故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この条文の過去問 24問
誤り。違うのは「Aは、Bに対し、損害賠償義務を負わない」の部分である。
128条は、条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができないと定める。条件の成否が決まる前でも、相手方は条件が成就すれば権利を得られるという期待を持っており、この期待は処分や相続もできる財産的な地位として保護される(129条)。128条はこの期待を侵害しない義務を当事者に課したものであり、これに反して目的物を傷めた当事者は、条件が成就したときに債務不履行や不法行為による損害賠償の責任を負う。本肢では、Bの合格を停止条件とする動産乙の贈与で、合否が決まる前はまさに条件の成否が未定の間に当たる。乙を引き渡すべき立場にあるAは乙を善良な管理者の注意で保存すべきであり、過失で傷めた以上、Bが合格すれば損害を賠償しなければならない。

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
誤り。違うのは「賃借人に重大な過失がない限り、債務不履行による損害賠償の請求をすることができない」の部分である。失火責任法は709条の不法行為責任についての法律であり、債務不履行責任には適用されない(最判昭30.3.25)。
失火責任法は、民法709条の規定は失火の場合には適用せず、ただし失火者に重大な過失があったときはこの限りでないと定める。木造家屋が密集する事情の下で、軽い過失で火を出した者に際限のない賠償を負わせるのは酷であるとして、不法行為の要件を重大な過失に引き上げたもので、その対象は文言どおり709条の不法行為責任に限られる。これに対し賃借人は、賃貸借契約に基づいて賃借物を保管し、契約が終わったときに返す義務を負う(601条・621条)。賃借人の失火で賃借物が滅失して返せなくなれば、契約上の債務の不履行であり、賃貸人は415条1項によって損害賠償を請求できる。判例も、失火責任法は債務不履行による損害賠償には適用されないとした(最判昭30.3.25)。契約の当事者の間では、責任が不特定多数に広がるおそれがなく、同法の趣旨が当てはまらないからである。したがって、賃借人に重大な過失がなくても、責めに帰すべき事由があれば損害賠償責任を負う。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
| 場面 | 求められる主観 | 条文 |
|---|---|---|
| 代理権の濫用 | 相手方が知り、又は知ることができた(過失で足りる) | 107条 |
| 預貯金債権の譲渡制限 | 譲受人等の悪意又は重大な過失。差押債権者には対抗できない | 466条の5 |
| 相殺禁止の意思表示 | 第三者の悪意又は重大な過失 | 505条2項 |
| 非債弁済 | 給付者が債務の不存在を知っていたこと(悪意だけ) | 705条 |
| 失火責任法 | 失火者の重大な過失。不法行為にだけ適用され、債務不履行には及ばない | 失火責任法・415条 |
誤り。違うのは「人種差別撤廃条約並びに同条約に照らして解釈される憲法第13条及び第14条第1項は私人相互の関係にも直接適用されるとして」の部分である。下級審は直接適用を否定している。
肢が想定するのは、朝鮮学校の周辺で人種差別的な街頭宣伝をした者らに高額の損害賠償が命じられ、最決平26.12.9が上告を棄却し上告受理申立てを受理しなかった事案である。その原審の大阪高判平26.7.8は、人種差別撤廃条約が国法の一形式として国内法的効力を有するとしても、その規定内容に照らせば、国家の国際責任を定めるとともに、憲法13条、14条1項と同様に公権力と個人との関係を規律するものであって、私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に適用又は類推適用されるものでもないと明示した。その上で、条約の趣旨は民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものだとし、街頭宣伝を人種差別に当たる違法な行為と評価して、無形損害の額の算定に条約の趣旨を考慮した。下級審が採ったのは間接適用の手法であり、判例の三菱樹脂事件以来の立場とも整合する。肢は、下級審が直接適用を認めたと述べる点で判断の内容を誤っている。

