1意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
この条文の過去問 13問
正しい。3条の2の無効には第三者保護規定がないので、善意無過失の第三者にも対抗できる。
3条の2は、意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為を無効とする。この無効は意思能力のない者を徹底して守るためのものであり、第三者との関係でも効力が制限されない。意思表示の瑕疵の規定と比べると違いがはっきりする。心裡留保(93条2項)と虚偽表示(94条2項)は善意の第三者に、錯誤(95条4項)と詐欺(96条3項)は善意無過失の第三者に対抗できないとする保護規定を置いている。これらは表意者に外観を作り出した落ち度があることを踏まえて、取引の安全と調整したものである。ところが3条の2には第三者を保護する規定がない。意思能力のない者には外観を作り出したと責めることができず、保護の必要が大きいからである。したがって、意思無能力による無効は善意無過失の第三者にも主張できる。第三者が動産を即時取得するなど別の制度で保護される余地はある。

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
正しい。3条の2の無効には第三者保護規定がないので、善意無過失の第三者にも対抗できる。
3条の2は、意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為を無効とする。この無効は意思能力のない者を徹底して守るためのものであり、第三者との関係でも効力が制限されない。意思表示の瑕疵の規定と比べると違いがはっきりする。心裡留保(93条2項)と虚偽表示(94条2項)は善意の第三者に、錯誤(95条4項)と詐欺(96条3項)は善意無過失の第三者に対抗できないとする保護規定を置いている。これらは表意者に外観を作り出した落ち度があることを踏まえて、取引の安全と調整したものである。ところが3条の2には第三者を保護する規定がない。意思能力のない者には外観を作り出したと責めることができず、保護の必要が大きいからである。したがって、意思無能力による無効は善意無過失の第三者にも主張できる。第三者が動産を即時取得するなど別の制度で保護される余地はある。

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
正しい。心裡留保の意思表示が相手方の有過失により無効となっても、その無効は善意の第三者に対抗できない(93条2項)。
表意者が真意ではないことを知ってした意思表示も、そのために効力を妨げられないのが原則である(93条1項本文)。表示を信じた相手方を保護するためである。もっとも、相手方が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効となる(同項ただし書)。本肢のBはAの意思表示が真意ではないことを知ることができたので、Aの意思表示は無効である。しかし93条2項は、この無効は善意の第三者に対抗することができないと定める。心裡留保の表意者は、真意と違う外形を自ら意識して作り出した点で、虚偽表示の表意者と同じく責められるべき事情があるので、その外形を信じて取引に入った第三者を守るべきだからである。94条2項と同じく、第三者は善意であれば足り、無過失までは要らない。本肢のCは善意でBから甲土地を買い受けた第三者なので、AはCに無効を対抗できない。

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
| 規定 | 保護される第三者 |
|---|---|
| 心裡留保の無効(93条2項) | 善意 |
| 虚偽表示の無効(94条2項) | 善意 |
| 錯誤による取消し(95条4項) | 善意でかつ過失がない |
| 詐欺による取消し(96条3項) | 善意でかつ過失がない |
| 強迫による取消し | 保護規定なし |
正しい。心裡留保による意思表示の無効は善意の第三者に対抗できず(93条2項)、第三者は善意であれば過失があっても保護される。
93条1項は、意思表示は表意者が真意でないと知ってしたときでも効力を妨げられないとし、ただし相手方がそれを知り又は知ることができたときは無効とする。そして同条2項は、その無効は善意の第三者に対抗することができないと定める。条文は第三者に善意だけを求めており、錯誤の取消し(95条4項)や詐欺の取消し(96条3項)が善意でかつ過失がない第三者と明記しているのと異なる。心裡留保の表意者は、自分から真意でない表示をして相手方や第三者が信じる原因を作った者であり、虚偽表示の当事者と同じくらい落ち度が大きい。そのため、第三者に無過失まで求めず、善意であれば保護することにしたのである。したがって、過失のある善意の第三者にも無効を対抗できない。肢は正しい。

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
| 規定 | 第三者に求められるもの | 条文 |
|---|---|---|
| 心裡留保による無効 | 善意 | 93条2項 |
| 虚偽表示による無効 | 善意 | 94条2項 |
| 錯誤による取消し | 善意無過失 | 95条4項 |
| 詐欺による取消し | 善意無過失 | 96条3項 |
| 強迫による取消し | 保護規定なし | 96条 |
正しい。心裡留保による意思表示は、相手方が真意でないことを知り又は知ることができたときは無効となり、真意の中身まで知っている必要はない(93条1項ただし書)。
93条1項本文は、意思表示は表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられないと定める。自分で本気でないと分かっていながら表示した者より、表示を信じた相手方を守るべきだからである。しかし同項ただし書は、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは無効とする。相手方が知り又は知ることができたかどうかが問われるのは、表示が真意でないことであり、表意者の本当の気持ちが何だったかまで知っている必要はない。冗談だと分かっていれば、本当の意図が何であれ、相手方は表示を信じたとはいえないからである。肢は正しい。改正前の条文は相手方が表意者の真意を知り又は知ることができたときと定めていたが、改正で文言が改められ、この点がはっきりした。

