第520条過去問 11
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
この条文の過去問 11問
AのBに対する売買代金債権をCが差し押さえた後にBがAを相続したときは、その債権は、消滅しない。
解説
本肢は正しい。520条本文は、債権及び債務が同一人に帰属したときはその債権は消滅すると定める。自らに対して債権を有しても権利行使の実益がなく、債権を存続させる意味がないからである。もっとも、同条ただし書は「その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」として混同の例外を定める。混同はあくまで債権を存続させる必要がないことを理由とする制度であるから、その債権について利害関係を有する第三者が存在する場合には、その者の権利を害さないよう債権を存続させるべきだからである。
ここでいう「第三者の権利の目的であるとき」には、債権が質入れされた場合(債権質)のほか、債権が差し押さえられた場合も含まれると解されている。差押債権者は、差し押さえた債権から取立て又は転付によって満足を得るべき地位を有しており、これは債権の存在を前提とする利益だからである。
本肢では、CがAのBに対する売買代金債権を差し押さえた後に、債務者BがAを相続している。相続によって当該債権と債務がBに帰属するから、本来であれば混同により債権は消滅するはずであるが、それを認めるとCは差押えの効力を失い、責任財産の把握が覆されてしまう。そこで520条ただし書により混同の例外が働き、当該売買代金債権は消滅しない。
したがって、「その債権は、消滅しない」とする本肢は正しい。
Aが死亡してその唯一の相続人であるBが限定承認をしたときは、AがBに対して有した債権は、混同により消滅する。
解説
本肢は誤り。債権および債務が同一人に帰属したときは、その債権は混同により消滅するのが原則である(520条本文)。したがって、AがBに対して有していた債権をBが単純承認により相続すれば、債権者たる地位と債務者たる地位がBに帰属し、当該債権は消滅する。しかし、相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は消滅しなかったものとみなされる(925条)。限定承認は、相続財産をもって相続債務を弁済し、相続人の固有財産には責任を及ぼさないという清算手続であり、相続財産と相続人の固有財産の分離を前提とする。ここで被相続人・相続人間の債権債務が混同で消滅するとすれば、本肢の場合、相続財産に属するAのB에 対する債権が消えてBは自己の債務を免れて利得する一方、相続財産という責任財産が減少して相続債権者が不当に害される結果となる。925条はこれを避けるため、混同の原則に対する例外として権利義務の存続を擬制したものである。その結果、Bは相続財産に対する債務者として引き続き弁済義務を負い、相続債権者はその債権を引当てとすることができる。財産分離がされた場合にも925条が準用される(950条2項)。よって、混同により消滅するとする本肢は誤りである。
CがAを単独相続した場合には,Cの保証債務は消滅する。
解説
本肢は正しい。CがAを単独相続すると、AがCに対して有していた保証債権と、C自身が負っていた保証債務とが、いずれもCという同一人に帰属することになる。債権及び債務が同一人に帰属したときはその債権は消滅するから(520条本文)、Cの保証債務は混同により消滅する。この結論は保証が単純保証であっても連帯保証であっても変わらず、連帯保証の場合には458条が準用する440条により、混同があったときは連帯保証人は弁済をしたものとみなされる結果、やはり保証債務は消滅する。他方で、主たる債務そのものが消滅するわけではない。Cは相続によりAの地位を包括承継するから、BB対する1000万円の貸金債権はCに帰属して存続し、Cは債権者として(連帯保証構成による弁済擬制を前提とすれば求償権として。459条・462条参照)Bに対しその支払を求めることができる。もっとも、混同の例外として、消滅すべき債権が第三者の権利の目的となっているとき、例えば保証債権に質権が設定されているときは、混同によっては消滅しない(520条ただし書)。本肢にはそのような事情はうかがわれないから、原則どおり保証債務は消滅する。よって正しい。
Aが所有する甲建物の賃借人BがAから甲建物を譲り受けて占有を継続していたが,CがAから甲建物を譲り受け,その旨の所有権移転登記を経由したため,Bにおいて甲建物の所有権の取得をCに対抗することができなくなったときは,賃借権は,Cに対する関係で消滅しなかったものとなる。
解説
本肢は正しい。賃借人Bが賃貸人Aから目的建物を譲り受けると、賃貸人たる地位はBに移転し(605条の2第1項参照)、賃借権という債権とこれに対応する債務とが同一人Bに帰属することになるから、賃借権は混同により消滅するのが原則である(520条本文)。
しかし、その後にCがAから同一建物を二重に譲り受けて所有権移転登記を経由すると、Bは登記を欠くためCに対して所有権取得を対抗することができない(177条)。この場合、Bとの関係では、所有権を取得したという前提そのものがCに対しては主張できないのであるから、その所有権取得を理由に賃借権が消滅したという効果だけをBに押し付けるのは不当である。そこで判例(最判昭和40年12月21日民集19巻9号2221頁)は、賃借人が譲り受けた不動産につき所有権移転登記を経ないうちに第三者が二重に譲り受けて登記を備え、賃借人が所有権取得を第三者に対抗できなくなった場合には、いったん混同により消滅した賃借権は、その第三者に対する関係では消滅しなかったものとなる、と判示している。混同の効果を相対的に捉え、対抗関係で敗れた者の従前の地位を復活させる趣旨である。
もっとも、Bが賃借権をCに対抗するには、賃借権自体の対抗要件、すなわち建物の引渡し(借地借家法31条)を備えていることが必要である。本肢ではBが占有を継続しているから、この要件も満たされる。したがって、賃借権はCとの関係で消滅しなかったものとなり、本肢は正しい。