人種差別撤廃条約は、国法の一形式として国内法的効力を有するとしても、その規定内容に照らしてみれば、国家の国際責任を規定するとともに、憲法13条、14条1項と同様、公権力と個人との関係を規律するものである。すなわち、本件における被控訴人と控訴人らとの間のような私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に適用又は類推適用されるものでもないから、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものである。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 学生運動歴を理由とする本採用拒否 | 最大判昭48.12.12(三菱樹脂) | 人権規定は私人相互の関係を直接規律しない。侵害が社会的許容性の限度を超えるときに民法1条・90条等の運用で調整する |
| 女子の定年を男子より低く定めた就業規則 | 最判昭56.3.24(日産自動車) | 性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効。14条1項と民法1条ノ2を参照 |
| 在日朝鮮人への人種差別的な街頭宣伝 | 大阪高判平26.7.8(最決平26.12.9 上告棄却) | 人種差別撤廃条約も13条・14条1項も私人間を直接規律しない。民法709条の解釈適用を通じて趣旨を実現し、高額の賠償を認めた |
誤り。違うのは「未成年者が損害賠償責任を負うことはない」の部分である。未成年者が責任を負わないのは責任を弁識する知能を備えていなかったときに限られる(712条)。
712条は、未成年者は他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないと定める。未成年者であることそれ自体で責任を免れるのではなく、免責されるのは責任能力を欠く場合に限られるのである。責任能力とは、自分の行為によって何らかの法的な責任が生じることを分かる程度の精神的な能力をいい、12歳前後がおおよその目安とされるが、行為の性質や本人の発達の程度に応じて判断される。したがって、責任能力のある未成年者は、709条の要件を満たす限り、自ら損害賠償責任を負う。他方、未成年者に責任能力がない場合には、親権者などの監督義務者が、監督義務を怠らなかったことなどを証明しない限り責任を負う(714条1項)。また、未成年者に責任能力がある場合でも、監督義務者の監督義務違反と損害との間に相当因果関係があれば、監督義務者は709条により自分の責任を負う(最判昭49.3.22)。

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
- 成立要件(被害者が主張立証):故意又は過失、権利又は法律上保護される利益の侵害、損害の発生、因果関係(709条)
- 責任能力の欠如(加害者が主張立証):未成年者で責任を弁識する知能がない(712条)、精神上の障害で責任を弁識する能力を欠く状態(713条本文)
- 713条ただし書:故意又は過失で一時的に責任無能力の状態を招いた者は責任を負う
- 責任無能力者の監督義務者:714条で責任を負う。責任能力のある未成年者の監督義務者も709条で責任を負うことがある
誤り。違うのは「未成年者が損害賠償責任を負うことはない」の部分である。未成年者が責任を負わないのは責任を弁識する知能を備えていなかったときに限られる(712条)。
712条は、未成年者は他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないと定める。未成年者であることそれ自体で責任を免れるのではなく、免責されるのは責任能力を欠く場合に限られるのである。責任能力とは、自分の行為によって何らかの法的な責任が生じることを分かる程度の精神的な能力をいい、12歳前後がおおよその目安とされるが、行為の性質や本人の発達の程度に応じて判断される。したがって、責任能力のある未成年者は、709条の要件を満たす限り、自ら損害賠償責任を負う。他方、未成年者に責任能力がない場合には、親権者などの監督義務者が、監督義務を怠らなかったことなどを証明しない限り責任を負う(714条1項)。また、未成年者に責任能力がある場合でも、監督義務者の監督義務違反と損害との間に相当因果関係があれば、監督義務者は709条により自分の責任を負う(最判昭49.3.22)。