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
| 規定 | 第三者に求められるもの | 条文 |
|---|---|---|
| 心裡留保による無効 | 善意 | 93条2項 |
| 虚偽表示による無効 | 善意(利害関係を持った時で判断) | 94条2項 |
| 錯誤による取消し | 善意無過失 | 95条4項 |
| 詐欺による取消し | 善意無過失 | 96条3項 |
| 強迫による取消し | 保護規定なし | 96条 |
誤り。違うのは「善意であるが過失がある第三者に対抗することができる」の部分である。心裡留保による無効は善意の第三者に対抗できず、第三者は過失があっても善意であれば保護される(93条2項)。
93条2項は、心裡留保による意思表示の無効は善意の第三者に対抗することができないと定める。条文は第三者に善意だけを求めており、詐欺の取消し(96条3項)が善意でかつ過失がない第三者と明記しているのと違う。心裡留保の表意者は、自分から真意でない表示をして事実と違う外観を作った者であり、虚偽表示の当事者と同じくらい落ち度が大きいので、第三者に無過失まで求める必要はないからである。改正前も、判例は心裡留保に近い事案で94条2項を類推して第三者を保護しており、94条2項の第三者は善意であれば無過失でなくてよいとされていた。したがって、心裡留保による無効は、過失があっても善意の第三者には対抗できない。肢は誤っている。

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
| 規定 | 第三者に求められるもの | 条文 |
|---|---|---|
| 心裡留保による無効 | 善意 | 93条2項 |
| 虚偽表示による無効 | 善意(利害関係を持った時で判断) | 94条2項 |
| 錯誤による取消し | 善意無過失 | 95条4項 |
| 詐欺による取消し | 善意無過失 | 96条3項 |
| 強迫による取消し | 保護規定なし | 96条 |
正しい。代表取締役が自己の利益を図る目的で代表権の範囲内の行為をし、相手方がその目的を知り得たときは、無権代理行為とみなされ会社に効力が及ばない(民法107条、最判昭38.9.5)。
代表取締役は会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を持つ(会社法349条4項)から、自己の利益を図る目的であっても借入れ自体は代表権の範囲内であり、権限の有無ではなく権限の濫用が問題になる。民法107条は、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合に、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、その行為を代理権を有しない者がした行為とみなすと定め、この規律は法人の代表機関による代表権の濫用にも類推される。出題当時は107条がなく、最判昭38.9.5が民法93条ただし書の類推適用により同じ結論を導いていたが、平成29年改正で107条が新設された後も結論は変わらない。本肢のJはIの真意を知り得べきであったのだから、借入れは無権代表行為とみなされ、会社が追認しない限りその効力は会社に及ばない。

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
- 定款・取締役会規則による内部的制限に違反: 有効。制限は善意の第三者に対抗できない(349条5項)。悪意の相手方には対抗できる
- 法定の取締役会決議(362条4項)を欠く取引: 原則有効。相手方が決議を経ていないことを知り又は知り得たときに限り無効(最判昭40.9.22)。無効を主張できるのは原則として会社だけ(最判平21.4.17)
- 代表権の濫用(自己・第三者の利益を図る目的): 相手方がその目的を知り又は知ることができたときは無権代理とみなされ会社に効力が及ばない(民法107条の類推。最判昭38.9.5 と同じ結論)
- 代表者の職務上の不法行為: 会社が損害賠償責任を負う(350条)
正しい。支配人が自己の利益を図る意図で事業に関する行為をし、相手方がその意図を知っていたときは、会社はその行為について責任を負わない(最判昭51.10.1、民法107条)。
支配人は会社の事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持つから(会社法11条1項)、客観的に権限の範囲内にある行為の効果は原則として会社に帰属する。しかし本肢は、権限の範囲内の行為を支配人が自己の利益を図る意図でした代理権の濫用の場面である。最判昭51.10.1は、支配人の意図が自己の利益を図るにあり、かつ相手方がその意図を知り又は知り得たときは、心裡留保の規定を類推適用して会社はその行為について責任を負わないとした。相手方が支配人の背信的な意図を知っていた以上、取引の安全を優先して会社に効果を押し付ける理由がないからである。現行民法107条はこの判例法理を明文化し、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をし、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、無権代理行為とみなすと定める。本肢は相手方がその意図を知っている場合であるから、判例でも現行法でも会社は責任を負わず、本肢は正しい。

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
正しい。支配人が自己の利益を図る意図で事業に関する行為をし、相手方がその意図を知っていたときは、会社はその行為について責任を負わない(最判昭51.10.1、民法107条)。
支配人は会社の事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持つから(会社法11条1項)、客観的に権限の範囲内にある行為の効果は原則として会社に帰属する。しかし本肢は、権限の範囲内の行為を支配人が自己の利益を図る意図でした代理権の濫用の場面である。最判昭51.10.1は、支配人の意図が自己の利益を図るにあり、かつ相手方がその意図を知り又は知り得たときは、心裡留保の規定を類推適用して会社はその行為について責任を負わないとした。相手方が支配人の背信的な意図を知っていた以上、取引の安全を優先して会社に効果を押し付ける理由がないからである。現行民法107条はこの判例法理を明文化し、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をし、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、無権代理行為とみなすと定める。本肢は相手方がその意図を知っている場合であるから、判例でも現行法でも会社は責任を負わず、本肢は正しい。

