1一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
2一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
この条文の過去問 7問
誤り。違うのは「日用品の供給の先取特権が葬式の費用の先取特権に優先する」の部分である。
306条は、一般の先取特権として、共益の費用(1号)、雇用関係(2号)、葬式の費用(3号)、日用品の供給(4号)の四つを挙げ、これらが競合する場合の順位は306条各号に掲げる順序に従う(329条1項)。条文の並び順がそのまま優劣を示しており、3号の葬式の費用の先取特権が4号の日用品の供給の先取特権に優先する。この順序は、それぞれが守ろうとする利益の性質による。共益の費用は債権者全体のために使われたので最優先とされ、雇用関係は労働者の生活の基盤である給料を守る要請が強いので次に置かれる。葬式の費用は資力のない者も最低限の葬送を受けられるようにするためのものであり、日用品の供給は生活必需品の供給者を守るものである。本肢は葬式の費用と日用品の供給の順位を逆にしている。

一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
| 順位 | 種類 | 範囲 |
|---|---|---|
| 1 | 共益の費用(307条) | 債権者の共同の利益のための保存・清算・配当の費用。全員に有益でないものは利益を受けた債権者に対してのみ |
| 2 | 雇用関係(308条) | 給料その他の雇用関係に基づく債権 |
| 3 | 葬式の費用(309条) | 債務者の葬式、債務者が扶養すべき親族のためにした葬式の相当額 |
| 4 | 日用品の供給(310条) | 最後の6か月間の飲食料品・燃料・電気。債務者は自然人に限る(最判昭46.10.21) |
誤り。違うのは「雇用関係の先取特権が優先する」の部分である。
雇用関係の先取特権は、債務者の総財産を目的とする一般の先取特権である(306条2号・308条)。これに対し、不動産の賃貸の先取特権は、賃借人が建物などに備え付けた動産など特定の動産を目的とする動産の先取特権である(311条1号・312条以下)。したがって、本肢は一般の先取特権と特別の先取特権の競合の問題となる。329条2項本文は、一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は一般の先取特権に優先すると定める。特別の先取特権は、特定の目的物の価値を保ったり作ったりした関係や、その物を担保としてあてにした関係に基づいて認められるので、目的物との結び付きが強く、債務者の財産全体に広く及ぶだけの一般の先取特権より優先させたのである。したがって、不動産の賃貸の先取特権が雇用関係の先取特権に優先する。

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
正しい。329条2項ただし書により、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に優先する。
競売の執行費用は債権者全体の共同の利益のために出された費用なので共益の費用に当たり、これを担保する共益の費用の先取特権は一般の先取特権である(306条1号・307条)。これに対し、不動産賃貸の先取特権は、賃借人が建物に備え付けた動産の上に成立する特別の先取特権である(311条1号・313条2項)。一般の先取特権と特別の先取特権が競合する場合は特別の先取特権が優先するのが原則であり(329条2項本文)、それによれば不動産賃貸の先取特権が優先しそうである。しかし同項ただし書は、共益の費用の先取特権はその利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を持つとする。執行費用が出されなければ目的物の換価も配当もできなかったので、その利益を受けた債権者に費用を負担させるのが公平だからである。賃貸人も競売で利益を受けるので、執行費用の先取特権が優先する。

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
誤り。違うのは「全ての特別の先取特権に優先する」の部分である。一般の先取特権と特別の先取特権では特別が優先し、共益の費用の先取特権が優先するのはその利益を受けた債権者に対してだけである(329条2項)。
共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存・清算・配当の費用について生じ(306条1号・307条1項)、債務者の総財産を目的とする一般の先取特権である。329条2項は、一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は一般の先取特権に優先し、ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有すると定める。共益の費用が優先するのは、その費用によって利益を受けた者がその費用を負担すべきだからであり、優先する範囲も利益を受けた債権者との関係に限られる。利益を受けていない特別の先取特権者にまで当然に優先するわけではない。したがって、すべての特別の先取特権に優先するとする本肢は誤りである。また、一般の先取特権は、不動産については登記をした第三者に対抗できないから(336条ただし書)、登記をした不動産の特別の先取特権に対しても優先できない。