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
- 成立要件(被害者が主張立証):故意又は過失、権利又は法律上保護される利益の侵害、損害の発生、因果関係(709条)
- 責任能力の欠如(加害者が主張立証):未成年者で責任を弁識する知能がない(712条)、精神上の障害で責任を弁識する能力を欠く状態(713条本文)
- 713条ただし書:故意又は過失で一時的に責任無能力の状態を招いた者は責任を負う
- 責任無能力者の監督義務者:714条で責任を負う。責任能力のある未成年者の監督義務者も709条で責任を負うことがある
誤り。違うのは「その理事は、個人として不法行為責任を負うことはない」の部分である。法人が責任を負っても、理事は個人としても709条の責任を負う(大判昭7.5.27)。
法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条)。この規定は法人自身の責任を定めたものであり、実際に行為をした理事個人の責任を免除する規定ではない。理事の行為が709条の要件を満たす以上、理事は自分の不法行為について責任を負い、法人の機関としてした行為であることは免責の理由にならない。判例も、理事が職務を行うにつき不法行為をした場合、個人として免責される規定がない以上、理事は個人としても法人とともに損害賠償の責任を負うとした(大判昭7.5.27)。株式会社の代表取締役についても、会社が責任を負う場合に代表取締役個人が709条の責任を免れないとされている(最判昭49.2.28)。したがって、理事は個人として責任を負うことはないとする肢は誤っている。法人と理事個人は、被害者に対してどちらも全額の賠償義務を負う。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 一般法人法78条の責任:代表者が職務を行うについて加えた損害を法人が賠償する。理事個人の責任も残る
- 職務を行うについて:行為の外形から客観的に判断する
- 相手方の悪意・重過失:外形上職務行為でも、職務に属しないと知り又は重過失で知らなければ法人は責任を負わない(最判昭50.7.14)
- 代表者でない者の加害:715条の使用者責任
正しい。子の死亡にも比肩すべき精神上の苦痛を受けた両親は、709条・710条に基づき自己の権利として慰謝料を請求できる(最判昭33.8.5)。
711条は、他人の生命を侵害した者は被害者の父母、配偶者及び子に対して慰謝料を払わなければならないと定めるが、生命の侵害に至らない傷害の場合については書いていない。判例は、女児が顔に傷害を受けて医療でも消せない著しい瘢痕が残った事案で、711条が生命を害された者の近親者の慰謝料について明文で定めているからといって、生命侵害以外の場合はどんな事情があっても近親者の慰謝料請求権がすべて否定されると解すべきではなく、母はその子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められるから、709条・710条に基づいて自己の権利として慰謝料を請求できるとした(最判昭33.8.5)。この場合の根拠は711条ではなく709条・710条であり、近親者自身の苦痛に対する固有の慰謝料である。もっとも、範囲が広がりすぎないよう、死亡に比肩する苦痛という高い要件が課されている。肢は判例のとおりであり、正しい。

民法七一一条が生命を害された者の近親者の慰藉料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があつてもその近親者の慰藉料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではなく
正しい。責任能力のある未成年者の不法行為でも、監督義務者の義務違反と結果との間に相当因果関係があれば、監督義務者に709条の不法行為が成立する(最判昭49.3.22)。
714条1項は、責任無能力者が712条・713条により責任を負わない場合に、その監督義務者に責任を負わせる規定であり、未成年者に責任能力があって自ら709条の責任を負う場合には当てはまらない。しかし判例は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき709条に基づく不法行為が成立するとし、714条の規定はこの解釈の妨げにならないとした(最判昭49.3.22)。責任能力があっても、未成年者には賠償する資力がないことが多く、監督を怠った親に責任を負わせないと被害者が救われないからである。この場合は714条ではなく709条による監督義務者自身の責任なので、監督義務違反という過失や因果関係は被害者が主張立証する。肢は判例のとおりであり、正しい。

未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法七一四条の規定が右解釈の妨げとなるものではない
誤り。違うのは「故意又は重過失がない限り、当該第三者に対する損害賠償責任を負わない」の部分である。使用者責任は被用者の709条の責任を前提とするもので、被用者は過失があれば第三者に責任を負う。
715条1項は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定める。使用者責任は、他人を使って利益を上げる者はそれに伴う損害も負担すべきだという考え方に立ち、被用者自身に709条の不法行為が成立していることを前提に、使用者にも賠償させて被害者の救済を厚くする制度である。被用者の責任を免除したり、故意や重大な過失の場合に限ったりする規定ではない。したがって、被用者は、故意又は過失によって第三者の権利を侵害すれば709条により賠償責任を負い、使用者と被用者はどちらも被害者に全額を賠償する義務を負う。肢は誤っている。使用者が賠償した場合の被用者への求償は、信義則上相当と認められる限度に制限される(715条3項、最判昭51.7.8)が、これは使用者と被用者の内部の負担の問題であり、被害者に対する被用者の責任とは別である。

