1賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
1 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
2 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
この条文の過去問 23問
誤り。違うのは「同時履行の関係にある」の部分である。敷金の返還義務は賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに生じるので(622条の2第1項1号)、明渡しが先になる。
622条の2第1項1号は、賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、受け取った敷金の額から賃借人の未払の債務の額を差し引いた残額を返還しなければならないと定める。敷金の返還義務は賃貸物が返されてはじめて生じるので、明渡しが先になる。判例も、家屋の明渡しと敷金の返還は同時履行の関係に立たないとした(最判昭49.9.2)。敷金は、賃貸借の終了後、明渡しまでに生じる賃料相当の損害金なども含めて担保するものなので、明渡しが済むまで差し引く額が決まらないこと、敷金契約は賃貸借契約に付随するものの、一つの双務契約から生じた対価関係にある債務とはいえないこと、二つの債務の価値に大きな差があり、同時履行を認めることが公平とは限らないことが理由である。債権法改正で、この結論が622条の2として条文になった。

賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
| 二つの債務 | 同時履行か | 根拠 |
|---|---|---|
| 質権の被担保債務の弁済と質物の返還 | 否定(弁済が先) | 347条・大判大9.3.29 |
| 敷金の返還と賃借物の返還 | 否定(明渡しが先) | 622条の2第1項1号・最判昭49.9.2 |
| 請負の報酬と修補に代わる損害賠償 | 肯定 | 533条括弧書・最判平9.2.14 |
| 詐欺による取消し後の代金返還と抹消登記 | 肯定 | 533条の類推・最判昭47.9.7 |
| 弁済と受取証書の交付 | 肯定 | 486条1項 |
| 弁済と債権証書の返還 | 否定(全部の弁済が先) | 487条 |
誤り。違うのは「未払賃料額が敷金額の範囲内であっても」先取特権を行使できるとする部分である。敷金を受け取っている賃貸人は、敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する(316条)。
不動産の賃貸人は、賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務について、賃借人の動産の上に先取特権を有し(311条1号・312条)、建物の賃貸借ではその対象は賃借人が建物に備え付けた動産に及ぶ(313条2項)。もっとも316条は、賃貸人が622条の2第1項の敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有すると定める。敷金は賃料債務などを担保するために交付された金銭であり、賃借人が履行しなければ賃貸人はこれを弁済に充てることができるから(622条の2第2項)、未払額が敷金の範囲に収まっている限り、賃貸人は敷金から確実に満足を得られる。それに重ねて賃借人の動産にまで担保を及ぼす必要はないから、先取特権の範囲を敷金で足りない部分に絞ったのである。本肢は未払賃料額が敷金額の範囲内であるから、BはAが甲建物に備え付けた動産について先取特権を行使することができない。

賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
誤り。違うのは「Aは、…賃料債務の弁済に敷金を充てるよう請求することができる」の部分である。賃借人は賃貸人に対し、敷金を債務の弁済に充てることを請求できない(622条の2第2項後段)。
622条の2第2項前段は、賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができると定め、後段は、この場合において、賃借人は賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができないと定める。敷金から充当するかどうかは、担保を持つ賃貸人が決めることであって、賃借人の権利ではないのである。敷金は賃貸人のための担保であり、賃貸人は賃借人の資力や残りの期間を見ながら、いつ、いくら充当するかを自分で判断できてこそ担保として役に立つ。賃借人が自由に充当を求められるとすれば、賃貸借が続いている間に担保がなし崩しに減り、賃借人は敷金を使い切ったうえで賃料の不払を続けることもできてしまい、敷金を差し入れさせた意味が失われる。したがって、Aは、賃貸借契約の存続中に、Bに対して賃料債務の弁済に敷金を充てるよう請求することはできない。

賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
誤り。違うのは「敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる」の部分である。敷金の返還は明渡しの後であり、明渡債務が先履行であるから留置権は生じない(最判昭49.9.2)。
622条の2第1項1号は、賃貸人が敷金を返還すべき時を、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときと定める。敷金は明渡しまでに生じる一切の債務を担保するものであり、明渡しが済むまでは差し引く額が決まらないから、賃貸借の終了だけでは足りず、目的物が返還されて初めて残額の返還義務が生じるのである。判例も、賃貸人は特別の約定のない限り賃借人から家屋の明渡しを受けた後に敷金残額を返還すれば足り、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係に立たないとし、賃借人の明渡債務が先履行の関係に立つ以上、賃借人は敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないとした(最判昭49.9.2)。留置権は被担保債権が弁済期にないときは成立しないところ(295条1項ただし書)、明渡し前の敷金返還請求権は弁済期にないのである。したがって、Aは賃貸借が終了しても、敷金の返還を受けるまで甲建物を留置することはできない。

賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあつては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はない
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
正しい。賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃貸人は敷金の残額を賃借人に返還しなければならない(622条の2第1項2号)。
622条の2第1項は、賃貸人が敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき(1号)のほか、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき(2号)にも、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を賃借人に返還しなければならないと定める。敷金は、もとの賃借人が自分の債務を担保するために差し入れたものであるから、これを新しい賃借人の将来の債務の担保としてそのまま残すと、もとの賃借人は自分の関わらない他人の不払の危険を負い続け、予期しない不利益を受けることになる。そこで、賃借権が適法に譲渡されたときは、敷金関係は新しい賃借人に引き継がれず、もとの賃借人との間で清算されるのである。本肢では、AがCに賃借権を適法に譲渡しているから、BはAに敷金の残額を返還しなければならず、AはBに敷金の返還を請求することができる。新しい賃借人Cの債務を担保するには、改めて敷金を差し入れさせることになる。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
誤り。違うのは「未払賃料額が敷金額の範囲内であっても」先取特権を行使できるとする部分である。敷金を受け取っている賃貸人は、敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する(316条)。
不動産の賃貸人は、賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務について、賃借人の動産の上に先取特権を有し(311条1号・312条)、建物の賃貸借ではその対象は賃借人が建物に備え付けた動産に及ぶ(313条2項)。もっとも316条は、賃貸人が622条の2第1項の敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有すると定める。敷金は賃料債務などを担保するために交付された金銭であり、賃借人が履行しなければ賃貸人はこれを弁済に充てることができるから(622条の2第2項)、未払額が敷金の範囲に収まっている限り、賃貸人は敷金から確実に満足を得られる。それに重ねて賃借人の動産にまで担保を及ぼす必要はないから、先取特権の範囲を敷金で足りない部分に絞ったのである。本肢は未払賃料額が敷金額の範囲内であるから、BはAが甲建物に備え付けた動産について先取特権を行使することができない。

賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
誤り。違うのは「Aは、…賃料債務の弁済に敷金を充てるよう請求することができる」の部分である。賃借人は賃貸人に対し、敷金を債務の弁済に充てることを請求できない(622条の2第2項後段)。
622条の2第2項前段は、賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができると定め、後段は、この場合において、賃借人は賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができないと定める。敷金から充当するかどうかは、担保を持つ賃貸人が決めることであって、賃借人の権利ではないのである。敷金は賃貸人のための担保であり、賃貸人は賃借人の資力や残りの期間を見ながら、いつ、いくら充当するかを自分で判断できてこそ担保として役に立つ。賃借人が自由に充当を求められるとすれば、賃貸借が続いている間に担保がなし崩しに減り、賃借人は敷金を使い切ったうえで賃料の不払を続けることもできてしまい、敷金を差し入れさせた意味が失われる。したがって、Aは、賃貸借契約の存続中に、Bに対して賃料債務の弁済に敷金を充てるよう請求することはできない。

賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
誤り。違うのは「敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる」の部分である。敷金の返還は明渡しの後であり、明渡債務が先履行であるから留置権は生じない(最判昭49.9.2)。
622条の2第1項1号は、賃貸人が敷金を返還すべき時を、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときと定める。敷金は明渡しまでに生じる一切の債務を担保するものであり、明渡しが済むまでは差し引く額が決まらないから、賃貸借の終了だけでは足りず、目的物が返還されて初めて残額の返還義務が生じるのである。判例も、賃貸人は特別の約定のない限り賃借人から家屋の明渡しを受けた後に敷金残額を返還すれば足り、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係に立たないとし、賃借人の明渡債務が先履行の関係に立つ以上、賃借人は敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないとした(最判昭49.9.2)。留置権は被担保債権が弁済期にないときは成立しないところ(295条1項ただし書)、明渡し前の敷金返還請求権は弁済期にないのである。したがって、Aは賃貸借が終了しても、敷金の返還を受けるまで甲建物を留置することはできない。

賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあつては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はない
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
正しい。賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃貸人は敷金の残額を賃借人に返還しなければならない(622条の2第1項2号)。
622条の2第1項は、賃貸人が敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき(1号)のほか、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき(2号)にも、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を賃借人に返還しなければならないと定める。敷金は、もとの賃借人が自分の債務を担保するために差し入れたものであるから、これを新しい賃借人の将来の債務の担保としてそのまま残すと、もとの賃借人は自分の関わらない他人の不払の危険を負い続け、予期しない不利益を受けることになる。そこで、賃借権が適法に譲渡されたときは、敷金関係は新しい賃借人に引き継がれず、もとの賃借人との間で清算されるのである。本肢では、AがCに賃借権を適法に譲渡しているから、BはAに敷金の残額を返還しなければならず、AはBに敷金の返還を請求することができる。新しい賃借人Cの債務を担保するには、改めて敷金を差し入れさせることになる。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
正しい。賃貸人の地位の移転に伴い、旧賃貸人に対する未払債務には敷金が当然に充当され、残額の返還債務が新賃貸人に承継される(最判昭44.7.17・605条の2第4項)。
605条の2第4項は、賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、622条の2第1項の敷金の返還に係る債務は譲受人が承継すると定める。敷金は目的物の使用関係に結び付いた担保であるから、返還する者を現に賃料を受け取る新しい賃貸人とするのが当事者の合理的な意思に合うのである。もっとも、承継されるのは敷金の全額ではない。判例は、敷金は賃借人の賃料債務の不履行があるときはその弁済として当然に充当される性質のものであるから、建物の所有権移転に伴い賃貸人の地位が承継された場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済として当然に充当され、その限度で敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみ権利義務関係が新賃貸人に承継されるとした(最判昭44.7.17)。本肢では、AのBに対する未履行の債務に敷金が充当され、残額があればその返還債務がCに承継されるから、本肢は正しい。賃借人が交替する場合(肢エ)とは、敷金関係が新しい当事者に移るかどうかの結論が逆になる。

旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済としてこれに当然充当され、その限度において敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継される
- 賃貸人による充当(622条の2第2項前段):賃借人の不履行があれば、賃貸人は敷金を弁済に充てられる
- 賃借人からの充当請求(同項後段):できない
- 返還の時期(622条の2第1項1号):賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けた時。明渡しが先で、敷金を理由に留置できない
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
誤り。違うのは「同時履行の関係にある」の部分である。敷金は賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けた時に返還すべきものであり(622条の2第1項1号)、明渡しが先履行である(最判昭49.9.2)。
622条の2第1項1号は、賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を差し引いた残額を返還しなければならないと定める。敷金の返還義務は、建物の明渡しが済んで初めて生じるのであり、賃借人の建物明渡義務が先に履行すべき義務となる。判例も、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係に立つものではないとしており(最判昭49.9.2)、現行法はこれを条文にしたものである。敷金は、明渡しまでに生じる賃料の滞納や損害金、原状回復の費用など一切の債務を担保するものであり、明渡しが済むまでは差し引く額が決まらず、返す額も決まらないからである。同じ理由から、賃借人が敷金の返還請求権のために建物を留置することもできない。したがって、期間満了による賃貸借の終了に伴う建物の明渡しと敷金の返還とは同時履行の関係になく、本肢は誤りである。

賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあつては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はない
- 立つ:解除による相互の原状回復義務(546条)、未成年者の取消し・詐欺による取消しの相互の返還義務
- 立つ:土地の売買の所有権移転登記義務と代金支払義務、受取証書の交付と弁済
- 立たない:有償委任の報酬支払と事務処理(報酬は後払い。648条2項)
- 立たない:造作買取代金の支払と建物の明渡し(最判昭和29年7月22日)
- 立たない:敷金の返還と明渡し(明渡しが先。622条の2第1項1号)
- 立たない:抵当権設定登記の抹消・譲渡担保の受戻しと被担保債務の弁済(弁済が先)
誤り。違うのは「Aは,敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる」の部分である。建物の明渡しが敷金の返還より先に履行すべきものなので、賃借人は敷金返還請求権で建物を留置できない(最判昭49.9.2・622条の2第1項1号)。
留置権が成立するには、その物に関して生じた債権が弁済期にあることが必要である(295条1項)。622条の2第1項1号は、賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金から賃借人の債務を差し引いた残額を返還しなければならないと定めている。敷金は明渡しまでに生ずる賃借人の債務も担保するものであり、明渡しが済んで初めて返還すべき額が決まるからである。判例も、賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立ち、賃借人は敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないとしている(最判昭49.9.2)。明渡しの前には敷金返還請求権は弁済期になく、留置権の要件を欠く。肢は敷金が返還されるまで留置できるとしており、誤っている。同じ理由で同時履行の抗弁も主張できない。

賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つ…賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 敷金返還請求権で建物の明渡しを拒む | 最判昭49.9.2 | 留置できない |
| 建物買取代金債権で敷地の明渡しを拒む | 大判昭18.2.18 | 建物とともに敷地も留置できる |
| 売主の代金債権で転売の買主からの引渡請求を拒む | 最判昭47.11.16 | 留置できる |
| 解除後に権原がないと知りながら支出した有益費 | 最判昭46.7.16 | 295条2項の類推で留置できない |
誤り。違うのは「Aは,敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる」の部分である。建物の明渡しが敷金の返還より先に履行すべきものなので、賃借人は敷金返還請求権で建物を留置できない(最判昭49.9.2・622条の2第1項1号)。
留置権が成立するには、その物に関して生じた債権が弁済期にあることが必要である(295条1項)。622条の2第1項1号は、賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金から賃借人の債務を差し引いた残額を返還しなければならないと定めている。敷金は明渡しまでに生ずる賃借人の債務も担保するものであり、明渡しが済んで初めて返還すべき額が決まるからである。判例も、賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立ち、賃借人は敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないとしている(最判昭49.9.2)。明渡しの前には敷金返還請求権は弁済期になく、留置権の要件を欠く。肢は敷金が返還されるまで留置できるとしており、誤っている。同じ理由で同時履行の抗弁も主張できない。

賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つ…賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 敷金返還請求権で建物の明渡しを拒む | 最判昭49.9.2 | 留置できない |
| 建物買取代金債権で敷地の明渡しを拒む | 大判昭18.2.18 | 建物とともに敷地も留置できる |
| 売主の代金債権で転売の買主からの引渡請求を拒む | 最判昭47.11.16 | 留置できる |
| 解除後に権原がないと知りながら支出した有益費 | 最判昭46.7.16 | 295条2項の類推で留置できない |
誤り。違うのは「主張することはできない」の部分である。判例は、差し押さえられた賃料債権も、賃貸借が終了し目的物が明け渡されたときは敷金の充当によりその限度で消滅するとした(最判平14.3.28)。
敷金は、賃貸借に基づいて生ずる賃借人の債務を担保するために交付される金銭であり、賃貸借が終了し目的物が返還されたときに、それまでの未払賃料などに当然に充てられ、残りが返還される(622条の2第1項1号参照)。判例(最判平14.3.28)は、目的物の返還時に残っている賃料債権などは、敷金がある限度で敷金の充当によって当然に消滅し、この充当は敷金契約から生ずる効果であって、相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないとした。そのうえで、敷金が授受された賃貸借の賃料債権について抵当権者が物上代位権を行使して差し押さえた場合でも、賃貸借が終了し目的物が明け渡されたときは、賃料債権は敷金の充当によってその限度で消滅するとした。相殺を対抗できないとした判例と結論が分かれるのは、敷金の充当が賃借人の意思による債権の消滅ではなく、敷金契約に基づいて当然に生じる効果だからである。したがって、賃借人は敷金の充当による消滅を主張でき、本肢は誤りである。

敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、当該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅する
- 目的債権の譲渡・対抗要件の具備(抵当権設定登記の後):抵当権者は自ら差し押さえて物上代位できる(最判平成10年1月30日)
- 一般債権者の転付命令(第三債務者への送達が抵当権者の差押えより前):抵当権者は抵当権の効力を主張できない(最判平成14年3月12日)
- 賃借人の相殺(自働債権を抵当権設定登記の後に取得):差押えの後は抵当権者に対抗できない(最判平成13年3月13日)
- 敷金の充当(賃貸借の終了と明渡し):差し押さえた賃料債権も充当の限度で消滅する(最判平成14年3月28日)
- 動産売買の先取特権:公示がないので、目的債権の譲渡と対抗要件の具備の後は物上代位できない(最判平成17年2月22日)
誤り。違うのは「敷金全額についての権利義務関係が新賃貸人に承継される」の部分である。旧賃貸人に対する未払賃料に敷金が当然充当され、残額についてのみ新賃貸人に承継される(最判昭44.7.17)。
賃貸人の地位が移転したときは、敷金の返還債務は譲受人が承継する(605条の2第4項)。しかし、承継されるのは敷金全額に関する権利義務ではない。最判昭44.7.17は、敷金は賃借人の賃料債務の不履行があればその弁済として当然に充当される性質のものであるから、建物の所有権移転に伴い賃貸人の地位の承継があった場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済として当然に充当され、その限度で敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみ権利義務関係が新賃貸人に承継されるとした。敷金は賃借人の債務を担保するための金銭であるから、旧賃貸人のもとで生じた未払賃料の担保としてまず働くのが筋だからである。平成29年改正はこの充当を明文化しなかったが、判例の趣旨は現行法でも維持されると解されている。

敷金は、賃貸借契約終了の際に賃借人の賃料債務不履行があるときは、その弁済として当然これに充当される性質のものであるから、建物賃貸借契約において該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済としてこれに当然充当され、その限度において敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継される
- 対抗要件あり・譲渡:賃貸人の地位は合意なしに当然に移転する(605条の2第1項)。留保の合意と譲受人から譲渡人への賃貸の合意があれば移転しない(同条2項)
- 対抗要件なし・譲渡:譲渡人と譲受人の合意で、賃借人の承諾なく移転できる(605条の3前段)
- 賃借人への対抗:所有権移転登記が要る(605条の2第3項・605条の3後段)
- 承継される債務:費用償還債務と敷金返還債務(605条の2第4項)。敷金は旧賃貸人に対する未払賃料に充当した残額が承継される(最判昭44.7.17)
誤り。違うのは「敷金についての権利関係も土地賃借権とともに移転するため」の部分である。賃借権が適法に譲渡されても敷金関係は新賃借人に承継されず、賃貸人は旧賃借人に残額を返還する(622条の2第1項2号)。
622条の2第1項2号は、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃貸人は賃借人に対し、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を差し引いた残額を返還しなければならないと定める。賃借権が賃貸人の承諾を得て譲渡されれば、その時点で旧賃借人との敷金関係は清算され、敷金に関する権利義務は新賃借人には引き継がれないのである。判例も、賃借人が交代した場合、敷金に関する権利義務関係は特段の事情のない限り新賃借人に承継されないとしていた(最判昭53.12.22)。旧賃借人が差し入れた敷金で新賃借人の債務まで担保させると、旧賃借人が予期しない不利益を受けることになるからである。本肢では、借地上の建物とともに土地の賃借権が承諾を得て譲渡されているので、敷金は旧賃借人に返還されるべきものであり、譲受人は賃貸人に対し、譲渡人が差し入れた敷金の返還を請求することはできない。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):旧賃貸人に対する未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る(最判昭44.7.17)
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 明渡し時の充当:敷金契約の効果として当然に充当され、相殺の意思表示は要らない(最判平14.3.28)
- 賃借人からの充当の請求:できない(622条の2第2項後段)
- 明渡し前の敷金返還請求権:発生と金額が不確定で、転付命令の対象とならない(最判昭48.2.2)
誤り。違うのは「敷金の額に満つるまでは,未払賃料の支払を拒むことができる」の部分である。賃借人の側から敷金を債務の弁済に充てるよう請求することはできない(622条の2第2項後段)。
622条の2第2項は、賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づく金銭債務を履行しないときは、敷金をその弁済に充てることができ、この場合、賃借人は賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができないと定める。敷金は賃貸人の債権を担保するために差し入れられた金銭であり、それをいつどのように使うかは担保を持つ賃貸人が決めることだからである。賃借人の側から充当を求めて賃料の支払を拒めるとすると、担保を持っていることを理由に本来の債務の履行を拒むことになり、賃貸人は担保を失ったまま賃貸を続けることになる。改正前の判例も、賃借人から敷金の充当を主張することは許されないとしていた。したがって、賃借人は、敷金を差し入れていることを理由に、敷金の額に達するまで未払賃料の支払を拒むことはできない。

賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):旧賃貸人に対する未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る(最判昭44.7.17)
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 明渡し時の充当:敷金契約の効果として当然に充当され、相殺の意思表示は要らない(最判平14.3.28)
- 賃借人からの充当の請求:できない(622条の2第2項後段)
- 明渡し前の敷金返還請求権:発生と金額が不確定で、転付命令の対象とならない(最判昭48.2.2)
正しい。敷金返還請求権は明渡しの時に被担保債権を控除した残額について発生するので、明渡し前は発生も金額も不確定で、転付命令の対象とならない(最判昭48.2.2)。
転付命令は、差し押さえた金銭債権を、支払に代えて券面額で差押債権者に移す命令であり(民事執行法159条)、対象となる債権は券面額が確定していなければならない。最判昭48.2.2は、敷金は賃貸借終了後の家屋明渡しまでの損害金などの債権も担保し、その返還請求権は、明渡しの時にそれらを含む賃貸人の一切の債権を控除し、なお残額があることを条件として、その残額について発生するものであるから、賃貸借終了後であっても明渡し前においては、発生と金額が不確定な権利であり、券面額のある債権に当たらず、転付命令の対象とならないとした。明渡しが済むまでは差し引く額が決まらないので、返還されるべき額も決まらないからである。現行の622条の2第1項1号も、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに敷金を返還すると定めている。本肢はこの判例のとおりである。

賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):旧賃貸人に対する未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る(最判昭44.7.17)
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 明渡し時の充当:敷金契約の効果として当然に充当され、相殺の意思表示は要らない(最判平14.3.28)
- 賃借人からの充当の請求:できない(622条の2第2項後段)
- 明渡し前の敷金返還請求権:発生と金額が不確定で、転付命令の対象とならない(最判昭48.2.2)
正しい。判例は、賃貸人たる地位の承継があった場合、旧賃貸人に差し入れられた敷金は賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務に当然充当され、残額についてのみ新賃貸人に承継されるとした(最判昭44.7.17)。
605条の2第4項は、不動産の譲渡により賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、敷金の返還に係る債務は譲受人が承継すると定める。最判昭44.7.17は、敷金は賃貸借の終了の際に賃借人の賃料債務の不履行があるときはその弁済として当然充当される性質のものであるから、建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位の承継があった場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済として当然充当され、その限度で敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継されるとした。敷金は賃貸借上の債務を担保するものであり、旧賃貸人のもとで生じた未払の債務は旧賃貸人との間で清算するのが当事者の通常の意思に合い、新賃貸人に過大な返還債務を負わせることもないからである。本肢は正しい。

旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済としてこれに当然充当され、その限度において敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継される
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 終了後明渡し前の目的物の譲渡:賃貸借が承継されないので、敷金関係も新所有者に承継されない
正しい。敷金は明渡しまでに生ずる一切の債務を担保し、返還請求権は明渡し完了の時に、被担保債権を控除した残額について発生する(最判昭48.2.2、622条の2第1項1号)。
622条の2第1項は、敷金を、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で交付される金銭と定義し、賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、受け取った敷金の額からそれらの債務の額を控除した残額を返還しなければならないと定める。出題当時は明文がなかったが、判例(最判昭48.2.2)は、敷金は賃貸借終了後建物明渡義務の履行までに生ずる賃料相当損害金その他賃貸借契約により賃貸人が取得する一切の債権を担保し、敷金返還請求権は明渡し完了の時にそれまでの一切の被担保債権を控除した残額につき具体的に発生するとしており、平成29年改正でこれが明文化された。明渡しまでは賃借人の債務の額が確定しないから、明渡し時に清算するのが合理的だからである。本肢は正しい。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 被担保債権:賃貸借終了後明渡しまでの賃料相当損害金を含む、賃貸借に基づく一切の金銭債務
- 返還債務の発生:賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けた時に、残額について発生する。明渡しが先履行で同時履行ではない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 物上代位との関係:賃料債権が差し押さえられても、明渡し時の残存賃料は敷金の充当により当然に消滅する(最判平14.3.28)
正しい。判例は、賃借権が承諾を得て移転された場合、特段の事情のない限り、敷金に関する権利義務関係は新賃借人に承継されないとした(最判昭53.12.22)。現在は622条の2第1項2号が、適法な賃借権の譲渡の時に旧賃借人に残額を返還すると定めている。
622条の2第1項2号は、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃貸人は賃借人に対し敷金の残額を返還しなければならないと定める。出題当時は明文がなかったが、判例(最判昭53.12.22)は、賃借権が旧賃借人から新賃借人に移転され賃貸人がこれを承諾したことにより旧賃借人が賃貸借関係から離脱した場合には、敷金交付者が賃貸人との間で敷金をもって新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は新賃借人に承継されないとしていた。敷金を交付した旧賃借人が、自己と無関係な新賃借人の将来の債務まで担保させられるのは、その予期に反し不当だからである。平成29年改正でこの判例が明文化された。本肢は正しい。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 被担保債権:賃貸借終了後明渡しまでの賃料相当損害金を含む、賃貸借に基づく一切の金銭債務
- 返還債務の発生:賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けた時に、残額について発生する。明渡しが先履行で同時履行ではない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 物上代位との関係:賃料債権が差し押さえられても、明渡し時の残存賃料は敷金の充当により当然に消滅する(最判平14.3.28)
誤り。違うのは「敷金の充当によって消滅することはない」の部分である。判例は、抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえても、賃貸借が終了し目的物が明け渡されたときは、残存する賃料債権は敷金の充当により当然に消滅するとした(最判平14.3.28)。
判例(最判平14.3.28)は、敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使して差し押さえた場合でも、賃貸借契約が終了し目的物が明け渡されたときは、賃料債権は敷金の充当によりその限度で消滅するとした。その理由として、敷金の充当による未払賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって、相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないこと、また、敷金契約が締結された場合には、賃料債権は敷金の充当を予定した債権となり、このことを抵当権者に主張できることを挙げた。賃料債権は差押えの時点ですでに敷金による担保と清算の仕組みが付いた債権であり、抵当権者はその性質の債権を差し押さえたにすぎないからである。本肢は充当による消滅を否定している点で誤りである。現在は622条の2第1項1号が明渡し時の充当を明文で定めている。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 被担保債権:賃貸借終了後明渡しまでの賃料相当損害金を含む、賃貸借に基づく一切の金銭債務
- 返還債務の発生:賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けた時に、残額について発生する。明渡しが先履行で同時履行ではない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 物上代位との関係:賃料債権が差し押さえられても、明渡し時の残存賃料は敷金の充当により当然に消滅する(最判平14.3.28)
正しい。判例は、建物明渡債務と敷金返還債務は特別の約定のない限り同時履行の関係に立たず、明渡しが先履行であるとした(最判昭49.9.2)。
判例(最判昭49.9.2)は、賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立たないとした。敷金は賃貸借終了後明渡しまでに生ずる一切の債務を担保するものであり、敷金返還請求権は明渡しの完了の時に、それまでの被担保債権を控除した残額について発生するから、明渡しが先に履行されなければ返還すべき額が確定しないからである。また、両債務は一個の双務契約から生じた対価関係にある債務ではなく、同時履行とすべき公平上の理由もない。現在は622条の2第1項1号が、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに残額を返還すると定め、明渡しが先であることを明文で示している。同じ理由から、賃借人は敷金返還請求権を被担保債権として建物に留置権を主張することもできない。本肢は正しい。

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
- 被担保債権:賃貸借終了後明渡しまでの賃料相当損害金を含む、賃貸借に基づく一切の金銭債務
- 返還債務の発生:賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けた時に、残額について発生する。明渡しが先履行で同時履行ではない
- 賃貸人の地位の移転(605条の2第4項):未払債務に当然充当した残額の返還債務が新賃貸人に移る
- 賃借権の適法な譲渡(622条の2第1項2号):旧賃借人に残額を返還する。新賃借人には承継されない
- 物上代位との関係:賃料債権が差し押さえられても、明渡し時の残存賃料は敷金の充当により当然に消滅する(最判平14.3.28)