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
誤り。違うのは「知らないことについて重大な過失がなければ」の部分である。心裡留保は、相手方が真意でないことを知り、又は知ることができたとき(過失があるとき)は無効となる(93条1項ただし書)。
93条1項は、意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられないと定め、ただし書で、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効とすると定める。心裡留保では、表意者は自ら真意でないことを知りながら意思表示をしているから、表示を信頼した相手方を保護して原則有効とする。しかし、相手方が真意でないことを知っていたか、通常の注意をすれば知ることができた場合には、保護すべき正当な信頼がないから、表意者の真意を尊重して無効とする。ここでいう「知ることができた」は過失がある場合を指し、重大な過失に限られない。したがって、相手方が真意を知らなかったことに軽い過失があるだけでも、意思表示は無効となる。本肢は誤りである。

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
| 場面 | 保護・免責の基準 |
|---|---|
| 失火責任法 | 重大な過失がなければ不法行為責任を負わない(債務不履行責任には適用されない) |
| 心裡留保の相手方(93条1項ただし書) | 知り、又は知ることができた(過失)で無効 |
| 取引的不法行為の相手方(715条) | 悪意又は重大な過失で使用者責任を追及できない |
| 譲渡制限の意思表示(466条3項) | 悪意又は重大な過失の譲受人に債務者は履行を拒める |
| 受領権者としての外観を有する者への弁済(478条) | 善意無過失で有効 |
誤り。違うのは「それがたとえ婚姻に関するものであっても」無効とならないとする部分である。婚姻のような身分行為には心裡留保の93条は適用されず、婚姻をする意思がなければ婚姻は無効である(742条1号)。
93条1項本文は、表意者が真意ではないことを知ってした意思表示も、そのためにその効力を妨げられないと定める。表示を信頼した相手方を保護し、取引の安全を図るためである。しかし、婚姻や養子縁組のような身分行為については、当事者の真の意思を尊重することが何より重要であり、取引の安全を理由に意思のない身分関係を成立させるべきではない。そのため、身分行為には93条は適用されないと解されており、判例(最判昭23.12.23)も養子縁組について同様の立場をとっている。そして、742条1号は、人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないときは婚姻は無効とすると定めているから、表意者に真に婚姻をする意思がなければ、相手方が真意を知らなかったとしても婚姻は無効となる。本肢は誤りである。

婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
- 原則:表意者が真意ではないと知ってした意思表示も有効(93条1項本文)
- 例外:相手方が真意ではないことを知り、又は知ることができたときは無効(93条1項ただし書)
- 第三者:ただし書の無効は、善意の第三者に対抗できない(93条2項)
- 身分行為:婚姻・縁組には93条は適用されず、意思がなければ無効
誤り。違うのは「権限外の行為の表見代理の規定は」適用できるとする部分である。代理人が自己の利益を図るため権限内の行為をするのは代理権の濫用であり、110条ではなく107条の問題となる。
110条は、代理人がその権限外の行為をした場合に、権限があると信じた第三者を保護する規定である。これに対し、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をすることは代理権の濫用であり、行為自体は代理権の範囲内にあるから、権限外の行為を前提とする110条の問題にはならない。107条は、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなすと定める。濫用であっても代理権の範囲内の行為である以上、原則として本人に効果が帰属し、相手方が濫用の目的を知り又は知ることができたときに限って無権代理として扱うのである。本肢は誤りである。出題当時は明文がなく、判例(最判昭42.4.20)が93条ただし書を類推適用していたが、結論は同じである。

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
誤り。違うのは「当該第三者が代表取締役の目的を知っていたとしても,その契約は有効である」の部分である。代表取締役が自己の利益を図る目的で代表権の範囲内の行為をした場合、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、無権代理行為とみなされ会社に効力が及ばない(民法107条)。
代表取締役が自己の利益を図る目的で会社を代表して契約をした場合、その行為は客観的には代表権の範囲内にあるが、代表権の濫用である。出題当時の判例は、代表取締役が自己の利益のため表面上会社の代表者として法律行為をした場合、相手方がその真意を知り又は知り得べきであったときは、民法93条ただし書(心裡留保の例外)の規定を類推し、その法律行為は会社に対して効力を生じないとしていた(最判昭38.9.5)。平成29年民法改正はこの考え方を代理権の濫用の規定として明文化し、民法107条は、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなすと定めた。会社の代表者の行為にもこの規定が適用され、相手方が代表取締役の目的を知っていたときは無権代理行為とみなされ、会社が追認しない限り契約の効力は会社に及ばない。出題当時の民法93条ただし書類推でも現行の107条でも、相手方が目的を知っていた本肢では契約は有効にならず、肢は誤りである。

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。































































