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
誤り。違うのは末尾の「使用者は同法第715条に基づく損害賠償責任を負う」の部分である。被用者の行為が公権力の行使に当たり国又は公共団体が国家賠償法1条1項の責任を負うときは、被用者個人が民法709条の責任を負わないだけでなく、使用者も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)。
最判平19.1.25は、社会福祉法人が運営する児童養護施設の職員による養育監護行為が県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と認められた事案で、国家賠償法1条1項は、公務員が職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には国又は公共団体が賠償の責めに任じ、公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたものと解されると述べたうえ、この趣旨からすれば、国又は公共団体以外の者の被用者の行為が公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が同項の責任を負うときは、被用者個人が民法709条の責任を負わないのみならず、使用者も民法715条の責任を負わないとした。国家賠償法1条1項の公務員は身分上の公務員に限られず、公権力の行使を委ねられた私人やその被用者も含まれる。同項の責任は公務員個人の責任を国又は公共団体が引き受けて責任を集中させる構造であり、被用者個人の責任が否定される以上、それを前提とする使用者の代位責任も成立しないという理屈である。本肢は、個人責任を否定しながら使用者責任だけを残しており、判例の結論に反する。

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相当である。
- 公務員個人: 被害者に対して直接の責任を負わない。故意や重過失があっても同じ(最判昭30.4.19)
- 求償: 公務員に故意又は重大な過失があったときに限り、国又は公共団体が求償できる(1条2項)
- 公権力の行使を委ねられた私人: 国家賠償法1条1項の公務員に含まれ、国又は公共団体が責任を負う
- その使用者: 被用者個人が民法709条の責任を負わない以上、使用者も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)
正しい。使用者が使用者責任に基づいて賠償したときは被用者に求償できるが、その範囲は損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に限られる(715条3項・最判昭51.7.8)。
被用者が事業の執行について第三者に損害を加えたときは、被用者は709条で、使用者は715条1項で、それぞれ全額を賠償する責任を負う。そして715条3項は、使用者から被用者に対する求償権の行使を妨げないとしている。もっとも最判昭51.7.8は、使用者は、事業の性格・規模、被用者の業務の内容や労働条件、加害行為の態様、加害行為の予防や損失の分散についての使用者の配慮の程度その他の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度においてのみ、被用者に求償できるとした。使用者は被用者の働きで利益を上げる一方で、事故の危険も生み出しているのだから、損害の全部を被用者に負わせるのは公平でないからである。本肢のDはCに300万円を払っており、Aに求償できるのは信義則上相当な限度である。肢は正しい。

前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
- 責任:各自が全額を連帯して負う(719条1項)
- 影響関係:請求・免除は原則として他に及ばない(441条本文)。免除は他の者を免除する意思があれば及ぶ(最判平10.9.10)
- 求償:過失割合による負担部分に応じる。負担部分を超えて払うことを要するかは改正後に見解が分かれる(改正前は要するとした。最判昭41.11.18・最判平3.10.25)
- 使用者が関わる場合:負担部分を超えて賠償した者は相手方の使用者に被用者の負担部分を求償できる(最判昭63.7.1)
- 使用者から被用者への求償:信義則上相当と認められる限度(最判昭51.7.8)
正しい。使用者が使用者責任に基づいて賠償したときは被用者に求償できるが、その範囲は損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に限られる(715条3項・最判昭51.7.8)。
被用者が事業の執行について第三者に損害を加えたときは、被用者は709条で、使用者は715条1項で、それぞれ全額を賠償する責任を負う。そして715条3項は、使用者から被用者に対する求償権の行使を妨げないとしている。もっとも最判昭51.7.8は、使用者は、事業の性格・規模、被用者の業務の内容や労働条件、加害行為の態様、加害行為の予防や損失の分散についての使用者の配慮の程度その他の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度においてのみ、被用者に求償できるとした。使用者は被用者の働きで利益を上げる一方で、事故の危険も生み出しているのだから、損害の全部を被用者に負わせるのは公平でないからである。本肢のDはCに300万円を払っており、Aに求償できるのは信義則上相当な限度である。肢は正しい。

前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
- 責任:各自が全額を連帯して負う(719条1項)
- 影響関係:請求・免除は原則として他に及ばない(441条本文)。免除は他の者を免除する意思があれば及ぶ(最判平10.9.10)
- 求償:過失割合による負担部分に応じる。負担部分を超えて払うことを要するかは改正後に見解が分かれる(改正前は要するとした。最判昭41.11.18・最判平3.10.25)
- 使用者が関わる場合:負担部分を超えて賠償した者は相手方の使用者に被用者の負担部分を求償できる(最判昭63.7.1)
- 使用者から被用者への求償:信義則上相当と認められる限度(最判昭51.7.8)
正しい。停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは無効である(134条)。
134条は、停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは無効とすると定める。効果が生じるかどうかが債務者の気分しだいであれば、債務者には法的に拘束される意思があるとはいえず、債権としての実質を欠くからである。本肢の「将来気が向いたら甲自動車を贈与する」という約束は、贈与の義務を負うAの気持ちという、A自身の意思だけにかかる事実を停止条件とするものであるから、134条により贈与契約は無効となる。これに対し、条件が債権者の意思だけにかかる場合や、解除条件が債務者の意思だけにかかる場合には、134条は適用されない。これらの場合には、債務者はいったん法的な拘束を受けており、法律行為としての実質が失われないからである。書面によらない贈与の解除(550条)の問題に入る前に、本肢の約束はそもそも無効である。

