第3条過去問 9
1私権の享有は、出生に始まる。
2外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
この条文の過去問 9問
BがAに対して有する所有権移転登記請求権を行使しないときは、Cは、その登記請求権を代位行使することができる。
解説
本肢は正しい。債権者代位権は本来、債務者の責任財産を保全するための制度であるが、判例(大判明治43年7月6日)は古くから、不動産の買主が売主に代位して、売主の前主に対する登記請求権を行使することを認めてきた(いわゆる債権者代位権の転用)。この場合、無資力要件は不要とされる。平成29年民法改正はこの判例法理を明文化し、民法423条の7において、「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる」と規定した。本肢では、甲土地の譲受人であるCが譲渡人Bの資力とは無関係に、BがAに対して有する所有権移転登記請求権を代位行使できる。これにより、まずA→Bの移転登記を実現し、次いでB→Cの移転登記を得て、実体的な物権変動の過程に対応した登記を積み重ねることができる。中間省略登記が原則として認められない(記述アの最判昭和40年9月21日参照)ことの裏返しとして、この代位行使が譲受人の救済手段として機能する。よって本肢は正しい。
AがBの母Cとの間で締結した、Aの所有する甲土地をBに無償で与える旨の第三者のためにする契約は、その成立の時にBが胎児であったとしても、そのためにその効力を妨げられない。
解説
本肢は正しい。私権の享有は出生に始まり(3条1項)、胎児は原則として権利能力を有しない。もっとも、本肢で問題となるのは、契約成立時に受益者となるべき者が権利能力を有していなければ契約自体が無効となるか、という点である。この点、第三者のためにする契約について、537条2項は「前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない」と定める。これは、設立中の法人や胎児など、契約成立時に現存しない者を受益者とする契約も有効であるとしてきた改正前の判例・通説を、平成29年債権法改正により明文化したものである。
そして、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(537条3項)。すなわち、契約の成立(要約者Aと諾約者Cとの間の合意)と、受益者Bの権利取得(受益の意思表示)とは時点を異にするから、Bが権利能力を備えていることが要求されるのは受益の意思表示の時点であって、契約成立時ではない。
したがって、AC間で甲土地をBに無償で与える旨の第三者のためにする契約は、その成立時にBが胎児であったとしても、そのために効力を妨げられない。Bは出生して権利能力を取得した後に受益の意思表示をすることで甲土地の給付を求める権利を取得すれば足りる。本肢は正しい。
胎児の母は、認知の訴えを提起することができない。
解説
本肢は正しい。認知の訴え(強制認知)について、787条本文は「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる」と定め、原告適格を有する者を限定的に列挙している。ここに胎児は含まれていない。
人の権利能力は出生に始まる(3条1項)ところ、胎児について既に生まれたものとみなす旨の例外規定は、不法行為に基づく損害賠償請求権(721条)、相続(886条1項)、遺贈(965条・886条)に限られ、認知の訴えについてこれらに相当する規定は存在しない。したがって胎児は認知の訴えの当事者能力を有せず、その母が法定代理人として胎児のために認知の訴えを提起することもできない。この結論は、胎児は法律行為の当事者となり得ず、出生前に親がこれを代理することはできないとする判例(大判昭和7年10月6日)の立場とも整合する。
もっとも、父の側からする任意認知については、783条1項により母の承諾を得て胎児のうちに認知することが認められている。すなわち、胎児認知は父の任意認知としてのみ可能であり、父が任意に認知しない場合に強制認知を求めるには、子の出生を待って787条本文により訴えを提起するほかない。以上より、胎児の母は認知の訴えを提起することができず、本肢は正しい。
AB間の契約は、その締結時においてCが胎児であったときには、無効である。
解説
本肢は誤り。私権の享有は出生に始まる(3条1項)から、胎児は原則として権利能力を有せず、損害賠償請求(721条)・相続(886条)・遺贈(965条)といった個別の規定がある場合に例外的に既に生まれたものとみなされるにとどまる。そのため、受益者となる第三者が契約締結時に胎児であると、権利の帰属主体が存在しないのではないかが問題となりそうである。
しかし、537条2項は、第三者のためにする契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合または第三者が特定していない場合であっても、そのために効力を妨げられないと明文で定めている。第三者の権利は受益の意思表示の時に発生する(537条3項)以上、契約成立時点で受益者が現存・特定している必要はないからである。したがって、胎児のほか、設立中の法人や、将来生まれる子・将来定まる者を受益者とする契約も有効に成立し得る。
本肢では締結時にCが胎児であったというにすぎないから、AB間の契約は537条2項により有効であり、無効であるとする本肢は誤りである。
妻が,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた夫と婚姻中に懐胎し,子を出産した場合には,子は夫の嫡出子と推定される。
解説
