務をAに負わせることができる。
解説
本肢は正しい。民法877条2項は「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。」と定める。原則的な扶養義務者は直系血族及び兄弟姉妹に限られるが(同条1項)、これを超えて、審判により3親等内の親族に扶養義務を創設的に負わせる余地を認めた規定である。本問において、AはBの配偶者であり、EはBの弟である。配偶者の一方と他方の血族との間には姻族関係が生じ(725条3号は3親等内の姻族を親族とする)、AとEとは2親等の姻族に当たるから、Eは「三親等内の親族」の範囲に含まれる。よって、Eが自活できず他に扶養能力のある者がいないなどの「特別の事情」が認められれば、家庭裁判所は審判によりAにEを扶養する義務を負わせることができる。なお、この義務は審判によって初めて発生する点で、877条1項の当然に生ずる義務とは性質を異にする。また、離婚等により姻族関係が終了すれば(728条)親族でなくなる点にも留意を要する。以上より本肢は正しい。
Aを扶養してきたCが,過去の扶養料をFに求償する場合において,各自の分担額の協議が調わないときは,家庭裁判所が各自の資力その他一切の事情を考慮してこれを定める。
解説
本肢は正しい。Aからみて、Aと夫Bの間の子CもAと前夫との間の子Fも、いずれもAの直系血族であるから、両者とも877条1項によりAに対する扶養義務を負う。扶養の程度又は方法について当事者間に協議が調わないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が定める(879条)。問題は、扶養義務者の一人が単独で扶養権利者を扶養してきた後に、他の扶養義務者に対して過去に支出した扶養料の分担を求める場合の処理であるが、判例は、この求償の場面においても、各自の分担額は協議が調わない限り家庭裁判所が各自の資力その他一切の事情を考慮して審判で決定すべきものであり、通常の民事訴訟で確定すべき性質のものではないとする(最判昭和42年2月17日民集21巻1号133頁)。過去の分担額の確定も、扶養義務の内容形成という後見的・裁量的判断を要する事項だからである。したがって、CがFに対し過去の扶養料を求償する場合において分担額の協議が調わないときは、家庭裁判所が各自の資力その他一切の事情を考慮してこれを定めることになり、本肢は正しい。
家庭裁判所は,特別の事情があるときは,Dを扶養する義務をAに負わせることができる。
解説
本肢は正しい。扶養義務者の範囲について、民法877条1項は直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養をする義務を負うと定め、同条2項は「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」と定める。本問のDはAの配偶者Bの妹であるから、Aから見て二親等の姻族であり、三親等内の姻族として親族に当たる(725条3号)。したがってDはAとの関係で877条2項にいう「三親等内の親族」に該当し、特別の事情があると認められる場合には、家庭裁判所は審判によってAにDを扶養する義務を負わせることができる。よって本肢は正しい。もっとも、2項の扶養義務は1項の義務と異なり法律上当然に発生するものではなく、家庭裁判所の審判によって初めて創設される点に特徴がある。また、AがBと離婚すれば姻族関係が終了するため(728条1項)、Dは三親等内の親族でなくなり、以後は2項の対象から外れることになる。
家庭裁判所は,特別の事情があるときは,甥と叔母との間においても,扶養の義務を負わせることができる。
解説
本肢は正しい。扶養義務の当然の発生範囲は、直系血族及び兄弟姉妹に限られる(877条1項)。もっとも、877条2項は「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」と定め、家庭裁判所の審判による扶養義務の創設を認めている。すなわち、三親等内の親族については、法律上当然に扶養義務が発生するわけではないが、扶養を必要とする者と扶養能力のある親族との関係、過去の生活関係や恩恵の授受といった「特別の事情」が認められる場合に、家庭裁判所が審判によって義務を負わせる余地がある。
そこで甥と叔母の親等を検討する。傍系親族の親等は、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数によって数える(726条2項)。甥から見ると、甥→兄弟姉妹(自己の親)→祖父母と2世代さかのぼり、そこから叔母へ1世代下るから、合計3親等となる。したがって甥と叔母は三親等の傍系血族であり、877条2項の「三親等内の親族」に含まれる。
よって、特別の事情があるときは、家庭裁判所が甥と叔母との間に扶養義務を負わせることができるのであり、本肢の記述は条文どおりで正しい。なお、この場合の扶養義務は審判によって初めて発生する点で、877条1項の当然発生型の義務とは性質を異にする。
子を認知した父がその子の親権者でない場合には,その父は,その子を扶養する義務を負わない。
解説
本肢は誤り。直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある(877条1項)。この義務は身分関係の存在から法律上当然に生ずるものであって、家庭裁判所の審判を要しない。
嫡出でない子については、認知によって法律上の父子関係が生じ(779条)、その効力は出生の時にさかのぼる(784条本文)。したがって、認知した父と子は直系血族となるから、父は877条1項により当然に子に対する扶養義務を負う。
他方、親権は、未成年の子の監護教育及び財産管理を内容とする制度であり(820条以下)、嫡出でない子の親権は原則として母が行い、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り父が行う(819条4項)。すなわち、親権者の指定は子の監護養育の主体を定めるものであって、扶養義務の根拠である血族関係とは制度上の平面を異にする。扶養義務は血族関係から生ずる以上、親権を有するか否か、あるいは子と同居しているか否かによって左右されない。仮に親権者でないことを理由に扶養義務を免れるとすれば、認知された子の生活保持が害され、認知に遡及効を認めた784条の趣旨にも反する。
なお、認知した父が未成年の子に対して負う扶養義務は、いわゆる生活保持義務として、自己の生活と同程度の水準を保障すべき強度の義務と解されている。
よって、親権者でないことを理由に扶養義務を否定する本肢は誤りである。