停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。
- 既成条件・成就済み(131条1項):停止条件なら無条件、解除条件なら無効
- 既成条件・不成就確定(131条2項):停止条件なら無効、解除条件なら無条件
- 不能条件(133条):不能の停止条件なら無効、不能の解除条件なら無条件
- 不法条件(132条):法律行為全体が無効
- 随意条件(134条):停止条件が単に債務者の意思のみに係れば無効
誤り。違うのは「被害者の近親者は,慰謝料を請求することができない」の部分である。被害者が死亡しなくても、生命侵害に比肩する精神上の苦痛を受けた近親者は709条・710条で慰謝料を請求できる(最判昭33.8.5)。
711条は生命侵害の場合に近親者の固有の慰謝料を明文で認めるが、判例は、同条が近親者の慰謝料請求を生命侵害の場合に限る趣旨ではないとしている。最判昭33.8.5は、交通事故で10歳の女児が顔に重い傷を負い容ぼうに著しい影響が残った事案で、母親は、子が生命を害された場合にも比肩し得べき精神上の苦痛を受けたと認められるときは、709条・710条に基づき自己の権利として慰謝料を請求できるとした。この請求権は、711条の効果でも、被害者の慰謝料請求権を相続するものでもなく、近親者自身の利益の侵害を理由とする一般の不法行為上の請求権である。重い傷害であっても、近親者が受ける苦痛が死亡の場合に匹敵することはあり、その場合に請求を一律に否定する理由はないからである。したがって、被害者が死亡していなくても、近親者は慰謝料を請求し得る。

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
- 被害者本人の慰謝料請求権:死亡すれば当然に相続される(最大判昭42.11.1)
- 父母・配偶者・子:固有の慰謝料(711条)。相続人でなくてもよい
- 711条の者と実質的に同視できる身分関係の者:711条の類推適用(最判昭49.12.17)
- 重傷の被害者の近親者:生命侵害に比肩する精神上の苦痛があれば709条・710条で固有の慰謝料(最判昭33.8.5)
正しい。職員の養育監護行為が県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為とされるときは、職員個人が民法709条の責任を負わないだけでなく、使用者である社会福祉法人も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)。
国家賠償法1条1項が適用される場合、公務員個人は被害者に対して直接民法709条の責任を負わないというのが確立した判例である。最判平19.1.25は、児童福祉法27条1項3号の措置により社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童に対する施設職員の養育監護行為は、本来都道府県が行うべき事務が委ねられたものであるから、国家賠償法1条1項の適用上、都道府県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解すべきであるとしたうえで、国又は公共団体以外の者の被用者の行為が公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が同項の責任を負う場合には、被用者個人が民法709条の責任を負わないのみならず、使用者も同法715条の責任を負わないと判示した。被用者である職員が不法行為責任を負わない以上、その責任を前提とする使用者責任も成立する余地がないからである。被害者は措置をしたD県に国家賠償を請求することになる。本肢は判例のとおりである。