本肢は正しい。性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づく性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、同法4条1項により、以後、法令の適用については変更後の性別に属する者として扱われる。したがって、女性から男性への変更審判を受けた者は、男性として女性と婚姻することができる。そのうえで、その婚姻中に妻が懐胎した子については、民法772条1項の文言どおり夫の子と推定されるかが問題となる。この点、最決平25.12.10(百選II37事件)は、特例法が性別変更審判を受けた者に婚姻を法律上認めている以上、婚姻の主要な効果の一つである嫡出推定の適用のみを排除するのは相当でないとして、審判を受けた夫の妻が婚姻中に懐胎した子は772条により当該夫の子と推定されると判断し、嫡出子としての戸籍の記載を認めた。性別変更審判を受けた者には生殖能力がなく、血縁上の父子関係があり得ないことが類型的に明らかであるが、それは推定を当然に排除する事由とはならず、父子関係を否定しようとするのであれば嫡出否認の訴え(774条・775条)によるべきことになる。よって、本肢は正しい。
胎児を受贈者として死因贈与をすることはできない。
解説
本肢は正しい。私権の享有は出生に始まるのであり(3条1項)、胎児は原則として権利能力を有しない。民法が例外として胎児を「既に生まれたものとみなす」のは、不法行為に基づく損害賠償請求権(721条)、相続(886条1項)、および遺贈(965条による886条の準用)に限られ、死因贈与についてこれに相当する規定は置かれていない。死因贈与は贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与であるが(554条)、単独行為である遺贈と異なり、あくまで贈与者と受贈者との合意によって成立する契約である。したがって受贈者の側にも承諾の意思表示をなしうる地位、すなわち権利能力が必要となる。554条は死因贈与について「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と定めるにとどまり、判例も方式に関する規定の準用を否定するなど(最判昭32.5.21参照)、契約たる性質に反する部分の準用を認めていないから、受遺能力に関する965条もその性質上準用されないと解される。加えて、判例は胎児の出生前における権利能力を否定し、胎児のための法定代理も認めない立場(停止条件説。大判昭7.10.6)を採るから、胎児を契約当事者として死因贈与契約を締結する余地はない。よって、胎児を受贈者として死因贈与をすることはできない。なお、贈与者が第三者との間で胎児に利益を与える第三者のためにする契約を結ぶことは、契約成立時に受益者が現存しない場合でも妨げられず(537条2項)、この場合とは区別を要する。
身元保証契約において,使用者が,被用者に業務上不適任又は不誠実な事跡があって,そのために身元保証人の責任を惹起するおそれがあることを知ったときは,使用者は,遅滞なく身元保証人にその旨を通知しなければならない。
解説
本肢は正しい。身元保証は、被用者の行為により使用者が受ける損害の賠償を引き受ける継続的保証であり、責任の範囲が広汎かつ予測困難となりやすいことから、身元保証ニ関スル法律によって保証人保護の特則が置かれている。同法3条は使用者の通知義務を定めており、その1号は「被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ」を、2号は被用者の任務または任地を変更し、これによって身元保証人の責任が加重され、またはその監督が困難となるときを掲げ、いずれの場合も使用者は遅滞なく身元保証人に通知しなければならないとする。本肢は1号の定める場合をそのまま述べるものであるから、正しい。この通知は、身元保証人に契約関係からの離脱の機会を与える趣旨であり、通知を受けた身元保証人は将来に向かって契約を解除することができる(同法4条)。また、使用者が通知を怠った場合には、裁判所が身元保証人の損害賠償責任の有無および金額を定めるに当たり、使用者の過失として斟酌される(同法5条)。これらの規定に反して身元保証人に不利益な特約はすべて無効である(同法6条)。なお、身元保証の期間は定めがなければ3年、定めを置く場合も5年が上限である(同法1条・2条)。
身元保証契約において,使用者が,被用者に業務上不適任又は不誠実な事跡があって,そのために身元保証人の責任を惹起するおそれがあることを知ったときは,使用者は,遅滞なく身元保証人にその旨を通知しなければならない。
解説
本肢は正しい。身元保証は、被用者の行為により使用者が受ける損害の賠償を引き受ける継続的保証であり、責任の範囲が広汎かつ予測困難となりやすいことから、身元保証ニ関スル法律によって保証人保護の特則が置かれている。同法3条は使用者の通知義務を定めており、その1号は「被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ」を、2号は被用者の任務または任地を変更し、これによって身元保証人の責任が加重され、またはその監督が困難となるときを掲げ、いずれの場合も使用者は遅滞なく身元保証人に通知しなければならないとする。本肢は1号の定める場合をそのまま述べるものであるから、正しい。この通知は、身元保証人に契約関係からの離脱の機会を与える趣旨であり、通知を受けた身元保証人は将来に向かって契約を解除することができる(同法4条)。また、使用者が通知を怠った場合には、裁判所が身元保証人の損害賠償責任の有無および金額を定めるに当たり、使用者の過失として斟酌される(同法5条)。これらの規定に反して身元保証人に不利益な特約はすべて無効である(同法6条)。なお、身元保証の期間は定めがなければ3年、定めを置く場合も5年が上限である(同法1条・2条)。
胎児は,不法行為に基づく損害賠償請求権を訴訟物とするときは,当事者になることができる。
解説
解説は準備中です。