1胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
この条文の過去問 8問
正しい。胎児は相続については既に生まれたものとみなされる(886条1項)ので、生きて生まれた子は相続人となる。
権利能力は出生によって始まるのが原則である(3条1項)。原則どおりなら、被相続人が死亡した時に母の胎内にいた子は権利能力を持たず、相続人になれない。しかしそれでは、生まれたのが父の死亡の前か後かという偶然で子の地位が左右され、被相続人の子として養われるはずだった者の保護に欠ける。そこで886条1項は、胎児は相続については既に生まれたものとみなすと定め、相続の場面に限って胎児を生まれた子と同じに扱う。したがって、被相続人が妻の懐胎中に死亡した場合、その後に生まれた子は第1順位の相続人(887条1項)として被相続人を相続する。ただし、胎児が死体で生まれたときはこの扱いをしない(886条2項)。胎児の間にすでに権利能力を持つと考えるか、生きて生まれた時にさかのぼって持つと考えるかには争いがあるが、生きて生まれた子が相続人となる点はどちらでも変わらない。

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
正しい。第三者のためにする契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合でも、そのために効力を妨げられない(537条2項)。
人の権利能力は出生に始まる(3条1項)ので、胎児は原則として権利能力を持たない。しかし本肢で問われているのは、契約の成立の時に受益者が権利能力を持っていなければ契約そのものが無効になるかである。537条2項は、第三者のためにする契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられないと定める。そして第三者の権利は、第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(同条3項)。契約が成立する時と受益者が権利を取得する時は別なので、受益者に権利能力が要るのは受益の意思表示の時であり、契約の成立の時ではない。したがって、AとCの間でBに甲土地を無償で与える契約は、成立の時にBが胎児でも有効であり、Bは生まれた後に受益の意思表示をすれば甲土地の給付を請求する権利を取得する。

前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
誤り。違うのは「死因贈与をすることができる」の部分である。胎児を既に生まれたものとみなす規定は損害賠償・相続・遺贈に限られ、契約である死因贈与にはない。
人の権利能力は出生に始まる(3条1項)。胎児を既に生まれたものとみなす例外は、損害賠償の請求権(721条)、相続(886条1項)、遺贈(965条による886条の準用)について明文で定められているだけであり、規定のない場面に広げることはできない。問題は、554条が、贈与者の死亡によって効力を生じる贈与にはその性質に反しない限り遺贈に関する規定を準用するとしていることから、遺贈についての965条も死因贈与に準用されるかである。しかし、遺贈は受遺者の意思表示を要しない単独行為であり、胎児に受遺能力を認める規定もこれを前提としている。これに対し死因贈与は贈与者と受贈者の合意で成立する契約であり、承諾の意思表示ができない胎児はその当事者になれないので、この準用は死因贈与の性質に反する。判例も、554条は死因贈与の効力について遺贈に関する規定に従うことを定めただけで、単独行為であることを前提とする規定は準用しないとしている。したがって、胎児を受贈者として死因贈与をすることはできない。

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
- 損害賠償の請求権(721条)
- 相続(886条1項)
- 遺贈(965条による886条の準用)
- 上の場面でも、生きて生まれた時に初めて権利を取得するので、出生前に親が胎児を代理することはできない(大判昭7.10.6)
- 死因贈与・認知の訴えには胎児の権利能力を認める規定がない
正しい。胎児が既に生まれたものとみなされるのは損害賠償の請求権・相続・遺贈に限られ、契約である死因贈与にはその規定がないから、胎児を受贈者とすることはできない。
私権の享有は出生に始まり(3条1項)、胎児は原則として権利能力を持たない。例外として胎児を既に生まれたものとみなすのは、損害賠償の請求権(721条)、相続(886条1項)、遺贈(965条による886条の準用)であり、死因贈与にはこれにあたる規定がない。死因贈与は贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与であり、554条によりその性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用されるが、遺贈が遺言者の単独行為であるのに対し、死因贈与は贈与者と受贈者の合意で成立する契約であるから、受贈者にも契約の当事者となる権利能力が要る。受遺者の能力に関する965条は、契約の当事者の能力の問題には及ばないと解されている。したがって、胎児を受贈者として死因贈与をすることはできず、本肢は正しい。これに対し、贈与者が第三者と胎児を受益者とする第三者のためにする契約を結ぶことは、受益者がまだ存在しなくても妨げられない(537条2項)。