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相当である。
- 1条1項の責任を負うのは、加害公務員の職務行為が帰属する行政主体(都道府県警察の警察官の捜査なら都道府県、最判昭54.7.10)
- 3条1項: 選任監督者・設置管理者と費用負担者が異なれば双方が責任を負う。費用負担者には実質的な負担者も含む(最判昭50.11.28)
- 3条2項: 賠償した者は内部関係で損害を負担すべき者に求償できる(最判平21.10.23)
- 公務員個人は被害者に直接責任を負わない(最判昭30.4.19)。故意・重過失があれば行政主体から求償される(1条2項)
- 国・公共団体以外の者の被用者の行為が公権力の行使に当たるときは、被用者個人も使用者も民法上の責任を負わない(最判平19.1.25)
正しい。被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たり、国又は公共団体が国家賠償法1条1項の責任を負う場合には、被用者個人は民法709条の責任を負わず、使用者も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)。
最判平19.1.25は、児童福祉法27条1項3号の措置により県が社会福祉法人の設置する児童養護施設に入所させた児童について、施設職員の養育監護行為は本来県が行うべき事務を委ねられて行うものであり、県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為であるとした。そのうえで、国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、その行為が公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が1条1項の責任を負う場合には、被用者個人が民法709条の責任を負わないのみならず、使用者も民法715条の責任を負わないとした。国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員の加害行為について、国又は公共団体が公務員に代わって責任を負い、公務員個人は被害者に直接責任を負わないという仕組みを採っており、公務員個人が709条の責任を負わない以上、その者を被用者とする使用者責任も成り立たないからである。したがって、県が責任を負う本肢の場合、職員Eも法人Cも民法上の責任を負わない。

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| A県警察の警察官が交通犯罪の捜査で違法に損害を加えた | 最判昭54.7.10 | 賠償責任を負うのは原則として当該都道府県で、国は原則として負わない |
| 国立公園内に県が設置したかけ橋の瑕疵。国が補助金で設置費用の2分の1近くを負担 | 最判昭50.11.28 | 法律上の負担義務がなくても、県と同等に近い費用を負担し事業を共同執行して危険を防止しうる国は3条1項の費用負担者として責任を負う |
| 県の措置で社会福祉法人の児童養護施設に入所した児童が職員の過失で負傷 | 最判平19.1.25 | 職員の養育監護は県の公権力の行使に当たり、県が1条1項の責任を負う。職員個人の709条責任も法人の715条責任も生じない |
| 国が賠償した後の内部負担 | 最判平21.10.23 | 3条2項の求償は、賠償の原因となった事務の経費を法令上最終的に負担すべき者に対してする |
正しい。未成年者に責任能力があっても、監督義務者の義務違反と結果との間に相当因果関係があれば、監督義務者自身に709条の不法行為が成立する(最判昭49.3.22)。
714条1項は、責任無能力者がその責任を負わない場合に、責任無能力者を監督する法定の義務を負う者がその損害を賠償する責任を負うと定める。この規定は加害者が責任能力を欠く場合の規定であるから、未成年者に責任能力があれば、監督義務者に714条の責任を負わせることはできない。しかし、責任能力のある未成年者は賠償の資力に乏しいのが通常であり、被害者が救済されないおそれがある。判例(最判昭49.3.22)は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者について709条に基づく不法行為が成立し、714条の規定はこの解釈の妨げとならないとした。監督義務者自身の監督義務違反を過失ととらえ、それが損害を招いたのであれば、監督義務者自身の不法行為として責任を問えるからである。この場合、被害者が監督義務者の過失と因果関係を立証しなければならない。本肢は判例の内容どおりである。

未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法七一四条の規定が右解釈の妨げとなるものではない
誤り。違うのは「被害者がその不法行為によって死亡した場合に限られる」の部分である。判例は、被害者が死亡しなくても、近親者が死亡に比肩する精神上の苦痛を受けたときは、709条・710条により固有の慰謝料を請求できるとする(最判昭33.8.5)。
711条は、他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対して、その財産権が侵害されなかった場合でも損害を賠償しなければならないと定める。最判昭33.8.5は、709条・710条と対比すると、711条が生命侵害の場合の近親者の慰謝料請求について明文を置いているというだけで、生命侵害以外の場合はいかなる事情があっても近親者の慰謝料請求権がすべて否定されると解すべきではないとし、子が顔面に重傷を負った事案で、母は子が死亡したときにも比肩しうる精神上の苦痛を受けたとして、709条・710条に基づき自己の権利として慰謝料を請求できるとした。711条は、生命侵害の場合に近親者の損害の立証を軽くする規定にとどまり、それ以外の場合を締め出す趣旨ではないのである。したがって、死亡した場合に限られるとする肢は誤りである。