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
- 一般と特別の競合(329条2項):特別が優先。ただし共益の費用はその利益を受けた債権者に優先する
- 動産の特別の先取特権(330条1項):第一順位は不動産の賃貸・旅館の宿泊・運輸、第二順位は動産の保存、第三順位は動産の売買・種苗肥料の供給・農業と工業の労務
- 果実(330条3項):農業の労務、種苗又は肥料の供給、土地の賃貸の順
- 不動産の特別の先取特権(331条1項):保存、工事、売買の順
- 同一順位(332条):債権額の割合に応じて弁済を受ける
- 抵当権との関係(339条):登記をした不動産保存・不動産工事の先取特権は抵当権に先立つ
正しい。一般の先取特権と特別の先取特権が競合するときは、特別の先取特権が優先する(329条2項本文)。
従業員の給料債権を担保する雇用関係の先取特権は、債務者の総財産を目的とする一般の先取特権であるから(306条2号・308条)、会社の冷蔵庫にも効力が及ぶ。他方、電器店の動産売買の先取特権は、売った動産の代価と利息についてその動産の上に成立する特別の先取特権である(311条5号・321条)。329条2項本文は、一般の先取特権と特別の先取特権が競合する場合には、特別の先取特権が一般の先取特権に優先すると定める。特別の先取特権は特定の財産との結び付きを理由に認められるものであり、その財産を債務者の財産に加えた者を保護すべきだからである。一般の先取特権者は総財産のどこからでも回収できるが、特別の先取特権者はその物からしか回収できないという違いもある。したがって、冷蔵庫については電器店の先取特権が従業員の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は例外として優先する(同項ただし書)。

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
- 一般の先取特権と特別の先取特権:特別の先取特権が優先する。ただし共益の費用の先取特権は利益を受けたすべての債権者に優先する(329条2項)
- 第一順位(330条1項1号):不動産の賃貸、旅館の宿泊、運輸
- 第二順位(同項2号):動産の保存(数人あれば後の保存者が優先)
- 第三順位(同項3号):動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務、工業の労務
- 例外(同条2項):第一順位の者が債権取得時に後順位者を知っていたときは優先できない
正しい。共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先するので(329条2項ただし書)、競売の執行費用の先取特権は賃貸人の先取特権に優先する。
家屋の賃貸人が賃料債権について持つ先取特権は、賃借人が建物に備え付けた動産の上に及ぶ特別の先取特権である(311条1号・312条・313条2項)。他方、その動産を競売するのに要した執行費用は、各債権者の共同の利益のために支出された費用であるから共益の費用に当たり、一般の先取特権を生じる(306条1号・307条1項)。一般の先取特権と特別の先取特権が競合すれば原則として特別の先取特権が優先するが(329条2項本文)、同項ただし書は、共益の費用の先取特権はその利益を受けたすべての債権者に対して優先すると定める。執行費用が支出されたからこそ目的物が換価され、他の債権者も配当を受けられるので、その費用を最初に回収させるのが公平だからである。本肢では、家具の競売によって賃貸人も配当という利益を受けるので、執行費用の先取特権が賃貸人の先取特権に優先する。

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
- 一般の先取特権と特別の先取特権:特別の先取特権が優先する。ただし共益の費用の先取特権は利益を受けたすべての債権者に優先する(329条2項)
- 第一順位(330条1項1号):不動産の賃貸、旅館の宿泊、運輸
- 第二順位(同項2号):動産の保存
- 第三順位(同項3号):動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務、工業の労務
- 動産質権(334条):第一順位の先取特権者と同じ権利を持つ
誤り。違うのは「時間的に先に成立した物権が優先する」の部分である。対抗要件を要しない先取特権の優劣は、成立の前後ではなく法律の定める順位による(329条以下)。
物権相互の優劣は、対抗要件を要する物権であれば対抗要件を備えた先後によって、対抗要件を要しない物権であれば成立の先後によって決まるのが一般原則である。しかし、対抗要件を要しない物権である先取特権は、一定の債権を特に保護するという政策的理由から法律が認める担保物権であるから、その優劣も保護の必要性の程度に応じて法律が定めている。たとえば、一般の先取特権は不動産について登記をしなくても特別担保を有しない債権者に対抗でき(336条)、一般の先取特権が互いに競合するときは306条各号の順序に従い(329条1項)、一般の先取特権と特別の先取特権が競合するときは特別の先取特権が優先する(同条2項)。このように成立の先後とは関係なく順位が決まるので、先に成立した物権が優先すると一般化する本肢は誤りである。

一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。/2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。