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
- 損害賠償の請求権:既に生まれたものとみなす(721条)。出生前に母が代理して和解することはできない
- 相続:既に生まれたものとみなす(886条1項)。死体で生まれたときは適用しない(同条2項)
- 遺贈:886条を受遺者に準用する(965条)
- 死因贈与:みなす規定がなく、胎児は受贈者になれない
- 認知:父は母の承諾を得て胎児を認知できる(783条1項)が、母は胎児を代理して認知の訴えを提起できない
- 第三者のためにする契約:成立の時に第三者が現に存しなくても効力を妨げられない(537条2項)
誤り。違うのは「遺贈をすることはできない」の部分である。965条が886条を受遺者に準用するので、胎児は遺贈について既に生まれたものとみなされ、受遺者になれる。
965条は、886条(相続に関する胎児の権利能力)と891条(相続人の欠格事由)の規定を受遺者について準用する。したがって、胎児は遺贈については既に生まれたものとみなされ、胎児を受遺者として遺贈をすることができる。私権の享有は出生に始まるという3条1項の原則の例外である。遺言者の死亡の時にすでに懐胎されていれば、近いうちに生まれてくることがほぼ確実であり、生まれた時期のわずかな違いで遺贈を受けられるかどうかが決まるのは、遺言者の通常の意思にも合わないからである。もっとも、判例は胎児が生きて生まれたときに遡って権利能力を認めるにとどまるとしており、出生前に母が胎児を代理して遺贈を承認・放棄することはできない。胎児が死体で生まれたときは、886条2項の準用により遺贈は効力を生じない。胎児を受遺者とする遺贈ができない、とする本肢は965条に反する。

第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者について準用する。
- 損害賠償の請求権:既に生まれたものとみなす(721条)。出生前に母が代理して和解することはできない
- 相続:既に生まれたものとみなす(886条1項)。死体で生まれたときは適用しない(同条2項)
- 遺贈:886条を受遺者に準用する(965条)
- 死因贈与:みなす規定がなく、胎児は受贈者になれない
- 認知:父は母の承諾を得て胎児を認知できる(783条1項)が、母は胎児を代理して認知の訴えを提起できない
- 第三者のためにする契約:成立の時に第三者が現に存しなくても効力を妨げられない(537条2項)
誤り。違うのは「出生した子CはAの相続人とならない」の部分である。胎児は相続については既に生まれたものとみなされ、生きて生まれたCはAの相続人となる(886条)。
886条1項は、胎児は相続については既に生まれたものとみなすと定め、同条2項は、胎児が死体で生まれたときは1項を適用しないとする。被相続人の死亡が子の出生の前日か翌日かという偶然で、子が相続できるかどうかが変わるのは公平でないので、胎児にも相続については権利能力を認めたのである。ただし、生きて生まれることが必要であり、死産であれば相続人でなかったことになる。本肢では、Aが妻Bの懐胎中に死亡し、その後Cが生まれているので、CはAの相続人となり、Bとともに共同相続人となる。肢は相続人とならないとしており、誤っている。

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
誤り。違うのは「出生した子CはAの相続人とならない」の部分である。胎児は相続については既に生まれたものとみなされ、生きて生まれたCはAの相続人となる(886条)。
886条1項は、胎児は相続については既に生まれたものとみなすと定め、同条2項は、胎児が死体で生まれたときは1項を適用しないとする。被相続人の死亡が子の出生の前日か翌日かという偶然で、子が相続できるかどうかが変わるのは公平でないので、胎児にも相続については権利能力を認めたのである。ただし、生きて生まれることが必要であり、死産であれば相続人でなかったことになる。本肢では、Aが妻Bの懐胎中に死亡し、その後Cが生まれているので、CはAの相続人となり、Bとともに共同相続人となる。肢は相続人とならないとしており、誤っている。

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
正しい。胎児は相続について既に生まれたものとみなされるので、死体で生まれない限り、Aの死亡時に胎児であったCも代襲相続人となる(886条・887条2項)。
886条1項は、胎児は相続については既に生まれたものとみなすと定め、同条2項は、胎児が死体で生まれたときはこの規定を適用しないと定める。権利能力は出生によって始まるのが原則であるが(3条1項)、相続開始の時にわずかな差で生まれていなかったというだけで相続から外すのは不公平であるから、相続については胎児にも権利能力を認めたのである。この規定は代襲相続にも適用され、Aの子Bが相続開始以前に死亡するなどの代襲原因がある場合、Aの死亡時に胎児であったBの子Cも、生きて生まれればBを代襲してAの相続人となる。Cが死体で生まれたときや、Bに代襲原因がないときは代襲相続人とならないので、代襲相続人となる「場合がある」とする本肢は正しい。

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。/2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
- 損害賠償の請求権:既に生まれたものとみなす(721条)
- 相続:既に生まれたものとみなす(886条1項)。死体で生まれたときは適用しない(同条2項)
- 遺贈:886条を受遺者に準用(965条)
- 死因贈与:みなす規定がなく、胎児は受贈者になれません
- 第三者のためにする契約:第三者が成立時に現に存しなくても効力を妨げられません(537条2項)




