民法七〇九条、七一〇条の各規定と対比してみると、所論民法七一一条が生命を害された者の近親者の慰藉料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があつてもその近親者の慰藉料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではな
- 被害者本人の慰謝料請求権・逸失利益の請求権:死亡すれば当然に相続される(最大判昭42.11.1)
- 父母・配偶者・子:固有の慰謝料(711条)。相続人でなくてもよい
- 711条の者と実質的に同視できる身分関係の者:711条の類推適用
- 重傷の被害者の近親者:生命侵害に比肩する精神上の苦痛があれば709条・710条で固有の慰謝料(最判昭33.8.5)
- 胎児:損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなす(721条)。生まれる前の代理はできない
誤り。違うのは「被害者がその不法行為によって死亡した場合に限られる」の部分である。判例は、被害者が死亡しなくても、近親者が死亡に比肩する精神上の苦痛を受けたときは、709条・710条により固有の慰謝料を請求できるとする(最判昭33.8.5)。
711条は、他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対して、その財産権が侵害されなかった場合でも損害を賠償しなければならないと定める。最判昭33.8.5は、709条・710条と対比すると、711条が生命侵害の場合の近親者の慰謝料請求について明文を置いているというだけで、生命侵害以外の場合はいかなる事情があっても近親者の慰謝料請求権がすべて否定されると解すべきではないとし、子が顔面に重傷を負った事案で、母は子が死亡したときにも比肩しうる精神上の苦痛を受けたとして、709条・710条に基づき自己の権利として慰謝料を請求できるとした。711条は、生命侵害の場合に近親者の損害の立証を軽くする規定にとどまり、それ以外の場合を締め出す趣旨ではないのである。したがって、死亡した場合に限られるとする肢は誤りである。

民法七〇九条、七一〇条の各規定と対比してみると、所論民法七一一条が生命を害された者の近親者の慰藉料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があつてもその近親者の慰藉料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではな
- 被害者本人の慰謝料請求権・逸失利益の請求権:死亡すれば当然に相続される(最大判昭42.11.1)
- 父母・配偶者・子:固有の慰謝料(711条)。相続人でなくてもよい
- 711条の者と実質的に同視できる身分関係の者:711条の類推適用
- 重傷の被害者の近親者:生命侵害に比肩する精神上の苦痛があれば709条・710条で固有の慰謝料(最判昭33.8.5)
- 胎児:損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなす(721条)。生まれる前の代理はできない
誤り。違うのは「Aの親権者であるCはBに対して損害賠償義務を負うことはない」の部分である。判例は、未成年者が責任能力を有する場合でも、監督義務者の義務違反と結果との間に相当因果関係があれば、監督義務者に709条の不法行為が成立するとした(最判昭49.3.22)。
14歳の中学生には通常責任能力が認められるので、Aは709条により自ら賠償責任を負い、714条は責任無能力者が責任を負わない場合の規定であるから、親権者Cは同条の責任を負わない。しかし、責任能力のある未成年者には資力がないことが多く、親権者が一切責任を負わないとすると被害者の救済に欠ける。最判昭49.3.22は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき709条に基づく不法行為が成立するとした。監督義務者自身の監督上の過失が損害の原因となっている以上、監督義務者は自らの不法行為として責任を負うべきだからである。この場合、被害者は監督義務者の過失と因果関係を主張立証しなければならない。したがって、Cが賠償義務を負うことはないとする本肢は誤りである。