債権質に供されている債権を債務者が相続したときは,当該債権は消滅する。
解説
本肢は誤り。混同による債権消滅(520条本文)は、債権と債務とが同一人に帰属した以上、その債権を存続させておく実益がないという点にその根拠がある。したがって、債権を存続させることに第三者が利害を有する場合には、混同による消滅を認めるべきでない。520条ただし書が「その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」と定めるのはこの趣旨である。
本肢の債権は債権質(362条1項)の目的とされており、質権者という第三者の権利の目的となっている。よって、その債権の債務者が債権者を相続し、債権と債務とが相続人に帰属したとしても、520条ただし書により当該債権は消滅しない。仮に消滅を認めれば、質権者は目的債権を失い、優先弁済権(366条)を一方的に奪われることとなり、担保権者の地位を害するからである。したがって、質権者はなお質権に基づき第三債務者から直接取立てをすることができる(366条1項)。
物権についても179条1項ただし書が同様の例外を定めており、混同の例外は「第三者の権利の目的であるとき」という共通の発想に立つ点を押さえておきたい。
保証人が債権者を相続したときは,保証債務は消滅する。
解説
本肢は正しい。保証人が債権者を相続すると、債権者が保証人に対して有していた保証債務の履行請求権(保証債権)と、保証人自身が負う保証債務とが、同一人(相続人たる保証人)に帰属することになる。債権と債務が同一人に帰属した以上、これを存続させる実益はないから、保証債務は混同により消滅する(520条本文)。
もっとも、混同により消滅するのはあくまで保証債務であって、主たる債務は消滅しない。相続人は債権者の地位を承継しているから、なお主たる債務者に対し主債務の履行を請求することができる。これに対し、主たる債務者が債権者を相続した場合には、主たる債務が混同により消滅し、その結果、保証債務も付従性により消滅することになる点と区別して理解しておく必要がある。
なお、保証債権が質入れされているなど「第三者の権利の目的」となっている場合には、520条ただし書により保証債務は消滅しないが、本肢はそのような特段の事情のない原則的場面を問うものであるから、保証債務は消滅するとする本肢は正しい。
AとBは,建物所有目的で,CからC所有の甲土地を賃借した。その後,Cが死亡してAが単独で甲土地を相続した場合,Aの賃借権は消滅しない。
解説
本肢は正しい。Cの死亡によりAが甲土地を単独相続した結果、賃貸人たる地位と賃借人たる地位の一方の側がAに帰属することになり、債権と債務が同一人に帰属したものとして混同による消滅(520条本文)が問題となる。
もっとも、借地借家法15条2項は「借地権が借地権設定者に帰した場合であっても、他の者と共にその借地権を有するときは、その借地権は、消滅しない」と定める。同条は、借地権が借地権設定者自身に帰属する場合(自己借地権)を一定の範囲で認めた規定であり、共同で借地権を有する者がいる場合には、混同の原則を修正して借地権の存続を認めたものである。本肢の賃借権は建物所有を目的とする土地賃借権であるから借地権(借地借家法2条1号)に当たり、AはBと共にこれを有している。そうすると、Aが借地権設定者たる地位を相続によって取得しても、同法15条2項により借地権は消滅しない。
そもそも、A・Bの共同賃借権は不可分的なものであり、Aの側だけを混同で消滅させるとBの借地権の内容にも影響が及び、建物所有目的という借地の実態にそぐわない。よって「Aの賃借権は消滅しない」とする本肢は正しい。
連帯債務者の一人がその連帯債務に係る債権を相続により取得し,当該債権が混同によって消滅した場合,その者は,他の連帯債務者に対して有する求償権の範囲内で,代位により連帯債務に係る債権を取得する。
解説
解説は準備中です。
唯一の相続人が単純承認をした場合,相続人が被相続人に対して有していた貸金債権は,その債権が第三者の権利の目的である場合を除き,混同により消滅する。
解説
本肢は正しい。単純承認をした相続人は、被相続人の権利義務を無限に承継する(920条)。したがって、相続人が一人しかいない場合、その相続人が被相続人に対して有していた貸金債権(相続人が債権者、被相続人が債務者)について、相続によって借入金返済債務の側も同一の相続人に帰属することになる。債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は消滅する(520条本文)。債権者と債務者が同一人となった以上、権利を存続させておく実益がないというのがその趣旨である。もっとも、520条ただし書は「その債権が第三者の権利の目的であるとき」を混同の例外とする。たとえば当該貸金債権に第三者のために質権が設定されている場合や、当該債権が差し押さえられている場合に混同による消滅を認めると、質権者や差押債権者の把握していた価値が失われ、その利益を不当に害することになるからである。この場合、債権は消滅せずに存続する。本肢はこの例外を留保した上で混同により消滅するとしており、920条・520条の帰結どおりである。なお、共同相続の場合には債権と債務がそれぞれ相続分に応じて分属するため、債権全部が混同で消滅するのは相続人が単独である場合に限られる点に注意を要する。
甲土地を所有するAがBのために甲土地を目的とする地上権を設定してその旨の登記がされたが,BのAに対する地代支払債務について未払があった場合,その後,BがAから甲土地の所有権を取得したときは,その未払債務は消滅する。
解説
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AのBに対する債権を担保するため,B所有の土地に抵当権が設定された後,CのBに対する債権を担保するためにその土地に後順位抵当権が設定された場合において,AがBを単独で相続したときは,Aの抵当権は消滅する。
解説
解説は準備中です。