未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する
- 前提:責任無能力者(712条の未成年者・713条の精神上の障害のある者)が責任を負わないこと
- 責任を負う者:責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(親権者・未成年後見人など。714条1項)と代理監督者(同条2項)
- 免責(監督義務者が主張立証):監督義務を怠らなかったこと、又は怠らなくても損害が生ずべきであったこと
- 未成年者に責任能力がある場合:監督義務違反と結果に相当因果関係があれば、監督義務者が709条で責任を負う(最判昭49.3.22)
誤り。違うのは「Aの過失を主張立証する必要はない」の部分である。709条の故意又は過失は損害賠償請求権の発生要件であるから、請求する被害者Bが主張立証しなければならない。
709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定める。不法行為に基づく損害賠償請求権の発生要件は、権利又は法律上保護される利益の侵害、加害者の故意又は過失、損害の発生とその額、侵害行為と損害との因果関係であり、これらはいずれも損害賠償請求権という法律効果を発生させるための要件であるから、請求する被害者が主張立証しなければならない。過失責任の原則のもとでは、加害者は過失がなければ責任を負わないのが原則であり、その過失を証明する責任も被害者にあるとされている。これに対し、債務不履行による損害賠償では、債務者の側が帰責事由のないことを主張立証する(415条1項ただし書)。本肢は、Aの過失を主張立証する必要はないとしており、誤りである。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 成立要件(被害者が主張立証):故意又は過失、権利又は法律上保護される利益の侵害、損害の発生、因果関係(709条)
- 責任能力の欠如(加害者が主張立証):未成年者で責任を弁識する知能がない(712条)、精神上の障害で責任を弁識する能力を欠く状態(713条本文)
- 正当防衛・緊急避難(720条):加害者が主張立証する
正しい。占有回収の訴えによる損害賠償請求(200条1項)は不法行為に基づく損害賠償請求の性質を持つので、相手方の故意又は過失が必要である。
200条1項は、占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができると定める。このうち物の返還請求は、占有という事実状態を回復するためのものであり、相手方の故意や過失を要件としない。これに対し、損害賠償請求は、占有の侵害によって生じた損害を填補するものであり、その性質は不法行為に基づく損害賠償請求であると解されている。判例も、占有の訴えに伴う損害賠償請求には相手方の故意又は過失が必要であるとしている。そのため、709条と同じく、相手方に故意又は過失があることが必要となる。占有の訴えの規定は、損害賠償を物の返還とあわせて請求できることを定めたにすぎず、不法行為の要件を緩める趣旨ではないからである。したがって、本肢は正しい。

占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
- 占有回収の訴え(200条):占有を奪われたとき/物の返還と損害賠償/奪われた時から1年以内(201条3項)/善意の特定承継人には請求できない
- 占有保持の訴え(198条):占有を妨害されたとき/妨害の停止と損害賠償
- 占有保全の訴え(199条):妨害されるおそれがあるとき/妨害の予防か損害賠償の担保
- 損害賠償:不法行為の性質を持ち、相手方の故意又は過失が必要
誤り。違うのは「故意がなく、かつ、重大な過失がなければ、賃貸人に対し損害賠償責任を負わない」の部分である。失火責任法は不法行為責任を軽減するもので、債務不履行による損害賠償には適用されない(最判昭30.3.25)。
失火責任法は、民法709条の規定は失火の場合には適用しない、ただし失火者に重大な過失があったときはこの限りでないと定め、失火による不法行為責任を重過失の場合に限定している。木造家屋が密集するわが国では、わずかな過失で大きな延焼被害が生じ、失火者に過大な責任を負わせることになるからである。しかし判例(最判昭30.3.25)は、同法は709条の適用を制限するものであって、債務不履行による損害賠償請求には適用がないとした。建物の賃借人は、賃貸借契約に基づき善良な管理者の注意をもって建物を保管し、終了時に返還する義務を負っており、失火によって返還できなくなれば、その不履行が賃借人の責めに帰することができない事由によることを証明しない限り、415条1項により損害賠償責任を負う。軽過失による失火でも免責されない。本肢は誤りである。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
| 場面 | 保護・免責の基準 |
|---|---|
| 失火責任法 | 重大な過失がなければ不法行為責任を負わない(債務不履行責任には適用されない) |
| 心裡留保の相手方(93条1項ただし書) | 知り、又は知ることができた(過失)で無効 |
| 取引的不法行為の相手方(715条) | 悪意又は重大な過失で使用者責任を追及できない |
| 譲渡制限の意思表示(466条3項) | 悪意又は重大な過失の譲受人に債務者は履行を拒める |
| 受領権者としての外観を有する者への弁済(478条) | 善意無過失で有効 |
正しい。「BはDに対して修理費相当額の損害賠償を請求することができるか」は所有権侵害を理由とする不法行為の成否の問題であり、設問のBに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものに当たる。
709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定める。Dは不注意で甲建物の一部を壊しているから、過失による所有権侵害として、甲建物の所有者がDに修理費相当額の賠償を請求できる。BがDに賠償を求めるには、侵害された権利が自分の権利でなければならないが、Bは引渡しも登記も受けておらず、Bの手元にある権利は、所有権を除けば売主Aに対する債権にとどまる。そのため、Bが修理費相当額の賠償を請求できるかは、契約締結によって既にBに所有権が移転しているかどうかで決まる。なお、Dは何らの権利も持たない不法行為者であり、177条の第三者に当たらないので、Bは登記がなくても所有権を主張できる。したがって本肢は設問の問題に当たる。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。






































































